塾の時代

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VOL.19
1990年7月-12月
『中国古典に学ぶ』

 お約束通り、今回は、四字句のいくつかを追いかけることにする。

不将不迎(ふしょうふげい)
ということばがある。

出典は『荘子』である。
「将オクラズ、迎エズ」と読むのだが、その応帝王篇に、こうある。

 「至人ノ心ヲ用ウルハ鏡の若シ。将ラズ迎エズ、応ジテ蔵メズ。故二能く物二勝エテ傷ワレズ」

 「至人」とは、荘子的世界の理想の人間像である。そういう人物の心のつかい方は、鏡のようなものだという。では、鏡のようだとは、どういうことなのか。『荘子』によれば、まず「将ラズ、迎エズ」なのだという。「将ラズ」とは、過去にとらわれない、過ぎ去ったことをくよくよ思い悩まないということである。また、「迎エズ」とは、将来のことまで取り越し苦労はしないということだ。さらに、「応ジテ蔵メズ」とは、眼前の現象に自在に対応し、過ぎ去れば痕跡 をとどめないという意味である。だから、どんな情況にも柔軟に対応できて、しかも、自分が傷つけられることはない。これが至人の心のつかい方なのだという。

 こう言うと、「至人」というのは、定見のない、オポチュニストのような印象を受けそうだが、『荘子』は、「至人」についてこうも語っている。

「外面は相手によって自由に変化しながら、内面はしっかりと自分の主体性を守っている。相手によって自由に変化できる人物は、自分を傷つけることがないから、その本質は少しも変わらない。だから、相手と摩擦も生じないのである」

 現代は変化の激しい時代である。塾人も、あくまでも主体性を堅持しながら、「将ラズ、迎エズ」、淡々とした心境で、柔軟な対応を心がけた方が、うまく流れに乗ることができるのではないか。「不将不迎」をモットーにすることをお勧めするゆえんである。

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