文科省、スポーツによる「健康インフラ」構築へ

経済効果は年12.6兆円 現役世代の運動実施率向上を重点に

 松本大臣は7月8日、スポーツ・健康産業専門展示イベント「SPORTEC2026」で、運動・スポーツを通じた「健康インフラ」の構築による「健康・活躍社会」の実現パッケージを発表した。心身の健康を支える環境を社会全体で整備し、一人ひとりが長く元気に働き、活躍できる社会の実現を目指す。

 背景にあるのは、現役世代の運動・スポーツ実施率の低さや、心身の不調による休職・離職、働き手の高齢化に伴う転倒・骨折などの労働災害の増加である。日本の成長を支える人材の力を最大化するには、働く世代の健康維持が欠かせない。文部科学省とスポーツ庁は、運動・スポーツを健康づくりや経済成長につなげる施策を一体的に進める。

 発表では、定期的な運動・スポーツの実施により心身の健康改善が図られた場合、年間12.6兆円の経済効果が生まれるとの試算も示された。筑波大学人間総合科学学術院の久野研究室による試算で、医療費抑制や労働生産性向上など、運動習慣の社会的価値を示す数字として位置付けられている。

 パッケージの柱の一つが、現役世代の運動実施率向上だ。従業員の運動・スポーツを促す取り組みを行う企業などに対し、自治体を通じて支援する新たな仕組みを構築する。健康経営や人的資本経営への関心が高まる中で、企業が従業員の健康づくりに取り組みやすい環境を整える。

 身近な運動・スポーツの場の確保も進める。学校体育館を地域に開放し、管理を含めて外部委託することで「コミュニティ・ジム」として整備する構想が盛り込まれた。学校施設を地域の健康拠点として活用することで、住民が日常的に運動しやすい環境を広げる狙いがある。

 また、トップアスリートの競技力向上で蓄積された知見を、一般の人々の健康改善に還元する取り組みも進める。トレーニングデータやコンディショニング情報などを活用する「スポーツDXデータバンク構想」を推進し、ハイパフォーマンス領域の知見をライフパフォーマンス向上へつなげる。

 スポーツを楽しむ機運の醸成も重要な施策となる。スタジアムやアリーナを、スポーツ観戦だけでなく音楽イベントなどのエンターテインメントにも活用できる複合施設として整備・運営するため、人材育成や民間資金の確保について議論するプラットフォームを立ち上げる。

 松本大臣は、スポーツを通じて得られる経験や人とのつながりは、人々の生活を豊かにするとしたうえで、年間12.6兆円の経済効果を生む大きなインパクトを持つ存在でもあると強調した。文部科学省、スポーツ庁として、スポーツ振興と国民の健康増進に全力で取り組む考えを示した。

 少子高齢化が進み、労働力人口の減少が課題となる中で、健康寿命の延伸や現役世代の活躍支援は、社会保障、企業経営、地域づくりの共通課題となっている。今回のパッケージは、スポーツを競技や余暇活動にとどめず、人材の健康を支える社会基盤として位置付けるものだ。

 今後は、企業、自治体、学校、スポーツ団体、民間事業者が連携し、運動・スポーツを日常生活にどう定着させるかが焦点となる。学校施設の地域開放やスポーツDXの活用、健康経営との接続が進めば、教育・地域・産業を横断した新たなスポーツ政策の展開につながりそうだ。

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