著名人に聞く|エッグフォワード株式会社 徳谷 智史 氏

人の可能性を信じて、一歩前に進ませる支援をしていきたい。

大手戦略コンサルティング会社で企業改革に携わる中で、「教育から人や組織の可能性を広げたい」という想いを強め、キャリアを捨て一念発起し起業。現在の会社であるエッグフォワードを設立してわずか1年足らずで、延べ一万人以上の受講生を抱える。ビジネス×心理の専門家としても、各メディアで取り上げられる徳谷氏に、教育の可能性と目指す未来について熱く語ってもらった。

エッグフォワード株式会社 代表取締役 徳谷 智史

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エッグフォワード株式会社代表取締役。京都大学大学院非常勤講師。「ビジネス×実践心理学」のプロフェッショナル。京都大学経済学部卒業後、大手戦略コンサル・同海外オフィス代表を経て、エッグフォワード株式会社を創業。企業改革や海外展開支援に加え、実践・体感型スクールを運営し、世界一の教育機関創りを目指し、年間10,000人以上に対し研修・講演・セミナーを行う。
著書「いま、決める力(日本実業出版社)」、東洋経済オンライン連載、アジア消費者ラボ連載等 メディア掲載多数。
お問い合わせ:info@eggforward.co.jp

なぜ教育分野に挑戦するのか

前職を辞め、「人の可能性を広げたい」と起業した際は反対の嵐でした。京都大学を卒業後、大手戦略コンサル会社勤務、退職時は海外オフィスの代表だったので、「もったいない・リスクが高い」という言葉だらけでしたが、それでも教育事業に携わりたいという強い想いは抑えられませんでした。その理由は大きく2つでした。
1つは、「リアルに人にかかわりながら、可能性が広がるきっかけを提供したい」という想いからです。
前職の戦略コンサルという仕事は、経営課題を解決する充実した仕事である一方で、組織内の人に直に接する機会は必ずしも多くありません。s09_サブ5
例えば、不採算事業をうまくリストラすれば利益は増えます。しかし、本当はそこには生身の「人」がいます。塾に例えれば、不採算の教室を閉鎖しても、そこには先生もいれば生徒もいる。業績が良くなっても組織の人々が幸せになっているかにはギャップを感じることもある中で、直接人とかかわり、イキイキとさせるきっかけを提供したいという想いが次第に強くなっていきました。
2つ目は、世界をまわる中で、「教育の可能性」を身をもって痛感したことです。私は、よく世界中を放浪していますが、貧困エリアでの教育問題は深刻です。
例えば、アフリカの最貧エリアでは、非常に治安が悪いエリアがありますが、実際に南アフリカのスラム街に滞在する等して現地の方と触れると、背景には必ず教育問題が垣間見えます。教育を受けないので仕事もなく、故に強盗でもしないと生活ができないと真顔で語る人もいます。ケニアで貧困から抜け出せない子供は、「学校に行って仕事に就き、いつか兄弟にお腹一杯ご飯を食べさせられるようになりたい」と私に語ってくれました。
一方、日本はこれだけの経済水準にありながら幸福度はそれほど高くない。飢える人はまずいませんが、楽しくイキイキと働いている人の割合はどれほどでしょうか。私も、その問題を感じつつ自分が悪いわけではないと目を背けていましたが、何度も途上国に行く中で、まずは日本から、こうした閉塞感溢れる社会構造を変えるべく、新しい教育機会を提供していきたい、いかねばという使命感を徐々に持つようになりました。 私は実は、大学時代に塾講師をしており、やる気をなくしていた生徒がちょっとしたきっかけでイキイキと志望の進路に進んでいくのがとても嬉しかったのですが、私の根幹にはそうした人の可能性を広げていく支援をしたいという血が流れているのかもしれませんね(笑)

みんなの可能性を一歩前に

社名である「エッグフォワード」のエッグ(EGG)とは、人の可能性の象徴です。今はたまごであっても、きっかけひとつで前向きに(=FORWARD)進んでいってほしいという想いからなりたっています。 企業理念は、「みんなの可能性を、1歩前に」を掲げ、みんなと一緒になって最初の1歩を踏み出す支援をしていきたいという想いで事業を行っています。

「体感」の大切さと、講師側の「覚悟」

個人向けに行うスクール事業は、既存の学校への批判をする前にまず自分が創るべきとスタートし、延べ1万人以上が参加しています。主に社会人・大学生向けに、「心理学領域」と「ビジネス領域」を組み合わせて、イキイキと活躍できるよう多様なクラスを展開しています。
特徴の1つ目は、「体感型」中心で、座学だけのクラスはほとんどないこと。授業は教室内に留まらず、泊まりの合宿形式で進めることもあれば、ビジネス道場というクラスでは実際にお金を出し事業をして体感でビジネスを学ぶこともあります。
塾でも問題の解説を聞くだけでなく自分で解いて間違ってこそ成長があるように、実社会においても自分で行動できるようになるためには受身だけでは限界があると考えます。
特徴の2つ目は、講師陣です。講師陣は、各領域のナンバー1を多くそろえています。スポーツ、ビジネス、NPO等の各分野トップの生き様を踏まえてクラスを創り込んでいきます。ちょうど先日は、チームワークをテーマに、スポーツの日本代表チームと一緒に泊まり込みで学ぶクラスがありましたが、世界で戦っているチームからはテキストだけでは学べないことがたくさんあります。
講師が現状に甘んじてしまえば、それは受講者にも伝わります。私も含めて講師側は常にチャレンジして各界の一線にいないといけない、つまり、講師としての「覚悟」のようなものが必要だと思っています。

問題の核心を捉えつつ、相手を想う

企業向けには、人材開発事業を行っていますが、従来型研修では研修を受けてもすぐに元に戻ってしまう問題がありました。s09_メインそこで既製の研修の切り売りではなく、コンサルティングと継続型研修を組み合わせるなどして、各社が抱える人材の問題に沿って、オーダーメードの処方箋を提供しています。対症療法だけでなく、問題の核心を捉えた解決策が必要です。
時には、視野を広げるために海外まで出てリーダー育成合宿をすることもあります。
大事にしているのは、個人同様、クライアント企業と所属する人の可能性を信じ、それを広げるために常にベストなことをするというスタンスです。先方が、希望する研修でも意味が薄いと思えば、こちらから否定することもありますが、それも相手を思えば故です。

公教育にも変革の取り組みを

公教育機関への改革支援も行っています。私は、京都大学大学院の非常勤講師も務めていますが、自らが大学内で講義を行うのみならず、各学校の教育改革の支援も行っていこうとしています。一般企業と比較すればどうしても外の風が入りにくく、閉鎖的になりがちな公教育ですが、学校内でも、変化していかねばならないと考える人も少なくありません。とは言え、企業と比べ前例のないことはやりにくく、スピード感もどうしても遅くなるなど、変革は一筋縄ではいかないのが実態です。学内の人たちとしっかり向き合い、少しずつでも教育機関をより良く変えていくべく日々奮闘しています。

行動してこそ、変化は起こせる

こうして、個人、企業、公教育と3つの観点から、単独でなくそれぞれ合わせ技で人の可能性を広げる新しいきっかけを提供していこうとしていますが、それは、野党的に文句をいうだけはなく、まず自分自身が多様な方面から実際に行動してみてこそ、成果は出る、と考えるからにほかなりません。やってみて、うまくいかなければ、また修正してやり直せばよいのです。

「人を育てる」ということ

「人を育てる」ということには、企業、学校、塾でも通じるところがあると考えています。上司が部下と接するのも、先生が生徒と接するのも実は近いところがあります。
前提となる信頼関係を築き、目指すべき方向性を共有し、コミュニケーションを図りながら自主性を促し、同時に、自分自身も決断し、挑戦しなければなりません。「育たない相手が悪い」というスタイルでは通用しません。どうやれば育つのかを組織や相手の状況に応じて、考え、行動し、修正し続けなければなりません。
私は、教育とは、偉い誰かが知らない人に教えるというだけでなく、「本来相手の持っている可能性を引出し、伸ばすきっかけを提供すること」だと思います。それができる人こそが、企業で言えば良い経営者・リーダーであり、塾や学校で言えば良い先生なのだと思います。
ご縁があって、今年の10月の私塾界エグゼクティブセミナーでは、「これまでの指導を劇的に変える『3つの秘訣』」と題し、著書「いま、決める力」も踏まえて、人を動かす、特に現場の先生方の指導力を一歩前に進めるセミナーもさせていただくことになりました。私も、小さいころから塾とはかかわりが多かったので、人を育てるという観点から、塾業界の皆さんへのご支援もできればと思っています。

これから目指すもの

今の取り組みを進めながら、今後は、子供向け教育の拡充、特に小さいころから自分で意思決定をする訓練や、更には途上国での教育基盤の整備など取り組みたいことは山積みです。日々、チャレンジして失敗しての繰り返しですが、多くの方々の可能性を信じて、一歩前に進むための支援を人生を賭けて行い、「世界1の教育機関」を創りたいと思っています。

 

『月刊私塾界』2013年9月号掲載

みんなが私塾界!