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教職課程を厳選、CBTや段階別免許を検討 中教審が教員制度改革案

 文部科学省は9月9日、中央教育審議会大学分科会の会議資料として、教職課程や教員免許制度を見直す「審議のまとめ(案)」を公表した。教員免許取得に必要な共通的な学修内容を厳選し、多様な学部・学科の学生が教職課程を履修しやすくする一方、各自の「強み専門性」に関する学修を位置付ける。

 教職課程には、児童生徒の多様な特性と包摂、学級経営、教育方法、デジタル学習基盤などを加える。コアカリキュラムの到達状況を確認するCBTを導入し、教員採用試験の一次選考との連動も検討する。教育実習では、記録様式の全国標準化・電子化や、一部を学校体験活動とする仕組みを盛り込んだ。

 教員免許状については、基礎的、標準的、上級の段階に再編する方向を提示。算数、理科などの小学校専科免許状の新設、高専卒業者の免許取得、特別免許状の授与基準の具体化なども検討する。

 現時点では審議案であり、実施時期や具体的な必要単位数は決まっていない。ただ、教員不足への対応が、採用人数の確保から養成・免許・研修制度全体の再設計へ進んでいる。塾講師や民間教育経験者が学校教育へ参入する経路が広がる可能性もあり、教育人材市場への影響を継続して見る必要がある。

文科省、高校改革「N-E.X.T.ハイスクール」を始動 3000億円基金で全国75校を支援

 文部科学省は8月24日、2040年を見据えた高校教育改革を推進する「N-E.X.T.ハイスクール キックオフフォーラム」を開催した。約3000億円の高等学校教育改革促進基金を活用して各都道府県に先導校を創出し、その成果を地域全体の高校へ広げる。現時点で全国75校が採択されている。

 同構想は、社会や産業構造の変化に対応した高校教育を実現するため、自治体の首長や教育委員会、地域住民、大学、産業界、関係機関などが連携・協働する際の共通ビジョンとなる。フォーラムでは産業界関係者による対談、知事や教育長、企業経営者、大学学長らによるパネルディスカッション、先導校の事例紹介などを実施した。現地では約400人が参加し、オンラインを合わせた参加者は1000人を超えた。

 松本洋平文部科学大臣は、先導校の成果を全国に展開するため、2027年度概算要求に「高等学校教育改革交付金」などの創設を盛り込む方針を示した。文科省は各都道府県と連携し、地域単位で進める高校改革への支援を継続するとしている。

文科省、東京新聞社説に訂正要求 情報教育の授業時数「学校任せではない」

 文部科学省は8月24日、東京新聞が8月19日付朝刊に掲載した社説「情報教育の拡大 現場の疲弊招かぬよう」について、授業時数に関する記述に事実誤認があるとして、訂正を求めた経緯と事実関係を公表した。東京新聞は8月22日付紙面に、記事を訂正する旨を掲載した。

 社説では、総授業時数を増やさず、「各学校の裁量で他教科の授業時間を最大15%削減して情報教育に当てる」と説明し、授業時間の削減判断を学校現場に委ねることへの懸念を示していた。

 次期学習指導要領に向けた中央教育審議会の議論では、小学校の総合的な学習の時間に「情報の領域」を加え、中学校で「情報・技術科」を新設する方向で検討している。年間の標準総授業時数は増やさず、小学校3年生以上で現在35コマ以下の教科・領域を除き、それぞれの既存時数から一定割合を減らして、情報教育に必要な時間を確保する案である。

 各教科などの具体的な標準授業時数は、教育課程全体の議論を踏まえて今後、国が示す。文科省は「各学校の裁量で最大15%削減する」「難しい判断を現場任せにする」との記述は事実と異なるとして、東京新聞に対し今後の報道でも事実関係を正確に扱うよう申し入れた。

文科省、AI研究支援「SPReAD」で456件を採択 応募1万5868件、採択率2・9%

 文部科学省は7月27日にオンラインで開いた第23回科学技術・学術審議会基礎研究振興部会で、「AI for Science 萌芽的挑戦研究創出事業(SPReAD)」の第1回公募結果を報告した。大学の研究力強化や世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の今後、社会から支援される基礎研究の在り方についても議論した。

 SPReADは、幅広い研究分野へのAI活用を促すため、迅速な資金提供、伴走支援、独創的な研究の芽出しを進める事業である。年間2回の公募で計1000件程度を採択する計画で、第1回には787機関から1万5868件の応募があった。このうち456件を採択し、採択率は2・9%となった。

 応募には学生による2624件も含まれ、採択課題のうち61件が学生によるものだった。学部生の課題も2件採択されている。民間企業の研究者からは127件の応募があった。研究領域では生命科学・薬学、電気・電子・情報科学、臨床科学が多く、社会科学、材料・プロセス、数理・数学、農学・環境学、芸術・人文科学などにも採択が広がった。

 審査ではピアレビューに無作為抽出とAIによる補助を組み合わせた。応募者へのAIインタビューでは、出力の信頼性や精度、判断過程のブラックボックス化に対する懸念が多く挙がった。このほか、AIの利用経験や知識の不足、適切なツールの選び方、学生や研究チームへの指導、計算資源の確保なども課題となった。

 文科省は、採択者がAI活用の課題やノウハウを共有するコミュニティーを形成し、計算環境の構築や研究者間の連携を支援する。採択率の低さや無作為抽出への納得感、研究期間の短さなどを踏まえ、審査の透明性向上と採択規模の拡充を来年度予算要求に向けて検討する。

 同部会ではこのほか、WPI全体のブランド確立や社会への情報発信、クラウドファンディングなどを通じた研究資金の多元化についても意見を交わした。学校教育との連携では、子供と保護者が一緒に科学へ関心を持てるアウトリーチ活動の必要性などが指摘された。文部科学省「基礎研究振興部会(第23回)議事録」

文科省、スポーツによる「健康インフラ」構築へ

経済効果は年12.6兆円 現役世代の運動実施率向上を重点に

 松本大臣は7月8日、スポーツ・健康産業専門展示イベント「SPORTEC2026」で、運動・スポーツを通じた「健康インフラ」の構築による「健康・活躍社会」の実現パッケージを発表した。心身の健康を支える環境を社会全体で整備し、一人ひとりが長く元気に働き、活躍できる社会の実現を目指す。

 背景にあるのは、現役世代の運動・スポーツ実施率の低さや、心身の不調による休職・離職、働き手の高齢化に伴う転倒・骨折などの労働災害の増加である。日本の成長を支える人材の力を最大化するには、働く世代の健康維持が欠かせない。文部科学省とスポーツ庁は、運動・スポーツを健康づくりや経済成長につなげる施策を一体的に進める。

 発表では、定期的な運動・スポーツの実施により心身の健康改善が図られた場合、年間12.6兆円の経済効果が生まれるとの試算も示された。筑波大学人間総合科学学術院の久野研究室による試算で、医療費抑制や労働生産性向上など、運動習慣の社会的価値を示す数字として位置付けられている。

 パッケージの柱の一つが、現役世代の運動実施率向上だ。従業員の運動・スポーツを促す取り組みを行う企業などに対し、自治体を通じて支援する新たな仕組みを構築する。健康経営や人的資本経営への関心が高まる中で、企業が従業員の健康づくりに取り組みやすい環境を整える。

 身近な運動・スポーツの場の確保も進める。学校体育館を地域に開放し、管理を含めて外部委託することで「コミュニティ・ジム」として整備する構想が盛り込まれた。学校施設を地域の健康拠点として活用することで、住民が日常的に運動しやすい環境を広げる狙いがある。

 また、トップアスリートの競技力向上で蓄積された知見を、一般の人々の健康改善に還元する取り組みも進める。トレーニングデータやコンディショニング情報などを活用する「スポーツDXデータバンク構想」を推進し、ハイパフォーマンス領域の知見をライフパフォーマンス向上へつなげる。

 スポーツを楽しむ機運の醸成も重要な施策となる。スタジアムやアリーナを、スポーツ観戦だけでなく音楽イベントなどのエンターテインメントにも活用できる複合施設として整備・運営するため、人材育成や民間資金の確保について議論するプラットフォームを立ち上げる。

 松本大臣は、スポーツを通じて得られる経験や人とのつながりは、人々の生活を豊かにするとしたうえで、年間12.6兆円の経済効果を生む大きなインパクトを持つ存在でもあると強調した。文部科学省、スポーツ庁として、スポーツ振興と国民の健康増進に全力で取り組む考えを示した。

 少子高齢化が進み、労働力人口の減少が課題となる中で、健康寿命の延伸や現役世代の活躍支援は、社会保障、企業経営、地域づくりの共通課題となっている。今回のパッケージは、スポーツを競技や余暇活動にとどめず、人材の健康を支える社会基盤として位置付けるものだ。

 今後は、企業、自治体、学校、スポーツ団体、民間事業者が連携し、運動・スポーツを日常生活にどう定着させるかが焦点となる。学校施設の地域開放やスポーツDXの活用、健康経営との接続が進めば、教育・地域・産業を横断した新たなスポーツ政策の展開につながりそうだ。

次期学習指導要領、AIを「使いこなす力」重視へ 情報活用能力を学びの基盤に 各教科で活用広がる見通し

 文部科学省は、次期学習指導要領に向けた議論の中で、生成AIを含むデジタル技術を適切に活用する力の育成を重視する方針を示している。AIが社会や仕事、学びのあり方を大きく変える中、子どもたちがAIを単に使うだけでなく、目的に応じて使いこなし、情報を吟味しながら自ら考える力を育てることが柱となる。

 中央教育審議会の各ワーキンググループでは、生成AIやデジタル学習基盤の活用を学習指導要領にどのように位置付けるかについて検討が進んでいる。これまで学校現場でのAI活用は、自治体や学校、教員の判断に委ねられる面が大きく、活用の有無や質に差が生じることが課題とされてきた。

 次期学習指導要領では、こうした格差を抑え、すべての児童生徒がデジタル技術を学びに生かせるよう、情報活用能力の育成をより明確に位置付ける方向だ。情報を集める、整理する、分析する、表現する力に加え、AIが生成した情報の妥当性や信頼性を確かめる力も重要になる。

 情報教育については、小学校の総合的な学習の時間に「情報の領域(仮称)」を加える案が示されている。探究学習の中で、情報の収集や整理、発信、情報モラルなどを体験的に学ぶことを想定する。中学校では、現行の技術・家庭科を再編し、「情報・技術科(仮称)」を創設する方向で議論が進む。小中高を通じて、情報活用能力を系統的に育てる狙いがある。

 外国語教育でも、AIの活用が重要な論点となっている。高精度な翻訳や音声認識、対話型AIが普及する時代に、なぜ外国語を学ぶのかという本質的な意義を問い直す必要があるためだ。次期学習指導要領では、AIを含むデジタル学習基盤の活用を明記し、生成AIを活用して自分の考えを英語で表現する活動なども検討されている。

 一方で、AIの利用には課題もある。生成された内容をそのまま信じてしまうことや、考える過程をAIに任せすぎること、個人情報や著作権、情報モラルへの配慮が不十分になることへの懸念がある。そのため、AIを使う力と同時に、AIの特性や限界を理解し、必要に応じて使わない判断をする力も求められる。

 今回の議論は、教育現場に対しても大きな変化を促す。教員には、AIを授業改善や個別最適な学びにどう活用するか、児童生徒にどのようなルールや判断軸を示すかが問われる。教材会社や学習塾、EdTech企業にとっても、AIを前提とした教材・サービス開発が一段と重要になる。

 AI時代の教育で問われるのは、正解を早く出す力だけではない。多様な情報を比較し、自分の考えを形成し、他者と対話しながら課題を解決する力である。次期学習指導要領におけるAI活用の位置付けは、学校教育を「知識を覚える学び」から「情報と技術を使い、自ら考え続ける学び」へ転換する契機となりそうだ。

外国人児童生徒への日本語指導、国がガイドライン整備へ 指導水準の底上げと学校現場の負担軽減を両立

 文部科学省の有識者会議は、外国人児童生徒等への教育充実に向けた報告書案を了承した。日本語指導が必要な児童生徒が増加する中、国として日本語指導に関するガイドラインを整備し、指導内容や方法を具体的に示す方向だ。自治体や学校ごとに差がある支援体制を標準化し、教育の質を高める狙いがある。

 近年、外国にルーツを持つ子どもや、日本語指導を必要とする児童生徒は増加している。文部科学省は、令和7年度の「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」を公表し、在籍状況、指導の実施状況、個別の指導計画、教育委員会の体制整備などを把握している。子どもたちが学校生活に適応し、教科学習に参加できる環境づくりは、全国的な課題となっている。

 報告書案では、日本語指導の水準向上に向け、在籍学級での学びと「特別の教育課程」による日本語指導をどう連携させるかが重要だとした。日本語指導に初めて関わる教員でも取り組めるよう、指導内容や方法、支援の進め方を国が具体的に示す必要がある。

 特に、来日直後など日本語での学校生活に不安が大きい児童生徒への初期支援が課題となっている。現在は、初期日本語指導を行う「プレクラス」の仕組みや運用方法が自治体によって異なり、支援の質に差が出やすい。今後は、全国展開を見据え、国がモデルづくりや財源確保を含めて検討する。

 また、学校現場の負担軽減と教育の質の確保を両立するため、都道府県教育委員会がハブとなる体制整備も求められている。市町村や学校だけで対応するのではなく、広域自治体が研修、専門人材の派遣、関係機関との連携支援などを担うことで、地域間格差を抑える考えだ。

 個別の指導計画の活用も重要な論点となる。日本語指導が必要な児童生徒一人ひとりについて、学習状況や支援内容を関係者で共有し、継続的な支援につなげることが求められる。報告書案では、学校現場の過度な負担とならないよう、簡易な様式や電子ファイルでの一体的な運用も検討するとしている。

 さらに、生成AIやオンラインを含むデジタル技術の活用もガイドラインに盛り込む方針だ。翻訳支援、教材作成、個別学習支援などでICTを活用することで、教員の負担を軽減しながら、児童生徒の理解度や母語背景に応じた支援を行いやすくする。

 専門人材の活用も進める。登録日本語教員や日本語指導補助者、母語支援員などを学校現場でどう生かすかが課題となる。教員養成大学などで、日本語指導や外国人児童生徒教育を専門とする人材を継続的に育成する体制づくりも必要になる。

 外国人児童生徒への日本語指導は、単に日本語を教えるだけではない。子どもが持つ母語や文化的背景を強みとして捉え、学校生活への適応、教科学習への参加、進学・就職の機会確保につなげる包括的な支援が求められる。

 少子化が進む一方で、地域によっては外国にルーツを持つ子どもの存在感が高まっている。今回のガイドライン整備は、多文化共生時代の学校教育を支える基盤づくりとなる。自治体、学校、地域団体、民間教育機関が連携し、子ども一人ひとりの学びをどう保障していくかが今後の焦点となりそうだ。

デジタル教科書を正式位置付け 学校教育法改正が成立 紙とデジタルの融合へ

 紙とデジタル双方の特性を生かした新たな教科書づくりを可能にする「学校教育法等の一部を改正する法律」が6月10日、参議院本会議で可決、成立した。今後、デジタルな形態を含む教科書が法的に正式な「教科書」として位置付けられ、学校現場での活用が進むことになる。

 今回の制度改正は、教科書の全面デジタル化を目的とするものではない。これまで紙のみが教科書として認められていた制度を見直し、デジタルの利点を取り入れた教材を教科書として作成できるようにすることで、学習効果の向上を目指す。

 現行のデジタル教科書は、紙の教科書と同じ内容をタブレット端末などで表示する「教科書代替教材」として位置付けられている。一方、新制度では動画や音声、インタラクティブな表示機能などを教科書そのものに組み込むことが可能となる。

 例えば英語ではネイティブスピーカーによる音声教材を教科書の一部として掲載できるほか、理科では実験動画を組み込むことができる。また、学習内容を段階的に表示するなど、デジタルならではの表現方法も認められる。児童生徒の理解を深め、より分かりやすい学習環境の実現が期待される。

 さらに、現在は教科書に掲載された二次元コードのリンク先にある動画や資料は「教材」として扱われ、教科書検定の対象外となっている。改正後は、こうしたデジタルコンテンツも教科書の一部として位置付けられ、検定対象となることで内容の質や信頼性の確保が図られる。

 文部科学省は今後、新たな教科書制度の運用に向けて大臣指針や教科書検定基準の整備を進める方針だ。発行、採択、無償給与などの仕組みについても具体的な制度設計を進め、学校現場への円滑な導入を目指す。

 GIGAスクール構想によって1人1台端末環境が整備された中、今回の法改正は教科書制度そのものをデジタル時代に対応させる大きな転換点となる。紙の良さを維持しながらデジタルの強みを取り入れる新たな教科書のあり方が、今後の学校教育にどのような変化をもたらすか注目される。

著作権法改正案を国会審議へ 音楽利用時のアーティストへの対価還元を強化

 5月29日、第221回国会の衆議院文部科学委員会で、「著作権法の一部を改正する法律案」の審議が始まり、文部科学大臣の松本剛明氏が提案理由を説明した。

 法案の柱は、音楽CDや配信音源がレストランや商業施設、店舗などでBGMとして利用された際に、アーティストやレコード製作者へ適切な対価を還元する仕組みを新たに整備することにある。

 現在、日本では楽曲の作詞家や作曲家に対する著作権使用料の制度は整備されているものの、実際に歌唱や演奏を行った実演家やレコード製作者については、店舗などでの音源利用に対する十分な対価還元の仕組みが整っていないとの指摘があった。

 今回の改正案では、いわゆる「レコード演奏・伝達権」を導入し、商業用レコードが公の場で再生・伝達された場合に、実演家やレコード製作者が二次使用料を受け取る権利を新たに認める。これにより、音楽の利用実態に応じた収益分配を実現し、創作活動を支える環境整備を目指す。

 こうした制度は欧米をはじめ多くの国で既に導入されている。一方、日本では制度が未整備だったため、日本のアーティストや実演家は海外で楽曲が利用された場合でも十分な対価を受け取れないケースがあり、国際的な権利保護の面で課題となっていた。

 松本大臣は提案理由説明の中で、「実演家等への望ましい対価還元を図り、我が国の音楽や、それを伝える実演家等の海外展開を一層促進する観点から必要な措置である」と述べ、法案への理解を求めた。

 近年、日本の音楽コンテンツは海外市場で存在感を高めている。政府としては、クリエイターやアーティストが適正な収益を得られる環境を整えることで、音楽産業全体の発展や国際競争力の強化につなげたい考えだ。

 法案は今後、衆議院文部科学委員会で詳細な審議が行われる。成立すれば、日本の著作権制度における実演家・レコード製作者の権利保護が大きく前進することになりそうだ。

デジタル教科書を正式な「教科書」に 学校教育法改正案を国会で説明

 5月29日、第221回国会の参議院本会議で、文部科学大臣の松本剛明氏が、「学校教育法等の一部を改正する法律案」の趣旨説明を行った。法案は、動画や音声などデジタルの特性を取り入れた新たな教科書制度を整備し、紙とデジタルそれぞれの長所を生かした学習環境の実現を目指すものだ。

 現在の制度では、学校での使用義務や検定、採択、義務教育段階での無償給与の対象となる「教科書」は紙媒体に限られている。一方、デジタル教科書は「教科書代替教材」として位置付けられ、紙の教科書と同じ内容をパソコンやタブレット端末上で表示する役割にとどまっている。

 今回の法改正案では、動画や音声、アニメーションなどデジタルならではの機能を組み込んだ教材を「教科書」として認めることを可能にする。また、紙媒体だけでなくデジタル形式を含むものについても法的に教科書として位置付け、検定や採択、無償給与などの対象とする。

 近年、GIGAスクール構想の推進により児童生徒一人一台端末の環境整備が進むなか、デジタル教科書の活用拡大が議論されてきた。今回の法改正は、その流れを制度面から後押しするものといえる。

 ただし文部科学省は、紙の教科書を全面的に廃止してデジタルへ移行する方針ではないことを強調している。これまでも「紙中心の学習環境を基本としながら、デジタルの特性が生きる場面で活用する」という考え方を示しており、今回の法案もその延長線上に位置付けられる。

 法案は今後、参議院の文教科学委員会に付託され、詳細な審議が行われる予定だ。成立すれば、紙とデジタルを組み合わせた新たな教科書のあり方が本格的に検討されることになる。

 教育現場では、動画による実験解説や音声教材、多様な学習支援機能など、デジタルならではの学習効果への期待が高まる一方、児童生徒の視力への影響や学習習慣の変化、学校間のICT環境格差なども課題として指摘されている。今後の国会審議では、こうした論点も含めた議論が注目されそうだ。