Vol.2310年前の非常識は10年後の常識!
一流企業から学んで体力と資本力をつけよ
株式会社日能研関東 小嶋勇 会長

日本各地から講演依頼を受けている日能研関東の小嶋勇会長は、経営の第一線から退いても、全国の経営者から頼りにされる「元気印」の人だ。
ガウディアの現状、業界を巡るM&Aの動き、子ども手当、新型インフルエンザ、不景気対策など、盛りだくさんの質問を用意したが、逆に山盛りの賑やかな話題もいただいた。例年通りのクリスマスツリーの電飾も調った日能研関東本社で、小嶋勇会長に取材した。
09年4月期は増収増益だったが、今期は減収減益見込み(黒字は確保)
─直近の売上、経常利益、生徒数と校舎数、正社員数と時間講師数などを教えてください。
日能研関東単体での売上は84億8,600万円(09年4月期、以下全て同じ)で、前年比1億1,700万円増、経常利益は6億800万円で前年比2億5,100万円増、生徒数は1万2,026人で校舎数が37カ所です。日能研関東グループでは、売上103億2,300万円、経常利益8億4,400万円となっています。
正社員数は単体では190人で、グループ全体で364人、時間講師は296人となっています。
09年4月期は前年比でかなりの増収増益となりました。しかし、今期(10年4月期)は塾部門だけでは約4億円の収入減の影響で収支トントンまで落ち込む一方、不動産取得や設備投資があり、総売上では1~2億円の黒字は確保できる見込みです。
ガウディアは218教室、個人向けだけで180教室目指す
─直営とFCでスタートしたガウディアの現状と今後の見通しなどについて教えてください。
09年3月から加盟教室募集がスタートして半年が経ち、現在218教室(09年9月末)で、この間生徒数は120人から600人強へと増加しました。日能研関東のFC教室は現在5校が開校(うち、調布・所沢の2校は9月開校)、自由が丘・たまプラーザ・八王子の3校の生徒数は平均で30人です。
直営教室は八雲・上野毛の2校で約110人の生徒で、ほぼ定員いっぱいとなっており、ガウディアのフラッグシップ教室として機能しています。
今後の展開は、フランチャイザーとしてのガウディア本部は、10年度に単年度黒字化をしっかりと見据えています。
まず、既存218教室の中から、全体運営の効率化を、次に法人加盟者中心から首都圏においては個人加盟者のさらなる拡大促進策を図ります。自宅開放型のドミナント方式開校で、個人新規加盟者数を10年度で180教室を目指します。
さらに、サブフランチャイザー制を導入し、地方都市を心に、地元有力塾や企業とサブフランチャイズ契約を結び、積極展開の可能性を探っていきます。
現在、複数企業からサブフランチャイザーとしてのオファーが来ています。また、日能研関東の卒塾生は延べ26万人いますが、卒塾生の親を対象にガウディアの開校をお勧めしていく計画もあります。
業界に抵抗できない風も吹いてきた
─代ゼミのSAPIX中高部の買収、明光ネットワークジャパンの東京医進予備校の買収、英進館の早稲アカ株式取得など、09年も業界の動きが様々ありましたが、今後塾業界はどのようになっていくと思われますか?

11/8の朝日新聞に掲載した全面広告
政治の世界でも抵抗しがたい新たな風が吹いて政権交代が行われましたが、いろんな業界においても同様のことが今後起こると思います。
銀行・証券・大型スーパーなどと同じように資本提携の拡大により2極化し、塾も巨大化が進行するかもしれませんね。家族経営の個人塾はともかくとして、中小塾の淘汰は進み、各地でシャッター通りができるかもしれません。こんな風が吹いたら、どう抵抗しても負けてしまいます。
資本力、宣伝力のないところは悪循環を起こしやすくなるので、その大きな流れを避けて生き残りを図らなければなりません。資本提携の流れにも乗れないところは相当厳しくなるでしょうね。
最高顧問として台湾の銀行に口座を開く
─先月(10月)、台湾を訪問されたと聞きましたが、台湾BAIS社との提携内容について教えてください。
今回は講演ではなく会議や研修などが主でしたが、いきなり台湾BAIS社から「当社の最高顧問になってほしい」と言われました。外国人の経営参画ということで、政府の認可のもとに、銀行口座を作って顧問料をいただけることになりました。
台湾は上海や香港と比べると少し遅れていますが、今後一番伸びる可能性を秘めています。北京が東京としたら香港は大阪で、台湾は福岡でしょうか。だから、上海に進出して何かビジネスをやれば面白いと思っています。
塾をどこでやろうとも、所詮はサービス合戦であり、客を選ぶのではなく客から選ばれる仕事でなければ成功しません。

台湾BAIS社の最高顧問になった小嶋勇会長。写真は認証式の様子
子ども手当てへの期待度は10~15%か?
─「子ども手当」の支給、高校授業料の実質無償化などに対し、どう思われますか?
いろんな意見があり、よくわかりませんが、「子ども手当」が所得制限なしに支給されても、どれだけ子どもの教育費に支出されるかはわかりません。
私は教育費として10~15%出ればいい方だと思っています。残りの10~15%が貯金。それも、子どもの大学進学のための預金になり、あとは生活費に遣われるのではないでしょうか。
もともと公立学校を進む家庭と私立に通う家庭では全く事情が違いますね。「子ども手当」の趣旨については大賛成なのですが、所得制限を設けないと税金が余計に使われることになるかもしれませんね。
学齢の小学1年生から中学3年生までを対象とした「子ども手当」ですが、少子化を解決するためには、母親に安心して子どもを産んでもらえる社会にしなければなりません。生活のために子どもを施設に預けたくても施設の余裕がないというような行政だと不安です。少子化は、納税者、労働力、消費者全てが落ち込んで、ますます日本は借金天国になるのではないでしょうか。
話は変わりますが、国からの定額給付金支給の際、我が社も社員の奥様を対象に「共同経営者定額給付金」を手紙付きで現金で渡し、大変感謝されました。
100年に一度の不況だが、人材を集めるチャンス
─景気悪化を背景に、各社で経費節約が進んでいますが、コスト削減について御社の取り組みを教えてください。
昨年から赤字の教室の統廃合を進めています。狙いは赤字分を減らすだけでなく、人材の有効活用です。伸びそうもないところがあれば、経営者は思いきって引くことも大事です。倒産と撤退で恥ずかしいのはどちらかを考えれば答えは明らかです。
一方、今は良い人材を集めるには絶好の時代です。有能な人材がとれるチャンスです。その一方で、働かない不要な人材はリストラする必要もあります。そうしないと会社は潰れてしまいますから ……。100年に一度の不況で、あのトヨタでさえ一番最初にしたのはリストラでした。罪悪感は別として、「風を読んだ」対策を講じないといけません。
今後の感染拡大に備えて欠席者対応など検討中
─新型インフルエンザによる休校措置などで塾も影響を受けていますが、御社の対応策について教えてください。また、インターネットによる学習システムは今後、危機管理面でどのように役立つとお考えですか?
新型インフルエンザに対応した休校措置などは今のところとっていません。日能研関東の各教室では、次の4つの対策を講じています。
まず、新型インフルエンザウイルス抑制機能の最新空気清浄機の導入。第2に、手指消毒液の完備。第3に、大人用・子ども用マスクの完備(希望者に配布)。第4に、うがい薬の完備。
また今後の感染拡大に備え、欠席者向けに授業内容の動画配信の本格稼動の準備を進めています。昨春の流行時にテストケースとして欠席者の多い地域のみに限定して配信したところ、欠席者の学習サポートとともに、感染拡大を防ぐ有効な手段として手応えを感じています。
ただし、対面授業と同等レベルまでの効果は期待できません。生徒の理解度を把握・確認しながらの授業進行ができませんし、生徒とのキャッチボールから生まれる授業の楽しさ・考え方が習得できないからです。あくまでもサポートの一環として捉えています。
塾ブームは去った
─全国の業界関係者に向けて、メッセージをお願いします。
もう言い尽くした感がありますが、あえて言えば、「塾ブームは去った」。
今後は以前のような急成長はないでしょう。いろんな要素のある新しい時代に入りました。子ども手当然り、高校授業料無償化然り、公立中高一貫校然り、ゆとり教育の見直しも然り。
教育行政や教育ニーズがどうなっていくのかえを塾人は肌で感じて刻々と対応していかなければならないと思います。
いろんなズレが残っています。例えば、公立学校が今後数年間で約300校統廃合されていくのに、私学はまだその動きがない。しかし必ず変革されなければなりませんし、大学もやっていけなくなるところが増えています。私学にしろ、塾にしろ、新しい動きについていけないところは必ず淘汰される運命なのです。何よりもそれに注意なければならないと思います。
(09年11月13日、横浜市港北区の日能研関東本社にて取材)
POINT
- 塾ブームは去った! 新しい動きについていけない塾は淘汰される








