Vol.7どうなる!?秀英の失地回復の戦い
秀英予備校の短・中期経営戦略を聞く
株式会社秀英予備校 渡辺 武 代表

いよいよ福岡進出が決定した。2年間で20校という大きな賭けだが、「強敵との勝負が楽しみ」と渡辺武社長は語る。全国9番目となる校舎展開の現状と今後の課題、最優先される人材の確保と育成などについてインタビューした。
売上150億円、生徒数5万名が目前
─ 直近の売上、経常利益、生徒数と校舎数(できましたら都道府県別に)、正社員数と時間講師数などを教えてください。
08年3月期の塾単体の売上は、小中学部が103億3,900万円、高校部が28億4,100万円で合計131億8,000万円です。経常利益は全体で4億6,500万円です。全体の来期予想では、売上が145億1,800万円、経常利益が5億円を見込んでいます。
生徒数は4月時点で24,337名(前年比+1,457名)、現在、夏期講習に向けて入学が増加中です。
小中学部と高校部の校舎数は静岡が68と13、愛知が50と4、岐阜が10、三重が11と2、山梨が11と2、神奈川が15と4、北海道が28と2、宮城が11で、合計は小中204校と高校27校で計231校となっています。
社員数は小中学部教師が513名、大学受験部教師が206名(うち正社員教師が103名、年間契約講師が103名)、大学受験部運営スタッフが108名、事務職その他が135名で、合計は962名です。
福岡進出が決定、2年間で20校が目標
─ 校舎展開について現状と今後の方向性を教えてください。
上記八地区に加えて9地区目の本部として福岡進出を今年中に見込んでおり、すでに会社説明会を実施しました。例年になく優秀な人材を九州全域から確保しており、校舎物件についても調査中です。
主として福岡県に、2年間で小中高対象に20校くらいは展開したいと考えています。強力なライバル塾がありますが、人材的にも指導的にも、高度でフェアな戦いができることを期待しています。
北海道の新規開校で233名
─ すでに進出して数年経つ北海道、そして三重県、宮城県などの現状と今後の方向性について教えてください。
北海道は30校目が新設されますが、すでに233名が集まっています。ただし、高校部が苦戦していまして、北海道の大学進学率の低さを実感しているところです。
甲府が人口20万人に11校、札幌が人口180万人で30校ですが、現役高校生の数は10倍近くいます。しかし、中三から高一への継続が甲府の3倍の生徒数がいるのに半分も来てくれません。手法を変更するしかないと考えています。これは全国平均51%に対して38%という北海道の大学進学率の低さが影響していると思われます。
宮城県は順調で、三重県は一番好調ですね。
秀英BBSに6,333名の塾生が申し込み
─ 前回立ち上げられましたネット配信の指導システムについて、その特色、現状の展開と今後の方向性、課題などについて教えてください。
“秀英BBS”は塾生を対象に本科通常授業の復習動画を低額料金にて配信するものですが、中1から中3生のうち、この3カ月で6,300名余りがオプション申し込みをして学習に励んでおり、そろそろ成果が出て来る頃なので期待しています。
これを受けて、外部一般生への本格販売に向け、商品(コンテンツ)の基礎固めを行っております。これは3年前からのプロジェクトで、今年から本格稼動しましたが、予想以上の反応で驚いています。
授業で学習して理解し、反復演習してテストでチェックするという三段階におきまして、どうしても反復演習の時間と量が少なくなっていましたが、BBSによってこれをカバーすることが可能となりました。これを活用すれば、優秀な生徒に続き、学力中下位層の生徒たちの理解定着が深まると思います。
コンテンツは、本科の中学生版が約3,500本、高校生版が約1,000本作成され、復習用と苦手克服用の単元別講座もオンラインで配信可能になりつつあります。
1年に1社のペースでM&Aしたい
─ 業界では、ベネッセや学研、Z会などを中心にM&Aと業務提携などが活発化していますが、御社のお考えと現状の取り組みについて教えてください。
私は、この流れは今後ますます加速していくと予想しています。全国の株式公開塾のトップは私をはじめとして皆さん、いわゆる“団塊の世代”ですから、60歳を超えて経営の不安を抱えておられます。市場の先行きは不透明であり、M&Aで経営基盤を確かなものにしようという意欲が活発化すると思うのです。

同業他社同士の業務提携やツールの共有も盛んになってきています。我が社では、M&Aはよほど慎重にやらないと成功率は3~4割であると自覚していますので、一年に一回くらいの比率で取り組みたいと考えています。
前回のM&Aでは相手先の全社員と面談しましたが、“働きやすくなった”“社内が明るくなった”“福利厚生が充実した”という声を聞いて安心しています。
公教育とのコラボレーションのような取り組みをしている塾もありますが、我が社は引き続き「本業集中」で経営していきます。
「個別PAS」は3割強が集団との併用
─ 昨年7月から、中学生を対象に静岡と名古屋地区で個別指導をスタートされましたが、現状と今後の課題などについてお聞かせください。
秀英の「個別PAS」は、全体の三割強が集団との併用生です。静岡と愛知におきまして、開講校舎を前期五校舎から10校舎に増加し、かつその後の拡大に備え、管理システムを構築し、特色あるコースの設備準備と独自テキストの作成・導入を図ります。
個別をやってわかったのは、集団の価格戦略です。ライバルの強い地域で、指導力を裏づけとしたブランド力の構築だけでなく低価格により生徒数が昨年比1.2倍に回復してきました。
正社員講師の良さを一度でも知ったら入塾する
─ 生徒数を安定させるための特色ある教務とこだわりの戦術などがありましたら、お聞かせください。
山のような会議を行い、特に北海道や仙台などでは細かな企画により地域のニーズを掴んで生徒数を増やしています。小学校低学年では、他塾だけでなくお稽古事との競合で選択してもらえるよう、同じ曜日に複数の科目の講座を用意して、単科で受けられるようにしています。少しでも正社員講師の良さを知ってもらえれば、生徒が減ることはありません。
無料体験はあまりやりたくありませんが、低料金で塾の内容を知ってもらう手法は続けたいですね。昨年冬から春にかけて17,122名の外部生が来て、8,738名が入塾しましたが、まだ8,300名余りが残っており、夏に呼び込んで塾生として定着させたいと思います。講習だけの生徒たちを塾に定着させるのが課題です。
今回の夏期講習で、予想に反して中三が1,000名少なく、小学生と中1~2年生が1,000名多くなっています。中3生はすでに自分の学力の限界を見切っているのに対して、低学年の生徒はまだ望みを捨てていないということです。
従って、早期に徹底した指導をして実力をつけるための映像授業とライブ指導を充実させたいと考えています。
“魂を込めた面接”で外部生を確実にゲットしたい
─ 全国の業界関係者に向けての熱いメッセージをお願いいたします。
原点に戻り、良い教育を低価格で提供したい、営業の面接ではなく『魂の面接』をすることです。
組織率の高い校舎は責任者の質が高い。面接の前に何度も電話して気持ちとニーズをキャッチしているから、「なぜ入学しないのか?」と言える面接ができるのです。ですから、「塾に行くなら秀英へ」という図式が出来上がっています。研修などで個人差をなくし、可能な限り魂を込めた面接ができるようにしていきたいと思っています。
(08年7月14日、静岡市の秀英予備校本部にて取材)
POINT
- ・営業の面接ではなく『魂の面接』をする









