Category: 塾ニュース|サイエンス

探査機ボイジャー1号が観測装置を停止 寿命延長に向けた改修へ

 NASA(米航空宇宙局)の深宇宙探査機「ボイジャー1号」は、限られた電力を節約するために科学観測装置の一つである「低エネルギー荷電粒子観測装置(LECP)」の電源を停止した。この措置は、地球から最も遠く離れた場所で運用されている同探査機の寿命をさらに延ばすための苦渋の決断である。同様の停止措置は、2025年3月にボイジャー2号でも実施されていた。

 1977年に打ち上げられた両探査機は、それぞれ木星、土星、天王星、海王星のフライバイ観測を支援するための10種類の装置を搭載し、当初の予定寿命である5年を大幅に超えて稼働し続けている。現在、ボイジャー1号は地球から約254億キロ、ボイジャー2号は約213・5億キロの距離にあり、太陽圏の外で運用されている唯一の探査機となっている。探査機を稼働させる放射性同位体熱電発電機(RTG)からは毎年推定4ワットの電力が失われ続けており、技術者たちは燃料ラインの凍結などのリスクを避けつつ、極めて困難な電力のバランス調整を求められている。
 今後、運用チームは「ビッグバン」という愛称で呼ばれる大規模な電源切り替えの改修作業を計画している。これは一部の電源をオフにし、消費電力の少ない代替装置をオンにすることで、探査機の熱を保ちながら観測を継続する試みだ。この改修は2026年5月から6月にかけてボイジャー2号で試験され、成功すれば7月にはボイジャー1号でも試行される予定となっている。この計画が成功すれば、ボイジャー1号が飛行開始から50周年の節目を迎えられるだけでなく、停止したLECPを再起動して星間空間の驚くべき発見を継続できる可能性も期待されている。

Space BD、H3ロケット6号機で基幹ロケット初の民間相乗り打上げ 商業宇宙利用拡大へ前進

 Space BD株式会社は4月24日、2026年6月打上げ予定のH3ロケット6号機(30形態試験機)において、搭載される全6機のペイロードについて打上げインテグレーション支援を担当すると発表した。このうち4機は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との協定に基づく民間向け相乗り打上げサービスとして提供され、日本の基幹ロケットでは初の民間主導による相乗り打上げ案件となる。

 搭載される衛星には、九州工業大学など産学官連携で開発された超小型衛星「VERTECS」、株式会社BULLのスペースデブリ低減実証衛星「HORN-L」「HORN-R」、フランス企業Unseenlabs SASの海上監視衛星「BRO-22」などが含まれる。さらに、JAXAの「革新的衛星技術実証3号機」に搭載される2機の超小型衛星についても支援を行う。今回の打上げでは、1つの搭載ポートから複数の衛星を放出できる「インターフェースプレート」と、放出信号を分配する「シーケンサー」を日本の基幹ロケットで初導入。打上げインフラの高度化により、小型衛星需要の増加に対応する。日本の基幹ロケットを活用した民間商業サービスの本格化に向け、国内宇宙産業の競争力強化につながる一歩となりそうだ。

ロッテ、中高生と希少果実「カリン」研究成果発表会 飼料・化粧品・酸化防止剤へ新活用提案

 ロッテは4月24日、次世代研究者育成プログラム「サイエンスキャッスル研究費2025 ロッテ賞」の成果発表会を、同社中央研究所(埼玉県さいたま市)で開催した。需要低下で生産量が減少している希少農産物「カリン」の価値向上をテーマに、中高生3チームが約半年間研究を進め、その成果を披露した。発表では、カリンを酸化防止剤として活用する研究、養殖魚向け飼料への応用、植物由来の日焼け止め開発など、従来の「のど飴素材」というイメージを覆す多彩なアイデアが並んだ。ロッテ研究員が伴走支援し、生徒たちは実験設計やデータ分析、プレゼンテーションまで取り組んだ。

 参加した研究員からは「着眼点に驚かされた」「研究者として刺激を受けた」との声も上がり、企業と次世代人材が連携する探究学習の好事例となった。ロッテは今後も、研究支援を通じて未来の人材育成に取り組む方針だ。

日本初、サスライアリの女王を展示 国立科学博物館の特別展で公開

 国立科学博物館は、2026年3月14日から開催される特別展「超危険生物展 科学で挑む生き物の本気」において、極めて希少な「サスライアリの女王」の標本を日本で初めて一般公開する。本標本は、テレビ番組の取材中にアフリカのケニア山麓で発見されたもので、世界でも数少ない貴重な個体の一つとされる。

 サスライアリは数千万匹という大規模な群れで移動し、獲物を食い尽くす生態で知られている。その中心となる女王アリは、常に膨大な群れの奥深くに保護されているため、専門家による長年の調査でも姿を確認することが困難であり、「生きる伝説」と称されてきた。今回の標本は、アリの研究に30年以上携わってきた島田拓氏や、九州大学総合研究博物館の丸山宗利准教授らの調査チームが、ケニアでの現地調査において遭遇・撮影に成功したものである。
 展示される女王アリは、体長が5センチを超える巨大な姿が特徴だ。黒い光沢を放つ腹部には卵が詰まっており、1日に数千個を産卵すると推定されている。また、その寿命は約30年にも及ぶと考えられており、昆虫の中でも極めて特異な生命力と繁殖能力を有している。本展では、この「アリの頂点」とも呼ぶべき存在の標本を通じて、生命の神秘と進化の多様性を提示する。
■開催概要
展覧会名:特別展「超危険生物展 科学で挑む生き物の本気」 
会 期: 2026年3月14日(土)~6月14日(日)
休館日: 月曜日、5月7日(木)
     ※ただし、3月30日(月)、4月27日(月)、
      5月4日(月・祝)、6月8日(月)は開館。
会 場: 国立科学博物館(東京・上野公園)
展覧会公式サイト:https://chokikenseibutsuten.jp
公式X: @chokiken2026
公式Instagram:@chokiken2026
※会期、開館時間等は変更する場合あり。
※入場料等の詳細は、今後公式サイト等で順次発表される予定。

政府、科学技術投資を60兆円に倍増へ 防衛・安全保障分野を初明記

 政府は2026年度から5年間の科学技術開発に関わる投資について、現行計画の2倍にあたる総額60兆円に増額すると17日、発表した。小野田紀美・科学技術政策担当相は閣議後会見で「研究力低迷や、物価・人件費の上昇が続く中で、我が国の存在感の埋没が懸念される。意欲的な目標を設定する」と述べた。

 30年度までの投資額として、策定中の「第7期科学技術・イノベーション基本計画」に明記し、今月中に閣議決定する。

 政府は科学技術予算などの総額の目標値を、5年ごとの基本計画に書き込んでいる。21~25年度の現行「第6期」については総額30兆円を目標に定めていた。ただ、22~24年には「新技術立国」を掲げる高市早苗首相が科技相となり、5年間の予算実績は43兆円を超えた。

 新しい基本計画では、科学技術と国家安全保障との連携や、デュアルユース(軍民両用)研究の推進を政府として初めて明記する。政府は17日、航空機の無人化・自律化などの「防衛産業」の研究開発を強化する重要領域として、新たに追加することを発表した。

 政府関係者によると、26年度から5年間の政府投資額について、自民党側から強い増額の要望があったという。通常の予算に加え、財政投融資や、企業の研究開発投資を促進する税制なども使い、政府投資倍増を目指すことにした。

研究力ランキング、中国が上位独占 日本勢は東大が14位、京大が35位と苦戦

 学術出版大手シュプリンガー・ネイチャーによる最新の研究機関ランキング「ネイチャー・インデックス」において、中国の研究機関がトップ10のうち9枠を占める圧倒的な結果となった。国別順位でも中国は1位を維持し、2位の米国、3位のドイツ、4位の英国に続き、日本は世界5位に踏みとどまったものの、個別の大学順位では厳しい状況が続いている。

 日本勢で最高位となったのは東京大学の14位で、昨年の10位圏外から順位を上げたものの、中国勢が占めるトップ10には届かなかった。続く京都大学は35位、大阪大学は68位、東北大学は82位、名古屋大学は91位と、国内主要国立大学の多くが前年比で順位を落とす結果となった。私立大学では慶應義塾大学が164位、早稲田大学が192位にランクインした。

沿岸の海面上昇、想定より最大90センチ高く 「方法論の盲点」で過小評価か

 世界の沿岸部における海面が、従来の予測モデルよりも大幅に高く、一部地域では約90センチも上回っていることが、オランダのワーゲニンゲン大学などの研究チームによる調査で明らかになった。5日付の英科学誌「ネイチャー」に掲載されたこの研究は、世界が海岸線の消失速度とその脅威を過小評価していると警鐘を鳴らしている。

 研究チームは、過去15年間に発表された海面上昇に関する査読済み論文385件を分析した。その結果、研究の90パーセントが実際の観測データではなく、地球の重力場や自転のみを利用した推計モデルに基づいていることが判明した。このモデルは潮汐、風、海流、海水温、塩分濃度といった複雑な要因を考慮しておらず、フィリップ・ミンデルハウト准教授はこれを「方法論上の盲点」と指摘している。

ポケモン誕生30周年、科学界に多大な影響 新種命名や教育への応用も

 世界的な権威を持つ学術誌「Nature」は、誕生30周年を迎えた「ポケットモンスター」が科学界に与えた影響を振り返る特集記事を掲載した。1996年に任天堂のゲームボーイ用ソフトとして発売されて以来、ポケモンは生態学や進化生物学、教育、さらには学術出版の健全性など、多岐にわたる分野で研究者たちのインスピレーションの源となっている。

 同誌によると、幼少期のポケモン体験が科学者としてのキャリアに直結した例は少なくない。カナダのゲルフ大学の研究者、スペンサー・モンクトン氏は、ポケモンを収集し特徴ごとに分類するプロセスを「分類学者の仕事そのもの」と指摘。実際にチリで発見した新種のミツバチを、ポケモンの「リザードン(英名:Charizard)」にちなんで「Chilicola charizard」と命名した事例を紹介している。
 古生物学の分野でもその存在感は大きい。米シカゴのフィールド博物館では、翼竜をモデルにした「プテラ」や始祖鳥から着想を得た「アーケオス」など、ポケモンとそのモデルとなった実際の化石を対比させる企画展が予定されている。現実の翼竜の中には、プテラにちなんで「Aerodactylus」と名付けられた属が実在するなど、学名への影響も顕著だ。
 教育面では、英国の児童が地元の野生生物よりもポケモンの名前を多く記憶しているという調査結果を受け、そのゲーム性を応用した生態系学習カードゲーム「Phylo」が開発された。この手法は、従来のスライド授業よりも生物種の記憶定着率が高いことが実証されている。
 また、学術界の課題である「ハゲタカジャーナル(粗悪な学術誌)」の告発にもポケモンの世界観が利用された。台湾大学のマタン・シェロミ氏は、「オーキド博士」などの架空の共著者を用いた偽論文を投稿。ずさんな審査で公開に至った実態を暴くことに成功した。30年を経て、ポケモンは単なる娯楽を超え、科学の発展と健全性を支える一助となっている。

パンチ工業、月面探査車「YAOKI」開発でダイモンと提携更新

 パンチ工業は、宇宙技術ベンチャーのダイモンと技術パートナー契約を更新した。月面探査プロジェクト「Project YAOKI」への参画を継続し、2027年度後半に予定される次期ミッションに向けて協力体制を強化する。

 両社は2023年に初めて技術パートナー契約を締結し、2025年に実施された「Project YAOKI 1(PY-1)」に参画。パンチ工業は3D計測技術を用いて、月面探査車「YAOKI」と輸送ケース(デプロイヤー)との隙間や弾性材の厚さを測定し、輸送時の振動による故障防止と着陸後の放出機構の最適化に貢献した。

 PY-1では米宇宙企業の着陸船の姿勢異常により、YAOKIはケースから放出されなかったものの、デプロイヤー内部から月面撮影を行いデータ送信に成功するなど、予定されていた機能の遠隔操作に成功した。

 2026年5月からの新契約では、従来の3D計測データの提供に加え、YAOKI本体に装着する金属部品や熱可塑性樹脂部品の開発・加工にもパンチ工業が参画する。さらに、月面環境を模した極高真空やレゴリス(微粒砂)条件下での走行実験も共同で実施し、技術協力の範囲を拡大する。

 次期ミッション「Project YAOKI 2(PY-2)」では、改良型YAOKIを2機月面へ輸送し、月面走行や接写画像の取得を通じて資源探査などを目指す計画だ。YAOKIは重量約500グラムの超軽量ロボットで、月面輸送コストが1キログラムあたり約1億円とされる宇宙開発において、軽量化技術の重要性が高まっている。

 パンチ工業は精密金属加工技術を強みに、2016年から航空宇宙分野への参入を重点課題として掲げてきた。今回の連携を通じ、宇宙産業で培った技術を既存事業や新規事業にも活用していく方針としている。

スペースX、月面都市建設へ重点シフト マスク氏が火星優先から戦略転換を宣言

 米スペースXのイーロン・マスク最高経営責任者は、これまでの火星最優先の姿勢を転換し、月面への都市建設へ重点をシフトすると宣言した。同氏は2026年2月9日、自身のSNSにおいて、火星の都市建設には20年以上を要する可能性がある一方、月であれば10年未満で実現できる可能性があると言及。より迅速な文明の拠点構築を目指す方針を示した。
 戦略転換の理由として、地球からの距離と打ち上げ機会の差が挙げられている。火星への到達には約半年を要し、最適な打ち上げ機会は26カ月ごとに限られる。対して月は2日で到達可能であり、10日ごとに打ち上げ機会が訪れるため、開発サイクルを大幅に早めることができる。ただし、同氏は火星都市建設への挑戦も継続する意向で、今後5から7年以内には着手する予定だとしている。