月刊私塾界2025年6月号(通巻530号)...

巻頭言  最近よく言われていることの一つに、「問い」の大切さがある。世の中には課題が山積し、その解決が叫ばれるのに、なぜ問いのほうが大事なのか。 理由は大きく分けて二つある。 一つは、問い次第で課題の設定が変わり、結果として得られる答えも変わってくるからである。もう一つは、AI(人工...

私塾界リーダーズフォーラム 2025 S/S...

 6月4日(水)に御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターにて、「私塾界リーダーズフォーラム2025 Spring / Summer Connect」を開催いたします。 季節講習や新年度の募集を時代のニーズに合わせたスタイルにするための方法を、皆さまとともに考えてまいります。 今回の「私塾...

月刊私塾界2025年5月号(通巻529号)...

巻頭言 「内定時に配属本部・職種を約束」「給与は担う職責に応じて決定」――。3月1日に解禁された富士通の新卒採用のウェブサイトには、こうした文字が踊る。 富士通は「新卒一括採用」を廃止する。入社後の職種や人材要件をあらかじめ提示し、年間採用人数の計画を決めずに通年で募る。初任給の額も...

月刊私塾界2025年4月号(通巻528号)...

巻頭言 奨学金支援と教育の未来  近年、日本の労働市場において若者の定着率向上が課題となっている。その解決策の一つとして、企業や自治体が奨学金の肩代わり制度を導入し、若者を呼び込む動きが広がっている。この制度は、学生にとっては学費負担の軽減、企業にとっては人材確保という双方にメ...

月刊私塾界最新号

月刊私塾界2025年6月号(通巻530号)

巻頭言  最近よく言われていることの一つに、「問い」の大切さがある。世の中には課題が山積し、その解決が叫ばれるのに、なぜ問いのほうが大事なのか。 理由は大きく分けて二つある。 一つは、問い次第で課題の設定が変わり、結果として得られる答えも変わってくるからである。も...

塾ニュース|塾・企業

東京書籍、文部科学省「令和6年度 小・中・高等学校を通じた英語教育強化事業(AIの活用による英語教育強化事業)」を受託

 東京書籍株式会社(東京・北区、渡辺能理夫 代表取締役社長)は、文部科学省が実施する「令和6年度 小・中・高等学校を通じた英語教育強化事業(AIの活用による英語教育強化事業)」において、実証実施団体...

塾ニュース|教育ICT

学校法人国際総合学園 FSGカレッジリーグ AI教育推進に関する連携協定を締結

 NSGグループの福島県郡山市で専門学校5校と高等課程1つを運営する学校法人国際総合学園 FSGカレッジリーグ(福島県郡山市)は、AI教育プログラム「AI STUDIO」を展開する株式会社dott(東京都台東区)と2025年5月29日(木)に「AI教育推進に関する連携協定」を締...

塾ニュース|地域教育

デザイン思考が高校教育を変える── hyphenateと富山商業高校の挑戦が、入学志願者数2年連続定員超えという成果に

 デザインファームのhyphenate株式会社(読み:ハイフネイト、本社:東京都千代田区)は、2021年より富山県立富山商業高等学校(以下、富商)とともに、デザイン思考を取り入れた教育プログラムを設計・実践している。 生徒が自ら問いを立て、考え、形にしていく—— そんな学びへの...

塾ニュース|受験

都立中高一貫校、2026年度入試日程を発表 35人学級を導入へ

 東京都教育委員会は6月12日、2026年度(令和8年度)の東京都立中等教育学校および都立中学校の入学者決定に関する実施要綱と細目を発表した。一般枠募集の検査日は2026年2月3日、特別枠募集は2月1日に行われる。 対象となる都立中高一貫校は、都立中等教育学校が小石川、桜修館、...

大阪経済大学と大阪電気通信大学が大学間連携協定を締結

 2025年6月9日、大阪経済大学と大阪電気通信大学は、大学間連携に関する包括協定を締結した。式典は大阪電気通信大学寝屋川キャンパスのOECUイノベーションスクエアで開催され、両大学の学長をはじめとする関係者が出席した。
 この協定は、大阪経済大学が培ってきた経済・経営領域の「実践知」と、大阪電気通信大学の工学・情報・医療・ゲーム領域の「実践知」を融合し、学問領域の垣根を越えた新たな知の共創を目指すもの。今後は、授業科目の共同開発、相互履修・単位互換、共同研究、学生交流プログラムなど、学びの連携を多角的に展開していく。
 また、「知と知をつなぐ」をキーワードに、文理の枠を超えた越境型教育プログラムの構築も視野に入れ、デジタル時代に求められる、幅広い視野と課題解決力を備えた人材の育成に取り組む。

特定非営利活動法人 大分県海外教育支援機構が「令和6年度外務大臣表彰」を受賞

 ジェイリース株式会社(大分市・東京・新宿区)の代表取締役会長 中島 拓が名誉理事長を務める特定非営利活動法人 大分県海外教育支援機構(理事長:三宮 康司、所在地:大分県大分市)は、「令和6年度外務大臣表彰」を受賞した。

 この表彰は、同機構によるこれまでの日本語教育の支援活動や、国際交流促進、日韓友好親善への顕著な功績が認められたもの。
 2025年6月16日(月)、ソウル・ロッテホテルで開催された「日韓国交正常化60周年記念レセプション」にて、外務省より表彰状が授与された。

東京書籍、文部科学省「令和6年度 小・中・高等学校を通じた英語教育強化事業(AIの活用による英語教育強化事業)」を受託

 東京書籍株式会社(東京・北区、渡辺能理夫 代表取締役社長)は、文部科学省が実施する「令和6年度 小・中・高等学校を通じた英語教育強化事業(AIの活用による英語教育強化事業)」において、実証実施団体として採択された。

 実証では、生成AIを活用した当社の対話型学習サービス「教科書AIワカル」を用い、英語学習における可能性と有効性について、学校現場に即した形で検証していく。

 事業は、急速な進化を遂げる生成AIの活用により、生徒の「話すこと」や「書くこと」の活動を質・量ともに充実させて、学ぶ意欲を高めることで、英語教育の抜本的な強化を図ることを目的としている。英語を使う機会の少なさや学習の動機づけの弱さといった長年の課題に対し、AI活用による新たな教育モデルを構築し、その実践を通じて知見を蓄積し、さらなる普及を目指す。この事業は、2025年5月から2026年1月末までの期間で実施される予定だ。

 東京書籍は、この事業において、「教科書AIワカル」を全国10校のモデル校に提供し、授業や家庭学習での活用方法や教育効果の実証研究を進めていく。

「教科書AIワカル」は、令和7年度版中学校英語教科書『NEW HORIZON』に完全準拠しており、生徒はAIとの自然な対話や英語会話シミュレーションを通じて、発話力・表現力を主体的に高めることが可能だ。チャット形式のインターフェースや音声読み上げ機能、実生活を想定した会話演習機能などを備え、生徒一人ひとりのペースに合わせた学習を支援を行う。

 東京書籍はこの事業を通じて、教科書という共通の学習基盤に基づいた生成AI活用モデルを構築し、全国10校での実践事例やデータをもとに、導入支援のあり方や授業モデルの確立を目指す。さらに、立命館大学やインパクトラボとの連携のもと、学校現場に根ざした変革を推進し、全国規模での英語教育の質的向上に貢献していく。

学校法人国際総合学園 FSGカレッジリーグ AI教育推進に関する連携協定を締結

 NSGグループの福島県郡山市で専門学校5校と高等課程1つを運営する学校法人国際総合学園 FSGカレッジリーグ(福島県郡山市)は、AI教育プログラム「AI STUDIO」を展開する株式会社dott(東京都台東区)と2025年5月29日(木)に「AI教育推進に関する連携協定」を締結した。

 この協定は、文部科学省の生成AI利用に関するガイドラインの改定など、教育分野におけるAIの必要性が急速に高まる背景を受け、現代社会で必須スキルとなるAIリテラシー(AIを理解し活用する能力)を早期に習得・向上することで、あらゆる分野で活躍できる人材の育成を目的とし、締結を執り行った。

 また、専門学校としては「東北で初となるAI教育推進の連携協定」となり、地域活性化と学術の振興に大きく貢献できるものと考え、AI活用教育での地域発による全国的なAI教育モデルの構築を目指す。

【主な連携内容】

(1)FSGカレッジリーグ5校(対象学生:900名以上)※1で「AI STUDIO」※2の導入による、実践的なAIスキル知識の習得

(2)株式会社dottでのインターシップを通した、さらなる実践的な職業教育の場を提供

(3)FSGカレッジリーグ教職員に対するAI活用研修を通した、授業や業務改革支援の促進

(4) AI教育の効果を測定し、その結果をもとに職業教育により適したAI教材へと改善・改定

※1 FSGカレッジリーグ5校・・・国際ビジネス公務員大学校、国際アート&デザイン大学校、国際情報工科自動車大学校、国際医療看護福祉大学校、国際ビューティ&フード大学校

※2 AI STUDIO・・・株式会社dottが開発したAIを“使う力”と“作る力”の両方を育成できる次世代型教材

JQA『カンボジア 子ども環境教育』を5年ぶりに開催

 一般財団法人日本品質保証機構(東京・千代田区、石井 裕晶 理事長)は、2011年より、世界文化遺産“アンコール遺跡群”があるカンボジア・シェムリアップ州にて、アプサラ機構、シェムリアップ州教育青年スポーツ局、および上智大学アジア人材養成研究センターの協力のもと実施している『カンボジア 子ども環境教育』を、このたび5年ぶりに開催した。

『カンボジア 子ども環境教育』とは、観光と環境保全を同時に進めるシェムリアップ州に暮らす小学生を対象とした環境教育プログラムで、ISO 14001の基礎となるPDCAの考えを取り入れた環境教育を行うことで、子どもたちが生活する村や学校における環境上の課題に気づき、自らその課題に向き合い、改善できるようになることを目指している。2018年からは、小学校のカリキュラムに同プログラムを取り入れるための試行活動を始めた。

 現地での教育はコロナ禍により一時中断していたが、2024年11月、5年ぶりに開催。Kok Kreul 小学校、Daun Euv小学校、Trapeang Svay小学校に通う4~6年生の児童382名を対象に実施し、その後、約6カ月間にわたり、小学校教員指導のもと、児童たちはグループに分かれて環境活動に取り組んだ。

 2025年5月29日には、優秀な取り組みを行ったグループに対して表彰式を行い、表彰状と記念品を授与。出席した、リ・ブンナ氏(シェムリアップ州 教育青年スポーツ局長)からは、「本教育プログラムの実施は非常に重要です。子どもたちが“ライフスキル”を身に着ける場になっているだけでなく、社会において知識、技能、そして高い倫理観を備えた人材育成を促進するという国家教育政策にも合致しています。」との謝辞もあった。

 なお、表彰式の様子は、国営テレビ・シェムリアップ (Television of Kampuchea: TVK, TV Siemreap)、国営ラジオ(Radio National of Kampuchea)、アプサラ機構、シェムリアップ州情報局(Siem Reap Provincial Department of Information in Cambodia)など、現地メディアおよび関係機関にて高い関心をもって紹介された。

英進館バーチャルキャンパス、開校1年で生徒数2.5倍に急増

 地域・状況問わない質の高い学び実現へ大手学習塾の英進館が2024年4月に開校したオンライン塾「英進館バーチャルキャンパス」が、開校からわずか1年で生徒数を約2.5倍に伸ばし、累計200名超の生徒が受講するまでに成長したことが発表された。株式会社コードタクトが提供する授業支援クラウド「スクールタクト」を中学部に導入することで、質の高い学習環境を実現し、学びの地域間格差の解消や不登校支援といった教育課題にも対応する「新たな学びの選択肢」として実績を上げている。バーチャル教場の充実した設備と高い合格実績英進館バーチャルキャンパスは、8階建ての校舎を再現したバーチャル教場を備えており、アバターに扮した生徒が教場内を自由に動き回ることができる。学年・習熟度別のライブ授業に加え、授業動画を視聴できる視聴覚室、自習室、生徒や保護者との面談室なども完備。英進館の教師陣による指導はオンラインでも距離を感じさせず、開校初年度である2025年には、中学受験で愛光(愛媛)や福岡大学附属大濠(福岡)、高校受験で修猷館、筑紫丘、福岡(いずれも福岡)など、全国の難関国公私立校へ多数の合格者を輩出している。

 教育格差の解消と不登校生徒への支援オンラインという特性を活かし、バーチャルキャンパスでは首都圏、離島、さらには海外からの受講者も増加しており、英進館が誇る国内最高水準の学びを、地域による格差なく提供することを可能にしている。また、不登校により対面での通塾が難しくなった生徒も、バーチャルキャンパスを通じて休まずに学びを継続できるようになり、オンラインで過去のテストに取り組んだり、教師・生徒・保護者が学習状況を共有したりすることで、適切な支援のもとで学びの遅れを着実に取り戻している。

 英進館バーチャルキャンパス責任者の太郎浦智晶氏は、開校当初は「校舎に通えないから仕方なくバーチャル」という消極的な理由で通っていた生徒が、今では「むしろバーチャルの方が便利で安心、受験までお世話になりたい」と積極的に選ぶようになっていると述べている。また、対面では発言の多さから授業を妨げがちだった生徒が、バーチャルキャンパスでは気づきの早さを生かして仲間や教師を支える存在になるなど、子どもたちの前向きな変化が多方面で見られるとしている。「スクールタクト」は、AIとスタディログを活用して学び合いを可視化する授業支援クラウドであり、低速インターネット環境でも安定して動作している。これまでに文部科学省や総務省などのICT教育実証事業に採択され、全国の小学校から大学、学習塾など2,500校を超える教育機関に導入されている。

AIC国際学院大阪初等部、国際バカロレアPYP認定校に

 株式会社AICエデュケーション(大阪・吹田市) が運営するAIC国際学院大阪初等部(熊谷 優一 校長)は、国際バカロレア(IB)プライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)の認定校として、2025年4月23日付で正式に承認された。大阪府下ではIB PYPの認定校として4校目となり、2023年4月の開校からわずか2年という異例の速さでの認定取得となる。

 IB PYPは、3歳から12歳の子どもたちを対象に、探究を基盤とした学びを通じて心身のバランスの取れた成長を促す国際的な教育プログラム。今回の認定は、同校が提供する教育の質が国際的な基準を満たしていることの証となる。熊谷優一校長は、「国際バカロレア・ディプロマプログラム校として、これまで他校で短期間での認定取得に携わってきた経験があるが、小学生向けのPYP認定は初めてで、チーム一丸となって勉強してきた」と述べ、認定への喜びを語った。また、ディプロマプログラムの必修科目である「知の理論(Theory of Knowledge)」の上級試験管としての経験を活かし、大学進学に必要な学力やその評価方法を初等部のカリキュラム設計に反映させていることを強調している。同校は2028年4月には中等部の開校も予定しており、初等部から高等部まで一貫したIB教育の提供を目指している。認定記念イベント開催へ今回の認定取得を記念し、同校は一般向けの特別イベントを複数開催する。

授業体験会:IB PYPの教育を実際に体験できる授業体験会が、2025年7月19日(土)と8月31日(土)に開催。年中・年長の子どもたちを対象に、サークルタイム、リーディング、アート、サイエンスなど、普段の授業が凝縮された45分間のプログラムが提供される。

チャリティ・キャラバンin大阪2025 夏:大阪女学院中学校高等学校との共催で、2025年7月27日(日)に特別イベント「国際バカロレアの学習と学びの連続性について考える」を開催する。イベントでは、近年増加する国際バカロレアプログラム提供校における学習の連続性、特に高校生対象のディプロマプログラム(DP)へのつながるカリキュラム設計について、指導者と学習者の視点から考察する機会を提供する。

インドの小学校で環境問題を“自分ごと”に。学研が体験型ワークショップを実施

 株式会社 学研ホールディングス(東京・品川、宮原 博昭 代表取締役社長)は、2025年5月末、インド・バンガロールの私立校「Inventure Academy」にて、環境教育をテーマとした体験型ワークショップを実施した。CO₂の検出実験やテラリウム作りを通じて、児童が日々の生活と環境問題をつなげて考える授業だ。

 このプログラムは、日本での探究型・体験型学習の知見をもとに現地仕様で再設計された実証的な試みであり、東京都北区立谷端小学校との教室間交流も実現した。学研は今後、現地教育機関や企業との連携を視野に、子どもたちの多様な学びを支援していく。

■体験を通じて考える:環境教育ワークショップをインドの小学校で実施

 学研ホールディングスは2025年5月末、インド南部・バンガロール市内の私立校「Inventure Academy(インベンチャー・アカデミー)」にて、5年生約40名を対象とした体験型の環境教育ワークショップを開催した。新学期初週のうち4日間を使って実施されたこのプログラムは、学研がインドでの教育連携に向けた第一歩として試験的に導入したもの。

■CO₂検出実験やテラリウム作りで“自分ごと”化を促す

 当日の授業では、子どもたちがグループで協力しながら、身近な生活と結びついたCO₂排出量を測る実験や苔や小石・土を使ったテラリウム(小さな生態系の再現)作りに挑戦した。材料や道具の調達には制約もあったが、むしろそうした環境が児童の創意工夫や粘り強さを引き出す結果となった。普段触れる機会の少ない自然物を手にし、自由にデザインするプロセスには終始、活気と笑顔が溢れていた。

 今回の2つのプログラムは、環境問題についての知識だけでなく、「それが自分の生活とどう関係するのか」「自分に何ができるのか」を考えるための“問い”を中心に構成されている。教室内では現地の先生も積極的に参加し、児童とともに学ぶ光景が多く見られた。

■日本の小学校から動画メッセージ 日印の5年生同士の交流を促進

 今回のワークショップでは、日本の公立小学校(東京都北区立谷端小学校)でも同様の内容が先行実施されており、インドの教室では谷端小の児童たちからの動画メッセージも上映された。これに応じる形で、Inventure Academyの児童たちからも質問や感想が多く寄せられ、双方の子どもたちの間に自然な関心と対話が生まれた。

デザイン思考が高校教育を変える── hyphenateと富山商業高校の挑戦が、入学志願者数2年連続定員超えという成果に

 デザインファームのhyphenate株式会社(読み:ハイフネイト、本社:東京都千代田区)は、2021年より富山県立富山商業高等学校(以下、富商)とともに、デザイン思考を取り入れた教育プログラムを設計・実践している。
 生徒が自ら問いを立て、考え、形にしていく—— そんな学びへの大胆な転換が、今、確かな成果を生んでいる。富商では、2024年度は入学志願倍率県下1位、2025年度は2位と2年連続で定員を超過。学校の魅力と学びの質の両面を押し上げ、地域内外から高く評価されている。
 hyphenateは、制服という身近でリアルなテーマを起点にしたプログラムを設計し、生徒自身が学校のルールや価値観に疑問を持ち、実際に変えるアクションへとつなげていった。「問いを立てる力」「見直す力」「創造する力」といった、これからの時代に不可欠な思考スキルを実践を通して育む。受動的な学びから抜け出し、生徒自身が学びの主役となる—— この教育のアップデートが、地方の公立高校を面白くしている。

■“正解探し”をやめたとき、生徒が動き出す。─ デザイン思考がひらく、新しい授業のかたち
 富商が抱えていた課題は、進路の多様化に対応しきれないカリキュラムと、生徒の受け身な学習姿勢だった。hyphenateが提供するデザイン思考プログラムは、これらの課題に対し、具体的なアプローチで解決策を提示。それが、学生服。従来の講義形式だったデザイン思考の授業は、“リアルな問い”からはじまる実践型プログラムへと変更した。
「これはテストに出る?」ではなく、「自分が着たい制服って、どんなのだろう?」—— そんな問いから始まる授業には、熱が生まれる。生徒たちは、自ら問いを立て、インタビューで情報を集め、試作をつくり、フィードバックをもとに改良する……。まさに、デザイン思考のプロセスそのものを、制服というテーマを通じて実践した。
 自分が感じる違和感に向き合い、アイデアをかたちにし、社会に提案していく。このプロセスこそが、生徒の学びを「自分ごと」に変えていった。そして、この変革を力強く後押ししたのは、先生たちのたゆまぬ探求心と、デザイン思考への深い関心であった。

■教科書では教えきれないリアルな学び
― 制服のプロトタイプに、安全ピンが大活躍!「まずやってみる」から始まる本質的な気づき
 デザイン思考の基本プロセスは、通常、インタビューや分析、インサイト発掘から始まる。しかし、富商の授業では、あえて「まずやってみる」プロトタイピングから実践した。ファッションデザイナーも参加し、アイデアスケッチから、自分たちの体型に合わせた丈の調整まで。安全ピンで仮止めして、自分で“理想のシルエット”を探るというダーティープロトタイプを繰り返し実施。憧れの他校の制服に対し、これまではいわゆる表層的な可愛さで捉えていた生徒たちも、自校の「制服がダサい」という表面的な意見から「体系に合った制服(今の)にするだけで、見違えるほど着こなせる」という制服が持つ根本的な課題に気づいた。—— 試して、直して、また議論する。この繰り返しこそが、まさにデザイン思考。制服は、生徒にとって学びの“素材”として最高の教材となった。

― 商業実践イベント「TOMI SHOP」でファッションショー!
 富商の生徒たちが仕入れから販売までを一貫して行う商業実践イベント「TOMI SHOP」では、生徒たちが自分たちで考えた新しい制服案をステージでお披露目。もちろん、台本も演出もすべて生徒の手でつくった。また、オープンハイスクールでは中学生も巻き込み、新制服デザインへの投票やインタビューも実施。自分たちのアウトプットが“社会に触れる”経験は、彼らにとってもはじめての体験。「制服を通して、こんなに話せるんだ」—— そんな驚きが、教室を越えて広がっていった。

―「学校のルール」も思考の対象に
 デザイン思考は、単なる見た目のデザインに留まらない。「制服のルールは30年前のまま」「“ひざ下丈”は不良っぽく見えないための措置だった」という「校則」の背景まで掘り下げ、「学校のルール」そのものをデザイン思考の対象とした。生徒と教員が対話し、協働することで、制服の自由化やジェンダーニュートラル対応といった、生徒たちのニーズに合わせたルールへのアップデートを実現。生徒が自らの学校環境をより良くしていくプロセスを通じて、行動変容を促した。

■段階的な導入と実践
2021年度
デザイン思考の基礎を導入し、生徒たちの新たな学びへの興味を喚起
2022年度
「制服刷新」をテーマに本格始動
プロトタイピングやファッションショーを通じて実践力を育成
2023年度
制服リニューアルの実例からデザイン思考の活用法を深掘り
2024年度
「理想の会社」をテーマに、問いを立て、仮説検証する力を養成
2025年
富山県下の産物を使った鍋のスープ販売プロジェクトを開始
カスタマージャーニーマップの作成を通じて、ユーザー視点での商品開発を実践

 現在、生徒の問いに応えるカリキュラムは、もっと社会とつながる学びへと進化をしている。

■2年連続の定員超えが示す、デザイン思考教育の確かな効果
 これまで定員割れに悩んでいた富商。しかし、デザイン思考を取り入れた教育プログラムは、富商の魅力と教育力を飛躍的に向上させた。その結果、2024年度には県下トップの入学志願倍率で定員を上回り、さらに2025年度も県下2位という、競争の激しい環境下において際立った成果を収めている。これは、デザイン思考が、生徒の学習意欲を刺激し、学校全体の教育プログラムを革新したことを明確に示している。生徒が自ら課題を捉え、解決に挑む「自分ごと化」された学びこそが、この確かな効果をもたらした。

■デザイン×教育が拓く、未来の学び
 デザインは、見た目や表層的な部分だけでなく、物事の本質を理解し、より良い未来を創造するための強力なアプローチ。富商の生徒たちは、この教育プログラムの意味を深く理解し、授業に力強く臨んでくれている。生徒が自ら課題を捉え、解決に挑む「自分ごと化」された学びこそが、この確かな効果をもたらした。
 hyphenateは今後も、富商の生徒、教員、そして学校全体、ほかの学校や地域社会とも手を取りながら、デザイン思考に出会える場を広げていくという。「問いを立てる」「見直す」「創造する」—— この3つの力が育てば、どんな未来も自分たちでデザインできる。
 社会の変化に流されるのではなく、自らの手で流れをつくる人を、これからの教育で増やしていきたい。
 デザイン×教育が交差する場所から、もっと面白い未来が、きっと生まれる。

■富山商業高等学校 安田隆先生からのコメント
 富商は、「自ら社会の課題を発見し、周囲のリソースや環境の制限を超えて行動を起こし、新たな価値を生み出すアントレプレナーシップ(起業家精神)を持ったチェンジメーカーの育成」を目指しています。ビジネスは、お客様の心に響くサービスで喜んでいただくこと。そのために「何をすべきか」だけでなく「なぜ取り組むべきか」という問いを立て、創造的に考える力が不可欠です。自分が「どうありたいか」のビジョンを持ち、多様な人々と協力しながら、前例のない挑戦に自らステップを創る。
 hyphenateと共に行うこのデザイン思考教育プログラムは、まさに未来を切り拓く人材育成に大きく貢献していると実感しています。生徒たちの主体的な学びと成長は目覚ましく、このプロジェクトが着実に進化を遂げていることを確信しています。

■hyphenate株式会社
hyphenate株式会社は、プロダクト・UI・サービスデザイン、ブランディング、組織ビジョン・人づくりのデザイン、事業計画に至るまで、デザインを介した幅広いサービスを提供。お客さまの組織や個人の知見、専門性を最大限に活かす共創の場をつくり、一人ひとりのクリエイティビティを解放し、これまでにない価値の創出と具現化を図る共創型デザインファーム。
https://www.hyphenate.jp

米最高裁「政治的中立でない」58% 保守化への不信感浮き彫りに

 ロイターとイプソスが6月11~12日に米国で実施した世論調査で、連邦最高裁判所が「政治的に中立ではない」と考える米国民が58%に達したことが分かった。「中立である」との回答は20%にとどまり、22%は「分からない」「無回答」だった。特に民主党支持層では「中立ではない」との回答が74%に達しており、保守化する司法への強い不信感が浮き彫りになった。
 調査は成人1136人を対象に行われ、誤差は±3ポイント(政党別は±5~6ポイント)。共和党支持者では29%が中立と答えたが、それでも54%は否定的だった。全体として、米国民の多くが、近年の最高裁の判断に対して政治的偏向を感じている状況がうかがえる。