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Vol.1地域独占戦略で増収増益を達成‼

株式会社 学究社(ena)河端 真一 社長

株式会社 学究社(ena)河端 真一 社長

「システム投資はM&Aの契機にもなる」と語る学究社の河端真一社長は、一橋大学で博士号を取得し客員教授として教鞭を執った学者肌の経営者だが、かつて業界初の株式公開を果たし、その後首都圏制覇に挫折した経験もある。
いま、その経験をもとに地域独占戦略で増収増益を達成し、さらにライバルであった進学舎の買収を終え、100億円が視野に入ってきた。現状と今後の方向性について、河端社長にインタビューした。

三多摩地区に限定し、「点と線」から「面的独占」へ

─ 直近の売上と経常利益(申告所得)、校舎数、生徒数、正社員数と講師数などについて教えてください。

平成19年9月期中間決算は、売上高は前年比10.1%増の25億3000万円で、通期は3カ月間進学舎が寄与しますので56億円の予想です。経常利益は2億4900万円で、前年比87.2% 増、通期予想は5億円で、前年比73.6%増となっています。塾の経営にとって厳しい環境が続きますが、当社は過去の挫折を生かし、10年かけて子会社4社を含めて全社黒字・無借金体制を構築してきました。
一つは、地域とターゲットを限定する戦略です。かつて一都三県に「点と線」の展開をして挫折したことを踏まえ、人口約400万人の三多摩地区に限定して校舎を展開し、既存校生徒数を増やす戦略に移行しました。
人事的には正社員を中心とする人材を定着・育成し、5年、10年選手としてコアを築いたことが大きい。一都三県をカバーしようというのは、「点と線」の確保しかできず無理がありましたが、三多摩地区であれば100校で面的独占をつくることが可能です。人気が沸騰している都立中高一貫校や自校問題作成高も、数が少ないので完全に対処できます。
二つ目は生徒層を“ハイエンド”に限定することをやめたこと。三多摩地域では御三家中や早慶高受験をする生徒は一小中学校あたり3、4名で、ボリュームゾーンはやはり公立中、都立高です。自転車通学の層を重視することで、生徒数が安定的に増加するようになったのです。

優秀な校長が育っていなければ校舎展開はしない

─ 現在、最も注力されている部門、最も伸びている部門はどこでしょうか。また今後、勝ち残りのために最も注力すべき部門はどこだと思われますか。

伸びているというほどのものはありません。個別指導部も大学受験部もまだまだプロトタイプが未成熟であり、これから業態としての確立を図っていかなければいけません。
この両部門のような売上絶対額の低いものは、成長していても売上の中心になるのは時間がかかります。また、基幹の小中学部においても新校舎は優秀な校長が育ったら出校するという保守的な判断をしています。

進学舎の買収は“独占シナジー効果”が大きい

─ 進学舎の買収について、その経緯と今後の方向性について教えてください。

お互い30年来のライバルとして、三多摩の一八の駅前でバッティングしてきましたが、経営者同士はある程度の交流と信頼関係がありました。そして経営が統合されれば、三多摩地域がほぼ独占でき「シナジー効果」が大きいという意見の一致を見、買収が決定しました。
しかし吸収合併ではなく、あくまでも進学舎独自のカラーを大事にしていくこと、看板はそのままであること、トップ以外は役員も留任することをこちらからの条件とさせていただきました。バッティングしている校舎は、統合すれば大きな利益が出ますが、あえて両方を残しています。進学舎は生徒数5,000人を擁する無借金、かつ利益が1億円以上出ている優良企業であり、それに相応しい敬意を払うことが正社員120名の士気の維持に必要と考えたからです。
また、前オーナーの創業のご功績を今後も伝承させていただくことをご了解いただいております。
現在、私が会長に就任し、当社専務が進学舎の社長を務めていますが、将来社長は生え抜きから出すことを明言しています。
M&A が成功するには二つの要因があると考えます。「アフターマージャー」、つまり買収後が一番大事だということ。一社の経営でも大変なのですから、二社になったらなおさら大変です。ですから、経営力に見合わないM&Aは無理なのです。私自身が正社員400名を束ねる経営力があるのか、日々自問自答を続けています。
二つ目は「本当にシナジー効果があるのか?」ということ。同じマーケットにおける同じ方向性がなければ、私どもの乏しい経営力では対処できません。その点で進学舎は最高のお相手でしたが、それでも非上場でしたから、コンプライアンス、財務処理、内外装等で即座に改善すべき問題もあったことは事実です。
今後、業界のM&Aで問題となることの一つはコンプライアンスでしょう。サービス残業を放置しては、会社が大きくなればなるほどリスクが大きくなるだけです。退職金の積み立て不足・退職者数・不当表示・隠蔽・個人情報流出・ネットにおける名誉毀損・事故等の生徒管理責任など、今後問題が出るかもしれません。そのためにもJ ─SOX法対応は必須です。
また「コントロールドグロース」、つまりワンマン経営ではなく、社員主導で制御・抑制された成長ができている会社でなければ、買ってくださいと手を挙げる塾も出てこないでしょう。
20世紀の合格実績・営業主導型から21世紀型のコンプラ重視に切り替えられなければ、社員の本質的意欲も引き出せません。
業界で先駆けて1985年に株式公開した弊社は、コンプライアンスやディスクロージャーに対する意識は、経験が長いだけに、多少高いと思っています。

「システム」「合宿・校外教育」「海外部門」への投資

─「教務の充実」と「デジタルツールの活用」が業界で推進されていますが、御社の取り組みについて、また、新規の事業や新コース設定などについて教えてください。

三つあります。一つ目は「システム投資」で、これをしないと差別化が難しくなるでしょう。映像授業ではなく、生徒の通塾の安心メールとかテスト結果の確認とか、お預かりしている生徒の情報・受験情報がすべてネットで確認できなければ、ネット世代の保護者様に満足していただけないと思います。
二つ目は、商業施設内でない「安全・安心」の通年合宿・校外教育部門が今後伸びるでしょう。米国では中産階級以上のほとんどの子どもが、夏には親と離れて長期のサマーキャンプに出かけます。当社の清里自然学校は1.4万坪、常勤社員4名で、本年3号館が着工します。
三つ目は、海外部門への投資です。アメリカにはニューヨーク4校をはじめ11校、欧州は6校、カナダにも1校、アジアでは中国に3校、計21校を展開しています。

人の気持ちが団結しないと塾は成長できない

─ 人材確保と人材活性のための工夫などをお聞かせください。また、研修の特色について教えてください。

当社では人が最優先と考え、人事課が社員に対して何度もフォロー面談をして職場環境や上司に問題があれば、早急に解決する体制を整えています。人の気持ちが団結しないと塾は成長できませんし、気持ちが不安定だとそれがストレートに現場に出る仕事ですから。
今年は30名の新卒社員が入りましたが、全て最初は塾の素人です。社員が社長の薫陶を受けてすばらしい教師に育ち、それに合わせて生徒が増えていくのが塾本来のあり方でしょう。
塾の幹が社員で、枝葉が生徒です。幹が太くなってはじめて枝葉がたわわに育つのです。

近い将来、株式公開塾は半分になる!?

─ 全国の業界の方へのメッセージをお願いいたします。

はっきり言えることは、現在の株式公開塾は近い将来半分になるということ。
先日、製紙業界の社長に言われましたが、製紙業界は業界規模2兆円、昔はたくさんの会社があったが、今は基本的には3社体制だそうです。歴史の短い我が業界は、そこまで行くにはやや時間がかかるでしょうが、寡占化は人類の経験法則です。その間、M&Aがより活発化して、業界序列は目まぐるしく変わるでしょうね。
キーは、短期的には戦闘力、中期的にはキャッシュフロー、長期的には構想力、だと思います。

(2008年1月23日、東京都新宿区の学究社本社にて取材)

POINT
  • ・首都圏「点と線」制覇の挫折をバネに、三多摩地区の「面的独占」戦略で成功!
  • ・次世代投資とコンプライアンスの確立が成されていなければ、存続が許されない!

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