世界的な権威を持つ学術誌「Nature」は、誕生30周年を迎えた「ポケットモンスター」が科学界に与えた影響を振り返る特集記事を掲載した。1996年に任天堂のゲームボーイ用ソフトとして発売されて以来、ポケモンは生態学や進化生物学、教育、さらには学術出版の健全性など、多岐にわたる分野で研究者たちのインスピレーションの源となっている。
同誌によると、幼少期のポケモン体験が科学者としてのキャリアに直結した例は少なくない。カナダのゲルフ大学の研究者、スペンサー・モンクトン氏は、ポケモンを収集し特徴ごとに分類するプロセスを「分類学者の仕事そのもの」と指摘。実際にチリで発見した新種のミツバチを、ポケモンの「リザードン(英名:Charizard)」にちなんで「Chilicola charizard」と命名した事例を紹介している。
古生物学の分野でもその存在感は大きい。米シカゴのフィールド博物館では、翼竜をモデルにした「プテラ」や始祖鳥から着想を得た「アーケオス」など、ポケモンとそのモデルとなった実際の化石を対比させる企画展が予定されている。現実の翼竜の中には、プテラにちなんで「Aerodactylus」と名付けられた属が実在するなど、学名への影響も顕著だ。
教育面では、英国の児童が地元の野生生物よりもポケモンの名前を多く記憶しているという調査結果を受け、そのゲーム性を応用した生態系学習カードゲーム「Phylo」が開発された。この手法は、従来のスライド授業よりも生物種の記憶定着率が高いことが実証されている。
また、学術界の課題である「ハゲタカジャーナル(粗悪な学術誌)」の告発にもポケモンの世界観が利用された。台湾大学のマタン・シェロミ氏は、「オーキド博士」などの架空の共著者を用いた偽論文を投稿。ずさんな審査で公開に至った実態を暴くことに成功した。30年を経て、ポケモンは単なる娯楽を超え、科学の発展と健全性を支える一助となっている。



