Category: 月刊私塾界

月刊私塾界2023年7月号(通巻507号)

巻頭言

 初夏の安曇野に「研成義塾」を訪ねた。この私塾は、明治3(1870)年旧東穂高村に生まれた井口喜源治が設立した。彼は穂高小学校で教師をしていたが、同28(1895)年に不当な排斥運動により公職を追われ、同31(1898)年、「研成義塾」を設立した。

 設立趣意書には「吾塾は感化を永遠に期す」とある。教師は井口一人。小学校を出たばかりの生徒たちに、中学校レベルの英語、数学、漢文、キリスト教聖書を教えた。昭和7(1932)年に脳溢血で倒れるまで、34年間、800余人の教え子を世に送り出した。塾生には彫刻家 荻原守衛(碌山)や外交評論家 清沢きよしがいる。

 清沢洌は、太平洋戦争下に書き、戦後公刊された「暗黒日記」で知られる。また、彼は独学の士としても有名だ。研成義塾で学んだ後、明治40(1907)年、17歳の時、研学移民となり渡米した。病院の清掃夫、デパートの雑役などを務めながらタコマ・ハイスクール、ワシントン大学などで学んだ。

 教育未来創造会議で4月第二次提言が取りまとめられた。今後おそらく中央教育審議会など幾つかの会議体から、色々な提言が出されるものと思われる。

教育は国家百年の大計であり、21世紀の日本の礎だ。 しかし、教育は工業製品とは異なる。この教科書を用いて、あのカリキュラムを使用して教えれば、このような人間が出来上がるというものではない。自ら学ぶ態度を身に着けることが重要だ。「独学の精神」の涵養である。

(如己一)

目次

  • 6 CatchUp1 エデュケーショナル・デザイン株式会社「デジタネ」で、すべての子どもたちにプログラミング教育を!
  • 15 Special Report ① ショウインが掲げる自立学習と歴史保存の活動とその想い
  • 18 HOT TOPICS ① サインウェーブがESATーJ対策セミナーを開催。 その実態に迫る
  • 20 HOT TOPICS ②【特別連載】教育業界の2025年問題を考える〈中編〉
  • 24 挑む私学 神田女学園中学校高等学校
  • 27 目次・巻頭言
  • 28 NEWS ARCHIVES
  • 56 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 57 【特集】【緊急対談】
  • 〝こどもまんなか社会〟実現への道筋 教育と福祉が交わる新たな取り組みに迫る
  •   内閣府特命担当大臣 小倉 將信 氏 × 公益社団法人 全国学習塾協会 会長 安藤 大作 氏
  • 68 Special Report ② 私塾界リーダーズフォーラム 2023S/S
  • 80 Special Report ③ 第16回 全国模擬授業大会 チョーク一本で教育改革を!
  • 86 TOP LEADER Interview ゲーミフィケーションの視点から、 会社経営や教育にイノベーションを。 KECグループ
  • 99 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿(353)
  • 100 疾風の如く(168) 学習塾SMILE─S(愛知県) 塾長 原 大輔 さん
  • 102 For Whom the 塾 Tolls(25)
  • 104 新米塾長のための「学習塾経営基礎講座」(122)
  • 106 白書界隈徘徊話(100)
  • 108 自ら動き出すチームにする方法(106) 中谷彰宏
  • 110 塾の家計簿(74)
  • 112 シン・ジュクジン(20)
  • 113 芸術見聞録(120)
  • 114 わが子、就学中(28)
  • 115 塾長の机
  • 116 為田裕行の「教育ICT行」(100)
  • 117 10¹⁵ PETA(26)
  • 118 現代学習塾経営概論(4)
  • 119 Opinion from School(49)
  • 120 林明夫の「歩きながら考える」(215)
  • 122 新・授業改革を目指して(133) 石川幸夫
  • 124 私塾界インサイト(64)
  • 128 塾はどこから来たか、塾は何ものか、塾はどこへ行くのか―そして私(20)
  • 130 咲かせよ桜(101) 小林哲夫
  • 134 論点2023(7) ファイナンス教育とは
  • 138 編集後記
  • 140 Book Review
  • 142 塾長のためのガジェット講座

月刊私塾界2023年6月号(通巻506号)

巻頭言

 茨城県つくば市にある産業技術総合研究所において、非常に正確な時計が開発されている。イッテルビウム光格子時計だ。現在主に使用しているセシウム原子時計の1000倍の精度が出せる。

 1秒の定義は、長い間地球の自転を基にしてきた。ところが地球の自転は徐々に遅くなっていること、季節により速度が異なることなどから、1956年から地球の公転が基準となった。

 それがセシウム原子時計の開発により、67年から変更された。1億年に1秒の誤差しかないからだ。この正確さをもって地球の自転速度を計測し、72年から25回閏秒を用い、時刻を調整してきた。1000億年に1秒の誤差しかないイッテルビウム光格子時計。何に役立つのだろうか。

 貢献が期待されていることの一つに、長さを正確に測定できるようになることがある。例えば位置測定だ。GPS人工衛星には原子時計が搭載され、時刻を示す電波を発信している。これを地上の受信機で受け、その時刻の差から位置を測定する。現在の測定誤差は数センチから数十センチ(日常使用されている車載GPSは誤差数メートル。衛星の原子時計がポータブルタイプなため)。それが、数マイクロメートル(千分の一ミリ)になる。そうなると微細な地殻変動も宇宙から計測でき、火山噴火などを予測できる。地震の予知に発展する可能性もある。 教育における最先端とは何であろうか。その先に何を見詰めながら進んでいるのであろうか。

(如己 一)

月刊私塾界2023年5月号(通巻505号)

巻頭言

 4月出雲を旅した折、三保神社を訪れた。全国各地にあるえびす神社の総本社だ。その近くにある大正レトロ感漂う「青石畳通り」を散策しているときだった。古い民家の軒先に燕の巣を発見した。巣の中で囀る雛たちを仰ぎ見ながら、長い間燕の巣を見なかったなーと感傷に浸っていた。ふと気付くと、沢山の燕が、長い歴史を持つ港町を、勢いよく飛び回っていた。巣もあちらこちらにあった。何か豊かなものを感じた。

 近年、燕は減少している。水田の減少により、餌となる昆虫が減ってしまったり、巣材となる良質の泥が減少したことが要因だ。また、住宅が高層化し、建材が変化し、土壁やモルタル壁が減り、泥が付きにくいタイルなどに替わった。また、家の軒先が狭くなったことも影響している。

 自然や環境の変化以外に、悲しくなるような要因もある。人が巣を壊してしまうのだ。巣の周りに落ちる糞、その臭いと雛たちの鳴き声を嫌い、人間が除去してしまうのだ。天敵であるカラスの増加の次に来る原因である。

 古来より、燕は農作物を食べる害虫を餌とすることから、益鳥とされてきた。また、春を告げる渡り鳥として、「巣を作ると商売が繁盛する」など、身近な鳥として親しまれてきたのに、である。多くの人々が燕を害鳥として見るようになってしまった。

 これが減少の大きな要因とは、寂しい限り。段ボールで糞よけを設置したり、蒲鉾の板などで巣台を作ったり、共存の知恵を絞りたいものである。 

(如己 一)

目次

  • 6 CatchUp1 株式会社エデュケーショナルネットワーク 二つのオンラインコンテンツで生徒と塾を後押し
  • 8 CatchUp2 株式会社ウイングネット 完全個別最適化に向けウイングネットが進化中
  • 10 CatchUp3 株式会社スタディラボ 約1年の実証販売を終えたスタディワンが本格始動
  • 12 CatchUp4 ワークスモバイルジャパン株式会社 集客と生徒・保護者対応の悩みはLINE WORKSで解決!?
  • 14 CatchUp5 リード進学塾 スピーディーかつきめ細やかな対応がうれしいFLENSの「School Manager」
  • 16 CatchUp6 株式会社ジーニアス 開校初年度から東北大に3名が合格! 高校部門の悩みを解決した東進衛星予備校
  • 18 CatchUp7 株式会社SmartWorx 幾多の塾を再生し続ける SmartWorXの学習塾向け営業管理システム「塾アゲ!」
  • 26 HOT TOPICS【特別取材】受験生の合否を分かつ「究極の面接」の実態に迫る!
  • 30 挑む私学 星の杜中学校・高等学校
  • 35 目次・巻頭言
  • 36 NEWS ARCHIVES
  • 64 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 65 【特集】教育ICT考2023 S/S〈前編〉
  • 92 TOP LEADER Interview 成すべきことは、多くの民間教育機関が 子供たちの未来のためにスクラムを組むこと。 株式会社 創造学園
  • 104 企業研究(125) 株式会社F学
  • 107 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿(351)
  • 108 新米塾長のための「学習塾経営基礎講座」(120)
  • 110 白書界隈徘徊話(98)
  • 112 自ら動き出すチームにする方法(104) 中谷彰宏
  • 114 塾の家計簿(72)
  • 116 シン・ジュクジン(18)
  • 117 芸術見聞録(118)
  • 118 わが子、就学中(26)
  • 119 塾長の机
  • 120 為田裕行の「教育ICT行」(98)
  • 121 10¹⁵ PETA(24)
  • 122 現代学習塾経営概論(2)
  • 123 Opinion from School(47)
  • 124 林明夫の「歩きながら考える」(213)
  • 126 塾ソムリエの講師研修指南 西村則康(名門指導会代表 塾ソムリエ)(49)
  • 128 私塾界インサイト(62)
  • 132 塾はどこから来たか、塾は何ものか、塾はどこへ行くのか―そして私(18)
  • 134 咲かせよ桜(99) 小林哲夫
  • 138 論点2023(6) Web3.0
  • 142 編集後記
  • 144 Book Review
  • 146 塾長のためのガジェット講座

 

月刊私塾界2023年4月号(通巻504号)

巻頭言

 人生は常に岐路に立っている。「やる/やらない」の。
「やる」に進めば、失敗のリスクがついてくる。「やらない」に進めば、成功を収めることはできない。
 進む道は勿論「やる」方向だ。たとえ失敗しても、次の「やる」に進む。再び失敗しても、「やる」に進む。そのように次から次へと「やる」道へ進む。「やらない」道へは決して進まない。
「やらない」方向に成功はない。「やる」方向には失敗もあるが、成功の可能性は常にある。成功確率がゼロか数パーセントかだ。答えは明白。確率が少しでもある方へ進む。
 しかし、人間は往々にして「やらない」方を選ぶ。失敗を恐れて。格好悪い姿を晒したくない。言い訳はさまざまだ。そして無限にある。だが、それでは成功を掴むことはできない。
 どんなに苦境に立たされても、「失敗しない道」ではなく、「リスクはあっても成功する確率がある道」を選んで、頑張り続けることが大切だ。
 このことはご自身の仕事、生徒たちの勉強にも言えることではないだろうか。
 この春、桜が咲いた生徒たちは怠け心や失敗の恐怖に果敢に立ち向かい、成功を収めたのではないだろうか。
 読者諸氏も間近に見た生徒たちから学び、常に「やる」を選択し、厳しい学習塾業界を突き進んでいただきたい。
 そのような読者を本誌は全力で応援していく所存だ。

(如己 一)

目次

  • 6 CatchUp1 株式会社花形 続々と総合型選抜対策サービスを拡充「総合型選抜専門塾AOI」の展望を聞く
  • 8 CatchUp2 ネスグローバル株式会社 合格率100%を保証するネス英検塾
  • 10 CatchUp3 株式会社白沢プランニング 独自の取り組みを交え岡山・山陰に東進の存在価値を高める
  • 16 HOT TOPICS【特別掲載】大学入試問題は、なぜ、時代を映す鏡なのか?
  • 24 挑む私学 香川誠陵中学校・高等学校
  • 27 目次・巻頭言
  • 28 NEWS ARCHIVES
  • 58 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 60 【特集】オンライン座談会 私塾界Outsight
  • 72 Special Report SRJがオンラインセミナーを開催 付加価値をもたらす最強のツールを提供
  • 78 TOP LEADER Interview 「中学受験の先も伸びる地頭がいい子」を育てる。それが日能研の永遠のテーマ。 株式会社 日能研関東
  • 88 企業研究(124) 一般社団法人スポーツひのまるキッズ協会
  • 90 現代学習塾経営概論(新連載)
  • 91 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿(350)
  • 92 疾風の如く(166) 学習塾WeeD(京都府) 代表 野田 宣之 さん
  • 94 For Whom the 塾 Tolls(23)
  • 96 新米塾長のための「学習塾経営基礎講座」(119)
  • 98 白書界隈徘徊話(97)
  • 100 自ら動き出すチームにする方法(103) 中谷彰宏
  • 102 塾の家計簿(71)
  • 104 シン・ジュクジン(17)
  • 105 芸術見聞録(117)
  • 106 わが子、就学中(25)
  • 107 塾長の机
  • 108 為田裕行の「教育ICT行」(97)
  • 109 10¹⁵ PETA(24)
  • 110 1981(48)
  • 111 Opinion from School(46)
  • 112 林明夫の「歩きながら考える」(212)
  • 114 塾ソムリエの講師研修指南 西村則康(名門指導会代表 塾ソムリエ)(48)
  • 116 私塾界インサイト(61)
  • 120 塾はどこから来たか、塾は何ものか、塾はどこへ行くのか―そして私(17)
  • 122 咲かせよ桜(98) 小林哲夫
  • 126 論点2023(5) 活用進むチャットボット
  • 130 編集後記
  • 132 Book Review
  • 134 塾長のためのガジェット講座

月刊私塾界2023年3月号(通巻503号)

巻頭言

「合格おめでとう」の声に沸き立っていることと思う。
 新年度生募集も順調と推察する。
 最近ふと50年余り前のことを思い出し、少し調べた。それは、当時の世界的シンクタンク「ローマ・クラブ」から出された、或る報告書である。題して「成長の限界」(1972)。人類の未来に関して、次のように書かれている。「人類が、このまま成長を続けていけば、人口爆発、食糧危機、資源枯渇、エネルギー不足、環境破壊などの『地球規模の諸問題』によって、100年以内に、経済の成長は限界に達し、突然の制御不能な人口減少が生じるだろう」と。
 それから幾星霜。これら人類が抱えた課題は、解決の方向に向かっているだろうか。否、それどころか悪化の一途を辿っているようにさえ見える。
 では、人類は何もせず、手を拱いていたのだろうか。これも、否である。様々な改善策を採ってきた。多大な努力も払ってきた。しかし、どれ一つとして、解消する方向に進んでいる、とは言い難い。
 何故か。田坂広志多摩大学名誉教授は、「知の変革」が進まなかったからだ、と述べる。知のパラダイムシフトができなかったのである。
 学習塾の世界ではどうだろか。生徒の学力を、必ず上げることができるようになっただろうか。生徒募集は、常に上手くいくようになっただろうか。これら学習塾の根本的な課題は、何一つ解決する方向にないようにみえる。
 ここにも「知の変革」が必要である。

(如己 一)

目次

  • 6 CatchUp1 明修塾+KEC Miriz 明修塾が小学生を集客できた理由「プロクラ」でプログラミングコースを提供  入試対策の可能性
  • 8 CatchUp2 郡山俊英スクール+スタディサプリ 高校生部門をスタディサプリで指導する郡山俊英スクール そのユニークな取り組みとは
  • 10 CatchUp3 株式会社木谷心館 新体制になったことで生徒の演習量も増え 社員同士のつながりも強化
  • 12 CatchUp4 株式会社ナガセ 東進が推進する情報教育
  • 14 CatchUp5 一般社団法人教育アライアンスネットワーク(NEA) 今年のNEAの展望 一塾ではできないことを共創する
  • 16 CathcUp6 株式会社明光ネットワークジャパン+株式会社サインウェーブ 英語の成績が悪くてもスピーキング力を高められるELST®
  • 22 挑む大学 北海道大学 北海道が抱える課題に挑み 大学としての経営力を高める
  • 28 HOT TOPICS ①【特別連載】これからの教育業界では学力の定義が大きく変わる(後編)
  • 32 挑む私学 京華中学・高等学校 好きなことに熱中できるのが男子校の醍醐味
  • 35 目次・巻頭言
  • 36 NEWS ARCHIVES
  • 64 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 65 【特集】株式公開企業塾2023年2・3月期 第3四半期決算を読む
  • 80 HOT TOPICS ② 注目の幼児教育「ハイスコープ・カリキュラム」に迫る
  • 86 TOP LEADER Interview 学習塾の存在価値を高めるために 公益社団法人 全国学習塾協会
  • 96 企業研究(123) 株式会社エジソンクラブ
  • 99 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿(349)
  • 100 疾風の如く(164) スタディクラブ study-clubworks(埼玉県)代表 岡元 真人 さん
  • 102 For Whom the 塾 Tolls(22)
  • 104 新米塾長のための「学習塾経営基礎講座」(118)
  • 106 白書界隈徘徊話(96)
  • 108 自ら動き出すチームにする方法(102) 中谷彰宏
  • 110 塾の家計簿(70)
  • 112 シン・ジュクジン(16)
  • 113 芸術見聞録(116)
  • 114 わが子、就学中(24)
  • 115 塾長の机
  • 116 為田裕行の「教育ICT行」(96)
  • 117 10¹⁵ PETA(23)
  • 118 1981(47)
  • 119 Opinion from School(45)
  • 120 林明夫の「歩きながら考える」(211)
  • 122 新・授業改革を目指して(131) 石川幸夫
  • 124 私塾界インサイト(60)
  • 128 塾はどこから来たか、塾は何ものか、塾はどこへ行くのか―そして私(16)
  • 130 咲かせよ桜(97) 小林哲夫
  • 134 論点2023(4) 大切なリードナーチャリング
  • 138 編集後記
  • 140 Book Review
  • 142 塾長のためのガジェット講座

月刊私塾界2023年2月号(通巻502号)

 長野県善光寺平にある小さな町、小布施をご存じだろうか。訪れた人は誰でも、他の町との違いに気付く。何故か。
 筆者は二十数年前、初めて訪ねた。目的は、小布施ワイナリーを訪問することだったので、町づくりのことを全く知らなかった。にもかかわらず、町を散策していて、不思議な居心地の良さを感じ、佇まいを堪能していた。伝統的町並みを保存している場所は、全国に沢山ある。何か所も、何度も行ったことがある。その中には観光地として名声が轟いている町もあった。だが、小布施はそれらの場所とは全く異なる雰囲気を醸し出していた。その時は、「修景事業」(景観を修復する)のことなど何も知らなかったというのに。
 小布施の町づくりは、理念が明確だ。例えば「住民主体のまちづくり」「外はみんなのもの、内は自分たちのもの」。簡単なようで、実践することは難しい。更にその理念を具現化する論理が構築され、技術やノウハウを獲得する努力を町全体で行ってきた。1981年に始まる長年の積み重ねの成果だ。
 皆さんの学習塾にも経営理念、教育理念があると思う。日々の授業はそれと繋がっているだろうか。教育理念からカリキュラムが導かれ、そのカリキュラムをベースにシラバスが作成されているだろうか。教育理念から非常勤講師の教え方まで、一貫した論理があるだろうか。そしてそれらが不断の努力で、しかも全員で、日々ブラッシュ・アップされているだろうか。独自性、信頼性はここから生まれるものと考える。 

(如己 一)

目次

  • 6 CatchUp1 株式会社マイスタディ 入試問題対策を4月から「動画でわかる中3の4月から始める高校入試問題集」が広げる 入試対策の可能性
  • 8 CatchUp2 一般社団法人教育アライアンスネットワーク(NEA) NEAの新代表理事が語る教育サービスの展望と未来
  • 12 HOT TOPICS ①【特別連載】これからの教育業界では学力の定義が大きく変わる(前編)
  • 16 挑む私学 神戸龍谷中学校・高等学校 創立100周年を迎えた神戸龍谷、2023年度より新コース制を導入
  • 19 目次・巻頭言
  • 20 NEWS ARCHIVES
  • 49 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 50 【特集】『学習塾白書2022』を読む
  • 68 TOP LEADER Interview
  • 78  HOT TOPICS② ニュース作文コンクール受賞者東京の部表彰式 2022
  • 83 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿(348)
  • 84 疾風の如く(163) まなびコーチング(東京都) 代表 長尾 圭 さん
  • 86 For Whom the 塾 Tolls(21)
  • 88 新米塾長のための「学習塾経営基礎講座」(117)
  • 90 白書界隈徘徊話(95)
  • 92 自ら動き出すチームにする方法(101) 中谷彰宏
  • 94 塾の家計簿(69)
  • 96 シン・ジュクジン(15)
  • 97 芸術見聞録(115)
  • 98 わが子、就学中(23)
  • 99 塾長の机
  • 100 為田裕行の「教育ICT行」(95)
  • 101 10¹⁵ PETA(22)
  • 102 1981(46)
  • 103 Opinion from School(44)
  • 104 林明夫の「歩きながら考える」(210)
  • 106 塾ソムリエの講師研修指南 西村則康(名門指導会代表 塾ソムリエ)(47)
  • 108 私塾界インサイト(59)
  • 112 塾はどこから来たか、塾は何ものか、塾はどこへ行くのか―そして私(15)
  • 114 咲かせよ桜(96) 小林哲夫
  • 118 論点2023(3) LTVとは
  • 122 編集後記
  • 124 Book Review
  • 126 塾長のためのガジェット講座

月刊私塾界2023年1月号(通巻501号)

巻頭言

謹賀新年

「巨人の肩の上に乗る」という比喩をご存知だろうか。

先人たちが積み重ねてきた知見を利用して知的進歩を遂げることを指す。

 経営もそうだ。人類が営々と積み上げてきた叡智を利用しない手はない。

 人間の寿命が5000年もあるのであれば、一人がゼロから積み上げることができるかもしれない。しかし、残念ながら僅か100年以下でしかない。

 勿論学習塾の経営も同様である。経営理論を学ぶ必要がある。

 更に複雑化した世界では、分野を狭い範囲に絞り、専門化された知見を身につけるだけでは、解決が難しい課題が多くなっている。

 例えばアマゾン。創業者のジェフ・ベゾスは、物流と倉庫の生産性を向上させるために、トヨタ自動車のものづくりの仕組みを研究した「リーン生産システム」の手法を導入した。このアイデアを「リーン・シンキング」という本から学んだ。

 自分たちのビジネスは小売業であると思い込まずに、製造業のアイデアも取り入れることで、効率的な配送の仕組みを実現させた。

 経営学者のドラッカーは、経営は「リベラルアーツ(教養)」であると考え、歴史、社会学、心理学、哲学、文化、宗教などから得られる学際的な教訓を、経営のアドバイスに生かした。

 知識の幅を広げ、教養を深める最良の手段の一つが読書である。

 1年の計は元旦にあり。 読書の年にしよう。

(如己 一)

目次

  • 16 CatchUp1 合同会社CROP 塾にしかできない放課後等デイサービス「クラップ」
  • 18 CatchUp2 STUDY PLACE翔智塾 保護者も安心!LINE WORKSのログ管理機能でトラブルを未然に防止
  • 20 CatchUp3 AIC鷗州グループ 高い学習効果が得られるAI搭載の英語学習システム「マグニラーン」
  • 22 CatcUp4 株式会社アイトップ 東進のコンテンツを活かし切ってさらなる合格者を
  • 26 HOT TOPICS 教育業界が〈卯年〉に飛躍するために必要なこととは?
  • 32 挑む私学 早稲田摂陵中学校・高等学校 「Wコース」の設置によって早大との連携をさらに深める早稲田摂陵
  • 35 目次・巻頭言
  • 36 NEWS ARCHIVES
  • 64 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 65 【特集】 編集部が選んだ 2022年重大ニュース 注目のキーワード2023
  • 78 新春 ─上場記念─スペシャルインタビュー 個人塾からスタートした「Comiru」の軌跡
  • 82 Moonshot Review 塾市場 2 倍計画は動き出している ~攻めの DX を実現するための基幹 / 校務システム刷新の必要性
  • 84 TOP LEADER Interview  100年の経験とノウハウを活かし、  駿台ならではの新たな領域を開拓。 学校法人駿河台学園
  • 96 教育サービス業界 企業研究(122) ラクスル株式会社
  • 99 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿(347)
  • 100 疾風の如く(162) 株式会社 プラウ プラウ経験型教育塾 塾長 北山 耕平さん
  • 102 For Whom the 塾 Tolls(20)
  • 104 新米塾長のための「学習塾経営基礎講座」(116)
  • 106 白書界隈徘徊話(94) 西村克之
  • 108 自ら動き出すチームにする方法(100) 中谷彰宏
  • 110 塾の家計簿(68)
  • 112 シン・ジュクジン(14)
  • 113 芸術見聞録(114)
  • 114 わが子、就学中(22)
  • 115 為田裕行の「教育ICT行」(94)
  • 116 塾長の机
  • 118 1981(45)
  • 119 Opinion from School(43)
  • 120 林明夫の「歩きながら考える」(209)
  • 122 新・授業改革を目指して(130) 石川幸夫
  • 124 私塾界インサイト(58)
  • 128 塾はどこから来たか、塾は何ものか、塾はどこへ行くのか―そして私(14)
  • 130 咲かせよ桜(95) 小林哲夫
  • 134 論点2023(1) リベラルアーツとは
  • 138 編集後記
  • 140 Book Review
  • 142 塾長のためのガジェット講座

月刊私塾界2022年12月号(通巻500号)

巻頭言

 はや師走。
 正に光陰矢の如し、である。
 この季節になると前記のことわざが口をつく。他の季節にそれを耳にすることは、まず無い。
 何故か?
 年の瀬を迎えると、この1年を振り返り、それを元に来年の希望を抱くからではないだろうか。
 貴塾は次年度に向けどのような新たな施策を練っているのであろうか。
 変化が早いこの時代、前年度と同様のことを行なっていては、それは退歩になる。講座、教材、カリキュラム、指導方法などは如何であろうか。
 他業種を見渡して欲しい。どの業界、どの企業も常に新製品、新商品を市場に投入し続けている。
 学習塾業界も決して例外ではない。学習指導要領は変化し続けている。英語4技能、プログラミング、そして情報などに対し対応できているであろうか。
 また、新型コロナウイルス禍により人々の生活様式や行動態様は変わってきている。
 生徒、保護者のウォンツやニーズに応え続けなければならない。そのためには彼ら・彼女らが発するそれらに対し、常に耳を澄ませている必要がある。それなくしてしては市場に取り残されてしまう。
 企業は変化対応業といわれる所以である。
 コロナ禍も第8派に見舞われている。ゆめゆめ対策に怠りは無いと推察するが、十分注意し、また健康に留意し、冬期行事を無事成功させていただきたい。

(如己 一)

目次

  • 6 CatchUp1 株式会社英俊社+株式会社成学社 膨大な過去問のデータベースから教材化 「KAWASEMI」は問題集作成のセオリーを変えた
  • 8 CatchUp2 株式会社インフィニットマインド 読解力を鍛える『読む蔵』が低学年版を来春リリース
  • 10 CatchUp3 株式会社むぎ進学教室 東進本部の運営モデルを実践することで様々な分野が改善
  • 12 CatcUp4 株式会社やる気スイッチグループ やる気スイッチグループが大切にしてきた「自分力」とは
  • 14 CatchUp5 志学会 課題先進地域で最新鋭の教育ICTを利活用
  • 16 Moonshot Review 塾市場 2 倍計画は動き出している ── デジタルで実現される新たな事業モデル
  • 22 HOT TOPICS① 小学校の英語教育はICTとデータ活用で変わる
  • 24 HOT TOPICS② 京進、日本初の海外大学進学準備校開校により、 グローバル人材育成を加速
  • 26 HOT TOPICS③ 【緊急提言】今、教育関係者に求められる意識改革とは?  2030年 これだけ変わる教育業界〈後編〉
  • 36 挑む私学 西大和学園中学校・高等学校 東大合格者急増中の西大和学園がさらなる高みへ
  • 39 目次・巻頭言
  • 40 NEWS ARCHIVES
  • 68 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 69 【特集①】 株式公開企業塾 2023年2・3月期  第2四半期(2Q)決算を読む 
  • 78 【特集②】塾長の銘
  • 84 〈特別企画〉通巻500号記念 特別インタビュー 株式会社開倫塾 代表取締役 林明夫 氏
  • 88 Special Report  3年ぶりに開催されたウイングネットセミナー  テーマは「子どもの力を育てる~現場力の育成~」
  • 92 教育サービス業界 企業研究(121) ワークスモバイルジャパン株式会社
  • 95 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿(346)
  • 96 疾風の如く(161) 尋真塾 塾長 池上 眞さん
  • 98 For Whom the 塾 Tolls(19)
  • 100 新米塾長のための「学習塾経営基礎講座」(115)
  • 102 白書界隈徘徊話(93) 西村克之
  • 104 自ら動き出すチームにする方法(99) 中谷彰宏
  • 106 塾の家計簿(67)
  • 108 シン・ジュクジン(13)
  • 109 芸術見聞録(113)
  • 110 わが子、就学中(21)
  • 111 塾長の机
  • 112 為田裕行の「教育ICT行」(93)
  • 113 10¹⁵ PETA(21)
  • 114 1981(44)
  • 115 Opinion from School(42)
  • 116 林明夫の「歩きながら考える」(208)
  • 118 塾ソムリエの講師研修指南 西村則康(名門指導会代表 塾ソムリエ)(46)
  • 120 私塾界インサイト(57)
  • 124 塾はどこから来たか、塾は何ものか、塾はどこへ行くのか―そして私(13)
  • 126 咲かせよ桜(94) 小林哲夫
  • 130 論点2022(12) 遠隔授業
  • 132 編集後記
  • 134 Book Review
  • 136 塾長のためのガジェット講座

月刊私塾界2022年11月号(通巻499号)

巻頭言

 2年半程前のことである。
 新型コロナウイルス感染症対策として、多くの学習塾がオンライン授業を導入して数カ月が経過した頃のことだ。
 生徒や保護者にリアルでの授業かオンラインでのそれを選択していただくこととした。通塾の負担や感染症への不安解消から、オンライン授業を選ぶものと思っていたが、実際には殆どの家庭がリアルでの授業を選択した。
 非常に不思議に感じたとともに違和感を抱いた。
 最近になり、その疑問への解答がわかった。
 東北大学加齢医学研究所の川島隆太所長曰く、コミュニケーションが深まってお互いを理解し、共感するようになると、脳のある部分の活動が同期する現象が起きる。
 対面で会話をしているときには話が盛り上がるとどんどん同期が高まっていくのに対して、オンラインの場合には、会話は続いているのに、全く同期しないという。
 なるほど、経験的にこのことを理解していたため、リアル(対面で)の授業を選択したのだ。
 同所長は更に興味深いことを述べる。
 人間は感情を伝えるのには、口元を中心とした顔全体の表情が必要になる。
 対面のやり取りでも、マスクをしていると、脳の共感が起こりづらいそうだ。
 如何であろう。読者諸氏の学習塾では、マスクをして授業を実施してるのではないだろうか。
 一考の余地はありそうだ。

(如己 一)

目次

  • 6 CatchUp1 株式会社KEC Miriz ミライズが描くミライの教育
  • 8 CatchUp2 株式会社学書 国内外で存在感を増す学書の戦略
  • 10 CatchUp3 株式会社名大SKY 小学生の集客のフックに! 良心的な価格帯も嬉しい「スマイル将棋」
  • 12 CatcUp4 株式会社ライトハウスエデュケーション 地方の高校生も安心して留学できる充実のサポートサービス
  • 14 CatchUp5 株式会社Progress AI・プログラミングと金融リテラシーが学べる「サイバース」
  • 16 CatchUp6 株式会社エデュマン 高校との連携、様々なイベントの開催 すべては岡山の教育レベルを上げるために
  • 20 HOT TOPICS1 SRJ経営勉強会 2022 in TOKYO──3年後のさらなる業界激動を見据えた先手必勝経営とは?
  • 24 HOT TOPICS2 【緊急提言】今、教育関係者に求められる意識改革とは? 2030年 これだけ変わる教育業界〈前編〉
  • 32 挑む私学 須磨学園中学校高等学校 女子校から共学、そして進学校へ。継続的改善を続ける須磨学園
  • 35 目次・巻頭言
  • 36 NEWS ARCHIVES
  • 64 【緊急アンケート】次年度の授業料は値上げしますか?
  • 66 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 67 【SpecialReport】私塾界リーダーズフォーラムONLINE 2022A/W
  • 85 TOP LEADER Interview 進学実績よりも個々の成長にフォーカスした教育を。 KEC教育グループ
  • 100 教育サービス業界 企業研究(120) 株式会社 80&Company
  • 103 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿(345)
  • 104 疾風の如く(160) アイデア数理塾 塾長 油谷 拓哉さん
  • 106 For Whom the 塾 Tolls(18)
  • 108 新米塾長のための「学習塾経営基礎講座」(114)
  • 110 白書界隈徘徊話(92) 西村克之
  • 112 自ら動き出すチームにする方法(98) 中谷彰宏
  • 114 塾の家計簿(66)
  • 116 シン・ジュクジン(12)
  • 117 芸術見聞録(112)
  • 118 わが子、就学中(20)
  • 119 塾長の机
  • 120 為田裕行の「教育ICT行」(92)
  • 121 10¹⁵ PETA(20)
  • 122 1981(43)
  • 123 Opinion from School(41)
  • 124 林明夫の「歩きながら考える」(206)
  • 126 新・授業改革を目指して(129) 石川幸夫
  • 128 私塾界インサイト(56)
  • 132 塾はどこから来たか、塾は何ものか、塾はどこへ行くのか―そして私(12)
  • 134 咲かせよ桜(93) 小林哲夫
  • 138 論点2022(11) PBLについて
  • 142 編集後記
  • 144 Book Review
  • 146 塾長のためのガジェット講座

寺子屋ISHIZUE 代表 藤原 柏甫さん|疾風の如く|2022年10月号

講師はみんな高校生!
教え合い、学び合う現代の寺子屋

大人が教え、子どもが学ぶ。
先生は教壇に立ち、生徒は黙ってそれを聞く。
それが、たまらなく退屈だった。
ならいっそ、自分で作ってしまえ。新しい授業の形を。
常識の外にある、教育の姿を。

寺子屋ISHIZUE 代表 藤原 柏甫さん

2004年生まれの塾長が創る
まったく新しいオンライン塾
寺子屋ISHIZUE 代表 藤原 柏甫さん

「協学」とでも表現すればいいだろうか。教育者と学習者が垣根なく共に学び合う教育思想のことだ。
「例えるなら、生徒と一緒に砂場で穴を掘っているイメージです。『この先に何があるのか、一緒に見てみようよ』みたいな」と語るのは藤原柏甫。まさしくそんな「協学」スタイルのオンライン塾「寺子屋ISHIZUE」の代表だ。
 そうした同塾の教え合い・学び合いのスタイルも非常にユニークだが、特筆すべき点がもう一つある。なんと、同塾の講師たちは全員が高校生だということだ。そして藤原自身も実は2004年生まれ。高校を中退後に飛び級で海外大学に籍を置いているが、日本の学制に照らせば高3に相当する年齢だ。
 塾の運営に「大人」は一切関わっていない。「放課後に集まって一緒に自習」というのとも違う。完全に若者だけで事業として塾を回し、教え合い、学び合っているのだ。

学校は楽しいのに
授業だけがつまらない

 中学受験で全国的な名門校に進学した才児だった藤原。しかし独特な寮生活に馴染めず学校を去る羽目に。次いで母の出身地だった台湾へと渡り、そこで一人暮らしをしながら現地の中学校に通った。だが「生活していくので精一杯でした。家事や身のまわりのことをしているとあっという間に深夜になり、朝に起きられなくて」。結局自学自習が増え、何のために学校へ行っているのか分からなくなり、中3のときに帰国。都内の有名私立中に編入した。
 ところが帰国後も、台湾で抱いた違和感が拭えない。「学校の勉強って、みんなで揃って先生に教えてもらう。それって何か意味があるのかなと……」。帰国後に編入した学校も、「学校そのものは楽しかったが、授業だけがつまらない」という感覚だった。
 そこが「寺子屋ISHIZUE」の原点だ。「文句を言うだけなら誰でもできます。それなら、自分でやってみようと思って」と、他校に通う仲間ら3人とオンライン塾を作った。
 最初は、とにかく「本当に楽しいと思える授業を自分たちで作ってみたい」という一心。ビジネスとしてのスタートではなかった。ウェブサイトもチラシもない。もちろん教室もない。「いま思えば、怪しさ全開ですよね」と笑うが、Twitterで手あたり次第に「体験授業を受けてみませんか?」とメッセージを送った。しかし、蓋を開けてみればこれが大好評。相応の受講生が集まるようになり、「楽しかった」「今度は何をやるの?」という声も次々に寄せられた。そこで思い切って起業することにしたのだ。

「普通」や「常識」に囚われず
自分の世界観を見つけてほしい

 寺子屋ISHIZUEのコンセプトは「近い世代間での対話を通して自ら学ぶ姿勢を育てる」ことだ。高校生講師たちは、「これだけは負けない」という「好き」を持っており、テーマは宗教や政治、プログラミングからAIまで多種多様だ。その知を共有する形で、授業内でディスカッションやプレゼンをふんだんに行う。形としては「国語」「英語」という教科名を銘打っているが、学校で習うそれとは明らかに違う。講師が「届けたい」「やりたい」と思うことが授業の中心であり、生徒も近い世代の講師との対話を通し自分の世界観を育む。興味の発露だったり、生き方のロールモデルだったり、講師は自分の知識を活かして生徒が自ら学ぶ架け橋となる。
「生徒たちには、自分が本当に楽しいと思えるものを見つけてほしい」と藤原。言い換えればそれは、無意識下に閉じ込めた自分の世界観に気付くということだ。「子どもたちの多くは『普通』や『常識』を刷り込まれ、あたかもそれが自分の意見であるかのように思い込まされています。そこから脱して、自分軸を持てる人になってほしいです」。
 大人が教えて子どもが学ぶ。よく考えればそれも、私たちが「常識」に染められている証左なのかもしれない。その枠を脱したとき、新たな教育の形が見えてくるはずだ。

寺子屋ISHIZUE HP
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