東京大学Cedep・ベネッセ教育総合研究所 共同研究 「乳幼児の生活と育ちに関する調査2017」結果速報 0~1歳児の母親・父親の約7割が、もっと子どもをもちたいと希望

株式会社ベネッセホールディングスの子会社である株式会社ベネッセコーポレーション(岡山市)の社内シンクタンク ベネッセ教育総合研究所は、東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター(Cedep)(東京都・文京区)と共同で、「乳幼児の生活と育ち」研究プロジェクトを進めている。このプロジェクトは、同一の親子を対象に、複数年にわたり継続して調査を行うことで、子どもが育つプロセスや親の関わり方の影響を明らかにすることを目的としている。今回は、2017年に実施した第1回調査(0歳6か月から1歳5か月の子どもをもつ母親2,975名・父親2,624名を分析)の結果を紹介している。

主な調査結果は次のとおり。
1. 0~1歳児の母親の74.1%、父親の68.8%が、もっと子どもをもちたいと希望
●回答者全体:あと1人以上「もつ予定」母親45.5%、父親46.5%、「もっとほしいが難しい」母親28.6%、父親22.3%
●今、子どもが1人:2人目を「もつ予定」母親73.3%、父親74.6%、「もっとほしいが難しい」母親16.6%、父親12.7%
●今、子どもが2人:3人目を「もつ予定」母親21.7%、父親21.4%、「もっとほしいが難しい」母親42.2%、父親33.5%

2.「もっとほしいが難しい」理由は、上位から「子育て・教育の費用」「身体的な負担」「仕事との両立」
●1位「子育てや教育にお金がかかるから」 (母親81.4%、父親81.3%)、2位「子育ての身体的な負担が大きいから」(母親49.9%、父親36.0%)、3位「子育てと仕事の両立が難しいから」(母親37.4%、父親26.4%)
※子どもをもつ予定をたずねる設問で「もっとほしいが難しい」と答えた人の回答。 ※複数回答。

3.“チーム育児(※1)”をしているほうが、子どもをあと1人以上「もつ予定」の比率が高い
【夫婦で助け合う“チーム育児”】
●あと1人以上「もつ予定」:夫婦での助け合い(※2)が低群の母親では41.3%<高群の母親では48.7%
●「もっとほしいが難しい」:同、低群の母親では35.4%>高群の母親では27.1%
【親族のサポート(子どもの祖父母など)を頼りにした“チーム育児”】
●あと1人以上「もつ予定」:親族のサポート(※3)が低群の母親では39.3%<高群の母親では49.9%
●「もっとほしいが難しい」:同、低群の母親では33.4%>高群の母親では25.4%
【地域のサポート(子育て支援センターや園など)を頼りにした“チーム育児”】
●あと1人以上「もつ予定」:地域のサポート(※4)が低群の母親では41.0%<高群の母親では49.7%
●「もっとほしいが難しい」:同、低群の母親では30.7%>高群の母親では26.7%

4.“チーム育児”をしている家庭では、父親が仕事と子育てを両立しやすい職場で働いている
【夫婦で助け合う“チーム育児”をしている家庭の特徴】
●父親の平日の子育てが「2時間以上」:夫婦での助け合いが低群では7.2%<高群では29.0%
●父親の子育て分担比率:同、低群の17.2%が子育ての分担は「0割」、高群の23.3%は「3~4割以上」
●父親の職場が「定時で帰りやすい雰囲気がある」:同、低群では26.0%<高群では46.3%

※1“チーム育児”とは、本調査では、夫婦で助け合ったり、家庭外のサポートを得たりして行う子育てのことを指す。夫婦での助け合い(※2)は「配偶者と子育てや家事を助け合っていると思う」かについての回答、親族のサポート(※3)は「あなたの親族」「配偶者の親族」、地域のサポート(※4)は「子育て支援センターや児童館、園、療育センターの先生」「ファミリーサポートやベビーシッター、ヘルパー」「医師や看護師、助産師、保健師」について、それぞれ母親(主となる養育者)が子育てで頼りになる程度についての回答をもとに分析した。詳細はP5以降の各グラフ注釈を参照。

■調査結果からみえてきたこと
 2017年の出生数は、1899年の統計開始以降、最も少ない94.6万人になりました。急速な少子化の進行は、日本の人口構造に変化を与え、労働力不足や社会保障の在り方など、さまざまな面に課題をもたらします。
 こうした社会環境の中にあって、0~1歳児を育てている母親の74.1%、父親の68.8%が、もっと子どもをもちたいと考えていることがわかりました。子どもをあと1人以上「もつ予定」と答える母親は45.5%、父親は46.5%である一方で、「もっとほしいが難しい」と答える母親は28.6%、父親は22.3%いました。
 子どもをもっとほしいけれど難しい理由は、上位から「子育てや教育にお金がかかるから」「子育ての身体的な負担が大きいから」「子育てと仕事の両立が難しいから」でした。世帯年収が800万円以上の層でも約7割が費用面を理由に挙げています。個人が希望する子どもの数をもてるようにするために、第一に経済的な不安感の軽減が必要です。また、母親が30代後半以上だと「身体的な負担」、働いていると「仕事との両立」が理由としてより高くなることから、子育て家庭の多様な状況に即した支援が求められるといえます。
 さらに、次の子どもの出産意向に関連する夫婦の子育てのしかたもみえてきました。いわゆる“チーム育児”をしているかどうかです。夫婦で子育てや家事を助け合い、(子どもの)祖父母などの親族や、子育て支援センター、園などのサポートが子育てで頼りになると感じているほうが、次の子どもをもつ予定であると答える比率が高いことがわかりました。夫婦で助け合っていると感じている家庭のほうが、父親の平日の子育てが「2時間以上」が多く、(父親の)「職場が定時で帰りやすい雰囲気がある」と答える傾向があります。夫婦での“チーム育児”を可能にするには、長時間労働の是正や職場の理解など、仕事と子育てを両立できる環境整備が欠かせません。親族については、祖父母世代の就労や高齢化などを背景にサポートを得にくい家庭が今後増えていく可能性もあります。誰もが利用しやすい地域の子育てサポートの充実による“チーム育児”の実現も、希望する人が子どもをもちやすい社会にするためにますます重要になるでしょう。
 なお、本調査はプロジェクトの第1回目です。子育て中の親が、今後、実際にどのように家族をつくっていくのか。引き続き調査する中で明らかにしていきます。

【調査概要】
本リリース内容の詳細につきましては、ベネッセ教育総合研究所のWEBサイトから「乳幼児の生活と育ちに関する調査2017」の速報版・集計表をダウンロードできる。https://berd.benesse.jp/jisedai/

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