Vol.30東進衛星予備校 5年連続全国ナンバーワンの実績と、 M&Aでさらにパワーアップ!
株式会社ティエラコム 増澤空 代表

東進加盟校として最大規模を誇るティエラコムは、神戸市の名門、山本塾のグループ化によって、グループ全体の売上100億円を目前として、さらなる進化と発展を目指している。その後1年のシナジー効果と、全国から注目を集めるIT化の現状と今後の課題などについて、増澤空代表と第二教育事業本部・本部長の山本学取締役に取材した。
グループ売上100億円達成が目前
─ 直近の売上と経常利益(申告所得)、校舎数、生徒数、正社員数と講師数などについて教えてください。また、事業部ごとの現状と今後の課題をお聞かせください。
当社は5月決算ですが、申告直前の数値を申し上げますと、売上98億円、経常利益3億100万円で、増収増益です。校舎数は166校ですが、これは東進・小中の集団・個別指導などがハイブリッドで入っている校舎も含まれており、純粋建物の数ですと104校となります。
生徒数は期中平均で2万2,000名、ピーク時では2万5,000名(2月頃)です。正社員数は342名で講師数は1,455名。社員の男女では、特に指導の現場で圧倒的に男子が多く、85対15となっています。
北陸東海地区を統括する第一教育事業本部、兵庫県中心の第二教育事業本部、そして九州地区を統括する第三教育事業本部の三つに分かれて、それぞれ役員の本部長制をとっていますが、それを縦軸として、横軸に一斉集団型指導・個別指導・東進の三つを副本部長が管轄しています。縦軸と横軸、それぞれが成長して全体も発展するというのが今後も理想的な形ですね。
理想的なシナジー効果で、利益倍増
─ 昨年4月、山本塾をグループ化されて一年が経ちましたが、そのシナジー効果についてお聞かせください。
山本塾としては、神戸市の東部地区に限定されていた知名度がティエラコムとの連携によって神戸市全体に高まりました。また東進、高校部が一校で40名程度だったものが、一年以内に五校で440名の規模になりました。一人当たりの単価も大幅にアップし、売上規模だけでなく利益も一気に増大しました。
人材のコラボレーションによる新たな展開とともに、神戸高校合格者数トップのシェアを誇る山本塾の小中学部の一斉型指導、特に高校受験のノウハウを活用することにより優秀な中学生をさらに確保し、兵庫県各地域のトップ高校の合格者のさらなるシェアアップを図っていくことが期待できます。
このようなシナジー効果をもたらした背景には、もともと双方の商品も出店エリアもバッティングしていなかったことが大きく、また、これを機に身を引くことを考えていた山本氏がティエラコムの第二教育事業本部本部長として留まり、兵庫地区担当として双方の調整に積極的に関わってくれたからです。その結果、兵庫地区において過去最大の利益をもたらしてくれることになりました。
今後は阪神御影、王子公園、本山、六甲、芦屋だけでなく、さらに阪神地区の展開を目指し、グループ内の人材の積極活用によって全体を押し上げていきたいと思っています。
「情報の瞬時の共有化」で、全体が品質アップ
─ 東進衛星予備校の全国大会において、五年連続運営部門全国最優秀校に輝きましたが、御社の構築された運営ノウハウについて少しお教えください。
端的に言いますと、IT化による運営の標準化でしょうか。53校という規模になると、ややもすれば地域的にバラバラな運営になりがちです。そこで誰がどこでやっても同じ運営ができる仕組みをつくらなければなりません。社内で10年以上が経つイントラネットを中心に、成功事例を社内全員で一挙に共有化することが大原則です。
具体的には、エリア部長、校長、担任、担任助手(東進卒業生)、フロントなど、これら全てのスタッフが情報を透明化し、共有することによって、限りなく末端までアイデアや情報を浸透させ実行できるかどうかにかかっています。
常に一からつくり直すのではなく、皆で成功事例を共有化することにより凸凹の業績になることを防ぎ、かつ品質アップできるシステムづくりが運営の標準化という効果を発揮しているのではないかと思います。
もちろん、本部からの指示を愚直にやり通すことができれば成功することは間違いありませんが、それがいつの間にか「我流」になってしまいます。しかし前述のシステム(文書管理・電子会議室など)をベースに思考しながら邁進し、微調整することによりうまくいくようになりました。山本塾も東進を導入しており、我流に陥り生徒数が増えない状況でしたが、一年経たないうちに、同じシステムの全面的導入により飛躍的効果が発揮され生徒数が増大しました。
イントラネットと顧客管理、業務システム、保護者からの電話データベースなどを管理するシステムの活用により、両者の塾文化の違いを仕事の質の共有化で超越してしまった……そう言ってもいいのではないでしょうか。
「集団の天才化」がキーワード
─ M&Aを含めた塾市場の環境変化、そして業界に広がるデジタル環境の進化について、ご意見をお聞かせください。
私たちがここ10年間デジタル環境を整えてきたものは、「集団が天才になっていくこと」です。地域展開をすればするほど情報共有のスピードが要求されます。IT化で瞬時に情報を発信し、同時多発的にそのやりとりを繰り返し繰り返し行う。IT化すれば全てがデータベース化されることが最大の利点です。
一方で、創業以来軸に据えている「合宿教育」という存在が当社では大きいものになっています。10万円というまとまった学費が発生する合宿は、いわゆる「高額商品」ですが、これは生徒の意識改革のスイッチを入れる装置だと解釈できます。親はそれを納得しているからお金を支払うのです。普段はできないことを合宿でやることで総合的な生徒の成長が図れます。この合宿のプログラムこそ超アナログのシステムで、デジタルとアナログの両立こそこれから重要だと思っています。

山本学取締役(右)とともに
「運営の標準化」が校舎展開のエンジンに
─ 全国大会の特別講演の中で、「まだ6割から7割しか達成していない」とおっしゃっておられましたが、その中身について教えてください。
加古川中央校一つで800名の生徒が在籍し、加古川東という地域トップ校の三割を占有しています。しかも成績上位ベスト30のほとんどが東進生です。今後53全ての校舎において、かつ新規開校する校舎においても、基礎だけでなく応用のオペレーションで、「運営の標準化」がより拡大して実行できるようになれば、全体のレベルアップにつながるという意味なのです。そういう意味で6割だと言っているのです。
質的向上については、山本塾の東進で、御影校舎に灘高校在籍者が19名も通うようになっており、今後も増えていくと予想されます。単なる地域のシェアではなく、地域ナンバーワンのシェア獲得を促進していくことが見込まれるので、現在がまだまだその過程にあるということです。
規模的に拡大したら、IT化で「見える化」を図れ
─ 御社で開発された「ビットキャンパスEX」は現在全国10万人の生徒・保護者が利用しているとのことですが、塾運営上生徒数1,000名以下、1,000~3,000名、3,000~5,000名、5,000名以上の塾でそれぞれどのように活かせば効果的でしょうか。
1,000名以下の塾は、WEBテストで日々の学習の成果が改善できます。問題のコンテンツは教材会社からの提供ですが、データベースは当社が構築しております。規模別に言いますと、1,000~3,000名の塾もほぼ同じで、より学習の定着を目指すことが大切です。5,000名までの塾になると、規模的に経理管理・成績管理・教務システムが有効になります。
給与計算や講師配置などのIT化で省力化が図れます。6,000名以上の規模ですと、営業管理において入塾率アップ・退塾率ダウンを図るために有効です。生徒がどのようなプロセスで入塾するのか、規模的に広範囲にわたる場合には地域や校舎によるバラつきや凸凹をなくす努力が必要になります。つまり、ベテラン社員に頼るのではなく、オペレーションの標準化を図ることで、誰にでも「見える化」を行い、社員だけでなく若い学生諸君でも戦力になるシステム構築が必要なのです。
このように、IT化は営業の仕方まで変えてしまう力があるのです。デジタルツールはロジック的に人間を納得させる力があり、それは豊富なデータベースであればそれだけ有効になるということです。
─ 「子ども手当」の支給についてどう思われますか? また、それぞれに対応した対策はお考えでしょうか。
あまり興味はないですし、期待もしていませんが、あえて言えば速読コースを導入して、例えば6,000円程度のオプションで個別指導だけでなく一斉集団型指導にも導入してもいいかなと思っているくらいです。
顧客は、「価格」を求めているのか、「価値」を求めているのか

合格速報を掲載した今春の
「東進衛星予備校加古川校」のチラシ
─ 各地で展開されている低価格戦略に対するご意見と今後のデフレ対策をお教えください。
低価格戦略は全く考えていません。高校部は東進本部のFCですから価格は統一され、下げることはできません。弊社では平均単価が50万円強ですが、以前の山本塾の東進では平均単価が10万円ほどでした。それがティエラグループとなり、同一システムが導入され、親と生徒も本当の〈価値〉を納得し、〈質の高いサービス〉を期待して教育投資を惜しまなくなったのです。つまり〈価格〉が教育の主流ではなく、〈価値〉が主流であると認識しています。あくまでも塾と家庭との信頼関係が大事なのです。
「空気の質の高い塾」を目指す
─ 今後の抱負と、全国の塾業界の方へのメッセージをお願いいたします。
「選ばれない塾ではなく、選ばれる塾にならないといけません」。今後は「選ばれるか、選ばれないか」のいずれか大きく二つに分かれます。そして、生徒が塾の門に立った時、ちゃんと襟を正して緊張して入る塾にしないといけません。挨拶から始まり、授業時間も緊張感に包まれた真剣勝負の「空気の質の高い塾」にしなければいけません。また、塾だけでなく家庭でも生徒が鍛えられるような仕組みにしないと、保護者の支持も得られなくなると思います。
「水は高いところから低いところ」に流れますが、「教育は低いところから高いところ」へと流れます。ティエラは地方型の塾ですから、地方であっても、生徒や保護者からすごいと思われるような塾にしたいと思っています。
(10年6月18日、神戸市中央区東川崎町ハーバーランドのティエラコム本社にて取材)
POINT
- 「運営の標準化」でシェア拡大を目指す







