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日本IBM「令和6年度科学技術分野の文部科学大臣表彰」において「科学技術賞」を受賞

 日本IBMは、文部科学省が実施する「令和6年度科学技術分野の文部科学大臣表彰」において、日本IBM 東京基礎研究所の小林有里氏と沼田祈史氏が、「日本における量子プログラミングの普及啓発」で「科学技術賞」を受賞したことを発表した。

令和6年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(理解増進部門)
■受賞者
日本IBM 東京基礎研究所 量子人材開発 量子人材開発担当部長 小林 有里
日本IBM 東京基礎研究所 量子人材開発 量子人材開発担当課長 沼田 祈史

■受賞内容
日本における量子プログラミングの普及啓発

 文部科学省は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的として、科学技術分野の文部科学大臣表彰を行っている。

 今回の科学技術賞の受賞は、実用化が進む量子コンピューターの普及・人材育成に関する2名の取り組みが評価されたもの。量子コンピューティングは、従来とは異なる計算アプローチを提供するものであり、現在では解決が難しい問題を解決できるようになる可能性がある。量子コンピューティング技術を活用するためには、スキルを備えた量子人材が不可欠。小林と沼田は、量子コンピューター向けのソフトウェア開発キットである「Qiskit」のコミュニティーや動画配信を通じた普及・啓蒙活動に加え、高校生が量子コンピューターを学ぶサマー・キャンプの開催、大学のカリキュラムづくり、開発者向けの実践的なプログラミング講座の主催など、中高生から大学・社会人まで幅広くアプローチし、量子人材の育成に努めている。両名は現在、IBM Quantum Global Workforce & Educationの一員として、日本国内だけでなく、海外での量子人材開発にも注力している。

国立科学博物館サイエンスコミュニケータ養成実践講座 「サイエンスコミュニケーション1(SC1)」募集開始

 国立科学博物館(篠田 謙一 館長)は、2024(令和6)年5月から8月までの期間、国立科学博物館サイエンスコミュニケータ養成実践講座「サイエンスコミュニケーション1(SC1)」を開講する。
 “サイエンスコミュニケーション”とは?といった考え方をはじめ、メディア・研究機関・博物館など、各機関・分野で活躍している講師から実践を踏まえた理論を学習する。また、様々な人々に科学を伝える際に効果的なプレゼンテーションの方法について学ぶ。

○サイエンスコミュニケータ養成実践講座「サイエンスコミュニケーション1(SC1)」概要
​【主  催】独立行政法人国立科学博物館
【講座期間】2024(令和6)年5月23日(木)~8月19日(月)
【対  象】大学院生※、博物館職員等社会人
【実施方法】オンライン形式および対面形式
【コ マ 数】 34コマ
【受講人数】 20名程度
【受 講 料】 63,000円 (国立科学博物館大学パートナーシップの学生は31,500円)
 国立科学博物館大学パートナーシップ:https://www.kahaku.go.jp/learning/university/partnership/
【応募方法】
 本講座のWEBページをご確認いただき、必要事項をご記入・作成の上、受講の際に使用予定のGmailのアドレスからお申し込みください。
URL:https://www.kahaku.go.jp/learning/university/partnership/sc/sc.php
 応募は2024(令和6)年4月24日(水)正午締切です。
※ 応募者が多数の場合は、当館大学パートナーシップ入会大学の大学院生を優先させていただきます。

○講義内容
①「サイエンスコミュニケーション概論」
②「博物館の機能とサイエンスコミュニケーション」
 講師:小川義和 埼玉県立川の博物館 館長 / 立正大学 教授

③「博物館における科学リテラシー涵養活動」
 講師:有田寛之 国立科学博物館 科学系博物館イノベーションセンター長

④「調査・研究活動と展示」
 講師:並河洋 国立科学博物館 動物研究部 研究主幹

⑤「文化としての科学技術」
 講師:岡本拓司 東京大学大学院 総合文化研究科 教授

⑥「メディアに見るサイエンスコミュニケーションの実際:出版編」
 講師:松原由幸 株式会社Gakken K12-1事業部 図鑑・科学編集課

⑦「サイエンス・ライティングの基本の“き”から」
⑩「味方を増やすライティング/闇落ちしないために」
 講師:詫摩雅子 フリーランス(元・日経サイエンス/日本科学未来館)

⑧「学校教育とサイエンスコミュニケーションの関わりと実践にむけて」
 講師:永島絹代 港区立みなと科学館 教育普及チームリーダー

⑨「サイエンスコミュニケーションにおけるリスクコミュニケーションの重要性と戦略」
 講師:鈴木美慧 聖路加国際病院遺伝診療センター・一般社団法CancerX 認定遺伝カウンセラー

⑪「メディアに見るサイエンスコミュニケーションの実際:テレビ・ウェブ編」
 講師:大石寛人 日本放送協会(NHK) メディア総局 番組ディレクター/デジタル担当

⑫「研究機関におけるサイエンスコミュニケーションの実際」
 講師:相馬央令子 宇宙航空研究開発機構(JAXA) 主幹研究開発員

⑬「課題研究」
 講師:当館研究員・職員、文化庁著作権課の職員の方

国立科学博物館:https://www.kahaku.go.jp/
サイエンスコミュニケータ養成実践講座:https://www.kahaku.go.jp/learning/university/partnership/sc/sc.php
国立科学博物館大学パートナーシップ:https://www.kahaku.go.jp/learning/university/partnership/

九州大学 日本の科学技術論を牽引した故・吉岡斉氏の資料群を公開へ

 九州大学大学文書館は、日本の科学技術論を牽引し、原子力政策にも深くかかわった故・吉岡斉氏が所蔵していた図書と紙の文書類、電子ファイルからなる資料群「吉岡斉資料」を保管している。図書については、既に目録を作成し公開しているが、その他の紙の文書類と電子ファイルについても現在整理作業を進め、2024年秋をめどに公開を開始する。(予定)

 吉岡氏が2018年に逝去された後、所蔵していた図書・文書等は一度早稲田大学の綾部広則教授と下関市立大学の川野祐二教授が引き取り、仮整理と紙の文書類のPDF化が行われた。その後、2020年に九州大学大学文書館が寄贈を受け、同年より九州大学社会運動資料研究会を立ち上げた。十数名のボランティアと大学文書館職員によって資料目録の作成作業が開始され、図書については2022年に目録が完成した。書庫を完備し、「吉岡斉科学技術史文庫」としてすでに公開している(閲覧のみ、貸出・複写は不可)。文書類については、2024年度前半までに目録作成を完了させ、秋をめどに資料全体の公開を開始する予定。

 吉岡氏は日本の科学技術論の牽引者であり、その研究にかかわる資料が残されていることで、吉岡氏の科学技術論研究がどのように形成されてきたかを跡づけることが可能となる。このことは、吉岡資料が学問分野としての戦後の科学技術論の発展過程を明らかにする上で欠かすことのできない第一級の資料であることを示している。日本の学術史の一分野にとって極めて貴重な資料であることが、「吉岡資料」の意義の1つ。また、吉岡氏は日本のエネルギー政策、特に原子力政策に大きくかかわったため、原子力利用推進派と反対派双方の資料が数多く残されている。吉岡氏は安全性やコストの面から原子力利用に批判的であったため、吉岡氏の旧蔵資料、とりわけ政府の各種会議資料中に見られる批判的な書き込みは、今後の脱原発運動にとって示唆に富むものであると考えられる。一方、原発推進側にとっても、吉岡氏の批判を受け止め、これに応えることで、原発推進に説得力を持たせることができるため、学べることが多いと期待される。

 今後の原子力政策を考える上で、非常に重要な内容を含んでいることが、「吉岡資料」の大きな意義であると考えられる。「吉岡資料」を一般公開することにより、日本の科学技術論や原子力政策の研究が飛躍的に進むとともに、今後のエネルギー政策に資することが期待される。

火星探査ヘリ「インジェニュイティ」 運用終了

 アメリカ航空宇宙局(NASA)は1月25日、火星で探査に使っていた小型ヘリコプター「インジェニュイティ」の運用が終了したと発表した。18日の飛行で翼が損傷機体の損傷、飛行能力を失ったという。

 インジェニュイティは21年2月に火星に到着。4月に地球以外の天体でヘリとして初めて飛行することに成功した。飛行回数は当初想定は5回だったが、約3年間で72回に上った。
 火星の大気は地球の1%ほどと薄く、この中でヘリが飛べるのかどうかは将来の惑星探査に向けた課題の一つだった。インジェニュイティは機体を軽くし、プロペラの回転を高速にすることで浮力を得ることに成功した。名前は英語で独創性を意味する。

天王寺動物園&群馬県立自然史博物館&池田動物園由来のキリン・カバ・ゾウの頭骨標本を3Dスキャンし精巧に再現したカプセルトイ「路上博物館 特別展-植物食-」を2024年4月に発売

 一般社団法人路上博物館(東京・文京区、森健人 代表理事)はカプセルトイメーカーの株式会社SO-TA(東京・渋谷区、安藤こうじ 代表)と共同で日本初の動物園や博物館に由来する標本を3Dスキャンしたデータを基に作った「路上博物館 特別展-植物食-」を2024年4月に発売する。
 この商品は地方独立行政法人天王寺動物園(大阪市、向井猛 園長)・群馬県立自然史博物館(群馬・富岡市、藤巻薫館長)・株式会社池田動物園(岡山県岡山市、代表取締役社長池田厚子)にそれぞれ由来する標本を3Dスキャンして作成した。本物の標本にある歪みや欠けなども可能な限り再現をした商品となる。
 足掛け1年以上にわたり、実際に路上博物館が博物館・動物園に足を運び現地で3Dスキャンをしてきたデータを基に作成した3Dモデルをベースに金型を作成した。また金型の調整とあわせて各標本の見どころや特徴的な形状をなるべく精密に再現した商品となっている。

 商品は3ヶ所の動物園・博物館から各1種類ずつ、合計3種類の動物の頭骨標本を再現した。カラーバリエーションは骨格標本の色を再現した「リアルカラー」と凹凸を観察しやすい「グレー」の2食と合計6種類の商品ラインナップとなっている。

(1)天王寺動物園由来…キリンのケニヤ

 1990年生まれ、2001年から2012年まで天王寺動物園で飼育されていたオスのアミメキリン。死亡時は22歳で当時は国内で2番目に高齢のキリンだった(オスでは当時最高齢)。額のデコボコの大きさと正面から見た時の口の歪みが特徴的で、商品でもこの2点の特長の再現には特にこだわった。

(2)群馬県立自然史博物館由来…野生由来のカバ

 群馬県立自然史博物館に収蔵されているカバ。この個体は野生由来の個体であるため年齢等は不明だが、歯の萌出段階からまだ若年の個体であると推定される。同館が開館にあわせてケニアの国立博物館から入手した。実物の標本では一部破損が見られるが、修復した形で商品化を行った。3Dモデルと比較することで修復箇所が確認できるようこだわった。

(3)池田動物園…ゾウのメリー

 1967年にタイから池田動物園に来園したインドゾウのメスの個体。2016年に51歳で亡くなった。約半世紀にわたり池田動物園の顔として多くの人々に親しまれてきた個体だ。高齢になるまで丁寧に飼育されており、高齢化や長年の食べ方の癖に伴う歯のすり減り方などの再現にこだわって制作した。

国立科学博物館 牧野富太郎の業績と植物の観察眼を紹介 ミニ企画展「牧野富太郎と植物を観る眼」開催

 牧野富太郎は、日本の植物に最も多くの学名をつけた日本人で、日本の植物学の基礎を築いた人物。牧野の観察眼によって描かれた植物画は美術的にも高い評価を得ており、今日の植物画のルーツとも言える。また、最近ではNHKの連続テレビ小説「らんまん」(NHK 2023年前期・作 長田育恵)の主人公のモデルとして描かれたことも記憶に新しい。
 筑波実験植物園では、植物の観察眼を養い表現することを推奨する植物画コンクールを毎年開催し、入選作品を企画展「植物画コンクール入選作品展」にて展示しているが今回、牧野の「植物を観る眼」に主眼をおいたミニ企画展を上野本館にて同時開催し、植物画の普及に繋げる。

牧野富太郎(1862~1957)
 高知県高岡郡佐川町生まれ。幼少から植物に興味を持ち、小学校を自主退学して独学で植物を学んだ。上京し、東京大学理学部植物学教室への出入りを許され、植物分類学の研究に打ち込み、日本植物分類学の基礎を築いた。94年の生涯において収集した標本は約40万枚といわれ、その一部は、国立科学博物館にも所蔵されている。また、自ら創刊に携わった「植物学雑誌」に論文を発表するとともに、日本各地で植物観察会を実施し、日本の植物相解明に貢献しつつ、植物学の一般への普及にも尽力した。代表作である『牧野日本植物図鑑』は、現在でも研究者や愛好家の必携の書ともなっている。1953年東京都名誉都民。1957年文化勲章受章。

ミニ企画展「牧野富太郎と植物を観る眼」概要
【主  催】独立行政法人国立科学博物館
【協  力】日本植物園協会 高知県立牧野植物園 練馬区立牧野記念庭園
【会  期】令和5年12月19日(火)~令和6年1月8日(月・祝)
【場  所】国立科学博物館 上野本館 日本館1階 中央ホール

展示構成
展覧会では、次の5章から、牧野の人となりと植物を観る観察眼について解説する。

1)牧野富太郎ってどんな人 
 パネルにより、その人となりを紹介する。

2)牧野富太郎の植物を観る眼
 国立科学博物館に所蔵されている、牧野が採集した植物標本と描いた植物画の代表作(複写)を展示し、同館の研究員が解説を加える。

3)ドラマ「らんまん」の植物たち
 連続テレビ小説「らんまん」(NHK 2023年前期・作 長田育恵)で使用された植物レプリカと、ドラマのために作成された、植物画家・米田薫氏による植物画を複数展示する。植物監修を行った当館研究員による制作秘話も紹介する。

4)植物をじっくり観てみよう
 牧野のように植物画を描くためには、まず植物をじっくり観察することが大切。ここでは葉に注目し、その多様性や観察ポイントを図解と実物で紹介する。

 5)国立科学博物館の付属施設に行ってみよう
生きた植物を観る上で絶好の場所となる当館の付属施設、筑波実験植物園と附属自然教育園を紹介する。

その他(国立科学博物館主催 第40 回植物画コンクール入選作品展)
1)日  時:令和 6 年 1 月 27 日(土)~2 月 12 日(月・祝)
  会  場:国立科学博物館筑波実験植物園 茨城県つくば市天久保 4-1-1
2)日  時:令和 6 年 7 月 2 日(火)~7 月 21 日(日)
  会  場:国立科学博物館上野本館 東京都台東区上野公園 7-20
3)日  時:令和 6 年9 月 下旬~11 月 上旬 予定
  会  場:国立科学博物館附属自然教育園 東京都港区白金台 5-21-5

北海道発宇宙スタートアップ、Letara(株)が開発拠点構築のため滝川市と契約締結

 プラスチック燃料を用いた人工衛星用推進系(エンジン)の開発に取り組む北海道発宇宙関連スタートアップ Letara株式会社(北海道・札幌市、Landon KAMPS 共同代表取締役、平井 翔大 共同代表取締役)は、2023年12月1日に北海道滝川市と契約を締結し、同滝川市の旧江部乙中学校(滝川市江部乙町1118番地1)の校舎等を同社の新たな研究開発の拠点として利用することで合意した。
 Letara(株)は今後の商品開発に向け、推進系(エンジン)の燃焼実験場や試作機の開発拠点となる場所を探していた。一方、滝川市は2022年3月に閉校した旧江部乙中学校の校舎・土地を活用できる事業者を募集しており、これを知ったLetara(株)は2023年6月以降、滝川市での現地視察や施設の利用方法を提案しこの度契約を結ぶに至った。

 この背景には全国的に増加している廃校の問題がある。子どもの人口減少と反比例し、日本全国で廃校が増加している。毎年450校ほどが廃校し文部科学省が「みんなの廃校プロジェクト」を立ち上げるほどの社会問題となっている。北海道も例外ではなく、活用されず眠ったままの校舎もある。
 環境整備等のため今後1年間は無償で借り受け、その後土地建物を購入する予定。滝川市は札幌から車で約2時間の距離に位置し、人口3万7511(2023年9月末日時点)。

 グランドや体育館など多くの人に親しみのある旧校舎という場の特性をいかし、地域住民へ向けた教育用ロケットの公開講座や燃焼実験の見学会も行いたいと考えている。今後日本の宇宙ビジネスは北海道を舞台にますます発展すると考えられる。Letara㈱は、その担い手を育成することもまた大切な役割だと考えている。

名称:Letara株式会社(Letara Ltd.)
所在地:北海道札幌市
代表者:共同代表取締役 Co-CEO Landon Kamps、Co-CEO平井翔大
設立:2020年6月23日
URL:https://www.letara.space/

Space BD ライフサイエンス事業4回目となるISSへの打上げが完了し、ISS船内にてタンパク質結晶化の実験開始

 宇宙産業における総合的なサービスを展開するSpace BD株式会社(東京・中央区、永崎将利 代表取締役社長)は、国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」を活用したライフサイエンス事業において、国内外の企業・研究機関のサンプルのISSへの打上げが完了し、ISS船内での実験を開始したことを発表した。

 サンプルはSpaceX社が運用するNASA 29th Commercial Resupply Service mission (SpX-29)として打ち上げられるドラゴン補給船に搭載され、2023年11月10日(金)日本時間午前10時28分に米国フロリダ州のケネディスペースセンターから打上げられた。その後、2023年11月11日(土) 午後7時7分にISSにドッキングされた。

 Space BDは国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)様・丸和栄養食品様とのパートナーシップのもと、地上での結晶化条件探索、宇宙実験の適合性審査、サンプルの充填作業等をリードしている。今回の打上げではJAXAのアカデミア公募案件合計約50のサンプルに加え、学習院高等科・女子高等科の高校生を対象に行った「タンパク質結晶化体験ワークショップ」内で実際に高校生15名が結晶化実験を行ったタンパク質のサンプルも搭載されている。このワークショップは、学習院大学とSpace BDが2022年3月に締結した産学連携協定の協力内容の1つとして実施し、学習院大学理学部が一貫教育プログラムとして提供する高等科・女子高等科の生徒対象の企画として行った。サンプルの帰還後には地上で実験したサンプルと宇宙環境で実験したサンプルを比較する実験を予定している。Space BDは、高校生が宇宙実験に携わる機会を通じて、宇宙ビジネスやライフサイエンス(創薬領域)への興味関心を醸成させることを目指す教育プログラムも提供している。

 Space BDではISS「きぼう」船内実験設備を活用し、微小重力空間の特性を活かした高品質なタンパク質結晶の生成技術を使用しライフサイエンス事業「タンパク構造解析サービス」を展開している。このサービスは、創薬研究で重要となる、ターゲットタンパク質構造情報の決定と化合物等との相互作用の検証を支援している。
 通常の新薬開発プロセスで膨大な時間を要す候補化合物の選定において、高品質なタンパク質の構造情報を基づいて実験をすることで、リードタイムを大幅に短縮し、コスト削減に貢献する。

文部科学省 日本の生命科学研究に遅れを示唆

 文部科学省ライフサイエンス委員会は10月16日に開かれた会合で、日本の生命科学および医科学の研究について、革新性の観点から米国よりも約2年遅れているとの警鐘を鳴らした。特に、最新の機器や人工知能(AI)の導入において遅れがあり、24年前半までに包括的な対策を立てる予定だ。この問題への対策を支援するため、文部科学省は25年度の当初予算の概算要求に具体的な対策を盛り込む予定。

 文部科学省の科学技術・学術政策研究所の調査によれば、日本の基礎生命科学分野において、他の論文に引用される頻度が上位10%に入る重要な論文の数(トップ10%論文数)は、00年ごろには世界で4位だったものの、現在では12位まで低下した。
 欧米では、工学、情報学、数学など異なる分野との連携が急速に進んでおり、データやAIを駆使して複雑な生命現象を解明し、実験を自動化するための最新機器を導入している。一方、日本はこれらの機器を欧米から輸入しており、そのために革新的な研究に遅れをとっていると指摘されている。
 委員会では、この問題に対する危機感を共有し、欧米発の高価な最新機器を複数の研究機関が共同で利用できるような仕組みを導入する必要性や、研究資金の分配に関する「選択と集中」の見直しを求める意見が出された。研究の効率性向上や、長時間労働の削減、女性研究者が働きやすい環境整備についても議論された。

ヴァージン・ギャラクティック 商業宇宙飛行ミッション「Galactic 04」を実施

 ヴァージン・ギャラクティックは10月6日、商業宇宙飛行ミッション「Galactic 04」を実施し、宇宙船「VSS Unity」に6人のクルーが搭乗した。このミッションは、アメリカ・フロリダ州にあるケネディ宇宙センターから打ち上げられ、宇宙船は空中発射母機「VMS Eve」に吊り下げられ、スペースポート・アメリカから飛び立った。
「VSS Unity」は高度13kmで空中発射母機から切り離され、エンジンを点火して高度を伸ばし、最終的に高度87.5kmに到達。その後、スペースポート・アメリカへの着陸が行われました。
 このミッションには、3人の乗客が含まれている。ロン・ロサ(Ron Rosano)さん、トレバー・ビーティー(Trevor Beattie)さん、そしてパキスタン出身のナミラ・サリム(Namira Salim)さんが、この宇宙飛行に参加した。サリムさんはパキスタンの出身者として初めて宇宙空間へ到達した人物として注目されている。
 ミッションのパイロットは、ケリー・ラティマー(Kelly Latimer)氏が務め、アメリカ航空宇宙局(NASA)やボーイングでのテストパイロット経験が豊富だ。また、元宇宙飛行士のフレドリック・スターカウ(CJ Sturckow)氏とクルーのインストラクターであるベス・モーベス(Beth Moses)氏もパイロットチームに加わった。
 ヴァージン・ギャラクティックは、商業宇宙飛行を毎月実施する計画でおり、このミッションは4回目の商業宇宙飛行となります。同社は既に次回ミッション「Galactic 05」に向けた準備を進めているが、今後の詳細なスケジュールについては発表されていない。