TOP LEADER Interview|さなるグループ 最高責任者 佐藤 イサク 氏

教育者としての誇りを持って指導していきたい。佐藤 イサク 氏

自ら「根っからの教育バカ」という佐藤イサク氏。情熱を持って本気で生徒や親御さん、社員たちと向き合い、ひた走ってきた。静岡をはじめ愛知、岐阜、そして九州、首都圏へとネットワークを広げ勢いを見せる一方で、日本の教育への危機感をにおわせる。佐藤氏が考える「教育」とは。日本の教育事情や塾の在り方にも踏み込んでうかがった。

真のエリートを育てる。

──首都圏での校舎展開を予定されているようですが。

「来春から予定をしていましたが、先延ばしにするかもしれません。その理由は人材です。私は教師の質に徹底してこだわっています。まずは人材の育成。そのために来春は200人を超える新卒の採用を予定しています。少なくとも3、4年はそのくらいの採用を続けて、多くの人材を育ててから進出したいと思っています。とはいっても、今までのように直感的にエイヤーとやってしまうかもしれませんが(笑)」

──まずは人材を育てるというということですが、求める人材とは。s理事長1

「リーダータイプの、いわゆるエリートですね。エリートというと日本ではひがまれる対象でもありますが、それは、わが国のエリートたるべき人材が本来の職務を全うせず、己の利益ばかりを追求してきた例が多すぎたからだと思うんですね。
欧米で浸透している『Noblesse oblige(ノーブレス・オブリージュ)』という観念をご存知でしょうか。フランスに起源する、貴族に課せられた義務を意味する言葉なんですが。当時の貴族には、多くの特権も与えられましたが、戦争となれば率先して最前線に立って命懸けで戦う義務も課せられたんです。要するに、人の上に立ち権力を持つ者は、その代価として身を挺してでも果たすべき重責があるわけです。
教師も同じ。いい大学を卒業したからといって思い上がるのではなく、その学力を世のため人のために使うことを前提にしなければいけません。部下や他の部署で働く仲間への思いやり、生徒や親御さんに対してもそう。もし授業中に間違って答えた生徒がいれば、間違ったことへの痛みがわかる優しさがないと。それから気配りや常識、いわゆる人間力ですね。それがなければ真のエリートとは言えないのです。私は、生徒から厚く信頼される指導力のあるリーダーを望んでいます」

〝塾〟という言葉を世界の辞書に載せたい。

──中国にも進出していますが、海外での展開はお考えですか。新大連佐鳴

「中国では教材作成のみでの展開をしています。中国の場合、国が全国統一的な教育制度を定めていますので、外国人、それも日本人が塾を開くというのは、まだまだ難しいのが現状なんですね。ただ、日本の市場では塾同士の陣取り合戦になってしまっているところがありますから、いよいよ、世界的な展開をしなければいけない時期に来ているのかな、と思います。ありがたいことに、KUMONさんがアジアをはじめ北米南米、ヨーロッパ、アフリカなど各国を開拓してくださっています。それも海外に住む日本人ではなく、現地の人たちを。KUMONさんは読み書きと計算がメインの塾、うちとは違う。世界に受験のない国はありませんから、受験市場にはチャンスがあると思います。〝柔道〟や〝寿司〟という世界共通の日本語があるように、〝塾〟も世界の辞書に載せる!というのが私の夢。それが今、ようやく具現化しそうな感じです」

──日本よりも世界に目が向いているのですね。

「日本は、文明国が陥りやすい崩壊が始まっていると思うんです。江戸時代の川柳に『売り家と唐様で書く三代目』というのがあります。これは、初代が苦心して財産を残しても、三代目ともなると落ちぶれて家を売りに出すようになる。でも、その〝売り家〟という文字は唐様のようにしゃれているということで、遊芸にふけって、商いの道をないがしろにする人を皮肉ったもの。つまり、今の日本の子どもたちは、ファッションや音楽といった文化ばかりが先行しすぎて、コツコツと地道に頑張っていくことができないんですね。『ガンバリズム』というのが通らない。親にも過保護に育てられているから、子どもたちの指導もしにくくなっています。その点、世界の子どもたちは違う。私たちは根っからの教育バカ。教育者としての誇りを持って指導していきたい。日本はほんとうにこれでいいのか、ジレンマがありますね」

──日本の子どもたちは夢が持てなくなっているのでしょうか。

「こんな生徒の話があります。その子は母子家庭で育って、地元では2番手3番手の高校に入れるレベルがあった。でも突然、一番下のレベルの学校に行くというんですね。それで、親御さんから考え直すよう説得してほしいと頼まれまして、よくよくその子に話を聞いてみたら、その高校には必ず学年に一人、交換留学生としてブラジルへ行ける制度があることを調べていて、『僕は絶対に将来ブラジルへ行って一旗揚げるんだ』と言ったんです。15歳なのに、すごくしっかりしているでしょ。経済的な理由もあったのかもしれませんが、その生徒の熱意に押され、親から説得を頼まれていたのに、逆に親を説得することになりました。お母さんは泣いて聞いておられましたね。
彼のように中学時代、高校時代に『これだけは人にゆずらない』といった何か極めるものを一つ持つと強い。例えば、自転車で日本を縦断したとか、そんなことでもいいんです。やりきったという経験があると、将来、仕事もやりきろうとする。
なにも学歴だけが、その後の人生を幸せにするパスポートじゃないんです。ただ、社会に出たときに、いい高校、いい大学へ行っていれば、同じ仕事をしていてもチャンスを与えられることは多い。本当にやりたい会社に入れるチャンスが大きいことも確か。それは意識しておくべきですね」

映像学習や個別指導への取り組みも。

──さなるグループの現状はいかがでしょう。

「『名進研』は愛知・岐阜地区での展開で、佐鳴予備校と地域はかぶっていますが、『名進研』の主流は中学受験、一部高校受験があっても金額が違いますから、すみ分けはできています。
『啓明舎』は生徒数も増えて順調に回復しています。『九大進学ゼミ』は教場をスリム化していますが、1教場の平均人数は増えていますので、V字とは言えないまでもU字回復はしていると思います。どんなに頑張っても、一度ついたマイナスイメージを払拭するには最低でも5年はかかりますから、あと2年は忍耐力を持ってやるしかないですね」

──@willも1000教場ほどありますが、これは拡大していくのでしょうか。

「映像内容は、どことくらべてもまったく遜色がないところまできています。それは自信を持って言える。ただ、これはあくまでも『かけこみ寺』。ボランタリー契約で、縛りもありませんので、もしも困っている塾さんがいればぜひ声を掛けてほしいですね」

──市場の意識は個別指導へと変わってきていますが。

「個別指導というのは、自分の子どもの面倒を見てほしい親のニーズには一番あっていると思う。でも未だにピンとこない。まだ半信半疑なんですよ。まずバイトが教えるでしょ。それだけならテキストを渡してマニュアル化すればカバーできるかもしれませんが、問題なのは、1対1や1対2ですから人間関係が密着しすぎること。するとお互い甘えが出るわけです。ほんとうは弱点を強化しないといけないのに、バイトにいい格好をしたいから、わかったふりをしてしまう。けっきょく弱点を強化しないまま伸び悩み、今度は〝申し訳ない〟という気持ちが働く。教える方も教え過ぎちゃうこともある。集団指導の場合は、集団についていきたいと必死になれますよね。ただ今は、できる子も個別の傾向にある。そうしたニーズにも応えていく必要もあるんでしょうね」

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