Vol.29ベネッセグループだからできる提供価値を具現する!
株式会社 東京個別指導学院 谷山和成 社長

ベネッセグループの東京個別指導学院(以下TKG)は、2010年4月下旬、創業者馬場信治前社長から谷山和成社長にバトンタッチし、創業の精神はそのままに、組織も戦略も仕切りなおして、新たな時代の幕開けを図った。ベネッセグループのコンテンツを活用する※LMS(ラーニング・マネージメント・システム)の開発・熟成を社長自ら直轄担当し、現場重視、講師と授業の品質向上のために全力を傾注している。その現状と今後の課題を中心にインタビューした。
※LMS(ラーニング・マネージメント・システム)
"TKGがベネッセコーポレーションと共に開発する新システム。顧客の目標達成に向けた『一人ひとりの学力・苦手に合った授業』に必要な学力判定・計画・教材・顧客向け説明に、講師の判断も加えられるラーニングマネージメントシステムとして開発した。この新学習プラットフォームの導入により、成績向上だけでなく、在籍残存率UP、生徒のやる気向上、個別テキストの満足度UP、理解度が授業ごとに確認可能、親子ともに満足度UPなどを実現したことで、今期から来期にかけて100校単位で導入、来期中に全国全ての教室への導入予定。
今こそ体質の強化
─ 直近の売上と経常利益(申告所得)、校舎数、生徒数、正社員数と時間(契約講師数)などについて教えてください。
IR資料にもありますように、今期売上高は148億2,400万円( 10年2月期)、同じく経常利益は16億5,100万円(同上)となっています。
前期比で、それぞれ5.1%、19.7%減となっていますが、次期も経営基盤の強化とコンテンツ開発への投資などにより、多少の減少傾向を見込んでいます。現在校舎数は196教室、生徒数は2万832名( 10年4月度)、正社員数は408名、時間講師数は約7,000名(パートタイマー含む)となっています。
LMSは社長の直轄部門
─ 今回の組織変更と役員異動の目的についてお教えください。
馬場信治前社長の社長退任と私への後継指名が、去る4月27日の取締役会で決議されました。GWをはさんだ限られた時間の中で役員異動などの新体制を作りました。
私は今後の戦略の核であり、組織の象徴ともいえる『LMS開発部』『パートナーリレーション部』『進路情報部』の三部門から成る『C─Style推進本部』を社長直轄としました。また、私自身は退路を断つ意志でベネッセを正式退社してTKGに転籍し、かつ代表権も一本化することで覚悟を決めました。役員もそれぞれの実績と見識、そして専門性などを活かし、責任の範囲を明確にしたフラットな役員体制で経営基盤の再構築を図りました。
最前線で発揮されるパフォーマンスの個々のレベルアップこそが重要
─ 最も注力される沿線、地域はどちらですか? また、今期の新規開校と統廃合などについて教えてください。
事業本部は、09年に東西二本部体制にしましたが、今回都府県別にエリアマーケティングを強化し、高校入試への対応力強化など地域ごとの課題解決のため、現場重視の都府県別体制としました。
全国一九六教室のうち東京都が70弱、神奈川県が45と二都県で計115教室弱の校舎があり、地域的にも学校が多くニーズも高い、そして競合他塾も多いので、当然最も重視すべき地域であると自覚しています。今後二年間は新規開校はストップし、一つひとつの授業という商品と講師のトレーニングに資源を集中しながら、柔軟な戦略プランを立てていきたいと考えています。いずれにせよ、最前線で発揮されるパフォーマンスの個々のレベルアップこそが重要であるという考えは不動です。

毎年億単位の投資を惜しまない
─ ベネッセグループと共同開発した「オーダーメード型指導」として、LMS(ラーニング・マネージメント・システム)をいよいよ本格稼動させるわけですが、現状の課題と今後の方向性についてお教えください。
個々の教室のパフォーマンスを上げるためにはLMSをどう稼動させるかがポイントです。LMSという〝道具〟を使う人材が一番良い使い方ができるかどうか? それが最大の課題ということです。
馬場前社長が創業以来培ってきたTKGスタンダードというノウハウを具体化したLMSの開発と熟成には、今期9,500万円を投資し、今後も毎年億単位の投資をしていく予定です。
中一の英数からスタートして高三まで、現在22教室で行われているものを今期中に全国100教室規模にして、来期は残り100教室にも導入していきます。
エリアと学年の二つの軸で進行していくので、投資も時間もこれだけかかるのは当然のことです。
自社内での活用が最優先

─ LMSのコンテンツの今後の開発と他塾販売の可能性についてお聞かせください。
コンテンツはベネッセの進研ゼミとのタイアップで豊富なコンテンツが活用できます。これを一から開発してデジタルコンテンツとするのは、時間的にも資金的にも大変ですが、この部分をショートカットできるのはグループ化のシナジー効果の大きな一つだと思います。
現在、まずは自社内でいかに使うかという段階であり、他社への提供の可能性は否定しませんが、まだまだ実現は先のほうです。
─ 子ども手当の支給と高校授業料の実質無償化の塾への影響についてどう思われますか? また、それぞれに対応した対策はお考えでしょうか?
たまたま今朝(6月2日)、鳩山首相が辞意を表明したとの報道がありましたが、民主党政権や、その政策も今後どうなるかわかりませんし、子ども手当がどれほど塾業界に流れ込んでくるかも見えていません。したがって、当社では今期の計画に織り込んではいません。情報交換はグループ内で行いますが、今後の状況を見て対応していくとしか言えませんね。
無料や割引は自塾に対する“背信行為”ではないか?
─ 各地で月謝の割引や、無料戦争が繰り広げられていますが、このデフレスパイラルを乗り切る方策をどのようにお考えでしょうか?
デフレスパイラル対策は対処療法的なものでは駄目ですね。不易と流行では、やはり不易、即ち保護者と生徒がTKGに何を求めて通っているのか? それにきちんと応えていく姿勢を崩さないことが重要です。
当社は〝貧すれば鈍す〟であってはいけないと考えています。社員と講師が共に授業のあり方や生徒対応のあり方をトレーニングして胸を張って顧客に提供しているものを、ある日突然無料にしたり大幅値引きするのは、自分自身に対する背信行為に思えて仕方がありません。今後もできるだけ経済環境に左右されにくい強いTKGブランドを構築していきたいと思います。
この国の未来を人という切り口からどう創っていくのか?
─ 今後の抱負と、全国の塾業界の方へのメッセージをお願いいたします。
今期中に全社員の名前と顔と強みの活かし方をこまめに現場をまわって一致させていくということが目標です。また、06年をピークに下降している生徒数と売上もV字とはいかないまでも、せめてU字の回復基調になるようにしたいと思っています。
馬場前社長が実現したベネッセとのTOBの意味を私。たちがこれから作り上げていく……ベネッセグループだから提供できる価値とTKGが創業以来培ってきた事業の実態を磨きあげることが、結果的に他塾との差別化につながると思っています。また、生徒の奪い合いや企業間の勝ち負けに目を奪われることなく、この国の未来を人という切り口からどう創っていくのか? 行政も試行錯誤していますが、それに左右されずに自分たちと同じ姿勢、精神を持つ仲間と共に、どんな未来を描いてサービス提供していけばよいかを問い続けたい……それが民間教育を活性化させるのではないかと考えています。
POINT
- パフォーマンスの強化で回復基調に戻したい!








