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TOP LEADER Interview|中萬学院グループ 代表 中萬 隆信 氏

人間同士の真剣なぶつかり合いができる集団に。

sサブ1少子化が進む社会、変わりゆく教育環境の中で、塾はどう存続していけばいいのだろう。神奈川県で60年もの歴史を紡いできた『中萬学院グループ』の中萬隆信代表に、その答えを探るべく中長期ビジョンや取り組みなどをうかがった。

私立中高一貫校対策にも使命感を持って取り組む。

2014年は中萬学院グループとして60周年を迎えられます。どんな想いですか。

「60周年というのは、還暦にあたります。〝還る〞ということですから、私たちが『なぜ存続してこられたのか』、『なにが支持されてきたのか』を振り返って原点回帰はしますが、それに新しい時代のメッセージや提案をプラスして、進化していかなければいけないと思っています。

教育業界の環境は、明らかに変化しつつあります。グローバル人材を育成するための英語教育や、大学入試改革もそう。大学入試が改革されれば高校入試改革にもつながるでしょうし、そうすると小・中学生に必要な新たな提案もできます。少子化時代といって悲観的にならなくても、十分にビジネスチャンスはあると考えています」

公立中高一貫校の人気が拡大し、中学受験界にも変化が見られますが、どうお考えですか。

「確かに多くの私立中学にとっては厳しい時代になりましたね。景気がどうのと言うより、『ゆとり教育の見直し』『公立の進学校の復権』『公立中高一貫校の台頭』など、私学をとりまく環境は様変わりです。s建物外観

とりわけ、公立中高一貫校においては、今後も数年で新たな進学結果が出揃ってきます。多少の学校間差が顕在化しつつも、全体的には人気も高値安定となるでしょう。

しかし、一方で私は今後も私学に大いに期待しています。本来、中高一貫のカリキュラムの本家は私学です。大学入試も今後は学力に加え、人物重視の傾向が高まります。心ある私学にとっては大学入試や英語教育の新たな動きはむしろ望ましいことでしょう。例えば、神奈川を代表する進学校である聖光学院の新校舎では、一流のコンサートホールや体育館の充実など、『グローバル人材』の何たるか、そのメッセージを感じさせられます。英語だけではない、芸術も『世界共通語』ですし、健康・体力は全ての礎です。」

受験とは異なるプログラムでの塾づくり。

中萬学院グループの企業理念をお聞かせください。

「企業理念は変わらず〝CHUMAN流〞の通り。ただし、私たちが体験学習や合宿を行っているのは、必ずしも受験と切り離したプログラムを重視しているのではありません。塾の教室外の様々な学習機会の場創りによって、教科に対する、意欲・感心・興味を高めてもらいたいのです。水族館とのコラボなどは人気の高いプログラムとして定着してきました。sメイン

また私は、『花まる学習会』の高濱先生のファンの一人です。遊びをはじめ、子供の頃の様々な経験や他者とのふれあいは、その後の成長における強いメンタル作りに寄与すると信じています。先ほども述べたように、学力はもとより人物重視の傾向が高まるとすれば、それは『向上心』や『好奇心』・『探究心』といった生命力を裏付ける『心の強さ』が条件のひとつになるでしょうから。

もちろん塾である以上、学力・成績の向上が最優先課題です。だからこそ講師の授業の工夫や目の前の生徒への真剣な対応が全てです。その副産物として『僕(私)のためにこんなに考えてくれる人がいる』と、多少なりとも人間を肯定的に捉えてもらえたら何よりです。人間を否定的にみる大人が望ましいコミュニケーションを実現できるとは思えないからです。そのためにも私たち自身が高次元のコミュニケーション能力を持ち合わせ、より深い人間理解に努め、人間同士の真剣なぶつかり合いのできる集団でありたいものです。」

3〜5 年後の中期ビジョンについて、また取り組んでいることをお聞かせください。

「特段、目新しいことを考えているわけではありません。中学受験・高校受験・大学受験という3つの受験フィールドに、個別指導を加えた4つの事業部で中期的には展開し続けます。私たちの展開エリアは神奈川県の南西部に偏っていますから、中身の充実に努め、徐々に拡大していけばいいのです。個別のCGパーソナルは2教場東京にもありますが、成績向上の精度がより高まり次第、面展開する予定です。『成績向上の精度』、それは4つの事業部共通の課題であり、まだまだ深堀りすべき最大のテーマなのです。

但し、想定される大学受験の変化は、当然高校のみならず、小・中にも多大な影響を与えますし、英語学習の在り方などは、先行して準備を始めています。そのためのコンテンツやツールの開発も関連会社と協力しつつ進行しています。」

80周年あるいは100周年に向けての長期ビジョンはありますか。

「随分気の早い話ですね。今の塾という業態のままであるはずはないだろうとは思いますが。ただ、資源のない国の危機意識から、今後も教育産業は一定の市場規模を保ち続けるでしょう。

今後は当然、様々なデジタルツールやコンテンツが従来の教育サービスを変えていくでしょう。ただ人間って面白いもので、ハイテクになればなるほどハイタッチで最後は決まる。例えばうちの『東進衛星予備校』はどの教室も同じコンテンツを使用しているのに業績の差が激しい。結局は、そのコンテンツをどう活かすのか、教室長やスタッフの生徒へのアナログ対応力が浮上する。

もう一つの視点は、今後個人への教育サービスはより利便性を増していくとは思います。しかし一方で、この少子時代、集団的学習機会の意義は高まる面もあるでしょう。小中学生の場合、しっかりした指導者の直接的な学習空間と他者の存在意識は重要な要素だからです。」

大学受験指導事業部の井川隆成部長は、「東進が車メーカーだとしたら、我々はそのディーラー」とおっしゃっていましたが。

「そういう面もありますが。そこで言うディーラーとは車を売るのではなく車のある生活をサポートするディーラーであるべきですね。進学はその先の人生への手段です。車も望む生活のパートナー(道具)として、セダンかワゴンかスポーツカーなのかを選択する。肝心なのは、あくまでもディーラーはサポーターであり、強制的提案者であってはならないと思います。生徒が自ら真剣に将来を考え、『自分で決める』というプロセスを尊重しなくてはなりません。そのための資源と機会を充実させ、プロとして良きアドバイザーに徹することです。」

感動経験の多い人が、人に感動を与えることができる。

人材育成について力点をおいているところは、どんなところでしょう。

「スキルと人間力の向上と言っています。どんな職業でもスキル(技術)のない人は通用しない。例えば大工さんなら、釘をスピーディーに美しく打てる。それはもう我々素人とは比較にならない技術を有している。しかし私たちの業界ではただ『教える人』になるだけなら障壁は低い。だからその職掌において必要とされるコミュニケーション力や授業運営力や面談力、課題解決力はスキルとして身につけることを意識しないと怖いのです。

ここで言う人間力とは、講師を例にひとつの目標として『生徒の心に火をつける』力とでも言えばいいのでしょうか。『感動』が人を変える源であるなら、他者をスパークさせることのできる人物でありたい。そのためには講師自身がたくさんの感動体験を積み重ね、『感動のセンス』を高めておくことが大事ですね。広い意味で人としての勉強を続けることです。そう言えば子会社のエドベックは、来年から社内公用語を英語にします。だから私も英語の勉強を再始動しました。」

今年の新卒採用の状況はどうでしょう。

どこの塾でも人材採用には苦労されているようですが。「景気の回復は、ますます売り手市場になるでしょう。だからと言ってやみくもに採用を広げるわけにもいきません。この機会だからむしろ採用のあり方を見直しています。sサブ2

うちが大学新卒者を初めて採用したのは30年ほど前のことです。当時、私が教室長をしていた教場でアルバイトをしていた学生2人に声をかけたのです。うち一人は銀行に就職し、もう一人が入社してくれました。横浜国大の学生です。まだ売り上げが10億円もない頃ですし、社会的にも塾は就職先として認知されてもいませんでした。とても奇特な学生です。

しかし、その後の発展を支えてくれたのが彼を始めとした、それに続く勇気のある奇特な若者達です。うちは歴史が長いゆえ適度な安定期待を持たれることがありますが、ベンチャースピリットを大事にする風土を育て続け、『なにやら面白そうだから』と入社してくれる学生に、より一層積極的に活躍の場を提供できるよう努めたいと思います。」

『月刊私塾界』2014年3月号掲載

 

TOP LEADER Interview|成基コミュニティグループ 代表 佐々木 喜一 氏

「世界中の人々を幸せにする人財輩出機関 日本一」を目指して。メイン_1139

2012年に創業50年という大きな節目を越え、次なる50年へのスタートを切った『成基コミュニティグループ』。代表の佐々木喜一氏は、教育再生実行会議の委員にも選ばれた塾業界のリーダー的存在である。日本のため、ひいては世界のために、教育改革に手腕を振るう佐々木氏に、成基コミュニティグループとしての新たな取り組み、そして、これからの教育の在り方について伺った。

50年目の決意を「成基100年構想」に。

2012年10月の創業50周年記念式典にて発表された『成基100年構想』についてお聞かせください。

「成基コミュニティグループ(SCG)の中で最長の歴史を有する成基学園は1962年5月4日に創立し、2012年で50周年を迎えました。創立50年の企業の生存率というのは、民間の信用調査会社・帝国データバンクの『法人の経年生存率』によれば、わずか0・7%に過ぎません。1万社に換算すると70社しか生存していないことになります。さらに創立100年ともなれば0・03%と、たった3社しか残っていません。
SCGが100周年を迎えるためにはどうしたらいいか。というと、もう日本一を目指していくしかない。それなら、どんな日本一を目指したらいいだろう。それが『成基100年構想』の発端でした。
社員一人ひとりが、どんな分野で日本一を成し遂げたいのかを真剣に考え、結果、3427もの構想が結集。それを私たちのグランドミッションに照らし合わせて精査し、ゆるぎない目標として結晶化させたのが、10年後までに実現する9つの項目、30年後までに実現する2つの項目。そして、50年後の100周年までに『世界中の人々を幸せにする人財輩出機関 日本一』の実現なのです」

──グランドミッションというのは何でしょう。

「ピラミッド型の『価値基準の概念図』を見てください。その最上位に位置づけられる一つがグランドミッションです。SCGは何のために存在しているのか、といった時の依って立つところであり、道に迷ったりした時の戻るべきベース。いわゆる経営理念にあたるものですね。TOP LEADER_03_03

グランドミッションは、創立者佐々木雅一によって記された設立趣意書の理念を受け継ぎ、こう制定しています。『私たちの大いなるミッション(使命)は、地球・国家・地域レベルの様々な課題に対して「人づくり」という観点から問題解決を図ることである。そして、自立した人間として、仕事を通して人に喜びや感動を与えられる能力を高め、感性豊かな本物の人間になるため、自ら鍛え上げることである』と。

いま地球レベルの課題というと、地球温暖化などの環境問題、格差や貧困や紛争といった南北問題があります。これは私たちが直接解決できる問題ではありません。けれども、そういう課題を解決できる人をつくっていくことはできる。単に難関中学校に受かったとか、高い点数を取ったとか、それは子どもたちのゴールではない。世界のため、日本のため、地域のため、より多くの人のためになるような高い志を持って未来へ向かっていけるような子どもたちをサポートすることが私たちのミッションなんですね。
そのミッションに基づいて、顧客となる保護者様とバリューを共有し、『成基100年構想』といったビジョンを描き、それを達成するための方針を打ち立て、行動していく。全体を仕組み化して行動をデザインすることで、着実に向かうべき方向へと進むことができるのです」

社員一人ひとりにも、それぞれの使命がある。

──グランドミッションの他にもミッションはあるのですか。

「もう一つ、パーソナルミッションがあります。自分は何のために生き、何のために働いているのか。社員一人ひとりが深く探求して明確化した個人のミッションですね。
ふだん、私たちは自分の見える範囲、行動する範囲で物事を完結させようとして、地球の裏側で飢餓で苦しんでいる子どもがいようが、戦争をしていようが、自分は関係ないという発想になりがちです。『シンク・グローバル アクト・ローカル』という、グローバルな視点に立って身近なことから行動しようと考えた時、自分らしく命を燃やせるものは何なのか。それをワークショップを通して設定していきます。
パーソナルミッションができると、今までには到底得られなかったブレークスルー、言い換えると『奇跡』を生むことができる。逆に、ミッションが明確になることで、できていないことも明確になってブレークダウン、つまり落ち込んだりすることもある。それでもワークショップを終えたほとんどの社員は、すっきりしたと言ってくれるんですよ。
他人から、こうしなさいと言われてやったことは責任をとらなくなるけれど、自分の深いところから出てきたものに基づいて行動すれば、そうはなりません。何のために仕事をするのかというと、自分のミッションを達成するため。仕事は自分のミッションを達成するためのツールなんです。時には、SCGでは達成できないミッションになることもありますが、それはオッケーです。そのミッションに従って会社を辞めることになったとしても、『卒業』として温かく見送りたいと思います」規範意識の確立へ。大切なのは「7S」と「4J」。

──政府の教育再生実行会議に参加されて、どんな実感をお持ちですか。

「安倍首相と下村文科大臣が強力なリーダーシップを発揮し、いま政府は『教育再生』を急ピッチで進めようとしています。その最も重要なキーワードとして掲げられているのは『グローバル人材』、そして『世界に誇れる学力の育成と規範意識の確立』です。
2009年に(財)日本青少年研究所がまとめた『中学生・高校生の生活と意識報告書』の中に、とても興味深い調査結果があります。『自分はダメな人間だと思いますか?』という質問には、日本の中学生は56%、高校生にいたっては65・8%と、アメリカ・中国・韓国にくらべかなり高い割合で、ダメだと思っているのです。また、世界の中学生を対象としたOECD等の調査によると、日本・アメリカ・中国・韓国・EUの中学生に『親や先生を尊敬していますか?』と質問したところ、アメリカ・中国・韓国・EUでは80%以上が『尊敬している』と答えたのに対して、日本の中学生はわずか20・7%にとどまっています。成基の生徒に同様の調査をおこなったところ、アメリカ・中国・韓国・EUの中学生より高い88・2%でした。日本の教育が抱える問題の根源は、この低い規範意識にあるのだと思います」

──規範意識を確立するために取り組まれていることはありますか。

「規範意識は一朝一夕に確立するものではありません。SCGには創立以来、塾に入る前には門標会釈、授業がはじまる前には合掌・黙想といった作法を通して頑張る気持ちや、勉強ができる環境や家族への感謝の気持ちを心に刻んできました。『成基の7S』と呼ぶ、整理・整頓・清掃・清潔・仕組み・しつらえ・躾の徹底もその一環です。
さらに、『自分はダメな人間なんかじゃない』という自己肯定感、『自分は尊ばれるに値する』という自尊心、『これだけのことをやった』という自負心、『やればできる』という自信。この『4J』を人格の基として、日々の授業の中での小さな成功体験を通じてしっかり形成しています。成基は、まさにお子さまの『成功基地』なのです」

未来の日本代表を育む「アップ・ジャパン・プロジェクト」。

──グローバル人財の育成、これからの教育についての改革や取り組みをお聞かせください。

「今の子どもたちには志がない。先生自身に志がないから、子どもたちが持つわけがないのですが、『志教育』こそ一番大事なことだと私は思います。志は夢とは違います。例えば、〝フェラーリに乗りたい〞というのは夢であって、志ではありません。ベクトルが自分のために向かうのではなく、世のため人のためになったときにはじめて志になるのです。それをイメージ化したものが、2020年をターゲットにした『アップ・ジャパン・プロジェクト』です。『君は日本の代表なんだ。』をキャッチコピーに、自分は何の分野で日本代表を目指すのか、志のフラッグを掲げようという発想です。何も英会話ができることだけがグローバル人財じゃない。日本の伝統文化やサブカルチャーを伝えることも、あいさつがしっかりできることもグローバル人財には必要な要素。それぞれに異なる分野で突き抜けていく、子どもたち一人ひとりが主役なのです」

──民間教育と公教育との連携という部分についてはどうお考えですか。

「日本のためになるということは、究極は世界のためになることだから、公教育では動ききれない部分はサポートしていこうと思っています。そのコアとなるのが語学。国は小学5、6年生の英語授業を週3回に増やすと言っていますが、週3回の授業ではネイティブな語学力は到底身につかないでしょうし、しかもそれは2020年からの話。公教育では北海道から沖縄までレベルを押し並べなくてはいけませんから、まずは教師の育成のために7年間の猶予があるわけですね。今年の小6年生から大学入試はTOEFL等になるというのに、7年後からのスタートでは受験に備えられません。そういう時こそ、私たちの出番。そこに新しい私教育のビジネスがあります」

月刊私塾界2014年2月号掲載

 

TOP LEADER Interview|さなるグループ 最高責任者 佐藤 イサク 氏

教育者としての誇りを持って指導していきたい。佐藤 イサク 氏

自ら「根っからの教育バカ」という佐藤イサク氏。情熱を持って本気で生徒や親御さん、社員たちと向き合い、ひた走ってきた。静岡をはじめ愛知、岐阜、そして九州、首都圏へとネットワークを広げ勢いを見せる一方で、日本の教育への危機感をにおわせる。佐藤氏が考える「教育」とは。日本の教育事情や塾の在り方にも踏み込んでうかがった。

真のエリートを育てる。

──首都圏での校舎展開を予定されているようですが。

「来春から予定をしていましたが、先延ばしにするかもしれません。その理由は人材です。私は教師の質に徹底してこだわっています。まずは人材の育成。そのために来春は200人を超える新卒の採用を予定しています。少なくとも3、4年はそのくらいの採用を続けて、多くの人材を育ててから進出したいと思っています。とはいっても、今までのように直感的にエイヤーとやってしまうかもしれませんが(笑)」

──まずは人材を育てるというということですが、求める人材とは。s理事長1

「リーダータイプの、いわゆるエリートですね。エリートというと日本ではひがまれる対象でもありますが、それは、わが国のエリートたるべき人材が本来の職務を全うせず、己の利益ばかりを追求してきた例が多すぎたからだと思うんですね。
欧米で浸透している『Noblesse oblige(ノーブレス・オブリージュ)』という観念をご存知でしょうか。フランスに起源する、貴族に課せられた義務を意味する言葉なんですが。当時の貴族には、多くの特権も与えられましたが、戦争となれば率先して最前線に立って命懸けで戦う義務も課せられたんです。要するに、人の上に立ち権力を持つ者は、その代価として身を挺してでも果たすべき重責があるわけです。
教師も同じ。いい大学を卒業したからといって思い上がるのではなく、その学力を世のため人のために使うことを前提にしなければいけません。部下や他の部署で働く仲間への思いやり、生徒や親御さんに対してもそう。もし授業中に間違って答えた生徒がいれば、間違ったことへの痛みがわかる優しさがないと。それから気配りや常識、いわゆる人間力ですね。それがなければ真のエリートとは言えないのです。私は、生徒から厚く信頼される指導力のあるリーダーを望んでいます」

〝塾〟という言葉を世界の辞書に載せたい。

──中国にも進出していますが、海外での展開はお考えですか。新大連佐鳴

「中国では教材作成のみでの展開をしています。中国の場合、国が全国統一的な教育制度を定めていますので、外国人、それも日本人が塾を開くというのは、まだまだ難しいのが現状なんですね。ただ、日本の市場では塾同士の陣取り合戦になってしまっているところがありますから、いよいよ、世界的な展開をしなければいけない時期に来ているのかな、と思います。ありがたいことに、KUMONさんがアジアをはじめ北米南米、ヨーロッパ、アフリカなど各国を開拓してくださっています。それも海外に住む日本人ではなく、現地の人たちを。KUMONさんは読み書きと計算がメインの塾、うちとは違う。世界に受験のない国はありませんから、受験市場にはチャンスがあると思います。〝柔道〟や〝寿司〟という世界共通の日本語があるように、〝塾〟も世界の辞書に載せる!というのが私の夢。それが今、ようやく具現化しそうな感じです」

──日本よりも世界に目が向いているのですね。

「日本は、文明国が陥りやすい崩壊が始まっていると思うんです。江戸時代の川柳に『売り家と唐様で書く三代目』というのがあります。これは、初代が苦心して財産を残しても、三代目ともなると落ちぶれて家を売りに出すようになる。でも、その〝売り家〟という文字は唐様のようにしゃれているということで、遊芸にふけって、商いの道をないがしろにする人を皮肉ったもの。つまり、今の日本の子どもたちは、ファッションや音楽といった文化ばかりが先行しすぎて、コツコツと地道に頑張っていくことができないんですね。『ガンバリズム』というのが通らない。親にも過保護に育てられているから、子どもたちの指導もしにくくなっています。その点、世界の子どもたちは違う。私たちは根っからの教育バカ。教育者としての誇りを持って指導していきたい。日本はほんとうにこれでいいのか、ジレンマがありますね」

──日本の子どもたちは夢が持てなくなっているのでしょうか。

「こんな生徒の話があります。その子は母子家庭で育って、地元では2番手3番手の高校に入れるレベルがあった。でも突然、一番下のレベルの学校に行くというんですね。それで、親御さんから考え直すよう説得してほしいと頼まれまして、よくよくその子に話を聞いてみたら、その高校には必ず学年に一人、交換留学生としてブラジルへ行ける制度があることを調べていて、『僕は絶対に将来ブラジルへ行って一旗揚げるんだ』と言ったんです。15歳なのに、すごくしっかりしているでしょ。経済的な理由もあったのかもしれませんが、その生徒の熱意に押され、親から説得を頼まれていたのに、逆に親を説得することになりました。お母さんは泣いて聞いておられましたね。
彼のように中学時代、高校時代に『これだけは人にゆずらない』といった何か極めるものを一つ持つと強い。例えば、自転車で日本を縦断したとか、そんなことでもいいんです。やりきったという経験があると、将来、仕事もやりきろうとする。
なにも学歴だけが、その後の人生を幸せにするパスポートじゃないんです。ただ、社会に出たときに、いい高校、いい大学へ行っていれば、同じ仕事をしていてもチャンスを与えられることは多い。本当にやりたい会社に入れるチャンスが大きいことも確か。それは意識しておくべきですね」

映像学習や個別指導への取り組みも。

──さなるグループの現状はいかがでしょう。

「『名進研』は愛知・岐阜地区での展開で、佐鳴予備校と地域はかぶっていますが、『名進研』の主流は中学受験、一部高校受験があっても金額が違いますから、すみ分けはできています。
『啓明舎』は生徒数も増えて順調に回復しています。『九大進学ゼミ』は教場をスリム化していますが、1教場の平均人数は増えていますので、V字とは言えないまでもU字回復はしていると思います。どんなに頑張っても、一度ついたマイナスイメージを払拭するには最低でも5年はかかりますから、あと2年は忍耐力を持ってやるしかないですね」

──@willも1000教場ほどありますが、これは拡大していくのでしょうか。

「映像内容は、どことくらべてもまったく遜色がないところまできています。それは自信を持って言える。ただ、これはあくまでも『かけこみ寺』。ボランタリー契約で、縛りもありませんので、もしも困っている塾さんがいればぜひ声を掛けてほしいですね」

──市場の意識は個別指導へと変わってきていますが。

「個別指導というのは、自分の子どもの面倒を見てほしい親のニーズには一番あっていると思う。でも未だにピンとこない。まだ半信半疑なんですよ。まずバイトが教えるでしょ。それだけならテキストを渡してマニュアル化すればカバーできるかもしれませんが、問題なのは、1対1や1対2ですから人間関係が密着しすぎること。するとお互い甘えが出るわけです。ほんとうは弱点を強化しないといけないのに、バイトにいい格好をしたいから、わかったふりをしてしまう。けっきょく弱点を強化しないまま伸び悩み、今度は〝申し訳ない〟という気持ちが働く。教える方も教え過ぎちゃうこともある。集団指導の場合は、集団についていきたいと必死になれますよね。ただ今は、できる子も個別の傾向にある。そうしたニーズにも応えていく必要もあるんでしょうね」

TOP LEADER Interview|育英センター・片山学園 理事長 片山 浄見 氏

学習塾『育英センター』で培った成果のすべてを学校教育に生かす。

sIMG_6688片山学園は『育英センター』がつくった富山県初、唯一の私立中高一貫校。2005年4月に中学校、それから3年後の08年4月に高等学校が開校し、わずか10年足らずで東大・京大・医学部への輝かしい合格実績を誇る名門校に。学習塾から学校づくりと、富山に質の高い教育環境を築いてきた片山浄見理事長に、これからの夢、そして教育の在り方について語ってもらった。

国公立志向の強い北陸の地に新風を巻き起こす。

─育英センター、そして片山学園を設立したきっかけは。

「僕は大学卒業後、東京の広告会社に入社したのですが、一年後に富山に帰ることになり、地元の建設資材会社に勤めました。ある日、得意先の人から息子さんの家庭教師のアルバイトを頼まれたんです。その子は不登校で、最初は勉強に全く興味を示さなかった。けれども、何回か通ううちに少しずつ興味を示してくれるようになって、成績も当初の400番から30番くらいにまで上がり、3年後には富山県の、それも上位の公立高校に合格しました。
一生懸命頑張れば、必ず結果に結びつく。その経験をきっかけに〝僕の進む道は教育だ〟と、会社を辞めて学習塾をつくりました。それが昭和52年10月1日、僕が28才のときのこと。嬉しいことに、『育英センター』の生徒第一号として入塾してくれたのは、その教え子だったんですよ。
『育英センター』は、進学塾ではありません。成績のいい子も悪い子も、とにかく勉強で悩んでいる子、もっと勉強を頑張りたい子のための塾。そういう思いで塾経営をしてきました。けれども、生徒一人を育てるためにはある程度の時間と環境が必要です。学習塾では時間にも環境にも限界がある。だったら、学校をつくればいい。学校をつくれば24時間、365日生徒を見ることができるから。そうして富山では初の私立の中高一貫校を立ち上げる決意をしたんですね。

2016年4月に、富山市内の中心部に設立予定。地域に根差した私立小学校を目指す。

2016年4月に、富山市内の中心部に設立予定。地域に根差した私立小学校を目指す。

とはいえ前例がないだけに、失敗は何度も。1度目は土地の問題、2度目は認可の問題、3度目は資金の問題…いずれも辛い思いをしたけれど、失敗を重ねることによって、それが糧となって成功へと導くことができたと思う。失敗のない人生なんてない。挑戦すればするほど失敗はあるわけで、失敗を恐れて挑戦しなければ何もはじまらない。事が大きければ大きいほど失敗も多いし、リスクも大きいけれど、それに見合うだけの喜びもいっぱいあると思います」

日本の将来を担うリーダーを育てることが究極の目的。

─2013年度の合格実績が大変躍進され、難関大学の進学校というイメージが定着してきたのでは。

「卒業生も3期生となり、少しずつ結果は出てきていると思います。その一番の原動力は、中高一貫校であるということ。今年、東大理Ⅲに合格した生徒というのは、中学3年生のときに落ちこぼれたけれど、歯を食いしばって頑張った生徒なんです。中3で落ちこぼれたら、高校受験で富山県の進学校には入るのは難しい。中高一貫校だったからこそ、やりなおすことができたんですね。sIMG_6720
それから、寮生のライバルがいるということ。互いに切磋琢磨して、大勢の先生や家族にも助けられながら勉強に励んだことも合格につながった要因だと思います。
来年は東京大6人、京都大3人、国公立大医学部は15人と皮算用をしています。先輩が結果を出すと後輩もそれに続けと元気づけられますし、一つの伝統になってくれるものと期待しています」

─今後の学園の抱負をお聞かせください。

「この学校をつくった目的は、日本を担う人材、将来の日本を引っ張るリーダーを育てること。
つい先日、前国連事務次長の赤阪清隆氏がわが校で講演をしてくださって、こうおっしゃった。〝日本だけじゃなく、世界を担う人材になってほしい〟。そして、〝僕の夢は国連の大会議場で講演することだった。その夢を実現できたのだから、夢はきっと叶う〟と。まさしくこの学校の究極の目的はそれ。単に難関大学へ行くとか、いい会社に就職するということだけではない。世界のいろんなところで活躍できる人材、自分の夢に向かって邁進する人間になってほしいのです」

幼稚園から大学まで学べる学園を。

─2016年4月には小学校を設立されると発表されていますが。

「2015年の春に新幹線が開通します。すると東京─富山間は約2時間で行き来できるようになるので、富山の離れたイメージが解消されると思います。そうした背景もあって、富山市内の中心部に新たに小学校を開校することにしました。
この小学校では、しつけ教育をしっかりやりたいと思っています。片山学園の中学生を見ていても、しつけが行き届いていない生徒がまだまだいるんですね。〝3つ心、6つしつけ、9つ言葉、文(ふみ)12、ことわり15〟という言葉があります。これは3歳で心根を育て、6歳までにしつけをし、9歳で言葉遣いを教え、12才で読み書きそろばんをできるようにし、15歳までに物の道理をわかるようにするということ。小学校の6年間というのは、人を伸ばすとても大事な時期なんですね」

─地域の人の反応はいかがでしょう。

「地域住民の中には〝私立だから地域の学校としての役割を果たしてもらえないのでは〟と、危惧する人もいます。でも、そうではなくて、盆踊りや体育大会を一緒に行うなどグランドや建物も地域の人に使ってもらう。もしもの時には防災地区センターとしての施設にもなる。そんな地域に開かれた小学校づくりをしていきたいと思っています」

─片山学園は小中高一貫校になるということですか。

片山学園全景:富山平野を一望する好立地に、どっしりとたたずむ片山学園中学校・髙等学校。豊かな自然に抱かれてのびのびと学ぶことができる。

片山学園全景:富山平野を一望する好立地に、どっしりとたたずむ片山学園中学校・髙等学校。豊かな自然に抱かれてのびのびと学ぶことができる。

結局はそういうことになるでしょう。小学校の定員は一クラス30名で、二クラス60名を考えています。片山学園の定員は一学年120名。小学校を卒業した60名はそのまま片山学園へ、あとの60名はその他の学校から募集することになると思います。将来的には新たに幼稚園も設け、また大学も設立するという構想を練っています。ゆくゆくは幼稚園から大学までの一貫校をつくりたいですね」

─大学の設立はどのくらいのスパンで考えていますか。

「僕は75才までは現役でいたいと思っています。今64才ですから、あと10年くらいの間に設立できればいいですね。もし自分ができなくても、構想は次へ引き継ぎたいと思っています。
地方の大学は私立も公立も、経営力が問われています。富山県でも定員を充足していない学校が半分以上ありますが、必要な大学はつくるべき。淘汰の時代にどう生き残るのかではなく、どう発展させるのかを常に考えれば自ずと答は出てくると思います。
いかに生徒や保護者のみなさんに評価され、時代のニーズに合わせた魅力ある大学をつくることができるか。その源になるのは、経営者の経営判断能力です。経営者というのは時代を見る能力、人を見抜く能力、運を切り開く能力の3つが必要。運は、みんな平等にやってくるものだけれども、うまくつかむ人とそうでない人がいる。〝この時だ〟という時に勝負をかけられるかどうかなんです。これからも足下を見ながら、石橋を叩きながら、気を見ながら、勝負していきたいですね」

─下村博文文科大臣になって、文科行政はどのように変わると感じていますか。

「非常に大きな期待感を持っています。ただ一つ注文するならば、高校無償化に関してですね。教育は投資だと思うので、すべてを平等にすることはないと思う。国や行政ばかりに頼らないで、自分の力でやり抜く、自分で切り開くということも大事だと思います。
それから私学でこれ以上の補助金も必要ないと思う。今1人あたり30万円の補助金が出ていますが、これで学校経営ができなかったら、それは経営者の怠慢です。どういう学校をつくるのか、どう学校を運営するのか志が問われていくと思います」

TOP LEADER Interview|株式会社 学究社 河端 真一 社長

都立中・高校合格者のシェアを最大にして、日本一の私塾へ。

株式会社 学究社 河端 真一 社長

株式会社 学究社 河端 真一 社長

公立中高一貫校が急増し、不景気もともなって塾業界が変革を迎えた4年ほど前。いち早く公立校対策をはじめ、経営者の手腕を発揮してきた河端真一社長。その柔軟かつ大胆な戦略と今後のビジョンについてうかがった。

 

 

私立から公立へ、勇気ある決断。

──いち早く公立中高一貫校対策をはじめられ、今やその市場においてはナンバーワンです。

「我が社は、『日本一の私塾』を目指しています。日本一ということは『東京一の私塾』、東京一ということは都立中と都立高の合格者のシェアを最大にまで高めることなんですね。

中高一貫校というと、一般的には私立と受け止められますが、私立中は都内に188校あって、受験者数は約2万5千人。一部の有名校以外は定員割れのところもあり、著しく地盤沈下しているのが現状です。一方、都立中は11校あって、1600人の定員に対して約1万人が受検します。7人に1人しか受からない難関なんですね。ということは、6人は不合格になる。この生徒たちもしっかり集めきって、3年後の高校受験でも抜群の合格率を収めたいと思っています」

──次は都立高校の合格実績ナンバーワンを目指していこうということですね。

株式会社 学究社 河端 真一 社長「そうです。中学受験で泣きを見た生徒は、高校受験、それも都立の一番手二番手の高校に合格する最も有望な生徒ですから、すでにenaには受験に合格する生徒が確実にいると自負しています。我々が中高一貫校対策を始めたのは4年前。都立中を志願する小学4・5年生を入口として、その子たちが都立高校を受験するのは5年後以降になりますから、そろそろ結果として表れるタイミングですね」

 

──学究社さんが公立に切り替えた理由はなんでしょう。

「我々も以前は、早稲アカさんや栄光さん、市進さんのように、麻布や開成や武蔵、早慶といった私立の上位校ばかりを狙っていました。授業料を月額6~7万円いただいて。でも、学費が年間約100万円かかる私立中は、一般的な子どもはなかなか行きにくいですよね。だから、公立校というボリュームゾーンに焦点を合わせて、授業料も2万円にしたんです。

さらに、校舎の立地もターミナル主義から、各駅停車主義に変えました。我々自身が遠くのスーパーより近くのコンビニで買い物をするわけですから、やっぱり塾の方から出向いていかないとダメなんです。利用者にとって通いやすい場所、通いやすい価格。そういう利用者の負担にも経営者は目を向けるべきですね」

sサブ2──当時の社内の反応はいかがでしたか。

「それはもう大反対でしたよ。それまではみんな算国理社を教えていたのに、適性検査がメインになって自分が培った技術がゼロになってしまうわけですから。授業料にしても、失敗したときのことを考えたら、そこまでのリスクは背負えないですよね。創業経営者だからこそ、思い切った決断ができたんだと思います」

グローバル教育には慎重さが必要。

──看護医療系、芸大・美大の受験部門を設けたのは。

「我々は、教育という子どもたちの未来についての仕事をしています。中学から高校へ行って、大学に進むというのは主流ではあるけれど、看護師の道や、芸術家の道もあるわけです。あらゆる可能性に応え、間口を広げていかなければなりません。同時に、それらは全部、我々にとっても未来に対する種まきでもあるんですね」

──他の〝種まき〟として留学など海外での校舎展開は。

美術に関する職種は多種多様。『芸大・美大受験総合予備校 新宿美術学院』では美術大学受験を前提に、それぞれの職種に応じたクラスを開講。

美術に関する職種は多種多様。『芸大・美大受験総合予備校 新宿美術学院』では美術大学受験を前提に、それぞれの職種に応じたクラスを開講。

「私は英語の教師としてずっとやってきましたが、英会話や留学を勧めるのは難しいと思います。日本人はなぜ英語ができないかというと、日本で生きていくのに英語は必要ないから。日本語しかしゃべれなくて苦労することはないからなんですね。つまり日本で生きる限り英語が必要ないから、学ぶことも必要ないのです。

もちろん、社会には英語ができる人はある程度必要です。でも、昔にくらべて今は帰国子女が圧倒的に多いから、必要な数は帰国子女で充足しています。将来、そのポジションに就こうと思ったら帰国子女を超えないといけない。それは難しいですよね」

──海外に住む日本人、現地の子どもたちに門戸を開くことは。

「欧米では日本人も、日本人学校も数が減っています。その代わりベトナムやタイといったアジアは増えています。だから、ほんとうはアジアへ出て行かなくてはならないのですが、その国で会社を立ち上げて、法的な要件を満たして営業許可を得るとなるとコスト的に合わないんですね。

現地の子どもたちを教えるというのもまだ難しいですね。アジアには塾はほとんどありませんから、現地の方に説明をして理解していただくまでには時間がかかります。それだけ時間を費やしても生徒が集まらない可能性もあります」

第1四半期決算では私塾界一の伸び、さらなる売上に期待。

──第1四半期(2013年4月1日~6月30日)の決算では売上は6・1%増、経常損失は209百万円でしたが。

「売上は、実は小中学生部門だけでみると15・1~2%増なんです。その他の部門が停滞したために総合的に6・1%増という結果になりました。

利益は、昨年に比べて1億円減っていますが、この原因ははっきりしていて、『パースペクティブ』という新しいオリジナル教材をつくったからなんです。都立中の適性検査対策に特化した、それはもう絶対的なテキスト。それもフルカラーでつくりましたので予想外のお金がかかった。中間決算からは予定通りの数字になっていくと思います」

──中長期的な売上目標などはありますか。

「はっきりしたものはありませんが、将来的にも楽観しています。毎年30教室くらい新校舎を出してきて、生徒数も増えています。それらが安定軌道に乗るには5年くらいかかるわけですから、今はまだ本来上がる売上まで上がっていない。このペースで行けば、全く心配することはないですね。

ただ、今期の新校舎は20教室くらいに減らす可能性はあります。生徒が集まりすぎていて、既存教室を増床、社員を増員しなければならなくなっていますので。嬉しい悲鳴ですね」

──売上に対する広告比率を教えてください。

株式会社 学究社 河端 真一 社長「広告費について私はよく知らないんです。世間では『塾業界は競争の時代』と言われていますが、我が社は毎年合格者も増え、売上も増えていますから、競争が厳しいなんて全然思っていません。むしろ、乱立・競合・競争という流れで考えると、乱立の状態なんですね。そういう段階にあるときは、経費削減とか、広告費が何%とか考えてちゃいけない。どんどん攻めていけばいいと思います」

──ウェブの広告効果はどうみていらっしゃいますか。

「ウェブは、生徒募集をするということでは、とても大事だと思います。例えば、家や車など高額なものを買うとき、ウェブでよく調べて買うでしょ。ところが、塾は高額商品にもかかわらず、パンフレットしかないから調べようがない。調べようというニーズに対して応えるためにも、ウェブを使って情報をセグメントしていかなければならないと思います。

人材募集については、フェイスブックでも柔軟に対応しています。塾は人が大事。とりわけ新卒というのは生徒と年令も近いので決定的に重要な要素です。まずは、どれだけたくさんの学生にリーチできるかがポイントですからね。今年、我が社では、社員の1割以上にあたる46人の新卒を採用しました。大変たくさんの応募があったのですが、彼らに聞くと転勤がない、あったとしてもほとんど都内ですから引っ越す必要がない、というのも我が社のメリットのようです」

 

『月刊私塾界』2013年10月号掲載

TOP LEADER Interview|早稲田アカデミー 瀧本 司社長

生徒のやる気を引き出し学力を伸ばす。独自の指導システムで、合格実績全国ナンバー1へ。

塾の枠を超えるユニークな切り口で、さまざまなブランドを構築してきた早稲田アカデミー。30周年の節目を迎えた今、『本気でやる子を育てる』を教育理念に突き進んできた成果、そして今後の方針について、瀧本司社長にたずねた。

早稲田アカデミーの瀧本司社長

早稲田アカデミーの瀧本司社長

本気になれる環境やきっかけがあれば、難関校合格は夢じゃない。

──早稲田アカデミーに商号変更されてから30年という節目の年を迎え、あらためて今想うことは。

「2013年の中学入試では、御三家中や早慶中などの難関校にトップレベルの合格者を送り出し、高校入試では開成高・慶女高・早慶高へ全国ナンバー1の合格者を送り出しました。

中でも特筆すべきは、早稲田アカデミーに通い始めたころの偏差値は〝50〟前後といった学力の生徒が難関校に合格していること。スタートの学力に関わらず、環境やきっかけをつくってあげれば、生徒自らが望む憧れの難関校合格を実現することは可能だということです。あらためて、『本気でやる子を育てる』という教育理念を堅持し、実践していきたいと思います」

──『本気でやる子を育てる』ためのポイントはなんでしょう。

「大きく分けると、一つは〝競争する〟ということ。それから、〝生徒とのコミュニケーション〟です。受験は他人との競争です。だから早稲田アカデミーでは、どんなに小さなテストでも必ず順位表を貼り出します。それに反応する子もいますし、あるいは『夏期合宿』のような特訓の場において〝みんなといっしょにこれだけ頑張った〟ということに反応する子もいます。その反応は受験に挑む原動力になりますから、競争していることが明確で、結果としてわかる状態をつくってあげることが大切だと思います。

一方で、受験は自分自身との競争でもあります。受験に対して自分はどうとらえ、どんな目標を立てればよいのか。これは先生とのコミュニケーションが必要になるんですね。ある生徒には偏差値を〝70〟に上げることを目標にして、またある生徒には〝まずはこの単元だけはできるようにしよう〟という目標を与える。それぞれの子どもに応じた目標をきちんと与え、そのためにはどうしたらいいかというアドバイスをする。目標がクリアできたらより高い目標を設定し、チャレンジ。できなくても繰り返しコミュニケーションをして軌道修正していくことで、子どもたちのやる気は変わってきます」

──とにかく〝やる気〟を引き出すことが大切なんですね。

「そうです。受験というのはあくまでも子どもの人生をつくるきっかけにすぎません。それを目標にしてどう取り組んだかというところに本当の価値がある。一生懸命取り組んだことが財産となり、今後の人生においても大きな糧となるのです。

私たちは、お子さんやご家族のみなさんが〝やってよかった〟と振り返られるような受験であってほしいと願いますし、そのためにスタッフ一同、全力でサポートしていくことをお約束します」

手厚いサービスで、すべての塾生を全力でサポート。

──中学受験の合格実績が伸びている理由は何でしょう。早稲田アカデミーの瀧本司社長

「ひとつは、リーマンショックによる中学入試の冷え込みがあった時期から、低学年の募集に力を入れたこと。もうひとつは、四谷大塚の『予習シリーズ』に対応した、指導マニュアルが充実したこと。それらが、今年になって、ようやく実を結んだというわけです。

生徒の獲得に関しては、『全国統一小学生テスト』をはじめ、体験授業や低学年向けの『チャレンジテスト』などを用意して、何度もアプローチをかけていきました。すべて無料ですから、それなりに費用はかかりますが、広告宣伝費として低学年のうちに投資をして、より優秀な生徒さんを早めに獲得しておく方が、4年後、5年後、6年後と長いスパンでみると効果的であると考えたのです。

新『予習シリーズ』については、マスの生徒層にはハードルが高くなりました。ただし、優秀生にとっては何の問題もなくチャレンジできるものになっています。教える深さは変わらないのですが、内容をぎゅっと凝縮して短時間に詰め込んでいるものですから量が多くなっているのですね。だから優秀生はどんどん伸びていける。逆にマスの生徒層には、クラスごとにピックアップする問題や、生徒たちに到達させるべきレベルの見極めを緻密にコントロールして、ドロップアウトすることなく的確に伸ばしていけるマニュアルづくりをしています」

──ここ近年、『早稲田アカデミー個別進学館』や『早稲田アカデミーIBS』といった新しい取り組みを次々と始めていますが……

「集団でのライブ授業には、サービス的な面での限界があります。それを補う形で設けたのが『早稲田アカデミー個別進学館』です。集団授業を行う教室のすぐ近くに個別の教室を構え、併用できる状態にしました。今後は、各校舎あるいは自宅で、パソコンによる自学自習をフォローするシステムにも着手しようと思っています。

また、英語教育も変わりつつあります。これからは、言語としての英語という意識改革が必要です。目指すところは、〝グローバルな人材〟になるための英語教育。国際人としてビジネスの世界でも成立する英語力を身に付けること。社会人になってからしゃかりきに英語を勉強するのではなく、学生のうちから英語圏の方々と自然に会話ができる。そうした下地をつくってあげる教育が求められています。だから受験英語にとどまらず、それを超えるコンテンツとして、東大・医学部・ハーバードに一番近い小学生たちの英語塾『早稲田アカデミーIBS』が生まれました」

──その反響はいかがですか。

「『早稲田アカデミー個別進学館』は2年ほど前からはじめ、明光ネットワークジャパンと提携し、現在は首都圏に20校舎を構えています。生徒数は1200人ほど。1校舎平均60人くらいになります。基本的に1対2で自立をさせながら進めるスタイルで、汎用性が高いので、3年後くらいには100校舎まで展開を目指しています。

『早稲田アカデミーIBS』は、保護者の方にも一緒に授業を受けていただくなど制約のある教室ながらも、ほとんどのクラスが満席の状態で、キャンセル待ちをしていただいています。今は御茶ノ水の1カ所だけで首都圏の東側の方が対象になりますので、次は西・南側を対象に神奈川エリアにも教室を開こうと思っています。

さらに『早稲田アカデミーIBS』のノウハウを一般化して、今秋から特別なカリキュラムをスタートします。小5~6年の2年間で、3級程度の英語能力を身に付ける教室を首都圏で10カ所ほど開く予定です」

中・高校、大学入試のすべてにおいて合格実績日本一を目指す。

──広告的な戦略としてはどのようにされていますか。

9月の新学期開講チラシ

9月の新学期開講チラシ

 

「広告予算は、収益の状況を見ながら調整はしますが、およそ8%です。内訳についてですが、やはりウェブ、インターネットにかける広告費が増えてきています。テレビCMにかける予算はほとんど一定。チラシもそれほど減らしてはいません。ウェブの場合は、パソコンのスイッチを入れてブラウザを立ち上げてという顧客の能動的な行動がなければ届きませんが、チラシは顧客が受動的であっても情報だけは届けられるので、根強く残っていくと思います」


──ウェブに関して、ソーシャルメディアへの対応はいかがですか。

夏期合宿のパンフレット

夏期合宿のパンフレット

「仲間意識を高めたり、卒業生たちのネットワークづくりにはラインやフェイスブックは活用できるツールだと思いますし、そこから発生していけば口コミの材料としてコントロールはできると思います。ただし、そこに生徒が関与すると、想定されるリスクを回避しなくてはなりませんので、慎重にやっていかなくてはいけない。活用にはもう少し見極めが必要ですね」

──今後の経営的な目標と、瀧本社長が早稲田アカデミーで実現されたいことはなんですか。

「経営面では5年後には売上は280億、利益は22億くらい。10年後には売上は400億、利益は40億くらいが目標です。実現したいことは、10年後には学習塾として合格実績で日本一になることですね。まず、御三家中は確実にトップに。高校入試は誰からもナンバー1と評価されていますが、国立高校や都県立のトップ校など、まだいくつかの学校はナンバー1のタイトルをもらっていないものがありますので、それを全部取る。それが最終的には東大につながっていくと思いますので、ゆくゆくは大学入試でもナンバー1になれるのではないかと思います。10年経つと私は60歳になります。引き継いだ責任をそれで果たしたい。もちろん、できれば売上・利益でも日本一になりたいですね」

TOP LEADER Interview|株式会社ナガセ 永瀬昭幸社長

去る5月16日、東進衛星予備校全国大会の「第20回記念大会」にて新たな決意を表明された、永瀬昭幸社長に、東進衛星予備校をはじめ、東進ハイスクール、四谷大塚、東進こども英語塾、イトマンスイミングスクールなど、さまざまな角度から教育に専念してきた観点から、さらに深く話を伺った。

独立自尊の社会・世界に貢献する人財を育成する
株式会社ナガセ 永瀬 昭幸社長

自ら求め自ら考え 自ら判断・実行する 生徒を育てる

株式会社ナガセ・永瀬昭幸社長

―――ナガセグループ全体の教育目標=企業目標である「独立自尊の社会・世界に貢献する人財を育成する」 具体的にはどんな取り組みをされているのですか。

「わたしたちは、『独立自尊の社会・世界に貢献する人財を育成する』ことを教育目標としておりますが、独立自尊とは、自らの人生について信念を持ち、プライドにかけて決めたことを完遂することであると考えています。具体的な生徒指導では、まず生徒自身が、何をどのように勉強するのか自分の頭で考え、計画を立てる。もちろん、我々は生徒が考えたり計画するための材料はたっぷり与えますし、いつまでにそれをやるのか締切を決めて、ちゃんとやるように励ます。生徒の考えや計画が正しかったかどうかは、模擬試験の成績などから、生徒が自分で考えて、問題があれば計画を変更します。そうして自分の責任で、自ら求めるという職場をつくることで、独立自尊の精神が育まれるわけです」

―――”心の教育”に取り組まれて5年目になります。

「これまで長く教育に携わってきてわかってきたのですが、「受験に王道はない」という言葉の通り、志望校に合格しようと思ったら、徹底的に努力をするしかない。だからといって、誰かに強制されて勉強をしても学習効果は低く、目の前の受験に勝てたとしても将来につながりません。一方、自ら求め、自ら考えて勉強すれば取り組みの成果は飛躍的に高まります。自ら求め、自ら考え、自ら判断・実行する生徒を育てるためには、生徒の心をしっかりと鍛えていく必要があると考え、そういう方向でやってきたことが、ここまで成長できた要因だろうと考えています。

先日、雑誌で東大合格者のインタビュー記事を見ましたが、東進出身の生徒は皆、しっかりと未来を見据えて、自らの志や夢を語っていました。あれには私も嬉しくなりました。夢は、努力をするための原動力だと思います。しっかりとした心が備わっていれば努力を継続できるし、私たちの取り組んでいる”心の教育”は、感度のいい子ほど影響を受けていきますから、まずは感度の良い生徒を自ら求める状態に変えていく。そのうえでだんだん”心の教育”が多くの生徒に浸透していけばいいなと思っています」

応用力を身に付け、予習と復習のバランスのとれた学習指導を

四谷大塚の新「予習シリーズ」

四谷大塚の新「予習シリーズ」

―――四谷大塚の予習シリーズが今年改訂されました。大きなポイントとしてどんなことがあげられるでしょう。

「生徒に大きな夢、高い志を持たせ、自ら求める心、自ら考えて勉強に取り組む習慣を身につけさせるには、高校3年間だけでは不十分で、小学校の頃から取り組む必要があると考えています。たとえば、私は、人に教わったことだけを復習して、解答のパターンを丸暗記するだけでは、将来自らの頭で考えて社会で活躍できる人間にはならないだろうと思う。それだけではなく、自分で一生懸命予習して、自分の頭で考えて問題を解いていくという訓練も大切だと思います。もちろん、成績がよくなかった単元の欠点を是正する必要もありますから、予習至上主義でも、復習至上主義でもよくないと考えています。今回の予習シリーズ改訂は、どちらもバランスよくやって、しっかりわかった上で次の単元に入っていくといったカルチャーに切り替えようという試みなんですね。

まず、その5年生の3月までに受験の課程を全部修了させる。そして、6年生の1年間をかけて、それに対する応用力をつけながら志望校対策をしっかりする。基本的には”スモールステップ・パーフェクトマスター”の考え方です。自分にぴったりのレベルからステップアップし、習ったことを確実にマスターする。けれども、勉強というのは面白いもので、はじめて学んだときは多少わからなくても、先の段階へ行って振り返ってみると、こういうことだったのかと理解することもけっこう多い。広い立場からものを見てみると、かえってわかりやすいこともありますから、基礎基本を徹底的に身につけながらも、応用力の高いことも一緒にやっていきます。同時に、毎週行う〝週テスト〞で、授業で学んだ内容を復習する。この取り組みは、どんどん底力が付いてくると思いますよ」

日本の将来のために、世界で活躍できる人財を育成

―――文科省を中心に教育再生実行会議が立ち上がり、入試制度などでの大学改革も進んでいくかと思います。そうなると教育の仕方も大きく変わっていくのではないでしょうか。

「まず大切なことは、”このような人間を育てるんだ”という大きなビジョンを描くことだと思います。そのうえで制度の変化に対しては、積極的に手を打っていきたいと思います。こども英語塾ではすでに、小学生の段階から他の教科も 全部英語で教えることもしています。英語は、一つの科目として学ぶだけではなく、数学や理科や社会も英語で学ぶことで、本当に使える英語になっていくと思っています。

東進USAオンライン講座にしても、時差による弊害を取り払った仕組みを作り上げましたので、全国の塾のみなさんにも提供させていただきたいと思っています。「何を使って英会話を勉強するか」と考えるとき、金額が安いかどうかで決めるのは、私は邪道だと思う んです。言葉というのはカルチャーですから、アメリカのカルチャーを学びたいのであれば、アメリカのネイティブと話をすべき。旅 行で話が通じるということだけで満足されるのであればそれでけっこうですが、ビジネスでは一切通用しませんから。ビジネスで、億 単位のお金を動かすような仕事をするつもりなら、アメリカのカルチャーと密接に関わらないと無理だと思います。

日本の将来を考えると、世界で活躍できるような人財を育成していかないと、もうこの国は立ち行かない。だから、そうした教育を、公立学校がやるのか、大学がやるのか、民間教育者がやるのか、などという議論は不要だと思います。どんな人財を育てていくのか、しっかりとした目標を掲げ、それを教育に携わる全ての人間だけでなく、実業界も巻き込んで、日本全体で取り組んでいく。その中でしっかりとした人財を育成できるところが、日本国民が頼りとする教育機関になっていくのだと思います。私は、全国の塾の先生方と協力しながら、何としてもこの大仕事をやり遂げたいと思っています」

すべて無料で受けられる小・中・高の全国統一テスト

すべて無料で受けられる小・中・高の全国統一テスト

日本の将来を担う、リーダーを育成する

―――6月2日に、小学1年生から6年生の全学年対象の全国統一小学生テストがありましたが、こちらの反応はいかがでしたか。

「全国統一小学生テストは、受験者数は毎回10万人を突破しています。また、今年から全国統一中学生テストもスタートし、今回は11 月4日(月)に実施します。これで、全国統一高校生テストと合わせて、小中高の全国統一テストが揃うことになります。

全国のたくさんの塾の先生方に趣旨に賛同いただき参加をしていただいており ます。全国の才能ある生徒 諸君を発掘し、年月をかけて育てていく。日本の将来を担う人財を発掘・育成することにつながる取り組みであると確信していますので、これからも一生懸命取り組んでいきます」

―――今後の目標はなんでしょう。

「今年度、東大現役合格者は600名になり、現役合格者の3・3人に1人が東進生です。難関大学を中心に、東進生の占めるシェアが高まってきました。将来の日本を引っぱっていくような、たくさんのリーダー候補生をお預かりしているのですから、日本の未来を明るいものにするために、教育に携わる人間の役割、責任は極めて大きいと考えています。

東進ハイスクール、東大現役合格600名達成のポスター

東大現役合格600名達成のポスター

国力とは、国民一人ひとりの人間力の総和です。私は、生徒の人間力を高めることで、日本の将来を拓いていくことが、教育機関としての使命であると考えています。

私どもだけではできないことであっても、日本全国の先生方と力を合わせれば、日本全体を巻き込んだ教育運動を起こすことができると確信しています。全国のたくさんの先生方に支えられ、毎年開催している東進衛星予備校全国大会も今年で20回の節目を迎えることができました。これからも、先生方にご指導頂きながら、お預かりした生徒全員を伸ばすシステムを作りあげられるよう一生懸命頑張ってまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます」

『月刊私塾界』2013年8月号掲載