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東京理科大学の硤合憲三名誉教授にノーベル化学賞 不斉自己触媒作用を発見

 スウェーデン王立科学アカデミーは10月7日、2026年のノーベル化学賞を東京理科大学名誉教授の硤合憲三(そあいけんそう)氏と、フランス・パリ南大学名誉教授のアンリ・カガン氏に授与すると発表した。授賞理由は「不斉有機合成における非線形効果および自己触媒作用の発見」である。

 硤合氏は、化学反応で生じた生成物そのものが触媒として働き、同じ構造の生成物を増やしていく反応を研究した。1995年に独自の「硤合反応」を発表し、2003年には鏡像関係にある分子の一方を自己触媒的に増幅させることに成功した。医薬品などでは、鏡像関係にある分子の違いが作用や副作用に影響することがあり、分子を選択的に作り分ける技術は重要な研究領域となっている。

 今回の受賞は、成果が直ちに見えにくい基礎研究を大学が長期にわたって支える意義を改めて示した。中学校・高校の化学や探究学習でも、教科書の知識が世界的な研究成果や医薬品開発へどのようにつながるかを考える題材となる。理系進路や研究職を生徒に伝える際にも活用できるニュースである。

SINET6と高松市AIデータセンターを接続 大学向けGPU計算基盤を強化

 GPUクラウドサービスを提供する株式会社ハイレゾ(志倉喜幸代表)は9月、国立情報学研究所が構築・運用する学術情報ネットワーク「SINET6」と、同社の高松市データセンターを接続した。接続回線には、NTTグループの次世代光ネットワーク構想「IOWN」を構成するオールフォトニクス・ネットワークを実装した。

 これにより、SINET6を利用する全国の大学や研究機関に対し、高松市データセンターのGPU計算資源を高速・大容量、低遅延で提供する体制を整えた。同データセンターは2024年12月に開設。床面積は約687平方メートル、投資額は約100億円で、画像生成AIや大規模言語モデルなどの計算処理に対応する。

 生成AI研究では、高性能GPUの調達費用や計算環境へのアクセスが研究実施の制約になりやすい。大学が学術ネットワーク経由で外部計算資源を利用できる環境の拡大は、研究機関間の格差縮小や、地方大学を含むAI人材育成の基盤強化につながる可能性がある。

千葉豪雨、珍しい「スコールライン型」の長時間停滞 気象研究所がメカニズム解析

 気象庁気象研究所は9月15日、先月発生した千葉豪雨について詳しいメカニズムを解析し、通常は停滞しない「スコールライン型」と呼ばれる積乱雲のまとまりが、長時間にわたって房総半島付近に停滞する珍しい現象だったことを明らかにした。

 スコールライン型は、積乱雲が降らせた雨によって生じた冷気が前方へ広がり、その先端で暖かく湿った空気を押し上げることで、新たな積乱雲が次々と発達する現象。通常は冷気の進行とともに強い雨のエリアも速い速度で移動するが、今回の千葉豪雨では雨雲のまとまりが長時間にわたって停滞した。
 気象研究所によると、今回は冷気が雨雲のまとまりを東へ押し進める一方、太平洋から暖かく湿った東風が吹き込み、両者が互いに押し合う状態となった。このため、積乱雲のまとまりの移動速度は「ランニング以下」にまで遅くなったという。
 スコールライン型は非常に発達した積乱雲を伴い、激しい雨をもたらすのが特徴。千葉豪雨では積乱雲が上空15キロ以上に達していた。さらに、雨雲の北側では上昇気流を局地的に強める渦も発生しており、特に強い雨をもたらした一因になったとみられている。

松江高専准教授ら、彗星核表面の反射特性を地上観測で初測定

 松江工業高等専門学校の浦川聖太郎准教授が参加する研究チームは、すばる望遠鏡の公開アーカイブデータから、ネウイミン彗星の核表面が太陽光を反射する特性を精密に測定した。地上観測による彗星核表面の反射特性の精密測定は世界初となる。

 研究チームは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「HSC」が2016年3月7日に撮影した画像を分析した。ネウイミン彗星は、太陽と地球の間の距離の10倍以上、太陽から離れた位置にあり、核を覆うガスや塵の雲「コマ」が発生していなかった。このため、通常は観測が難しい彗星核を直接捉えることができた。

 分析の結果、同彗星は太陽光を正面から受ける位置で、小惑星よりも多くの光を反射して明るくなることが分かった。彗星核と小惑星では、表面を構成する粒子の大きさや、粒子間の隙間の状態が異なる可能性を示している。

 浦川准教授は、公開画像から彗星や小惑星の位置と明るさを測定するアプリケーション「COIAS(コイアス)」を開発しており、同彗星が画像に捉えられているかを検証した。成果は8月25日付の日本天文学会欧文研究報告に掲載された。

文科省、海洋と地球温暖化をテーマに公開シンポ 9月15日にオンライン開催

 文部科学省の「気候変動予測先端研究プログラム」は9月15日、公開シンポジウム「海から見る地球温暖化~変わりゆく海が教えてくれる地球の今~」をオンラインで開催する。時間は午後1時から3時まで。参加費は無料で、事前登録が必要となる。

 同プログラムは、気候変動の仕組みの解明や、自治体・民間企業の対策ニーズを踏まえた高精度な予測データの創出に取り組んでいる。研究成果を「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の評価報告書や、国際的な気候予測プロジェクト「結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP)」へ提供することも目的の一つである。

 シンポジウムでは、プログラムに参加する3人の研究者が登壇する。海洋と大気の相互作用をはじめ、温暖化がプランクトンなどの生物や人間社会に与える影響まで、海で進む変化と最新の研究成果を解説する。申し込みは気候変動予測先端研究プログラムの特設サイトで受け付ける。

静岡大など、マイクロプラスチックを蛍光染色するタンパク質を開発

 静岡大学大学院博士課程2年の橋野嘉仁さん、同大学農学部・グリーン科学技術研究所の中村彰彦教授、東海大学の広瀬慎美子教授らの研究グループは、プラスチック表面を認識し、マイクロプラスチックを蛍光染色できるタンパク質を開発した。

 研究では、本来キチンに結合するタンパク質「PfChBD2」にアミノ酸変異を導入。ファージディスプレイ法を用いて、PETへの結合性を高める一方、キチンやセルロースへの結合を抑えた変異体を選抜した。なかでも「VFF」と名付けた変異体は、PETへの結合性を維持しながら、天然多糖への結合性を大幅に低減した。

 VFFと赤色蛍光タンパク質を融合させ、駿河湾で採取した試料を処理したところ、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンの粒子を蛍光染色できた。今後は、材質をより選択的に認識するタンパク質や、小さな粒子を高感度で検出する蛍光プローブの開発を進める。成果は8月17日、国際学術誌「ACS Synthetic Biology」に掲載された。

東陽テクニカ、量子コンピューターを産総研「G-QuAT」に設置へ 民間企業投資による国内初の取り組み 2027年初頭に稼働予定

 東陽テクニカは、フィンランドのIQM Quantum Computersから購入した超電導型量子コンピューター「IQM Radiance20」を、産業技術総合研究所の「量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)」に設置すると発表した。民間企業が自社で投資・導入した量子コンピューターをG-QuATに設置するのは初めて。稼働開始は2027年初頭を予定している。

 東陽テクニカは、IQM社と量子コンピューターの販売代理店契約を結び、量子技術の社会実装に向けた事業を展開している。2026年4月には、20量子ビットのハイエンド拡張モデル「IQM Radiance20」の導入を決定し、売買契約を締結していた。

 設置先となるG-QuATは、産総研が2023年7月に設立した研究開発拠点。量子コンピューター、AI、HPCを融合した研究開発や産業応用、人材育成を進め、量子技術分野におけるグローバルなビジネスエコシステム形成を目指している。

 東陽テクニカは、量子技術に関する研究開発が進むG-QuATが設置場所として最適と判断し、8月6日付で産総研と設置場所に関する賃貸借契約を締結した。量子コンピューターは2026年末までに納入され、稼働後はオンプレミスとクラウド経由の双方で、国内の企業、大学、研究機関などに利用機会を提供する。

 日本では、2030年までに量子技術の国内利用者1000万人、量子技術による生産額50兆円などの目標が掲げられている。東陽テクニカは、量子コンピューターや量子センシングのユースケース創出、新たなビジネスモデルの開発、人材育成を通じて、日本における量子技術の社会実装を推進する考えだ。

 実機を活用できる環境の整備は、量子技術の産業応用を進める上で重要な基盤となる。今回の設置が、企業や研究機関による共同研究、ユースケース創出、量子人材育成を加速させるかが注目される。

文科省、ヒトES細胞研究などの関連情報を更新

生殖細胞・ヒト胚モデル作成研究の計画一覧も公表

 文部科学省は8月14日、ヒトES細胞研究、生殖細胞作成研究、ヒト胚モデル作成研究に関する関連情報を更新した。ヒトiPS細胞等から生殖細胞またはヒト胚モデルの作成を行う研究計画の一覧、ヒトES細胞の樹立・分配・使用に関する計画の一覧、国内で樹立されたヒトES細胞株および国内で使用実績がある海外樹立ヒトES細胞株の一覧を更新した。

 ヒトES細胞やヒトiPS細胞を用いる研究は、再生医療や発生生物学などの基礎研究を進める上で重要な分野である一方、生命倫理面で慎重な取り扱いが求められる。文科省は、研究の適正な実施に向けて、樹立、分配、使用、生殖細胞作成、ヒト胚モデル作成に関する指針や手引きを整備している。

 2026年2月13日には、「ヒトES細胞の使用に関する指針」「ヒトES細胞の樹立に関する指針」「ヒトES細胞の分配機関に関する指針」などを一部改正し、同年4月1日に施行した。4月1日には各指針のガイダンスも掲載している。

 また、6月8日には、倫理研修参考資料として「ヒトES細胞を用いる研究を実施しようとする場合のルール『ヒトES細胞の使用に関する指針』の概要」を更新した。研究機関や研究者が指針を理解し、適切な手続きを踏んで研究を進めるための研修資料として活用される。

 ヒト胚モデル作成研究をめぐっては、科学技術の進展により、研究可能性が広がる一方、社会的理解や倫理的な議論も欠かせない。文科省は、提出された研究計画や細胞株の使用状況を公表することで、透明性を確保しながら、生命科学研究の適正な推進を図る考えだ。

 今後は、再生医療や創薬、発生メカニズムの解明につながる研究を支えつつ、生命倫理との両立をどのように図るかが引き続き重要な課題となる。

SSH生徒研究発表会、表彰校を決定

奈良女子大学附属中等教育学校に文部科学大臣表彰

 文部科学省と科学技術振興機構(JST)は、令和8年度スーパーサイエンスハイスクール(SSH)生徒研究発表会を参集形式で開催し、表彰校を決定した。最も優秀な研究発表を行った学校として、奈良女子大学附属中等教育学校に文部科学大臣表彰を授与した。

 同発表会は、全国のSSH指定校や過去に指定経験のある学校の生徒が、日頃の研究成果を発表する場として開催されている。科学技術への興味・関心を高めるとともに、SSHの成果を広く発信することを目的として、平成16年度から実施されている。

 今年度は、SSH指定校および過去に指定経験のある239校の生徒・教員が参加した。ポスター発表を経て代表校を選出し、代表12校が全体発表を行った。その結果、文部科学大臣表彰1校、科学技術振興機構理事長賞1校、審査委員長賞2校、奨励賞8校、ポスター発表賞12校、生徒投票賞12校の延べ36校が表彰された。

 科学技術振興機構理事長賞には長野県諏訪清陵高等学校・附属中学校、審査委員長賞には栃木県立宇都宮東高等学校・附属中学校と長崎県立長崎西高等学校が選ばれた。

 SSH事業は、文科省が先進的な理数系教育を実施する高等学校等を指定し、将来の科学技術人材の育成を支援する取り組み。今年度は233校を対象に支援を行っている。生徒による探究活動の成果を発表・共有する機会として、理数教育や探究学習のさらなる充実につながることが期待される。

探査機「ニューホライズンズ」が過去最長の休眠から覚醒、地球から95億キロのカイパーベルトで活動再開

 米航空宇宙局(NASA)の宇宙探査機「ニューホライズンズ」が、過去最長となる休眠期間を経て無事に活動を再開した。米ジョンズホプキンス大学応用物理学研究所のミッション管制官の発表によると、現在、地球から95億キロメートル離れた太陽系外縁部を飛行中の同機は極めて良好な状態にあり、氷の天体が密集する「カイパーベルト」で収集した未知のデータを地球へ送信する準備を進めている。