Archive for: 5月 2025

福井県立高等学校の定時制全7校で「すらら」導入

 株式会社すららネット(東京・千代田区、湯野川孝彦 代表取締役)が提供する「すらら」が、2025年度より福井県内の県立定時制高校7校すべてに導入されることが決定した。

 個別最適な学習を支援し、基礎学力の定着に寄与できるとの期待から、県立高校の定時制3校でトライアルが実施された。トライアルの成果を踏まえ、2025年度からは県内すべての定時制高校での本格導入に至った。

 定時制高校は、戦後「働きながら学ぶ」勤労青年に高校教育の機会を提供する場として制度化された。現在では、学び直しを希望する若者など、様々な背景を持つ生徒が学んでおり、その役割は柔軟で多様な学びの場として広がっている。
「すらら」は、すでに東京都、長野県、山形県、静岡県、愛知県、徳島県の一部の定時制高校でも導入されている。

発売45周年の「ハイレモン」が学生デザインの新パッケージに 産学連携で誕生、6月上旬発売へ

 ヨーグレットやハイレモン、パチパチパニックなどを製造販売するアトリオン製菓株式会社(長野・須坂市 山下 奉丈 代表取締役)は学校法人岡学園トータルデザインアカデミー(長野・長野市、岡 正子 校長)と、産学連携プロジェクトを実施し、同校学生によるデザインを、今年発売45周年を迎えるハイレモンをはじめ、ヨーグレット、コーラパンチに採用することが決定した。6月上旬頃より全国のコンビニエンスストア、スーパーマーケットなどで期間限定販売を開始する。また、商品の発売を記念して、SNSを活用したプレゼントキャンペーンも実施する。

 今回採用された同校2年生(開催当時)西山萌珈(もか)さんのデザインは、「ヨーグレット」と「ハイレモン」ブランドのオリジナルキャラクター「ヨググ」と「レモモ」の表情をパッケージ前面に大胆に配置し、「視線を感じるパッケージ」という新しいコンセプトを打ち出した。このデザインは、親しみやすさと遊び心を兼ね備え、従来の商品のイメージに新たな魅力を加えている。

 このプロジェクトは、岡学園トータルデザインアカデミーが地元信州地域を支える次世代クリエイティブ人材の育成を目指し、実社会で通用するデザイン力を養うために企画し、その趣旨に賛同した当社が参画し実施した。2024年10月に実施した授業では、当社の企画開発部長 高宮 隆一が特別講師を務め、販売中の商品パッケージ改良をテーマに、学生たちが企業の課題に向き合う実践型の学びの場を提供した。
 今年1月に行われた成果報告会には27名の学生が参加。学生たちは長年親しまれてきた「ヨーグレット」「ハイレモン」の魅力を再発見しつつ、若い感性による新たな価値提案に挑戦。商品イメージや消費者の視点を深く考えながら、自由な発想でパッケージデザイン創作に取り組んだ。1月に行われた作品発表の場では、合計13件の魅力的なデザインが提案された中で、西山萌珈さん(岡学園トータルデザインアカデミー当時2年)が考案したデザインを、消費者に最も親しまれ、ブランドの強み、特長が反映されている点を評価し、実際の商品に採用が決定した。
 この産学連携プロジェクトは、学生の実践的な学びの場となるとともに、当社にとっても新しい視点や創造力を取り入れる貴重な機会となった。今後もアトリオン製菓は、地域に根ざした人材育成と産業振興を目指し、教育機関との連携を積極的に推進していく。

学びエイド、NOVAグループと資本業務提携へ

 教育ICTサービスを手がける株式会社学びエイド(東証グロース市場:184A)は、2025年5月30日、いなよしキャピタルパートナーズ株式会社(以下、ICP)およびその子会社であるNOVAホールディングス株式会社と資本業務提携を締結したと発表した。同日開催の取締役会において、ICPを割当先とする第三者割当増資も決議している。

 学びエイドは、「意欲のあるすべての学習者に最適な教育機会を提供する」ことを理念に、映像授業を中心とした学習支援サービス「学びエイドマスター」などを展開している。しかし、2025年4月期第3四半期までの決算では、受注の減少により大幅な赤字を計上。営業損失2億9,900万円、経常損失3億1,100万円、当期純損失3億1,400万円を見込んでおり、財務体質の改善が急務となっていた。
 こうした中での今回の提携は、経営の立て直しと今後の事業成長を同時に図る戦略的な一手といえる。

 今回の第三者割当増資により、学びエイドはICPに対して113万8,300株を発行。これにより、ICPの持株比率は33.4%に達し、筆頭株主となる。ICPはNOVAホールディングスの親会社であり、同社の代表取締役社長である稲吉正樹氏が全議決権を保有している。

 業務提携の中核となるのは、NOVAグループの全国的なネットワークを活用した販路拡大と、両社の教育コンテンツやノウハウを掛け合わせた新サービスの共同開発だ。NOVAホールディングスは、英会話教室「駅前留学NOVA」や個別指導塾「ITTO個別指導学院」などを運営し、教育業界で広範な事業基盤を有している。
 また、経営面でもNOVAグループからの人材登用などにより、学びエイドの経営体制の強化を図る方針だ。

 学びエイドは、今回の資本業務提携を通じて、財務の健全化と新たな成長ステージへの移行を目指す。教育業界全体が大きな転換期を迎える中、デジタルとリアルの融合による「次世代型学習サービス」の構築に向けて、NOVAグループとの連携がどのような成果を生むか注目が集まる。

月刊私塾界2025年6月号(通巻530号)

巻頭言

 最近よく言われていることの一つに、「問い」の大切さがある。世の中には課題が山積し、その解決が叫ばれるのに、なぜ問いのほうが大事なのか。 
理由は大きく分けて二つある。
 一つは、問い次第で課題の設定が変わり、結果として得られる答えも変わってくるからである。もう一つは、AI(人工知能)の発達だ。現在のAIは問いさえインプットすれば、いくらでも答えを出してくれる。だから、つくるべきは答えではなく、問いだというわけだ。
 ただ、我々は問いをつくることに慣れていない。とりわけ日本人は不得手だ。なぜなら歴史上、問うことを重視してこなかったからである。
 では、どうすれば問うことができるのか? いくつか解がある。
 一番目に、自明の理に異議を投げかけることだ。つまり、常識や一般的に正しいとされることを疑うことである。簡単なことのように思われるが、意外と難しい。何故なら、誰もがそれまで信じていたことを覆されるのは嫌だからである。
 二番目は、「関心」という要素である。ここでの鉤括弧付きの関心とは、一般的な意味のそれとは異なり、物事のどの観点に着目するかということを指している。どんな物事も、ただ漠然と眺めていたり、当たり前だと思っていたりすると、何も感じることはないであろう。
 是非「問い」を活用し、明日の学習塾を切り拓いていっていただきたい。

(如己 一)

目次

  • 6 CatchUp1 学び舎かなえ 三つの教育スタイルであらゆる子どもたちをハッピィに
  • 8 CatchUp2 信学会 英語は「毎日少しずつ」が一番強い 信学会がマグニラーン導入に踏み切った理由
  • 12 HOT TOPICS① ★新時代の幼児教育プログラムが誕生! 浜学園グループ〈はまキッズ〉の新提案 ドラマ教育「星の王子さま」が紡ぐ親子対話の新たな可能性
  • 16 挑む私学 国際高等専門学校
  • 19 目次・巻頭言
  • 20 NEWS ARCHIVES
  • 48 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 49 【特集①】株式公開企業塾2025年  2・3月期決算を読む
  • 60 【特集②】  教育ICT考2025 S/S〈後編〉
  • 80 HOT TOPICS② 成基の佐々木会長が参院選出馬を表明「志の教育立国を」
  • 84 TOP LEADER Interview 常に挑戦と変化を続け、人を育て社会に貢献。 株式会社 アイキューブ
  • 96 企業研究(146) エデュ・プランニング株式会社
  • 99 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿(376)
  • 100 疾風の如く(190) 生徒派(東京都) 代表 草下 靖也 さん
  • 102 現代学習塾経営概論(27)
  • 104 For Whom the 塾 Tolls(46)
  • 106 自ら動き出すチームにする方法(129) 中谷彰宏
  • 108 One Target(6) 的場一成
  • 110 PAPER REVIEW(15) 浅見貴則
  • 112 シン・ジュクジン(43)
  • 113 芸術見聞録(143)
  • 114 わが子、就学中(51)
  • 115 塾長の机
  • 116 為田裕行の「教育ICT行」(123)
  • 117 10¹⁵ PETA(50)
  • 118 キクチカラ(6) 菊地香江
  • 119 Opinion from School(71)
  • 120 林明夫の「歩きながら考える」(238)
  • 122 塾ソムリエの講師研修指南 西村則康(名門指導会代表 塾ソムリエ)(61)
  • 124 私塾界インサイト(87)
  • 128 塾はどこから来たか、塾は何ものか、塾はどこへ行くのか―そして私(43)
  • 130 咲かせよ桜(123) 小林哲夫
  • 134 論点2025(6) 次期学習指導要領の諮問ポイント
  • 138 編集後記
  • 140 Book Review
  • 142 塾長のためのガジェット講座

高校生向け探究学習サイト『Locus』、全国の高校生約9万人に無償提供を開始

 株式会社マイナビ(東京・千代田区、土屋 芳明 代表取締役 社長執行役員)が運営する、「地域」や「企業」を題材とした高校生向け探究学習サイト『Locus(ローカス)』(https://locus.mynavi.jp/)は、2025年4月より全国の高校へ無償提供を開始し、4月21日(月)にサービスサイトをリニューアルした。

 Locusは5月23日時点で、全国の高校生約9万人、254校での導入が決定している。これまでLocusは高校へ有償提供をしていたが、すべての学習コンテンツを無償提供することで、今後は全国の高校生の進路実現・自己実現に寄り添いサポートを強化していく。

 今回リニューアルオープンしたサービスサイトはマイナビのデジタルテクノロジー戦略本部にて自社開発しており、高校生はLocus教材の閲覧や学習が可能。今まで提供していた教材やエリア探究プログラムに加えて、自身の特性が把握できる適性診断ツール「MATCH plus 進路」、Locusでの学びを記録して将来振り返ることのできる「キャリアログ」、地域探究の土台として活用する「自治体総合計画」など、新たなキャリア学習コンテンツを追加している。

 Locusは「地域」や「企業」を題材にした探究学習プログラム。2020年4月よりサービス提供を開始し、利用生徒数は約20万人、登録企業数は2827社にまで拡大した。
 高校生と企業の接点である「フィールドスタディ」では、地域・業界・企業の「今」に触れることで、社会で必要とされる「課題特定・解決力」を伸ばすだけではなく地域や企業への関心を高めて、地元就職の促進や地域創生につなげていく。

東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所 共同研究プロジェクト「子どもの生活と学びに関する親子調査2024」結果

 東京大学社会科学研究所(東京・文京区、宇野 重規 所長)と株式会社ベネッセコーポレーション(岡山市、岩瀬 大輔 代表取締役会長兼社長)の社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所は、2014年に「子どもの生活と学び」の実態を明らかにする共同研究プロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトでは、同一の親子(小学1年生から高校3年生、約2万組)を対象に、2015年以降10年間繰り返して複数の調査を実施し、12学年の親子の意識・行動の変化を明らかにしてきた。

 今回の分析では、この「子どもの生活と学びに関する親子調査」をもとに、同じ子どもの「なりたい職業」の変化や進路探索行動を分析した。その結果、進路について深く考える経験をしている子どもは、学習意欲が高く、自らの興味・関心を広げて積極的に学習しているという結果が得られた。また、子どもが進路を深く考える経験には、教員や保護者の存在や働きかけが影響していることがわかった。

 分析の結果からは、特定の職業を選ぶことではなく、さまざまな角度から自分の進路について考えることが重要であることがうかがえる。このプロジェクトでは今回の分析を手がかりにして、これからの進路選択のあり方について、子ども本人やその保護者、学校教員をはじめとする教育関係者の皆さまとともに考え、具体的な情報や支援策を発信していく。

【調査結果サマリー】

1.進路を考える意義―進路を深く考える経験は学習意欲を高め、学習行動を促進する可能性・「進路について深く考える」経験があった子ども(経験あり群)は、「勉強が好き」と答える比率が高く、「勉強しようという気持ちがわかない」の肯定率は低い。【図表1-1】・「経験あり群」の子どもは、「ニュースに関心が強い」「興味を持ったことを、学校の勉強に関係なく調べる」の肯定率が高く、学習時間が長いなど、学習に積極的。【図表1-2】

2.進路を考えることに影響する要因―学校(教員)と家庭(保護者)が関連・学校(教員)要因―「尊敬できる先生がいる」を肯定する子どもや、学校で探究的な学びに取り組んでいる子どもは、「進路について深く考える」経験をしている比率が高い。【図表2-1】・家庭(保護者)要因―父母との会話が多い子どもは、「進路について深く考える」経験をしている。【図表2-2】

3.なりたい職業の個人変化の追跡―35.0%の子どもが小学生から高校生まで一貫した希望を持つ・なりたい職業の記述について個人の変化を分析したところ、3人に1人(35.0%)が小5のときと同種の希望を高2まで持ち続けている。【図表3-1】・なりたい職業が一貫している子どもは、「自分の進路について深く考える」「疑問に思ったことを自分で深く調べる」などの機会が少ないといった課題がみられた。【図表3-2】

【参考データ】子どもたちのなりたい職業(ランキング)・なりたい職業No.1は、小4~6生では「プロスポーツ選手」、中学生では「プロスポーツ選手」と「教員」、高校生では「教員」だった。また、男女でなりたい職業は異なり、小4~6の男子は「プロスポーツ選手」、女子は「店員(花屋・パン屋など)」が人気。【図表4-1、4-2】・中高生のなりたい職業No.1が「教員」であることは、この10年間変化なし。【図表4-3】

【調査結果詳細】

1.進路を考える意義―進路を深く考える経験は学習意欲を高め、学習行動を促進する可能性

  • 「進路について深く考える」経験があった子ども(経験あり群)は、「勉強が好き」と答える比率が高く、「勉強しようという気持ちがわかない」の肯定率は低い。【図表1-1】
  • 「経験あり群」の子どもは、「ニュースに関心が強い」「興味を持ったことを、学校の勉強に関係なく調べる」の肯定率が高く、学習時間が長いなど、学習に積極的。【図表1-2】

◆図表1-1 学習意識(進路を考える経験の有無別)


◆図表1-2 学習行動(進路を考える経験の有無別)

※図1-1,1-2ともに、小4~6生2,916名、中学生2,846名、高校生1,990名を分析。検定の結果、有意な差があった箇所に矢印をつけた。

2.進路を考えることに影響する要因―学校(教員)と家庭(保護者)が関連している

  • 学校(教員)要因―「尊敬できる先生がいる」を肯定する子どもや、学校で探究的な学びに取り組んでいる子どもは、「進路について深く考える」経験をしている比率が高い。【図表2-1】
  • 家庭(保護者)要因―父母との会話が多い子どもは、「進路について深く考える」経験をしている。【図表2-2】

◆図表2-1 進路を考える経験(尊敬する先生の有無/探究活動の有無別)


◆図表2-2 進路を考える経験(父母との会話別)

*図2-1,2-2ともに、小4~6生2,916名、中学生2,846名、高校生1,990名を分析。検定の結果、有意な差があった箇所に矢印をつけた。

3.なりたい職業の個人変化の追跡―35.0%の子どもが小学生から高校生まで一貫した希望を持つ

  • なりたい職業の記述について個人の変化を分析したところ、3人に1人(35.0%)が小5のときと同種の希望を高2まで持ち続けている。【図表3-1】
  • なりたい職業が一貫している子どもは、「自分の進路について深く考える」「疑問に思ったことを自分で深く調べる」などの機会が少ないといった課題がみられた。【図表3-2】


◆図表3-1 なりたい職業の個人変化(小5から高2までの追跡)

*2015~18年調査で「なりたい職業」の記述があった小5・2,991名を、2021~24年調査の高2まで毎年追跡。


◆図表3-2 進路選択にかかわる行動(なりたい職業の一貫性による違い)

*2015~18年調査で小5だった子どもを、2021~24年調査の高2まで追跡。小5と高2のいずれの時点でも職業名の記述があった950名を分析。

*同じ子どもで小5と高2のなりたい職業の職業名の記述が一致しているか、一致していないかで2群に分けて分析した。各項目の数値は、高2時点のデータ。

【参考データ】子どもたちのなりたい職業(ランキング)

  • なりたい職業No.1は、小4~6生では「プロスポーツ選手」、中学生では「プロスポーツ選手」と「教員」、高校生では「教員」だった。男女によって、なりたい職業には違いがある。また、男女でなりたい職業は異なり、小4~6の男子は「プロスポーツ選手」、女子は「店員(花屋・パン屋など)」が人気。【図表4-1、4-2】
  • 中高生のなりたい職業No.1が「教員」であることは、この10年間変化なし。【図表4-3】


◆図表4-1 なりたい職業【2024年データ】(学校段階別)

*2024年調査の結果。「あなたには、将来なりたい職業(やりたい仕事)はありますか」という質問に「ある」と回答した者に、「あなたが一番なりたい職業 (やりたい仕事)を、具体的に教えてください」とたずねた結果(自由記述)を分類した。

*なりたい職業が「ある」と回答したのは、小4~6生1,872名、中学生1,403名、高校生1,100名。

*★印は同順位(同数)であることを示す。


◆図表4-2 なりたい職業【2024年データ】(学校段階☓男女別)

*同上。


◆図表4-3 なりたい職業【2015年データ】(学校段階別)

*2015年調査の結果。なりたい職業が「ある」と回答したのは、小4~6生2,595名、中学生1,997名、高校生2,031名。

【解説】

子どもたちの「なりたい職業」からみえる、進路を考えることの意味――10年にわたる追跡調査から

  • 調査の意義:デジタル化、グローバル化、働き方の多様化が進む現代社会では、子どもたちが将来をどのように描き、進路を考えるかが重要なテーマとなっている。学習指導要領(中学校総則編)でも、子どもたちが「社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていく」ことの重要性が強調される一方で、「生徒の進路や職業に関する情報を必ずしも十分に得られていない状況」があると指摘されている。子どもたちがどのような未来を描いているのかを把握することは、彼らの進路形成を支える第一歩となる。
  • 調査の特徴:今回紹介するのは、東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が2015年から2024年まで10年間にわたって実施してきた「子どもの生活と学びに関する親子調査」の結果だ。この調査は、同じ子どもを継続的に追跡するパネル調査で、職業観や進路意識がどのように育ち、変化していくのかを明らかにできる貴重なデータだ。
  • 進路を考えることの意味:今回の調査では、「進路を深く考える」経験をした子どもは、そうでない子どもに比べて「勉強が好き」と答える比率が高く、「勉強しようという気持ちがわかない」と答える比率が低いことがわかった。また、「ニュースに関心が強い」「興味を持ったことを、学校の勉強に関係なく調べる」といった学習への積極性も高く、学習時間が長い傾向がみられた。このように、「進路を深く考える」経験は、学習意識や行動にプラスの影響を与える可能性がある。「進路を深く考える」経験は、主体的に学習に取り組む姿勢をつくるのにも有効と言えそうだ。
  • 周囲の大人はどうかかわるか:子どもが進路を考えるためには、学校と家庭の支援が欠かせない。調査では、「尊敬できる先生がいる」といった教員との良好な関係や、「グループで考える」「討論する」「ふりかえる」といった探究的な授業のスタイルが、「進路を深く考える」経験と関連していた。また、家庭では、「将来や進路」「社会のニュース」といった話題を親子で話すことが、子どもが進路を考えるきっかけになっているようだ。
  • 個人の変化の追跡:本調査の特徴を生かして同じ子どもの変化を追跡したところ、およそ3人に1人(35.0%)が小5で希望した職業と同種の職業を高2でも希望していた。ただし、そのように職業希望が一貫している子どもは、「進路を深く考える」経験が少ない傾向にあることも明らかになった。希望が明確であるがゆえに、他の可能性を探るきっかけが少なくなっているのかもしれない。夢を持ち続けることは大切だが、重要なのは早期になりたい職業を明確にすることではない。さまざまな選択肢に触れ、柔軟に進路を考えることも、これからの時代にはより重要になると考えられる。
  • さいごに:子どもたちの進路は一人ひとり異なり、多様です。私たち大人にできるのは、子どもを型にはめるのではなく、考えるきっかけを与え、選択肢を広げ、ともに悩み、応援することだ。

 ベネッセ教育総合研究所のホームページから、調査結果をまとめたレポートがダウンロードできる。

https://benesse.jp/berd/special/datachild/datashu08.html

【調査概要】

名称:「子どもの生活と学びに関する親子調査2015-2024」(第1-10回)

調査テーマ:

【子ども調査】 子どもの生活と学習に関する意識と実態

【保護者調査】 保護者の子育て・教育に対する意識と実態 ※小1~3生は保護者のみ実施

調査時期:各年7~9月

調査方法:2015年は郵送調査とWEB調査の併用。2016~20年は郵送調査、2021年は郵送調査とWEB調査の併用、2022~24年はWEB調査

調査対象:全国の小学1年生~高校3年生の子どもとその保護者(小1~3生は保護者のみ回答)

*本研究プロジェクトの調査モニター対象。以下は、各年のサンプルサイズ(親子ペア)。回収率は%。

「子どもの生活と学び」研究プロジェクトメンバー(所属・肩書は2025年5月時点):

  • プロジェクト代表者

 藤原翔(東京大学教授)、野澤雄樹(ベネッセ教育総合研究所所長)

  • プロジェクトメンバー

 耳塚寛明(お茶の水女子大学名誉教授)、秋田喜代美(学習院大学教授、東京大学名誉教授)、松下佳代(京都大学教授)、大野志郎(東京大学特任准教授)、木村治生(ベネッセ教育総合研究所主席研究員)、松本留奈(同主任研究員)、岡部悟志(同主任研究員)、朝永昌孝(同研究員)、小川淳子(同研究員)、佐藤昭宏(同主席研究員)

  • ワーキンググループメンバー

 小野田亮介(山梨大学大学院准教授)、数実浩佑(龍谷大学准教授)、猪原敬介(北里大学講師)、豊永耕平(近畿大学講師)

  • アドバイザリーボードメンバー

石田浩(東京大学名誉教授・客員教授)、佐藤香(元東京大学教授)、香川めい(大東文化大学准教授)、大﨑裕子(日本社会事業大学准教授)

  • スタッフ

中島功滋(ベネッセ教育総合研究所主任研究員)、大内初枝(同スタッフ)、渡邉未央(同スタッフ)

インドネシアの技能実習生送り出し機関の大手に「すらら にほんご」初導入

 株式会社すららネット(東京・千代田区、湯野川孝彦 代表取締役)は、インドネシアの大手日本向け人材送り出し機関の大手であるPT. Fuji Bijak Prestasiに、アニメーション型日本語学習ICT教材「すらら にほんご」を導入し、2025年5月より本格運用を開始した。
 インドネシアの主要な技能実習制度の送り出し機関での本格導入は初の事例であり、日本語教育の質と量の両立が求められる現地の課題に対し、持続可能なICT活用の実践モデルを目指す。

 インドネシアは、日本の労働市場を支える技能実習生・特定技能人材の主要送り出し国のひとつだ。2023年度のインドネシア人技能実習生の数は74,879人に達しており、全体の約21.4%を占めるほどになっている。しかし現地では、急増する学習ニーズに対して、日本語教員の数が圧倒的に不足しており、教員の専門性や授業の質にもばらつきがある状況が続いている。とりわけ、送り出し機関(LPK:Lembaga Pelatihan Kerja)においては、出国前の訓練期間中に十分な語学習得の時間を確保することが難しい場合もあり、送り出し先の企業や教育機関からは「現場での日本語運用力にさらなる向上の余地がある」といった声も挙がっている。
また、従来の日本語教育では「聞いて覚える」「読むだけ」といった受動的な学習に偏りがちで、学習者の理解度に差が出やすく、モチベーションの維持が難しいという課題も教育現場の関係者より度々指摘されてきた。
 一方で、日本政府は近年、外国人材の受け入れを制度的にも拡充しており、企業における日本語力の高い人材の需要は一層高まっている。こうした背景のもと、送り出し国における日本語教育の質のさらなる底上げが喫緊の課題とされており、今回のデジタル教材の導入は、その解決のための新たなアプローチとしてインドネシア国内で注目されている。

 今回「すららにほんご」が導入されたフジ・ビジャックは、1999年の設立以来、ジャカルタを拠点に日本企業への人材派遣を20年以上にわたり手がけてきた実績ある人材会社。今回の導入により、インドネシア・ブカシ市にある訓練施設において、技能実習生として日本への渡航を目指す訓練生たちに「すらら にほんご」を用いたデジタル授業が開始された。
「すらら にほんご」は、アニメーションによる対話型レクチャー、AIによるドリル出題、習熟度に応じたテスト・復習機能を備えた教材で、JLPTN5~N4(日本語能力試験)に対応している。学習者は自分のペースで文字・語彙・会話を体系的に学ぶことができ、短期間で「使える日本語力」を実践的に習得することができる。
また、今回の導入にあたっては、6名の日本語教員に対して筆記・実技テストを含む3日間の研修を実施した。この研修により、すららネットが認定する公認ファシリテーターとして全員が合格し、授業開始へ向けて安定的な運用体制を整備した。さらに、現地パートナー企業による定期的なサポートも行われ、授業の質を維持・向上させる体制が整えられている。

通信制サポート校「ベネッセ高等学院」が職業体験プログラムを7月からスタート

 株式会社ベネッセコーポレーション(岡山市、岩瀬大輔 代表取締役会長兼社長)が運営する通信制サポート校「ベネッセ高等学院」(上木原孝伸 学院長)は、学院生が自分の興味関心や価値観に気づき、自分の将来を考えることにつなげる独自プログラム「みらい発見プログラム」の一環として、職業体験プログラム「リアルお仕事体験」を2025年7月より開始する。

「リアルお仕事体験」は、単なる企業見学にとどまらず、有償・無償のアルバイト、インターンシップ、ワークショップを組み合わせ、生徒が実際の企業現場で業務体験を行うもの。イベント運営のサポート、接客・調理、サイト更新作業、製菓工場での検品・梱包など、多岐にわたる内容を通して、「働くこと」の具体像を体感できる。今後は協力企業と連携し、年間を通じて複数回開催する予定だ。(申込みは学院生のみ)
▶詳細:https://gakuin.benesse.co.jp/oshigototaiken
【協力企業名とプログラム】 ※5/28時点で決定している内容。

協力企業名プログラム概要
株式会社大阪前田製菓▶焼き菓子の製造工場にて、ケーキの検品と梱包作業を体験
工場での焼き菓子の検品や梱包作業を体験します。
リスク管理や安全に関する知識も学びます。
カゴメ株式会社▶「野菜をとろうフォーラム2025」の運営スタッフとして、
  来場者の野菜摂取レベル測定と会場案内を担当
イベントの運営スタッフとして、来場者の野菜摂取レベルの測定や
会場案内を担当します。
また、測定データをもとにしたお客様との対話も体験します。
コロワイドグループ
株式会社フレッシュネス
▶フレッシュネスバーガーの店舗でのフロア・キッチン業務を体験
ハンバーガーやドリンク等の作成・接客・ディスプレイ・
POP制作・清掃等を体験します。調理や衛生管理だけでなく、
コミュニケーションについても学べます。
司法教育支援協会▶中高生対象の刑事司法イベントにて、セミナーの運営をサポート
設営、来場者の案内、資料配布、写真撮影などをサポートします。
作業時間外には裁判傍聴や第一線で活躍する弁護士・検事・
警察官などとの対談も体験できます。
株式会社スタービーイング▶阪神甲子園球場や京セラドーム大阪での接客のお仕事を体感
来場者の案内、チケット販売・モギリ、ファールボールの対応、
各種ファンサービスイベント運営などを行います。
株式会社ZOZO▶地域貢献活動の一環である夏祭りの準備・運営を体験
職場見学に加え、地域貢献活動の一環としてのZOZO本社広場で
行う夏祭りの準備や運営を地域住民と協力しながら体験します。
ノバリ株式会社▶事務職・営業職のサポートとして郵便物の確認と
 簡単なデータ入力を体験
事務職・営業職のサポートとして、郵便物の確認や
簡単なデータ入力を体験します。
希望に応じて、コーポレートサイトやSNSの更新、動画制作なども
体験可能。
株式会社マウンハーフジャパン▶書籍の発送作業やデータ入力などの事務作業を体験
Excelへのデータ入力、PowerPointの資料作成、画像加工などに
取り組み、出版から販売までの流れを学びます。
株式会社進研アド▶広告プランナー体験
カスタマー(高校生)のヒアリングやクライアント(大学)の
状況分析、SNSの文章や画像作成など、広告プランナーの一端を
体験します。

朝日新聞社「全国高等学校麻雀選手権大会」を創設

 株式会社朝日新聞社(角田克 代表取締役社長)は、全国の高校生らを対象とした「全国高等学校麻雀選手権大会」を創設する。2025年7月に東京と大阪で予選を開き、本選に出るチームを決定。8月に東京で本選・決勝を開き、高校日本一を決定する。
■大会公式ウェブサイト: https://www.asahi.com/mahjong/highschool-champ/

 麻雀プロリーグ「Mリーグ」の発展などにより、健全な頭脳スポーツとして真剣に麻雀に取り組む高校生が増えており、部活動や同好会を設立する学校も相次いでいる。麻雀は、集中力、観察力、記憶力、判断力、論理的思考力、忍耐力、大局観、感性、度胸など、さまざまな力がバランスよく求められる。同世代で競う場を設けることで、高校生らが研究や練習の成果を発揮し、仲間との絆を強めて輝ける舞台をつくる。
 朝日新聞社は1915(大正4)年、まだ学校の野球部が多くない時期に「全国中等学校優勝野球大会」(現在の「全国高等学校野球選手権大会」)を創設し、率先して野球の普及や技術の向上に貢献してきた。今大会も、その進取の精神を引き継ぎ、麻雀の発展につなげていく。
 大会は公式アプリとして、「セガNET麻雀 MJ」(株式会社セガ)と「麻雀格闘倶楽部Sp」(株式会社コナミアミューズメント)を活用する。
 予選では、会場に集まったうえでアプリで対局し、本選・決勝ではアプリによる対局と全自動卓を用いたリアル対局の両方を行う。

【開催概要】
・主催 株式会社朝日新聞社
・協賛 株式会社コナミアミューズメント、株式会社セガ
・後援 一般社団法人Mリーグ機構
・オフィシャルサプライヤー  大洋技研株式会社
・日程と会場
《予選》
2025年7月12日(土)、13日(日) 大阪会場
朝日新聞大阪本社アサコムホール(大阪市北区中之島)など
2025年7月19日(土)、20日(日)、21日(月・祝) 東京会場
朝日新聞東京本社読者ホール(東京都中央区築地)など
   
 
 各チームは、5日程のうち1日程を選んで出場。予選で優秀な成績をおさめたチームが本選に進出する。本選出場枠は、5日程をあわせて14チームの予定。1月に東京・大阪で開いたプレ大会で優勝した2チームを加えて、16チームで本選を競う。

《本選~決勝》
 2025年8月7日(木)~8日(金)
  朝日新聞東京本社読者ホール(東京都中央区築地)
  2日間にわたって対局し、高校日本一のチームを決定する。
・対局方式
 予選では、東京会場、大阪会場のいずれかに集まって頂きます。対局は、麻雀アプリ「セガNET麻雀 MJ」と「麻雀格闘倶楽部Sp」を活用する。チームの2人がともに、2つのアプリを使って対局し、合計得点で順位が決まる。
 本選~決勝では、2つのアプリによる対局と、全自動卓を用いた実際の牌による対局を併用。チームの2人はそれぞれ、アプリによる対局、実際の牌による対局を両方行う。 
 
・参加資格
 日本国内の高校生、高等専門学校生(1~3年生)、中等教育学校生(4~6年生)、特別支援学校の高等部の生徒、高校と同等のインターナショナルスクールなどの生徒で、自身のスマートフォンに「セガNET麻雀 MJ」「麻雀格闘倶楽部Sp」の両アプリをダウンロードし、操作できる方。
同じ学校の2人1組でチームを作り応募。同じ学校からの応募数に制限はない。
・ルール 
  Mリーグルールに準じます。一発・裏ドラ・カンドラがあり、赤牌のドラあり。
  Mリーグルールの詳細は https://m-league.jp/about
 
・参加費
  無料。ただし、予選・本選ともに各会場への交通費・宿泊費は自己負担。
・参加特典
  予選に参加するすべてのチームに対し1冊ずつ、朝日新聞の連載をまとめた書籍「暁のMリーグ 麻雀に人生を捧げた16人の物語」(朝日新聞出版)をプレゼント。
・表彰
  優勝チーム・準優勝チームをはじめ、上位チームを表彰し、副賞を贈呈する。
・応募の締め切り
  予選で、大阪会場を希望するチームは7月6日(日)まで、東京会場を希望するチームは7月9日(水)まで。
・お問い合わせフォーム https://krs.bz/asahi/m/hsccontact
朝日新聞社メディア事業本部
イベント・スポーツ事業部
 https://krs.bz/asahi/m/hsccontact

株式会社Ribura、淑徳高校の進路指導DXを支援開始

 株式会社Ribura(東京・渋谷区、伊藤 竜聖代表取締役社長)は、学校法人大乗淑徳学園 淑徳高等学校(東京・板橋区、五島徳之 学校長)に進路指導業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する新システムの開発に着手したことを発表した。
 煩雑な進路関連業務を大幅に効率化し、教職員が生徒一人ひとりと向き合う時間を創出するとともに、将来的には蓄積されたデータをAIで分析し、より個別最適化された進路指導の実現を目指す。

 淑徳高校は、約1,200名の生徒が在籍しており、進路指導においては複数の部署が関与し教職員の業務負荷増大が喫緊の課題となっていた。また、進学実績データも各部署で異なるフォーマットで管理されており、情報の集約や戦略的なデータ活用が困難な状況だった。
 このような背景から、生徒と向き合う時間を確保し、より質の高い進路指導を実現するため、抜本的な業務改革とデータに基づいた指導体制の構築が求められていた。
 Riburaはこれらの課題に対し、長年培ってきたAI技術と教育現場への深い洞察を融合させ、教職員の皆様が「迷わず使える」「確実に楽になる」ことを徹底的に追求した、これまでにない教育現場本位の進路支援システムを実現する。これにより、教職員の働き方改革を推進し、生徒が自らの可能性を最大限に引き出せる教育環境の創出に貢献する。将来的には、蓄積されたデータをAIが分析し、より高度な個別最適化指導や新たな教育的価値の創出を目指し、教育DXのモデルケースとなるべく開発を進めていく。