

公教育の教育力低下が社会問題化している昨今、民間の教育者たちは、試行錯誤をくり返しながら、子どもたちへの最良の教育方法を求め、日々研鑽している。
今回は、中学受験塾の最大手、日能研関東の小嶋勇会長、および本年4月から新たに募集が行われている東京都市大学グループ、等々力中学校・高等学校の海老原大樹校長と原田豊副校長を招き、日本の教育の現状、そして、今後の進むべき道について語っていただいた。

- 小嶋 勇(こじま・いさむ)
- 1941年横浜市生まれ。大学卒業後、64年建設会社に入社。67年に退社し、日吉英数学園を創業。73年株式会社化し、日吉能率進学教室に社名変更。92年生徒数1万人、売上高50億円突破。95年日能研関東予備校に社名変更。06年、会長に就任。現在、東京・神奈川・埼玉に37教室を運営している。著書に『いきざまー日能研と歩んだ起業家人生40年ー』(日経BP企画)がある。
―本日は、「日本の教育はどこに向かうべきか!?」というテーマで、私塾と私学を代表されるお三方からお話をうかがいます。まず、はじめに皆様は現状の教育界のなかで、学校の置かれた立場をどのようにとらえていらっしゃいますか?
小嶋(以下、敬称略)私学ではいま、一つの流れとして共学化を目指す傾向がありますね。商業高校などが軒並み閉校し、また女子大の人気も下降気味です。少子化の影響で全体として生徒数が減少している一方で、国は私学の新設について認可を推奨するという奇妙な状況にあります。
海老原おっしゃる通り、現時点では学校が多すぎるのが実情です。教育は国家事業であるはずなのに、どこかないがしろにされている気がしますね。2030年には東京都でさえ、19歳以下の人口が今の75%になるといわれています。地方では学校淘汰の波はさらに激しく押し寄せるはずです。この問題は、もはや国の政策として取り組むべき段階でしょう。すべての教育関係者が、日本の教育はどこへ向かうかを本気で考える時期だと感じています。
小嶋公立の小中学校は年間300校が統廃合されている状況の中、私学としても進学実績などのセールスポイントを活かした生き残り戦略が求められます。公立の中高一貫教育もますます伸びてくるはずですし、貴校も、東京都市大学グループの優位性や共学化を謳うとともに、よりわかりやすく具体的なマニフェストが求められるのではないでしょうか。「私たちは生徒のためにこの公約を掲げ、これを絶対に実現します」と強く訴えて、ぜひ多くの生徒を集めていただきたいと思います。

海老原そうですね。今後は、グループの連携力や教育理念、来年度からの共学化などを強く訴えて、当校ならではの強みをしっかりとアピールしていこうといろいろな手立てを考えています。
小嶋学校案内などの広告ツールは、受験生や親御さんへの“ラブレター”だと私は考えています。「来てくだされば、こんなにいいことがありますよ」と本気で心をぶつけてアピールしなければ、思いは通じませんから(笑)。貴校も他の教育機関にない特長を多々お持ちですから、それを具体化していけば素晴らしいラブレターをしたためることができると思いますよ。
海老原ありがとうございます。一方的な発信ではなく、こちらをわかっていただくための“ラブレター”という発想は、非常に大切な視点ですね。

- 海老原大樹(えびはら・だいき)
- 東京都市大学等々力中学校・高等学校校長、工学博士。武蔵工業大学名誉教授、東横学園女子短期大学学長、東京都市大学副学長。電気学会「産業用リニアドライブ国際シンポジウム」国際運営委員会委員長、日本AEM学界顧問、日本能率協会「モータ技術シンポジウム」顧問。「電気機器」(共立出版)、「これでわかる小形モータ」(工業調査会)、「モータ技術実用ハンドブック」、「モータ技術用語辞典」(いずれも日刊工業新社)、編集委員長など多数。
―今、親御さんに対する姿勢についてお話が出ましたが、家庭教育と学校教育の位置づけというものはどのようにお考えですか?
原田昔に比べると、地域社会や家庭の教育力が落ちたことは否めません。以前は、世間の目があり、祖父母が家庭にいる環境のなかで子どもたちはしつけられていた。ところが今は、周知のごとく核家族が基本です。それだけに、学校が背負わなければいけない部分は現実として多くなっています。いい悪いは別として、世の中全体の流れですね。
小嶋確かに教育の原点は家庭です。私の好きな言葉は、「親の言うように子は育たぬ。親のやるように子は育つ」です。言わずもがな、子は親の背を見て育ちます。ただ、今は子育てに自信がない親御さんが多いと感じますね。そういう意味では、いつか親となる目の前の子どもたちに最善の教育を施すことが、日本の未来のためになると信じて、私たちは日々奮闘しています。
海老原親学の必要性も感じますが、私は国にも責任があると思います。国が打ち出した「ゆとり教育」が、生徒に順位をつけない方向へと推進した結果、学力の低下を招いた。やはり、きちんと成績の順位をつけることは大切だと思います。子どもたち自身が得意・不得意を知ることで、個性の芽となる潜在能力をはっきり認識できるようになるはずですから。
小嶋ご指摘のように、日本の悪いところは「平等社会」という幻想を追っていることです。現実には、学校にしても企業にしても一流や三流のランクがある。たまたま成功した何万人に一人の例を挙げて、「世の中は学歴だけではないですよ」と言っても、それは嘘。やはり、教育者たちは社会の現実をしっかり見せて、そこから何を目指すかを子どもたちに考えさせるべきです。
海老原おっしゃる通りです。同時に、我慢や挨拶、人のために尽くす姿勢など基本的な人間教育をしっかりと実践すべきです。それはまさに当校が掲げる「ノブレス・オブリージュ」(= noblesse oblige:高潔な貴人の義務)の理念に繋がると思います。








