Category: 月刊私塾界

TOP LEADER Interview|株式会社 学究社 河端 真一 社長

都立中・高校合格者のシェアを最大にして、日本一の私塾へ。

株式会社 学究社 河端 真一 社長

株式会社 学究社 河端 真一 社長

公立中高一貫校が急増し、不景気もともなって塾業界が変革を迎えた4年ほど前。いち早く公立校対策をはじめ、経営者の手腕を発揮してきた河端真一社長。その柔軟かつ大胆な戦略と今後のビジョンについてうかがった。

 

 

私立から公立へ、勇気ある決断。

──いち早く公立中高一貫校対策をはじめられ、今やその市場においてはナンバーワンです。

「我が社は、『日本一の私塾』を目指しています。日本一ということは『東京一の私塾』、東京一ということは都立中と都立高の合格者のシェアを最大にまで高めることなんですね。

中高一貫校というと、一般的には私立と受け止められますが、私立中は都内に188校あって、受験者数は約2万5千人。一部の有名校以外は定員割れのところもあり、著しく地盤沈下しているのが現状です。一方、都立中は11校あって、1600人の定員に対して約1万人が受検します。7人に1人しか受からない難関なんですね。ということは、6人は不合格になる。この生徒たちもしっかり集めきって、3年後の高校受験でも抜群の合格率を収めたいと思っています」

──次は都立高校の合格実績ナンバーワンを目指していこうということですね。

株式会社 学究社 河端 真一 社長「そうです。中学受験で泣きを見た生徒は、高校受験、それも都立の一番手二番手の高校に合格する最も有望な生徒ですから、すでにenaには受験に合格する生徒が確実にいると自負しています。我々が中高一貫校対策を始めたのは4年前。都立中を志願する小学4・5年生を入口として、その子たちが都立高校を受験するのは5年後以降になりますから、そろそろ結果として表れるタイミングですね」

 

──学究社さんが公立に切り替えた理由はなんでしょう。

「我々も以前は、早稲アカさんや栄光さん、市進さんのように、麻布や開成や武蔵、早慶といった私立の上位校ばかりを狙っていました。授業料を月額6~7万円いただいて。でも、学費が年間約100万円かかる私立中は、一般的な子どもはなかなか行きにくいですよね。だから、公立校というボリュームゾーンに焦点を合わせて、授業料も2万円にしたんです。

さらに、校舎の立地もターミナル主義から、各駅停車主義に変えました。我々自身が遠くのスーパーより近くのコンビニで買い物をするわけですから、やっぱり塾の方から出向いていかないとダメなんです。利用者にとって通いやすい場所、通いやすい価格。そういう利用者の負担にも経営者は目を向けるべきですね」

sサブ2──当時の社内の反応はいかがでしたか。

「それはもう大反対でしたよ。それまではみんな算国理社を教えていたのに、適性検査がメインになって自分が培った技術がゼロになってしまうわけですから。授業料にしても、失敗したときのことを考えたら、そこまでのリスクは背負えないですよね。創業経営者だからこそ、思い切った決断ができたんだと思います」

グローバル教育には慎重さが必要。

──看護医療系、芸大・美大の受験部門を設けたのは。

「我々は、教育という子どもたちの未来についての仕事をしています。中学から高校へ行って、大学に進むというのは主流ではあるけれど、看護師の道や、芸術家の道もあるわけです。あらゆる可能性に応え、間口を広げていかなければなりません。同時に、それらは全部、我々にとっても未来に対する種まきでもあるんですね」

──他の〝種まき〟として留学など海外での校舎展開は。

美術に関する職種は多種多様。『芸大・美大受験総合予備校 新宿美術学院』では美術大学受験を前提に、それぞれの職種に応じたクラスを開講。

美術に関する職種は多種多様。『芸大・美大受験総合予備校 新宿美術学院』では美術大学受験を前提に、それぞれの職種に応じたクラスを開講。

「私は英語の教師としてずっとやってきましたが、英会話や留学を勧めるのは難しいと思います。日本人はなぜ英語ができないかというと、日本で生きていくのに英語は必要ないから。日本語しかしゃべれなくて苦労することはないからなんですね。つまり日本で生きる限り英語が必要ないから、学ぶことも必要ないのです。

もちろん、社会には英語ができる人はある程度必要です。でも、昔にくらべて今は帰国子女が圧倒的に多いから、必要な数は帰国子女で充足しています。将来、そのポジションに就こうと思ったら帰国子女を超えないといけない。それは難しいですよね」

──海外に住む日本人、現地の子どもたちに門戸を開くことは。

「欧米では日本人も、日本人学校も数が減っています。その代わりベトナムやタイといったアジアは増えています。だから、ほんとうはアジアへ出て行かなくてはならないのですが、その国で会社を立ち上げて、法的な要件を満たして営業許可を得るとなるとコスト的に合わないんですね。

現地の子どもたちを教えるというのもまだ難しいですね。アジアには塾はほとんどありませんから、現地の方に説明をして理解していただくまでには時間がかかります。それだけ時間を費やしても生徒が集まらない可能性もあります」

第1四半期決算では私塾界一の伸び、さらなる売上に期待。

──第1四半期(2013年4月1日~6月30日)の決算では売上は6・1%増、経常損失は209百万円でしたが。

「売上は、実は小中学生部門だけでみると15・1~2%増なんです。その他の部門が停滞したために総合的に6・1%増という結果になりました。

利益は、昨年に比べて1億円減っていますが、この原因ははっきりしていて、『パースペクティブ』という新しいオリジナル教材をつくったからなんです。都立中の適性検査対策に特化した、それはもう絶対的なテキスト。それもフルカラーでつくりましたので予想外のお金がかかった。中間決算からは予定通りの数字になっていくと思います」

──中長期的な売上目標などはありますか。

「はっきりしたものはありませんが、将来的にも楽観しています。毎年30教室くらい新校舎を出してきて、生徒数も増えています。それらが安定軌道に乗るには5年くらいかかるわけですから、今はまだ本来上がる売上まで上がっていない。このペースで行けば、全く心配することはないですね。

ただ、今期の新校舎は20教室くらいに減らす可能性はあります。生徒が集まりすぎていて、既存教室を増床、社員を増員しなければならなくなっていますので。嬉しい悲鳴ですね」

──売上に対する広告比率を教えてください。

株式会社 学究社 河端 真一 社長「広告費について私はよく知らないんです。世間では『塾業界は競争の時代』と言われていますが、我が社は毎年合格者も増え、売上も増えていますから、競争が厳しいなんて全然思っていません。むしろ、乱立・競合・競争という流れで考えると、乱立の状態なんですね。そういう段階にあるときは、経費削減とか、広告費が何%とか考えてちゃいけない。どんどん攻めていけばいいと思います」

──ウェブの広告効果はどうみていらっしゃいますか。

「ウェブは、生徒募集をするということでは、とても大事だと思います。例えば、家や車など高額なものを買うとき、ウェブでよく調べて買うでしょ。ところが、塾は高額商品にもかかわらず、パンフレットしかないから調べようがない。調べようというニーズに対して応えるためにも、ウェブを使って情報をセグメントしていかなければならないと思います。

人材募集については、フェイスブックでも柔軟に対応しています。塾は人が大事。とりわけ新卒というのは生徒と年令も近いので決定的に重要な要素です。まずは、どれだけたくさんの学生にリーチできるかがポイントですからね。今年、我が社では、社員の1割以上にあたる46人の新卒を採用しました。大変たくさんの応募があったのですが、彼らに聞くと転勤がない、あったとしてもほとんど都内ですから引っ越す必要がない、というのも我が社のメリットのようです」

 

『月刊私塾界』2013年10月号掲載

月刊私塾界2013年11月号(通巻391号)

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巻頭言

愕然とした。これ程減っているとは。9月に訪れた北海道野付半島のトドワラだ。「トドワラは、長い時間がかかって作り上げられた砂嘴の上に成立したトドマツ林が、海水面の上昇あるいは砂嘴の沈降により海水におかされ枯木群に変化したものと考えられています。」(現地案内板より)
30数年前初の来訪時、数多くのトドワラの間を縫うようにして湿地を散策した。90年代後半、二度目の訪問ではトドワラの減少に驚かされた。
今回、数十本と激減していた。木道が整備され、保護しようとはしていた。しかし、腐朽したトドマツの枯れ木が風化・消滅しつつあることを止めることはできず、いずれは何もない湿原と化す。この変化が「自然」だ。
学校教育が市場原理、競争原理にさらされようとしている。東京都や大阪市を震源とし、全国に波及している。ことの賛否は置くとして、大きな変化を迎えつつある。
学習塾業界、個々の学習塾はどのように対応しようとしているのか。変化に適切に対応しなければ、生き残ることができない。しかし、変化はチャンスでもある。自塾の体質を強化しながら、創意工夫し、新たな講座やカリキュラムなどを開発して欲しい。
野付半島では、トドワラがある場所と別の地域に、多数のナラワラ(ミズナラの枯木)を見ることができるようになった。偉大な自然の力がうかがえる。全てを受け入れ、変化している。トドワラは消滅しつつも、ナラワラは増加していく。

(如己 一)

目次

<<NEWS FILE>>
  • 学研HDベトナムの公立小学校に科学実験教室の講座を展開
  • 2年連続で地方教育費が減少
  • GDPを上方修正、3.8%増
  • NISA200万口座超す
  • 相次いで都心部に大学が移転
  • …etc
<<特集>>

塾のための広告宣伝

<<TOP LEADER>>

株式会社 富山育英センター&片山学園中学校・高等学校 片山浄見理事長

<<シリーズ・著名人に聞く>>

野球解説者・野球評論家 工藤 公康氏

<<石田 淳のケイゾクはチカラなり>>

ゲスト渥美 育子 氏 一般社団法人グローバル教育研究所 理事長

<<連載>>
  • NEWS ARCHIVES
  • HOT TOPICS
  • 近況を聞く 株式会社集学舎/QUARD 山口 崇志 社長
  • 学習塾の空間づくり  (23) StudyON(横浜市金沢区)
  • 新学習塾業界とM&A
  • 疾風の如く
  • ステキ★塾女発見!  私はなる! 教室のひまわりに、太陽に
  • 新米塾長のための部下とサシで行きたいごはん屋さん
  • 会社を建て直すためのリーダー養成塾
  • 【図解!】事業承継対策
  • 京都市立 堀川高等学校 学校改革の軌跡
  • 新米塾長のための 学習塾経営基礎講座
  • ホントにあった 個人塾経営再建物語
  • 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 教育サービス業界 企業研究
  • 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿
  • challenge~進化形jukuのカタチ
  • 芸術見聞録
  • 中学生からの子育てスクランブル
  • 学習塾フランチャイズ研究所
  • 井上郁夫の教室指南
  • 林明夫の「21世紀の地球社会」
  • 高嶋哲夫の「塾への応援歌」
  • 未之知也(いまだこれ知らざるなり)
  • 2013教育時評
  • 編集後記
  • Book Review
  • 塾長のためのガジェット講座

著名人に聞く|アパホテル株式会社代表取締役社長 元谷 芙美子氏

 

元谷 芙美子氏子どもたちには自分にしかできない大っきな夢を持ちビッグになってもらいたい

全国に100以上のホテルを展開し、今後も多数の出店を計画しているアパホテル。日本最大級のホテルグループだが、このグループを率いているのがご存じ元谷芙美子氏だ。開口一番「教育こそすべて!」と語ってくれた元谷氏は、教育に対する熱い想いを持っていた。

 

 

大きな目標を掲げれば達成手段は自ずと見つかる

金沢からスタートしたアパホテルですが、現在では全国規模で展開するようにまでなりました。なぜそこまで拡大できたのかというと、創業当初から「チェーン展開して日本一のこれまでにない『新都市型ホテル』をつくろう!」という目標を掲げていたからです。「新都市型ホテル」とは、アパの提唱する、都市ホテルの立地・外観・エントランスロビーを持ち、おもてなしは温泉旅館のようで、出張旅費で泊まれるビジネスホテル料金のホテルを指しますが、これを展開する大きな目標を掲げていたのです。元谷 芙美子氏 右カット

その戦略の一つとして行ったのが、立地を極めることでした。孫子の兵法には、「まず勝ちて然る後に戦いを求む」という教えがあります。ホテル経営に置き換えれば、「勝つ」とはすなわち好立地を確保すること。よい立地を手にしたのちに戦いを挑めば、負けることはないのです。先日、新聞に発表した新しいホテルの平均徒歩分数は、駅から約2分6秒。たとえどんなに素晴らしいホテルでも、駅から15分歩くようでは稼働率を上げることはできませんが、先月の東京都心のホテルのほとんどが稼働率100%を達成できているのも、いい立地を確保できているからだと思います。また、キャッシュバックなどの特典がつく会員制度を導入したのも戦略の一つ。現在会員数は620万人を数え、いまも月間約10万人のペースで増え続けています。さらには、インターネットの予約システムをいち早く導入したのも大きいでしょう。当ホテルのお客さまは、立地のよさから「時間を有効に使いたい」という優秀なビジネスマンの方が多く、そうした方々はほとんどインターネットからご予約いただいています。とにもかくにも初めに大きな目標を立てることですね。そうすれば、それを達成する手段はいくらでも見つかると思います。

さらに当社では「お客様に最高のもてなしを」という理念を掲げ、立地の選定や新しいシステムの導入だけでなく、客室の設備やレストランのサービスなど、さまざまな面で最高のクオリティを追求してきました。しかし、大切にしているのはお客様だけではありません。取引先や社員も同じように大事にしているのです。創業から29年経ちますが、これまでにリストラした社員はゼロ。「環境にやさしい企業」とよく言いますが、真に環境にいいとは、人事環境にやさしいことだと私は思っています。社員を大切にし、社員とともに成長してきたからこそいまがあるのです。これは、あらゆる経営に通じることだと思います。

心が柔らかいうちに、いかにいい指導をおこなうか

私は高校時代、福井でも一番の進学校として知られる学校に通っていました。卒業後はお茶ノ水女子大学に進み、先生になるのが夢。しかしちょうどその頃、働き者だった父が病気になってしまい、その夢を断念せざるを得なくなりました。特待生などの方法も考えましたが、東京で一人暮らしをするには少なからずお金がかかる。私の大学進学によって妹たちが犠牲になるかもと考えると、あきらめるしかありませんでした。

「私には、もっといい人生が待っている。それに、学ぶ機会はきっとまたある」そう思い、福井信用金庫へ就職。大学を受験しなかったのは進学クラスのなかで私一人だけでしたが、就職という道を選んだからこそ、いまの主人と出会え、こうして社長業を営むことができています。本当に、人生というのはなにが幸運をもたらすかわかりません。塾や予備校にも浪人生がいると思いますが、失敗を挫折だと思わず、前向きに頑張ってほしいですね。苦労が多ければ多いほど人はやさしくなれるし、強くなれます。元谷 芙美子氏02

ところで、なぜ私が教員を目指すほど教育に関心を持っているかというと、小学生のときに金森先生という素晴らしい先生に出会えたからです。小学校2年生のときの文化祭で、各クラスの代表が本を朗読するコンテストがあった。代表となった私は、金森先生から「あなたは記憶力もいいし、度胸もあるから全部暗記して朗読しなさい」と言われたんです。確か10ページぐらい、5000字はあったと思います。自分には無理だとあきらめそうにもなりましたが、何とか全部暗記して朗読し切った。そのときの達成感はいまでも覚えています。学校のスターになった気分で、その後の人生に大きな自信をもたらしてくれました。「頑張った人がトップを取れる」そのとき、そう考えられるようにもなりました。教育が人生を変えるということを、身を以て体験しましたので、多くの子どもの可能性を引き出せるような先生になりたかったのです。心が柔らかいうちに、いかにいい先生に出会えるかは、子どもにとってとても大切なことだと思います。ぜひ塾の先生方にも、子どもたちに勇気や自信を与えられるよう指導していただきたいですね。

教えるということは、自分自身を成長させること

高校のときに一旦は断念した大学進学ですが、私は53才から法政大学に通い、卒業。その後は早稲田大学の大学院に進んで博士課程を修了しています。一度はあきらめかけた夢を、こうして果たすことができたのです。そして現在では東京国際大学の客員教授を務め、教育者になるという目標まで達成することができました。元谷 芙美子氏03

社長と教授の両立は時間的にも厳しいとは思いましたが、なぜ私がお引き受けしたかというと、高校のときに教員になりたかったから、というだけではありません。経営者としていろいろな経験を重ねてきましたが、一番脂の乗った時期。そう考えているので、少しでも私の経験が若い人たちの役に立てばいいなと思ったからです。そして夢をつかむ熱い気持ちを奮い立たせてもらいたいですね。ですから、講義内容は人生論がほとんどです(笑)。学生はもちろん、その父兄まで聴講に来られるほか、学内の教授も講義を聴いてくださっています。

また、「教える」ということは自分のためにもなることです。教えることではじめて気づくこともありますし、自分自身をさらに成長させることができます。塾の先生にも教えることは自分のためでもある、ということを再認識していただき、日々の気づきや成長を授業に活かしていっていただきたいですね。

人生を大学と捉えれば学ぶことは尽きない

現在の教育システムは、大学へ行くことが至上の目標になっているような気がします。でも長い人生からすれば大学は一つの通過点に過ぎず、いってみれば一息つける「踊り場」のようなもの。そこからギアチェンジして、さらに上を目指して加速しなければいけないのに、勉強ができる人に限って踊り場で休む傾向にあります。私はさまざまな社会人を見てきましたが、社会では学校のときほど真剣に学ぼうとしている人が少ない気がします。学生には、自分の人生の目標を大学や大学院に置かず、人生自体を大学と捉えるような大きなビジョンを持ってもらいたいと思います。そうすれば興味はつきないですし、社会に出ても謙虚な気持ちでいろんなことから学べるでしょう。塾の先生方にも、ぜひ人生そのものが学びであるということを教えてもらいたいと想います。

それから、実業界に長く身を置く私が思うのは、いくら勉強ができたとしても必ずしも成功するとは限らないということ。大事なのは、毎日、命を燃やして生きる「熱さ」です。金太郎アメのように、どの瞬間を切っても同じ情熱があふれてくるような、高い意識と向上心が必要です。いい学校を出て、いい会社に入り、それなりの家を建てて幸せに暮らすのもいいかもしれません。しかし、この世に生を受けたからには、なにか自分にしかできないような大きな夢を持ち、ビッグになってもらいたいですね。

そのためのチャンスは、誰のもとにも訪れます。ただしチャンスは、「いつでもつかむぞ」という気概がある人にしかつかめません。いつチャンスが訪れてもつかめるよう、日々を意欲的に過ごしてもらいたいと思います。それからよくいわれるように、チャンスの女神には前髪しかないんです。過ぎ去るときに慌てて後ろ髪をつかもうと思っても、もう遅い。前髪をつかむためにもう一つ大切なことが、リスクを取るということ。リスクを取らずして決してチャンスはつかめませんし、幸せになることはできないと思います。可能性多き若者、そして彼ら彼女らを指導する先生。勉強だけではなく、人生を大局的に捉えた教育をおこない、高い志を持たせてあげてほしいですね。

TOP LEADER Interview|早稲田アカデミー 瀧本 司社長

生徒のやる気を引き出し学力を伸ばす。独自の指導システムで、合格実績全国ナンバー1へ。

塾の枠を超えるユニークな切り口で、さまざまなブランドを構築してきた早稲田アカデミー。30周年の節目を迎えた今、『本気でやる子を育てる』を教育理念に突き進んできた成果、そして今後の方針について、瀧本司社長にたずねた。

早稲田アカデミーの瀧本司社長

早稲田アカデミーの瀧本司社長

本気になれる環境やきっかけがあれば、難関校合格は夢じゃない。

──早稲田アカデミーに商号変更されてから30年という節目の年を迎え、あらためて今想うことは。

「2013年の中学入試では、御三家中や早慶中などの難関校にトップレベルの合格者を送り出し、高校入試では開成高・慶女高・早慶高へ全国ナンバー1の合格者を送り出しました。

中でも特筆すべきは、早稲田アカデミーに通い始めたころの偏差値は〝50〟前後といった学力の生徒が難関校に合格していること。スタートの学力に関わらず、環境やきっかけをつくってあげれば、生徒自らが望む憧れの難関校合格を実現することは可能だということです。あらためて、『本気でやる子を育てる』という教育理念を堅持し、実践していきたいと思います」

──『本気でやる子を育てる』ためのポイントはなんでしょう。

「大きく分けると、一つは〝競争する〟ということ。それから、〝生徒とのコミュニケーション〟です。受験は他人との競争です。だから早稲田アカデミーでは、どんなに小さなテストでも必ず順位表を貼り出します。それに反応する子もいますし、あるいは『夏期合宿』のような特訓の場において〝みんなといっしょにこれだけ頑張った〟ということに反応する子もいます。その反応は受験に挑む原動力になりますから、競争していることが明確で、結果としてわかる状態をつくってあげることが大切だと思います。

一方で、受験は自分自身との競争でもあります。受験に対して自分はどうとらえ、どんな目標を立てればよいのか。これは先生とのコミュニケーションが必要になるんですね。ある生徒には偏差値を〝70〟に上げることを目標にして、またある生徒には〝まずはこの単元だけはできるようにしよう〟という目標を与える。それぞれの子どもに応じた目標をきちんと与え、そのためにはどうしたらいいかというアドバイスをする。目標がクリアできたらより高い目標を設定し、チャレンジ。できなくても繰り返しコミュニケーションをして軌道修正していくことで、子どもたちのやる気は変わってきます」

──とにかく〝やる気〟を引き出すことが大切なんですね。

「そうです。受験というのはあくまでも子どもの人生をつくるきっかけにすぎません。それを目標にしてどう取り組んだかというところに本当の価値がある。一生懸命取り組んだことが財産となり、今後の人生においても大きな糧となるのです。

私たちは、お子さんやご家族のみなさんが〝やってよかった〟と振り返られるような受験であってほしいと願いますし、そのためにスタッフ一同、全力でサポートしていくことをお約束します」

手厚いサービスで、すべての塾生を全力でサポート。

──中学受験の合格実績が伸びている理由は何でしょう。早稲田アカデミーの瀧本司社長

「ひとつは、リーマンショックによる中学入試の冷え込みがあった時期から、低学年の募集に力を入れたこと。もうひとつは、四谷大塚の『予習シリーズ』に対応した、指導マニュアルが充実したこと。それらが、今年になって、ようやく実を結んだというわけです。

生徒の獲得に関しては、『全国統一小学生テスト』をはじめ、体験授業や低学年向けの『チャレンジテスト』などを用意して、何度もアプローチをかけていきました。すべて無料ですから、それなりに費用はかかりますが、広告宣伝費として低学年のうちに投資をして、より優秀な生徒さんを早めに獲得しておく方が、4年後、5年後、6年後と長いスパンでみると効果的であると考えたのです。

新『予習シリーズ』については、マスの生徒層にはハードルが高くなりました。ただし、優秀生にとっては何の問題もなくチャレンジできるものになっています。教える深さは変わらないのですが、内容をぎゅっと凝縮して短時間に詰め込んでいるものですから量が多くなっているのですね。だから優秀生はどんどん伸びていける。逆にマスの生徒層には、クラスごとにピックアップする問題や、生徒たちに到達させるべきレベルの見極めを緻密にコントロールして、ドロップアウトすることなく的確に伸ばしていけるマニュアルづくりをしています」

──ここ近年、『早稲田アカデミー個別進学館』や『早稲田アカデミーIBS』といった新しい取り組みを次々と始めていますが……

「集団でのライブ授業には、サービス的な面での限界があります。それを補う形で設けたのが『早稲田アカデミー個別進学館』です。集団授業を行う教室のすぐ近くに個別の教室を構え、併用できる状態にしました。今後は、各校舎あるいは自宅で、パソコンによる自学自習をフォローするシステムにも着手しようと思っています。

また、英語教育も変わりつつあります。これからは、言語としての英語という意識改革が必要です。目指すところは、〝グローバルな人材〟になるための英語教育。国際人としてビジネスの世界でも成立する英語力を身に付けること。社会人になってからしゃかりきに英語を勉強するのではなく、学生のうちから英語圏の方々と自然に会話ができる。そうした下地をつくってあげる教育が求められています。だから受験英語にとどまらず、それを超えるコンテンツとして、東大・医学部・ハーバードに一番近い小学生たちの英語塾『早稲田アカデミーIBS』が生まれました」

──その反響はいかがですか。

「『早稲田アカデミー個別進学館』は2年ほど前からはじめ、明光ネットワークジャパンと提携し、現在は首都圏に20校舎を構えています。生徒数は1200人ほど。1校舎平均60人くらいになります。基本的に1対2で自立をさせながら進めるスタイルで、汎用性が高いので、3年後くらいには100校舎まで展開を目指しています。

『早稲田アカデミーIBS』は、保護者の方にも一緒に授業を受けていただくなど制約のある教室ながらも、ほとんどのクラスが満席の状態で、キャンセル待ちをしていただいています。今は御茶ノ水の1カ所だけで首都圏の東側の方が対象になりますので、次は西・南側を対象に神奈川エリアにも教室を開こうと思っています。

さらに『早稲田アカデミーIBS』のノウハウを一般化して、今秋から特別なカリキュラムをスタートします。小5~6年の2年間で、3級程度の英語能力を身に付ける教室を首都圏で10カ所ほど開く予定です」

中・高校、大学入試のすべてにおいて合格実績日本一を目指す。

──広告的な戦略としてはどのようにされていますか。

9月の新学期開講チラシ

9月の新学期開講チラシ

 

「広告予算は、収益の状況を見ながら調整はしますが、およそ8%です。内訳についてですが、やはりウェブ、インターネットにかける広告費が増えてきています。テレビCMにかける予算はほとんど一定。チラシもそれほど減らしてはいません。ウェブの場合は、パソコンのスイッチを入れてブラウザを立ち上げてという顧客の能動的な行動がなければ届きませんが、チラシは顧客が受動的であっても情報だけは届けられるので、根強く残っていくと思います」


──ウェブに関して、ソーシャルメディアへの対応はいかがですか。

夏期合宿のパンフレット

夏期合宿のパンフレット

「仲間意識を高めたり、卒業生たちのネットワークづくりにはラインやフェイスブックは活用できるツールだと思いますし、そこから発生していけば口コミの材料としてコントロールはできると思います。ただし、そこに生徒が関与すると、想定されるリスクを回避しなくてはなりませんので、慎重にやっていかなくてはいけない。活用にはもう少し見極めが必要ですね」

──今後の経営的な目標と、瀧本社長が早稲田アカデミーで実現されたいことはなんですか。

「経営面では5年後には売上は280億、利益は22億くらい。10年後には売上は400億、利益は40億くらいが目標です。実現したいことは、10年後には学習塾として合格実績で日本一になることですね。まず、御三家中は確実にトップに。高校入試は誰からもナンバー1と評価されていますが、国立高校や都県立のトップ校など、まだいくつかの学校はナンバー1のタイトルをもらっていないものがありますので、それを全部取る。それが最終的には東大につながっていくと思いますので、ゆくゆくは大学入試でもナンバー1になれるのではないかと思います。10年経つと私は60歳になります。引き継いだ責任をそれで果たしたい。もちろん、できれば売上・利益でも日本一になりたいですね」

月刊私塾界2013年10月号(通巻390号)

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一昨年の秋、故山田雄司氏の故郷、福岡県柳川を訪れる機会を得た。その帰り、大宰府にある九州国立博物館に立ち寄った。館内を楽しんだが、展示方法等他の博物館と異なる雰囲気を感じた。
その理由を最近知った。
開館は、2005年と新しい。日本文化の形成をアジア史的観点で捉えることをコンセプトに造られた。他の国立博物館と比べて国宝が少ないハンディを克服するため、科学と文化融合の最前線という構想が生まれた。
X線CTスキャナーを使って仏像を検査する。題して「文化財ドック」。スキャナーの精度は高く、約0・2ミリの材質まで識別でき、修理に役立てている。仏像内の収蔵物も発見できる。更に、読み取った情報を基に、非接触光学式3次元デジタイザや熱溶解積層式3次元プリンターなど最先端機器を用い、立体造形物を作り、誰もが「さわれる博物館」を目指した。
ここに、「ない」故に「どこにもない」博物館が誕生した。
業態変更を検討中の方々、後発組やこれから始めようとする人々にとり、実に示唆に富んだ例だ。
例えば、ICTの導入。大手では多大な設備投資や授業方法の変更が必要だ。しかし、小規模であったり、開校間もない塾であれば、変革は容易だ。既存の学習塾と全くコンセプトが異なる、斬新な教室を創造することができる。そして、圧倒的な競争力を持つ。
「ない」を嘆く前に「ある」を追求してはどうだろうか。

(如己 一)

目次

<<NEWS FILE>>
  • リソー教育グループが組織再編
  • 全国統一中学生テスト11月4日に東進が初めて実施
  • 概算要求、過去最大99兆円台
  • 高校無償化、年収制限910万円
  • グローバル人材育成、30大学指定

…etc

<<特集>>

塾のための小学生英語

<<TOP LEADER>>

株式会社 学究社 河端真一 社長

<<シリーズ・著名人に聞く>>

元谷 芙美子アパホテル株式会社 代表取締役社長

<<石田 淳のケイゾクはチカラなり>>

ゲスト奥田 浩美 氏 株式会社ウィズグループ 代表取締役

<<連載>>
  • NEWS ARCHIVES
  • HOT TOPICS
  • 大学入試の英語試験を改革する〝切り札〟となり得るか?
    新しい英語能力判定試験「TEAP」の目指すものとは

  • 近況を聞く 名大SKY 酒井 秀樹 代表
  • 学習塾の空間づくり  インターTOMAS(東京都豊島区)
  • 新学習塾業界とM&A 6 学習塾業界のM&A事例 その2
  • [短期集中連載]グローバル人材考(後編)
    やっぱり「話せる英語力」が必要。~TOEFL授業の現場から
  • 疾風の如く   School Imanishi 代表・音楽講師 今西未帆さん
    & 英語学院講師 今西一太さん
  • ステキ★塾女発見!  私はなる! 教室のひまわりに、太陽に
  • 新米塾長のための部下とサシで行きたいごはん屋さん 3
  • 会社を建て直すためのリーダー養成塾 3
  • 【図解!】事業承継対策 3
  • 京都市立 堀川高等学校 学校改革の軌跡 6
  • 新米塾長のための 学習塾経営基礎講座 5
  • ホントにあった 個人塾経営再建物語 2
  • 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 教育サービス業界 企業研究 Design for Change Japan
  • 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿 237
  • challenge~進化形jukuのカタチ
    受験研究塾 耀彗 & 輝望館
  • 芸術見聞録 3
  • 中学生からの子育てスクランブル
  • 学習塾フランチャイズ研究所
    差別化のためのコミュニケーション戦略③
  • 井上郁夫の教室指南 6
  • 林明夫の「21世紀の地球社会」
  • 高嶋哲夫の「塾への応援歌」137
  • 未之知也(いまだこれ知らざるなり)6
  • 2013教育時評
    待機児童問題・前編「不作為の作為」可能性大?
  • 編集後記
  • Book Review
  • 塾長のためのガジェット講座

疾風の如く|19BOX(千葉県)代表 安藤賢孝さん

sメイン(予備候補)

本当の自分はどこだ。
塾との出会い、師との出会い……
演じ続けて来た自分に別れを告げ、
ついに手にした「自分ブランド」。
想いのたけを詰めた「箱」の蓋は
いま、開かれた。

 

 

 

探し求めた「自分ブランド」をこの手に

「空っぽ」の優等生

少年・安藤賢孝は、明らかに「完璧」だった。勉強は常にトップ、クラブではキャプテン、さらに生徒会長も務める。スポーツも得意、ピアノだって弾けたし、先生受けも抜群にいい。「オレ以上のヤツなんていない」、自分でもそう思うほど。

しかし華やかな称賛の裏で、その秀才の心は虚しいまでに空洞だった。いつだって自信満々、マジメで何でもでき、人望も厚い優等生。いつしかそんな、周囲の目線に応えた自分を演じるようになっていたのだ。しかし、それを崩してしまえば自分は一気に孤立するのではないか。そんな不安に苛まれるようになる。「本当の自分」を出したい。いや、本当の自分って何だ? そもそもオレには本当の自分なんてものがない……実はその孤独感へのアンチテーゼこそが、安藤の塾作りの原点だ。

自分の生きた証を残すために

その後は「とりあえず」国立大を卒業し、大手電機メーカーに「なんとなく」就職。その頃になっても、空っぽの心は埋まらないままだったのだ。それでも3年働いてみたが、やはり何かが足りない……。そんな気持ちを埋めるべく、週末に塾でアルバイトを始めた。

いつも虚無感を抱いていた安藤だったが、塾講師は「楽しい」と感じた。生徒に過去の自分を重ねたのか、彼らの主体的な人生創りに関与できることに喜びを見出せたのだ。やがて、次第に塾の仕事にのめり込むようになる。

しかし、そうさせたのにはもうひとつ理由がある。塾の上司の存在だ。彼は「自分」をハッキリと持つ強い男で、安藤も素直に憧れた。彼もまた、「ビジネスとは」「社会人とは」「生きるとは」といった哲学を、厳しくも惜しみなく安藤に叩き込んだ。

そんな日々の中、やがて安藤の中にも「自分」が見え始める。それが「自分の生きた証を残したい」「そのために、自分で塾をやってみよう」という想い。その志を胸に開いたのが「アンドー塾」だ。

「19BOX」。すべての想いをその箱に込めて

「こうあるべき」――そんな息苦しさの中で生きてきた安藤だけに、塾に対してもその思いは強く抱いていた。「塾は中身で勝負」、それは分かる。しかし、成績を上げるだけでいいのか? 既成概念に捉われず、もっともっと付加価値があってもいいじゃないか。そう思ったのだ。

そこでまず、自らの過去をふまえて子どものキャリア観育成をミッションに据え、勉強や受験を「人間力を高めるためにやるもの」と位置付けた。だから進学においても「行けるところに行く」という判断基準はないし、保護者から「どの学校へ進学する子が多いですか」と問い合わせがあっても、毅然と「ウチはそういう塾じゃないんです」と言い切る。広告でも合格実績を謳うことはしない。

また、元々が聡明なアイデアマンだけに、塾や勉強を楽しむためのフックも多数仕掛けた。例えば、目的ある勉強意識の育成戦略「夢カナストラテジー」。テスト対策の「天下一勉強会」。部活を引退した三年生は「アンドー部」に入って、「自主トレ」「練習試合」と称した勉強会に取り組む……etc。

極めつけは先ごろ設立した、アンドー塾を含む自塾ブランドを包括する上位概念、総合ブランドの「19BOX(ジュークボックス)」。「自分の人生は自分で創る」「自分ブランドをデザインする」という考えのもと、あらゆる生徒の個性や夢に対応するための「塾の箱」だ。

そこまでブランドという概念にこだわるのは、「自分」を渇望し続けてきた安藤だからこそ。そして今、彼はついに見つけたのだ。塾を通じて自分を表現する術を。自分の「ブランド」を。

19BOX――それは、本当の自分、教育への想い、ビジネスへのロマン、安藤のあらゆる想いが詰め込まれた夢の「箱」なのだ。(敬称略)

プロフィール

安藤賢孝 ANDO Masataka

sメイン1979年、千葉県生まれ。開業7年目、5教場(今夏、6教場目を開校)約500名の生徒を抱える。幼少期より「本当の自分」を出せないまま優等生を演じ続けた過去を持つことから、既成概念に捉われない塾運営を展開。アパレルを思わせるクールでシャープなイメージ戦略もそのひとつ。また、そういった新しいチャレンジを共に行える仲間を探すべく、コンサル事業にも着手している。

 

WEBサイト

ブログ「恋愛と同じですよ!」

 

著名人に聞く|エッグフォワード株式会社 徳谷 智史 氏

人の可能性を信じて、一歩前に進ませる支援をしていきたい。

大手戦略コンサルティング会社で企業改革に携わる中で、「教育から人や組織の可能性を広げたい」という想いを強め、キャリアを捨て一念発起し起業。現在の会社であるエッグフォワードを設立してわずか1年足らずで、延べ一万人以上の受講生を抱える。ビジネス×心理の専門家としても、各メディアで取り上げられる徳谷氏に、教育の可能性と目指す未来について熱く語ってもらった。

エッグフォワード株式会社 代表取締役 徳谷 智史

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エッグフォワード株式会社代表取締役。京都大学大学院非常勤講師。「ビジネス×実践心理学」のプロフェッショナル。京都大学経済学部卒業後、大手戦略コンサル・同海外オフィス代表を経て、エッグフォワード株式会社を創業。企業改革や海外展開支援に加え、実践・体感型スクールを運営し、世界一の教育機関創りを目指し、年間10,000人以上に対し研修・講演・セミナーを行う。
著書「いま、決める力(日本実業出版社)」、東洋経済オンライン連載、アジア消費者ラボ連載等 メディア掲載多数。
お問い合わせ:info@eggforward.co.jp

なぜ教育分野に挑戦するのか

前職を辞め、「人の可能性を広げたい」と起業した際は反対の嵐でした。京都大学を卒業後、大手戦略コンサル会社勤務、退職時は海外オフィスの代表だったので、「もったいない・リスクが高い」という言葉だらけでしたが、それでも教育事業に携わりたいという強い想いは抑えられませんでした。その理由は大きく2つでした。
1つは、「リアルに人にかかわりながら、可能性が広がるきっかけを提供したい」という想いからです。
前職の戦略コンサルという仕事は、経営課題を解決する充実した仕事である一方で、組織内の人に直に接する機会は必ずしも多くありません。s09_サブ5
例えば、不採算事業をうまくリストラすれば利益は増えます。しかし、本当はそこには生身の「人」がいます。塾に例えれば、不採算の教室を閉鎖しても、そこには先生もいれば生徒もいる。業績が良くなっても組織の人々が幸せになっているかにはギャップを感じることもある中で、直接人とかかわり、イキイキとさせるきっかけを提供したいという想いが次第に強くなっていきました。
2つ目は、世界をまわる中で、「教育の可能性」を身をもって痛感したことです。私は、よく世界中を放浪していますが、貧困エリアでの教育問題は深刻です。
例えば、アフリカの最貧エリアでは、非常に治安が悪いエリアがありますが、実際に南アフリカのスラム街に滞在する等して現地の方と触れると、背景には必ず教育問題が垣間見えます。教育を受けないので仕事もなく、故に強盗でもしないと生活ができないと真顔で語る人もいます。ケニアで貧困から抜け出せない子供は、「学校に行って仕事に就き、いつか兄弟にお腹一杯ご飯を食べさせられるようになりたい」と私に語ってくれました。
一方、日本はこれだけの経済水準にありながら幸福度はそれほど高くない。飢える人はまずいませんが、楽しくイキイキと働いている人の割合はどれほどでしょうか。私も、その問題を感じつつ自分が悪いわけではないと目を背けていましたが、何度も途上国に行く中で、まずは日本から、こうした閉塞感溢れる社会構造を変えるべく、新しい教育機会を提供していきたい、いかねばという使命感を徐々に持つようになりました。 私は実は、大学時代に塾講師をしており、やる気をなくしていた生徒がちょっとしたきっかけでイキイキと志望の進路に進んでいくのがとても嬉しかったのですが、私の根幹にはそうした人の可能性を広げていく支援をしたいという血が流れているのかもしれませんね(笑)

みんなの可能性を一歩前に

社名である「エッグフォワード」のエッグ(EGG)とは、人の可能性の象徴です。今はたまごであっても、きっかけひとつで前向きに(=FORWARD)進んでいってほしいという想いからなりたっています。 企業理念は、「みんなの可能性を、1歩前に」を掲げ、みんなと一緒になって最初の1歩を踏み出す支援をしていきたいという想いで事業を行っています。

「体感」の大切さと、講師側の「覚悟」

個人向けに行うスクール事業は、既存の学校への批判をする前にまず自分が創るべきとスタートし、延べ1万人以上が参加しています。主に社会人・大学生向けに、「心理学領域」と「ビジネス領域」を組み合わせて、イキイキと活躍できるよう多様なクラスを展開しています。
特徴の1つ目は、「体感型」中心で、座学だけのクラスはほとんどないこと。授業は教室内に留まらず、泊まりの合宿形式で進めることもあれば、ビジネス道場というクラスでは実際にお金を出し事業をして体感でビジネスを学ぶこともあります。
塾でも問題の解説を聞くだけでなく自分で解いて間違ってこそ成長があるように、実社会においても自分で行動できるようになるためには受身だけでは限界があると考えます。
特徴の2つ目は、講師陣です。講師陣は、各領域のナンバー1を多くそろえています。スポーツ、ビジネス、NPO等の各分野トップの生き様を踏まえてクラスを創り込んでいきます。ちょうど先日は、チームワークをテーマに、スポーツの日本代表チームと一緒に泊まり込みで学ぶクラスがありましたが、世界で戦っているチームからはテキストだけでは学べないことがたくさんあります。
講師が現状に甘んじてしまえば、それは受講者にも伝わります。私も含めて講師側は常にチャレンジして各界の一線にいないといけない、つまり、講師としての「覚悟」のようなものが必要だと思っています。

問題の核心を捉えつつ、相手を想う

企業向けには、人材開発事業を行っていますが、従来型研修では研修を受けてもすぐに元に戻ってしまう問題がありました。s09_メインそこで既製の研修の切り売りではなく、コンサルティングと継続型研修を組み合わせるなどして、各社が抱える人材の問題に沿って、オーダーメードの処方箋を提供しています。対症療法だけでなく、問題の核心を捉えた解決策が必要です。
時には、視野を広げるために海外まで出てリーダー育成合宿をすることもあります。
大事にしているのは、個人同様、クライアント企業と所属する人の可能性を信じ、それを広げるために常にベストなことをするというスタンスです。先方が、希望する研修でも意味が薄いと思えば、こちらから否定することもありますが、それも相手を思えば故です。

公教育にも変革の取り組みを

公教育機関への改革支援も行っています。私は、京都大学大学院の非常勤講師も務めていますが、自らが大学内で講義を行うのみならず、各学校の教育改革の支援も行っていこうとしています。一般企業と比較すればどうしても外の風が入りにくく、閉鎖的になりがちな公教育ですが、学校内でも、変化していかねばならないと考える人も少なくありません。とは言え、企業と比べ前例のないことはやりにくく、スピード感もどうしても遅くなるなど、変革は一筋縄ではいかないのが実態です。学内の人たちとしっかり向き合い、少しずつでも教育機関をより良く変えていくべく日々奮闘しています。

行動してこそ、変化は起こせる

こうして、個人、企業、公教育と3つの観点から、単独でなくそれぞれ合わせ技で人の可能性を広げる新しいきっかけを提供していこうとしていますが、それは、野党的に文句をいうだけはなく、まず自分自身が多様な方面から実際に行動してみてこそ、成果は出る、と考えるからにほかなりません。やってみて、うまくいかなければ、また修正してやり直せばよいのです。

「人を育てる」ということ

「人を育てる」ということには、企業、学校、塾でも通じるところがあると考えています。上司が部下と接するのも、先生が生徒と接するのも実は近いところがあります。
前提となる信頼関係を築き、目指すべき方向性を共有し、コミュニケーションを図りながら自主性を促し、同時に、自分自身も決断し、挑戦しなければなりません。「育たない相手が悪い」というスタイルでは通用しません。どうやれば育つのかを組織や相手の状況に応じて、考え、行動し、修正し続けなければなりません。
私は、教育とは、偉い誰かが知らない人に教えるというだけでなく、「本来相手の持っている可能性を引出し、伸ばすきっかけを提供すること」だと思います。それができる人こそが、企業で言えば良い経営者・リーダーであり、塾や学校で言えば良い先生なのだと思います。
ご縁があって、今年の10月の私塾界エグゼクティブセミナーでは、「これまでの指導を劇的に変える『3つの秘訣』」と題し、著書「いま、決める力」も踏まえて、人を動かす、特に現場の先生方の指導力を一歩前に進めるセミナーもさせていただくことになりました。私も、小さいころから塾とはかかわりが多かったので、人を育てるという観点から、塾業界の皆さんへのご支援もできればと思っています。

これから目指すもの

今の取り組みを進めながら、今後は、子供向け教育の拡充、特に小さいころから自分で意思決定をする訓練や、更には途上国での教育基盤の整備など取り組みたいことは山積みです。日々、チャレンジして失敗しての繰り返しですが、多くの方々の可能性を信じて、一歩前に進むための支援を人生を賭けて行い、「世界1の教育機関」を創りたいと思っています。

 

『月刊私塾界』2013年9月号掲載

月刊私塾界2013年9月号(通巻389号)

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巻頭言

ボイジャー1号を知っているだろうか。1977年、太陽系の外惑星および太陽系外の探査のために打ち上げられた。現在、地球と太陽の距離の120倍以上離れた宇宙空間を飛行中だ。データを送信し続け、新たな発見に貢献している。36年も前の技術が活躍しているのだ。何と素晴らしい技術であり、壮大な計画なのだろう。
国際宇宙ステーションは、高度400キロの軌道上を時速27,700キロで飛ぶ。想像を絶するスピードだ。そこでの宇宙遊泳は、微分積分を理解していないとできない。軌道力学の世界だからだ。
グーグル・グラスが実用段階に入った。2011年8月の試作機は重さ3.6キロあった。それが、今年2月には平均的なサングラスより軽くなった。何という進歩の速さであろうか。コンタクトレンズへの研究も進んでいる。
これら科学の進歩、計画の壮大さに比べ、教育の世界はどうだろうか。教えている事柄や教え方は、進歩しているのだろうか。十年一日、いや百年一日の如き世界ではないだろうか。
人類が営々と築いて来た文化遺産は、学ばなければならない。数千年間の哲学史を土台にしなければ、数十年と短い人間の命では、新たな哲学を生み出すことができないことは事実だ。
しかし、100年前と同じ単元、同じカリキュラム、同じ題材で良いのだろうか。教育を受ける側に立ち、マーチャンダイジングする必要がある。それを全国の学習塾が協力し、提案できないだろうか。

(如己 一)

目次

<<NEWS FILE>>
  • 学研HD学習塾の全教研を30億で買収へ
  • ニチイ学館1Qは9%減益
  • 河合塾、私立高の運営に参画
  • 城南進研、映像授業で大学受験指導を開始
  • 4学期制、東大が導入決定

…etc

<<特集>>

株式公開企業の2014年第1四半期決算を読む

<<TOP LEADER>>

株式会社早稲田アカデミー 瀧本司社長

<<シリーズ・著名人に聞く>>

徳谷智史 エッグフォワード株式会社 代表取締役

<<石田 淳のケイゾクはチカラなり>>

ゲスト 須田将啓 株式会社エニグモ 代表取締役

<<連載>>
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  • 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
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  • 第8回 全国模擬授業大会 最優秀賞受賞記念インタビュー
  • 学習塾の空間づくり(21) PIGMA kids(東京都杉並区)
  • 新学習塾業界とM&A(4)
  • [短期集中連載]グローバル人材考
  • 疾風の如く(50)嚶鳴進学塾 塾長 柴田 謙一さん
  • 近況を聞く  株式会社 智翔館 直江 弘明社長
  • ステキ★塾女発見! 「向き合う」から「寄り添う」へ(9)
  • challenge~進化形jukuのカタチ(11) 学び舎fit 谷口 昇太郎舎長
  • 教育サービス業界 企業研究 ベリタス・アカデミー
  • 新米塾長のための部下とサシで行きたいごはん屋さん(2)
  • 芸術見聞録(2)
  • 会社を建て直すためのリーダー養成塾(2)
  • 【図解!】事業承継対策(2)
  • 京都市立 堀川高等学校 学校改革の軌跡(6)
  • 新米塾長のための 学習塾経営基礎講座(4)
  • 中学生からの子育てスクランブル(19)
  • 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿(236)
  • 学習塾フランチャイズ研究所(45)
  • 【新連載】ホントにあった 個人塾経営再建物語
  • さなる@will顧問・清水洋明の今からはじめる大学受験指導(3)
  • 井上郁夫の教室指南(5)
  • 林明夫の「21世紀の地球社会」(97)
  • 新・授業改革を目指して(74)
  • 高嶋哲夫の「塾への応援歌」(136)
  • 未之知也(いまだこれ知らざるなり)(4)
  • 2013教育時評(9) 再考願う!教育現場への競争原理導入
  • 編集後記
  • 【緊急独占インタビュー】
  • Book Review
  • 塾長のためのガジェット講座

塾発のFLENSが教育でのICT利用を再定義する

FLENSで教育界のICT化を

私たちが提供する「FLENS」は、反復学習を支援する学習サービスです。タブレット端末を使って全国の仲間とネットワークでつながり、計算問題などをリアルタイムに競うことで、子どもたちのやる気を引き出します。

私がこのFLENSを着想したのが、2010年のこと。当時は政権が変わり、教育のICT化や脱ゆとりのビジョンが打ち出され、教育が変わっていくという期待感がありました。

(1)生徒の端末には瞬時に順位が表示される

生徒の端末には瞬時に順位が表示される

また、世の中にはiPadが登場し、タブレット端末に可能性を感じたため、タブレットを使って教育業界に貢献したいという想いが強くなっていったのです。

当初はすでにあるサービスを採用しようと探してみましたが、なかなか自分が思うようなサービスに出会うことはできませんでした。どれも管理者にとっては都合がいいものの、先生にとって使いやすいシステムではなかったのです。

このままでは、教育のICT化の動きは、下手をするとブームで終わってしまうかもしれない。そんな危機感もあり、真に先生と生徒に役立つサービスを開発すること、そして教育のICT化を定着させることは、私の使命だと感じるようになっていきました。周囲からは「そんなサービスがあったらいいが、実際には無理だと思う」といった意見もありましたが、私は教育のICT化を進めるドリルの先端として、教育界に風穴を開けたいと思ったのです。

子どものモチベーションを上げ、先生の負担を減らす

子どもたちの勉強に対するモチベーションが上がっているのは、テストが終わった直後。問題の解き方や答えについて、ああでもない、こうでもないと熱心に語り合っているのをよく見かけると思います。しかし、実際に答案を返すのが一週間後だったりすると、その情熱はすっかり冷めてしまいます。一方、私が学習塾の先生として十数年勤務していて感じていたのは、採点業務の非効率さでした。知を提供することが先生の役目なのに、採点のように、機械でもできることを先生がおこなっている。これらを同時に解決したい。そこで私は、子どものモチベーションを上げ、先生の負担を減らすことをFLENSの開発コンセプトとして掲げました。

子どものモチベーションを上げるためにはどうすればいいかと考えたとき、リアルな場で、リアルなライバルと、リアルタイムに競うことが必要だと感じました。今この時に、同じ問題を解いている仲間が全国にいるという息づかいを感じることが、子どもたちをやる気にさせるはずだと思ったのです。

FLENS株式会社の大生隆洋社長

FLENS株式会社の大生隆洋社長

全国の仲間と問題を競えるということは、子どもたちがこのサービスを通じ、世界とつながれるということにもなります。つまり、FLENSは単なる反復学習をするためのシステムではなく、世界と通じる窓として機能させたかったのです。たくさんの友達から刺激を受けることで、子どもは自分の本当にやりたいことに気づけたり、これからの将来を違った角度から見つめられたりできます。

また、現在の教育現場においては「教室の雰囲気作り」が重要だと私は考えていますが、FLENSは、ICTを活用したシステムでありながらコミュニケーションを活性化させる人間味のある学習サービスになっていると思います。

確かな手応えを実感

FLENSは着想から2年でサービスの提供をスタートしました。その頃はまだ、私は前職の学習塾の社員として働いていましたが、12年8 月にはFLEN S 株式会社としてスピンオフ。現在では、湘南ゼミナールをはじめ5社にFLENSを導入いただいています。

ピリオドの間に間違えた問題をチェック

ピリオドの間に間違えた問題をチェック

実際に使用していただいている先生の声として伺うのが、FLENSを使うようになってからは、子どもたちがすぐに集中できるようになったということです。それまでは教室をうろうろする子、すぐに話はじめる子がいましたが、FLENSを使うことでしっかりと集中し、授業もスムーズに進められるようになった。これは、高いモチベーションに子どもたちを導きたい、という私の狙い通りとなっています。

また、ともすれば先生を必要としないeラーニングなどと比較すると、先生たちが主体的に授業運営できているという声が多く聞かれます。子どもたちのモチベーションを引き出し、先生が活き活きと働くための学習サービスを提供したい、という当初の目的を果たせている。開発にはたくさんの苦労がありましたが、FLENSがうまく機能しているなと実感しています。

現在は算数を提供していますが、理科、社会、英語を提供する準備をしています。今後はさらなる普及を目指し、全国の多くの学習塾で活用していただきたいと考えています。そしてゆくゆくは塾だけではなく、学校に導入することも視野に入れているほか、日本だけではなく、世界中にFLENSを普及させたいと思っています。現場の先生方のご意見をうかがいながら、子どもたちのやる気が上がり、先生方から支持されるサービスにしていただきたいと思います。

TOP LEADER Interview|株式会社ナガセ 永瀬昭幸社長

去る5月16日、東進衛星予備校全国大会の「第20回記念大会」にて新たな決意を表明された、永瀬昭幸社長に、東進衛星予備校をはじめ、東進ハイスクール、四谷大塚、東進こども英語塾、イトマンスイミングスクールなど、さまざまな角度から教育に専念してきた観点から、さらに深く話を伺った。

独立自尊の社会・世界に貢献する人財を育成する
株式会社ナガセ 永瀬 昭幸社長

自ら求め自ら考え 自ら判断・実行する 生徒を育てる

株式会社ナガセ・永瀬昭幸社長

―――ナガセグループ全体の教育目標=企業目標である「独立自尊の社会・世界に貢献する人財を育成する」 具体的にはどんな取り組みをされているのですか。

「わたしたちは、『独立自尊の社会・世界に貢献する人財を育成する』ことを教育目標としておりますが、独立自尊とは、自らの人生について信念を持ち、プライドにかけて決めたことを完遂することであると考えています。具体的な生徒指導では、まず生徒自身が、何をどのように勉強するのか自分の頭で考え、計画を立てる。もちろん、我々は生徒が考えたり計画するための材料はたっぷり与えますし、いつまでにそれをやるのか締切を決めて、ちゃんとやるように励ます。生徒の考えや計画が正しかったかどうかは、模擬試験の成績などから、生徒が自分で考えて、問題があれば計画を変更します。そうして自分の責任で、自ら求めるという職場をつくることで、独立自尊の精神が育まれるわけです」

―――”心の教育”に取り組まれて5年目になります。

「これまで長く教育に携わってきてわかってきたのですが、「受験に王道はない」という言葉の通り、志望校に合格しようと思ったら、徹底的に努力をするしかない。だからといって、誰かに強制されて勉強をしても学習効果は低く、目の前の受験に勝てたとしても将来につながりません。一方、自ら求め、自ら考えて勉強すれば取り組みの成果は飛躍的に高まります。自ら求め、自ら考え、自ら判断・実行する生徒を育てるためには、生徒の心をしっかりと鍛えていく必要があると考え、そういう方向でやってきたことが、ここまで成長できた要因だろうと考えています。

先日、雑誌で東大合格者のインタビュー記事を見ましたが、東進出身の生徒は皆、しっかりと未来を見据えて、自らの志や夢を語っていました。あれには私も嬉しくなりました。夢は、努力をするための原動力だと思います。しっかりとした心が備わっていれば努力を継続できるし、私たちの取り組んでいる”心の教育”は、感度のいい子ほど影響を受けていきますから、まずは感度の良い生徒を自ら求める状態に変えていく。そのうえでだんだん”心の教育”が多くの生徒に浸透していけばいいなと思っています」

応用力を身に付け、予習と復習のバランスのとれた学習指導を

四谷大塚の新「予習シリーズ」

四谷大塚の新「予習シリーズ」

―――四谷大塚の予習シリーズが今年改訂されました。大きなポイントとしてどんなことがあげられるでしょう。

「生徒に大きな夢、高い志を持たせ、自ら求める心、自ら考えて勉強に取り組む習慣を身につけさせるには、高校3年間だけでは不十分で、小学校の頃から取り組む必要があると考えています。たとえば、私は、人に教わったことだけを復習して、解答のパターンを丸暗記するだけでは、将来自らの頭で考えて社会で活躍できる人間にはならないだろうと思う。それだけではなく、自分で一生懸命予習して、自分の頭で考えて問題を解いていくという訓練も大切だと思います。もちろん、成績がよくなかった単元の欠点を是正する必要もありますから、予習至上主義でも、復習至上主義でもよくないと考えています。今回の予習シリーズ改訂は、どちらもバランスよくやって、しっかりわかった上で次の単元に入っていくといったカルチャーに切り替えようという試みなんですね。

まず、その5年生の3月までに受験の課程を全部修了させる。そして、6年生の1年間をかけて、それに対する応用力をつけながら志望校対策をしっかりする。基本的には”スモールステップ・パーフェクトマスター”の考え方です。自分にぴったりのレベルからステップアップし、習ったことを確実にマスターする。けれども、勉強というのは面白いもので、はじめて学んだときは多少わからなくても、先の段階へ行って振り返ってみると、こういうことだったのかと理解することもけっこう多い。広い立場からものを見てみると、かえってわかりやすいこともありますから、基礎基本を徹底的に身につけながらも、応用力の高いことも一緒にやっていきます。同時に、毎週行う〝週テスト〞で、授業で学んだ内容を復習する。この取り組みは、どんどん底力が付いてくると思いますよ」

日本の将来のために、世界で活躍できる人財を育成

―――文科省を中心に教育再生実行会議が立ち上がり、入試制度などでの大学改革も進んでいくかと思います。そうなると教育の仕方も大きく変わっていくのではないでしょうか。

「まず大切なことは、”このような人間を育てるんだ”という大きなビジョンを描くことだと思います。そのうえで制度の変化に対しては、積極的に手を打っていきたいと思います。こども英語塾ではすでに、小学生の段階から他の教科も 全部英語で教えることもしています。英語は、一つの科目として学ぶだけではなく、数学や理科や社会も英語で学ぶことで、本当に使える英語になっていくと思っています。

東進USAオンライン講座にしても、時差による弊害を取り払った仕組みを作り上げましたので、全国の塾のみなさんにも提供させていただきたいと思っています。「何を使って英会話を勉強するか」と考えるとき、金額が安いかどうかで決めるのは、私は邪道だと思う んです。言葉というのはカルチャーですから、アメリカのカルチャーを学びたいのであれば、アメリカのネイティブと話をすべき。旅 行で話が通じるということだけで満足されるのであればそれでけっこうですが、ビジネスでは一切通用しませんから。ビジネスで、億 単位のお金を動かすような仕事をするつもりなら、アメリカのカルチャーと密接に関わらないと無理だと思います。

日本の将来を考えると、世界で活躍できるような人財を育成していかないと、もうこの国は立ち行かない。だから、そうした教育を、公立学校がやるのか、大学がやるのか、民間教育者がやるのか、などという議論は不要だと思います。どんな人財を育てていくのか、しっかりとした目標を掲げ、それを教育に携わる全ての人間だけでなく、実業界も巻き込んで、日本全体で取り組んでいく。その中でしっかりとした人財を育成できるところが、日本国民が頼りとする教育機関になっていくのだと思います。私は、全国の塾の先生方と協力しながら、何としてもこの大仕事をやり遂げたいと思っています」

すべて無料で受けられる小・中・高の全国統一テスト

すべて無料で受けられる小・中・高の全国統一テスト

日本の将来を担う、リーダーを育成する

―――6月2日に、小学1年生から6年生の全学年対象の全国統一小学生テストがありましたが、こちらの反応はいかがでしたか。

「全国統一小学生テストは、受験者数は毎回10万人を突破しています。また、今年から全国統一中学生テストもスタートし、今回は11 月4日(月)に実施します。これで、全国統一高校生テストと合わせて、小中高の全国統一テストが揃うことになります。

全国のたくさんの塾の先生方に趣旨に賛同いただき参加をしていただいており ます。全国の才能ある生徒 諸君を発掘し、年月をかけて育てていく。日本の将来を担う人財を発掘・育成することにつながる取り組みであると確信していますので、これからも一生懸命取り組んでいきます」

―――今後の目標はなんでしょう。

「今年度、東大現役合格者は600名になり、現役合格者の3・3人に1人が東進生です。難関大学を中心に、東進生の占めるシェアが高まってきました。将来の日本を引っぱっていくような、たくさんのリーダー候補生をお預かりしているのですから、日本の未来を明るいものにするために、教育に携わる人間の役割、責任は極めて大きいと考えています。

東進ハイスクール、東大現役合格600名達成のポスター

東大現役合格600名達成のポスター

国力とは、国民一人ひとりの人間力の総和です。私は、生徒の人間力を高めることで、日本の将来を拓いていくことが、教育機関としての使命であると考えています。

私どもだけではできないことであっても、日本全国の先生方と力を合わせれば、日本全体を巻き込んだ教育運動を起こすことができると確信しています。全国のたくさんの先生方に支えられ、毎年開催している東進衛星予備校全国大会も今年で20回の節目を迎えることができました。これからも、先生方にご指導頂きながら、お預かりした生徒全員を伸ばすシステムを作りあげられるよう一生懸命頑張ってまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます」

『月刊私塾界』2013年8月号掲載