公文の認知症予防プログラムを活用した「成果連動型支払事業」が目標を達成

天理市の取り組みについて発表する並河健天理市市長

奈良県天理市(並河健市長)が、株式会社公文教育研究会(池上秀徳代表取締役社長)に委託、慶應義塾大学SFC研究所(田中浩也所長)の効果検証のもと、認知症予防分野の「成果連動型支払事業」が目標を達成した。その報告会が、4月17日に開催された。

成果連動型支払事業とは、行政機関が委託した民間事業者に対し、成果に連動して報酬を支払う契約形態のことであり、成果報酬型とも言う。この成果報酬型支払事業で目標が達成されたのは、認知症予防分野では日本初だ。

公文教育研究会の認知症予防プログラム「脳の健康教室」の天理市バージョンである「活脳教室」は、1人のサポーターが30分程度、2人の高齢者に対して簡単な読み書き計算とコミュニケーションを交えた学習支援を行いながら、高齢者の脳を活性化させるもの。この「活脳教室」を2017年7月から12月21日まで、毎週木曜日に計22回実施し、約20名が参加した。その結果をもとに、成果の可視化を目指した。

報告会では、MMSE(※)が、開始時26点以下(MCI疑いおよび認知症疑い)の人の8割以上が改善するなど、大きな成果が報告された。効果検証を行った慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任講師の伊藤健氏は、
「成果を見える化することで、受講者はもちろんのこと、サポーターも積極的に取り組む一つの要因になっています」と、本事業の成果を挙げる。

また、「参加者の身だしなみもしっかりしてきて、コミュニケーションの向上以上に、世の中としっかり繋がっていこうという気持ちが生まれてきた」と奈良県天理市並河健市長は、参加者の変化を語り、「こういった実証実験の結果をより多くの方に広げていくことによって、行政だけではなく民間からも投資してもらえるように呼びかけていきたい」と続けた。

公文教育研究会学習療法センター副代表の伊藤眞治氏は、「今回得たノウハウを基盤にして、来年度以降は、成果連動型支払事業の本格実施、自治体だけではなく、企業、団体、市民から出資も考えてもらえるように、新たなスキームの検討をしていきたい」と述べた。

公文教育研究会は、天理市だけでなく、関心を示している他の自治体とも成果連動型支払事業の本格実施を目指す。

※MMSE:認知能力や記憶能力を簡便に検査するもので、11の検査項目で30点満点。22~26点で軽度認知障害(MCI)の疑いあり、22点未満で認知症などの認知障害の可能性が高いと判断される

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