旺文社(東京都)は5月16日、参考書づくりなどのために全国の大学や高校から提供を受けた入試問題をPDFデータに変換し、保管していたのは著作権法上の不備があったとして、関連データを全て削除すると発表した。PDFデータで複製保管したのは、2007年ごろ以降に提供された入試問題。出版物の編集などに必要だとして、原本を破棄してPDFデータで保存してきたが、著作権法上の複製権に抵触する恐れがあると判断した。PDFデータで保管することへの許諾も求めていなかったという。
大阪府教育委員会と株式会社mpi松香フォニックス(mpi)は、府内の公立小学校向け英語学習プログラム『DREAM』を共同開発した。mpiは、英単語の綴りと音の規則性を学ぶフォニックス学習法を基にした英語学習教材を開発、販売する会社で、公立小・中学校をはじめ、全国約450のmpiパートナー教室や各地の英語スクールなどに導入されている。このプログラムについて、同社の竹村千栄子代表と教育事業部 学校営業推進統括の高塚勝久氏に話を伺った。
竹村 今回の開発は、府の事業に参画し、公立小学校向けの英語学習プログラムを新たに作り出すという、非常に夢があると同時に、大きな責任・使命感を感じるものでした。今後は、大阪府内でのプログラム導入をサポートします。 加えて、共同開発したこのプログラムは、府教委が取り組まれる府内の公立学校以外については、弊社のプログラムとして商品化し、販売することが可能となっております。大阪府教委版が「DREAM」、弊社版は「小学校英語 SWITCH ON!」(右図)です。この映像教材をできるだけ多くの小学校に活用していただけるよう、活動していきます。
竹村 多くの方が、今すぐ小学校で英語学習をはじめるのは難しいのでは?と考えていると思います。ですが、府教委がめざす学びのスタイルを、実践研究を通じて見て、「これならできる。」「この方法しかない!」と、感じました。
高塚 最大のポイントは、公教育へのフォニックスの導入だと思います。これまでですと、フォニックスを導入したいと思っても、誰がどうやって教えればいいのかわからないという課題がありました。しかし、このプログラムでは、児童が、できるだけ多くの英語を見て聞いて、自分で気付いていく。先生も児童と一緒に楽しみながら、学んでいく。これが普通にできるのです。公立小学校で、フォニックスに触れながら、英語を学ぶことになると、同じことをしている塾は変化を迫られることになるでしょう。小学校で何が起きているのか、しっかりと把握して、対応を検討していかなければならないでしょう。
竹村 本プログラムの本質は、いうなれば「先生が教えないプログラム」です。この本質を理解していただければ、ご用意したシナリオ案は、あくまでご提案なので、学校やクラス、児童の状況を見ながら、モジュール活動の内容をカスタマイズすることも可能です。こうした高い汎用性も、本プログラムの強みです。
小学校英語への取組みについて、お悩みの学校も多いと思います。このプログラムでその解題を解決し、日本の将来を担う子どもたちの英語学習のお役に立ちたいと考えています。
このプロジェクトは、グローバル人材の育成を視野に入れた大阪府の英語教育改革の一環として、小学校1年生からコミュニケーションツールとしての英語にできるだけ多く触れてもらい、英語の4技能をバランスよく習得するための素地を築くことをねらいとするものです。小学校の実態を踏まえ、英語を専門としない学級担任によるモジュール活動で児童の学びを支える仕組みを作るといった野心的な取組みで、府教委の構想をもとに、2014年7月から民間事業者と共同で開発をスタートしました。同年9月からは、府内7市町立の16の小学校で実践研究を開始し、プログラムの根幹となる、「担任による活動」と「同じ学習素材に毎回違った視点で触れ、学びを積み重ねていくラウンドスタイル」について、試行錯誤を繰り返しました。
当初、動画(アニメーション)を見た児童は、シンプルで分かりやすい内容のため、話の大筋をすぐに理解できてしまい、現場から「簡単だ」という声が届けられました。ですが、場面・状況に応じた機能としての表現が習得できたというものではありません。
例えば、子どもが朝起きて目をこすっている場面を見れば、「この子は眠たい。」という場面は理解できますが、そのときの表現(“ I’m Sleepy.”)と結び付けることがポイントです。このことを念頭に、活動のシナリオ案を6カ年分(全627回分)を整備しました。
また、「プログラム」と呼んでいるのは、6年間の体系的な学びをデザインし、小学校での学びのサイクルとなる学期を単位に、テーマ、ねらいと目標を設定しているからです。これに使用する学習素材の解説を加えた「学びのガイドライン」も作成しました。担任の活動に奥行と深さを提供できればと考えています。
コンテンツは、いわゆる「英検5級相当程度」と言っています。小学生の社会性、価値観等に照らし、触れておくことが望ましいと考える英語を整理すると、概ねこの水準が基本となるということです。毎回10 分から15分の活動を1週間に3回、6年間絶え間なく、積み重ねていくことで、児童は無理なくその多くを吸収できるでしょう。
【註釈】『DREAM』の正式名称は、「大阪府公立小学校英語学習6カ年プログラム」、英語名称を「Osaka Program Designed for Real EnglishAcquisition by Modules」としている。その略称・愛称として「DREAM」というパッケージ名称がつけられた。DREAMには、児童が夢や希望を膨らませ、国際コミュニケーションツールとしての英語を使って、自分の夢〝DREAM〟を語ることができるような姿を1つの目標に、小学校での6年間の英語学習をサポートするという意味も込められている。
〈外部リンク〉
mpi松香フォニックス ウェブサイト
www.mpi-j.co.jp
首都大学東京(本部・東京都八王子市)は2018年度から、現行の4学部を7学部に再編し、学問分野を明確化する。同大には現在、「都市教養」「都市環境」「システムデザイン」「健康福祉」の4学部がある。このうち都市教養学部を「人文社会」「法」「経済経営」「理」の4学部に分割する。また、都市教養学部の「機械・電気分野」をシステムデザイン学部に統合して情報分野を強化するほか、都市教養学部で2年次から選択する「都市政策コース」を都市環境学部に組み入れ、都市の課題解決に対応した学問分野を再構築する。
有識者らによる都の評価委員会が5月9日、学部再編を盛り込んだ同大の中期目標案(17~22年度)を了承した。都議会の議決を経て正式決定する。
『BranCo! 2015』の決勝プレゼンテーションが、3月12日、東京大学駒場キャンパスにて開催された。このBranCo!は、学生のための「ブランドデザインコンテスト」。東京大学教養学部と博報堂ブランドデザインが主催するこのコンテストは、次代の教育を考えるヒントが数多くあった。
BranCo!は、東京大学教養学部で開講している「ブランドデザインスタジオ」の拡大企画として、対象を東京大学の学生から他大学の学生も参加可能にし、2012年から行われている。
このコンテストは、毎回違うテーマに基づき、ブランディングをし、プレゼンテーションの出来を競う。しかし、ただブランドをデザインするのではなく、博報堂によるセミナーに参加し、〝学ぶ〟時間が用意されている。
また、予選通過したチームは、チーム毎に博報堂のスタッフがアドバイザーとして参加し、協働してブランドを構築し、様々な視点から最終的にプレゼンテーションをおこなうのが特徴だ。
1チーム3~6名の学生がエントリーし、今回は総勢674名147チームが参加した。今回のテーマは、「『学び』に関する新しいブランドをデザインする」。予選を勝ち抜いた4チームが、決勝プレゼンに臨んだ。また、残念ながら決勝に残れなかったチームも、今回の決勝を見届けるべく、多数が参加していた。
プレゼンテーションの合間には、ジャーナリスト/メディア・アクティビストの津田大介氏、女優の鈴木杏樹氏、サイエンス作家の竹内薫氏の講演も行われた。
「メディアの情報を鵜呑みにしないで、主体的に情報を解読する力を身に着けてほしいと思います」と、津田氏は語り、情報の“ギャップ”について語った。
鈴木氏は、自身の留学経験を踏まえ、その後の人生に大いに影響を与えたことを語った。
「自分の中で、もっとも大切だった時間がイギリスの5年間です。外から日本を見たことによって、日本人というものを意識的にとらえることができました」と語り、海外での暮らしを薦めていた。
竹内氏は、現在、未来小学校という株式会社立の小学校の設立に向けて奔走していると言う。英語とプログラミングの重要性を語るとともに、自身の小学校設立のために取り組んでいるリサーチやマーケティング、資金作りなどをもとに、ビジネスの進め方を具体的に語った。
「日本全体として世界に後れを取ってほしくないと思い立ち上がりました。日本全体に波及させないといけない。地方創生を含めて、日本を変えないと意味がないと思っています」と、竹内氏は語った。
さらに、サプライズゲストに「乃木坂46」の秋元真夏さん、生田絵梨花さん、伊藤かりんさん、松村沙友理さん、若月佑美さんが登壇。5人はチームとして、プレゼンテーションを行った。
アイドル活動を通じて学んだことから、人々の役に立つアイデアをデザインし、学生同様、アドバイスを受けながら、見事なプレゼンテーションを披露。大いに会場を沸かせた。
グランプリに輝いたのは、伊藤望さん(神戸大学4年生(当時))、大川将さん(関西学院大学4年生(当時))、福田沙季さん(関西学院大学4年生)のチーム「つくしーず」。
調査をもとに、学びをテストの点数など取るための「手段的学び」と自分を高めるための「自己目的学び」に分類し、前者を後者に変えるためのデザインをプレゼンテーションした。
それを具現化したものが「ノメル」という飴。この飴は、口に入れてからちょうど〝25分で消えるという飴〟であり、学習をする際にこの飴を口に入れて、25分集中して学べるようにデザイン。学びを阻害する時間を測るツールに邪魔されることなく、学びを行えるようにし、学ぶ環境づくりを新しい視点で見事に表現した。
「3週間ぐらいずっと同じことを悩んでいました」(伊藤さん)
「予選を終えたあと、フィードバックをいただいたときに、さらによくするために考えたのですが、前にも後ろにも動けませんでした」(大川さん)
「どこを捨てたらいいのかわからない状態でした」(福田さん)
予選後にアドバイザーから問題点の指摘を受けたときに、大きな壁にぶつかったそうだ。それを乗り越えてのグランプリであり、満面の笑みを浮かべていた。
伊藤さん、福田さんは広告業界に身を置き、大川さんは大学院に進学したそうだ。これからの活躍が大いに期待される。
「BranCo! のコンセプトは、『正解のない問いに挑む』であり、これは今、様々なところで求められていることです。その中で、アクティブラーニング型の授業を、コンテストの形を取り、学生がチームを組んで協働できるようなしくみとして作りました」と、BranCo!を中心になって組織した博報堂ブランドデザイン代表であり、東京大学特任教授の宮澤正憲氏は、その意義について語ってくれた。
プレゼンテーションを行った学生だけでなく、司会をはじめとした運営も学生たちが担っていた。宮澤氏が語るように、アクティブラーニングのひとつの形として、非常におもしろい試みである。このコンテストは、今年度も開催される予定だ。