次期学習指導要領に向け、体育科・保健体育科を「技能を習得させる授業」から、全ての児童生徒が運動やスポーツの楽しさを味わい、生涯にわたって多様な形で関われる力を育てる授業へと再構成する方向が示されている。文部科学省の中央教育審議会が10月5日に公表した審議まとめと、体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループの取りまとめ案に盛り込まれた。
見直しの柱となるのが、小学校から高校までの12年間を発達段階に応じて捉え直すことだ。小学校1~4年生を「各種の運動の基礎を培う時期」、小学校5年生~中学校2年生を「多くの領域の運動を経験し、スポーツの基礎に触れる時期」、中学校3年生以降を「卒業後も運動やスポーツに多様な楽しみ方で豊かに関われるようにする時期」と位置付ける。
小学校中学年にも「遊び」の要素
現在、「運動遊び」を中心に構成しているのは主に小学校低学年だが、見直し案では対象を小学校4年生まで広げる。児童が夢中になって試行錯誤し、他者と関わりながら体を動かす機会を確保し、「やってみたい」という内発的な動機を引き出す考えである。
ただし、自由に遊ばせる授業へ変更するものではない。教師が身に付けさせたい動きを設定し、場や用具、ルールを工夫した上で、遊びの要素を取り入れる。ワーキンググループは、動きの習得を軸としながら、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」を行き来する学習を想定している。
中学年の水泳は「水遊び」に再整理
水泳領域も見直される。現行の小学校体育では、低学年が「水遊び」、中学年と高学年が「水泳運動」とされている。新たな系統性のイメージでは、小学校1~4年生を「水遊び」、5・6年生から「水泳運動」とする案が示された。
これは中学年で泳法を扱わなくなる、あるいは水泳授業を廃止するという意味ではない。水に親しむ楽しさ、水中での多様な動き、もぐる・浮く・進むといった基礎を重視し、5年生以降の泳法学習へ滑らかにつなげる考えである。水難事故から身を守る力を育てることも、学校で水泳を学ぶ重要な意義として維持される。
一方、学校プールの老朽化や維持費、猛暑による授業中止、教員の負担といった課題もある。スポーツ庁は2026年2月、水泳授業の機会を確保するため、教育効果、教員負担、財政面などを多角的に検討するよう教育委員会に通知した。社会体育施設や民間施設の利用、外部人材との連携は今後さらに重要になる可能性があるが、学校外への委託を一律に求めるものではない。
「体育理論」は「スポーツ理論」へ
中学校・高校の「体育理論」は、「スポーツ理論」へ名称を改める方向である。スポーツを実際に行う「する」だけでなく、「みる」「支える」「知る」「集う」「つながる」といった多様な楽しみ方を学ぶ。科学的な知識、安全な実施方法に加え、スポーツを文化、経済、教育などの側面から考える内容を重視する。
高校の専門学科「体育」についても、教科名を「スポーツ」に変更する案が示された。競技技能の向上だけでなく、スポーツイベントの企画・運営や指導、地域のスポーツ活動を支える人材の育成を強める。
「態度」の評価も再構成
評価方法では、公正、協力、責任、参画、共生、安全など、これまで主に「学びに向かう力・人間性等」に位置付けられてきた要素を、「運動との関わり方」として知識・技能を中心に再整理する方向である。
単に「協力しようとしているか」を評価するのではなく、なぜ協力や安全への配慮が必要なのかを理解し、実際の行動につなげられるかを指導・評価する。形式的になりやすい体育の態度評価を、より具体的にする狙いがある。将来的には中学校体育の評定にも関わる論点だが、具体的な評価基準は今後の検討事項である。
これらは次期学習指導要領の検討段階の方向性であり、正式決定ではない。文科省のスケジュール案では、新学習指導要領の全面実施を小学校で2030年度、中学校で2031年度、高校では2032年度の入学生から順次始め、2034年度の全面実施を想定している。今後、答申や告示の過程で内容が変更される可能性がある。
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