いつでもどこでも学びを支援する「iPad mini学習」がスタート

栄光ゼミナールでは、これまで20年にわたってPCを使った学習支援システム「CATS(キャッツ)」を運用してきたが、今春からタブレットPCを使用した「iPad mini学習」をスタートさせた。この学習システムにはどんな機能があり、開発時にはどんな苦労があったのか。また、これから目指すことなどについて話を聞いた。

多彩な機能を引き継ぎつつ、アプリも利用可能に

教室でも自宅でも生徒の学習進捗状況を確認できる

教室でも自宅でも生徒の学習進捗状況を確認できる

栄光ゼミナールは4月より、iPadを使用した「iPad mini学習」をスタートさせた。首都圏の教室に通う「私国立中入試対策コース」の小4生、「特訓・本科コース」の中1生、「高等部ナビオ」の高1グループ授業受講生がおもな対象となる。同社では家庭のパソコンで使用できる学習支援システム「CATS@Home」を2004年より運用してきたが、今回はその「CATS」をiPad用に最適化させたカタチだ。

模試や「基礎確認テスト」、単元ごとに設けられた「単元確認テスト」といった、塾内で実施されたテストの採点結果がいち早く見られるほか、単元テストで間違えた問題の類題だけを集め、その生徒独自の復習問題を作成する「個別確認テスト」、単元テストの解説動画の視聴といった「CATS@Home」の機能は、ほとんど受け継いでいる。

iPad mini版「CATS」のメインメニュー

iPad mini版「CATS」のメインメニュー

「iPad mini学習」独自の特徴として挙げられるのは、アプリが使える点だ。ダウンロードできるアプリに制限はかかっているものの、栄光が開発した英単語学習の「エイタンザムライ」のほか「星座観察アプリ」など、勉強を楽しくするアプリが多彩に利用できる。また、Wi-Fi環境が整っている栄光内の自立学習室「i-cot」であればインターネットに接続できるほか、家庭でもWi-Fiが整備されていればアクセス可能。]

安全性の高さなどを考慮してiPadに決定

「iPad mini学習」を導入した大きな目的は、多彩な機能を擁した学習支援によって、限られた時間のなかでも苦手分野を効率よく学習させる「CATS」を、もっと便利に使ってもらいたかったからだ。家庭によってはパソコンがなかったり、持っていたとしてもリビングにあったりして勉強には使いにくい場合もある。だがiPadであれば、自分の部屋や塾など、好きなところでネットにアクセスしながら勉強することが可能だ。

用意したiPadは1万台。月々1080円でレンタルし、2年経てば新しいものと交換してくれる。随時バージョンアップしていくiPadの買い替えを想定すれば割安だ。ただ、栄光が用意する本体を購入できるほか、個人で使用しているiPadを持ち込むこともできる。

開発にかけた熱い想いを語る制作部の長島雅洋部長

開発にかけた熱い想いを語る制作部の長島雅洋部長

また、いくつもあるタブレット端末のなかで、iPadを採用した理由の1つは安全性の高さだった。「検討段階ではAndroid端末でもトライアルを重ねたが、ウィルスソフトを入れ続けなければならないという弱点があった」と制作部 部長の長島雅洋氏は言う。さらにAndroidはテンポよく学習を進めるには処理速度が機種により大きく異なったほか、アプリ開発における動作確認にも膨大な労力が必要だったという。iPadのほうが画面の解像度やカメラ性能が上回っているのに加え、iPadの持つブランドイメージも後押しした。

アクセスする回数も増え、子どものモチベーションがアップ

2013年5月から着手した「iPad mini学習」の開発にあたって一番苦労したのは、数ある機能のなかで「何を有効にするか」という点だった。各家庭によってインターネットに対する考え方はさまざまで、「遊んでしまわないか心配」という声も想定された。そこでiPadのよさを活かしつつも、ダウンロードできるアプリや閲覧できるホームページを制限したほか、メールは使えないようにするなど、さまざまな対策を講じた。カメラ機能に関しても議論を重ねたが、結局は「利用できるようにする」という結論に至っている。

定期的に配信する動画でモチベーションを喚起する

定期的に配信する動画でモチベーションを喚起する

三軒茶屋校・教務主任の牧野輝豊(てるひろ)氏によれば「子どもたちは綺麗にノートを取ることに苦労しているので、板書したキレイなホワイトボードをカメラで撮って保存もしている」とのことだった。実際にiPadを使っている同教室の小4生たちからも「勉強が面白くなった」「わかりやすい」などの声が聞かれ、反応はまずまずのようだ。

自分の端末があること自体でモチベーションアップにつながっており、各テストに対しても前向きになっているという。「CATS」の時はパソコンを見ながら生徒と会話することはほとんどなかったが、今回のiPad導入により画面を見ながら生徒と話す機会が増えた」と牧野氏。また、「CATS」のみを使用している小6生がサイトにアクセスする頻度は週1回程度に対し、「iPad mini学習」を取り入れた小4生は1日に1回アクセスするようになったという。

人とのコミュニケーションを大切に学習の効率化を図る

栄光ゼミナール東京第3運営部の樫村征典部長

栄光ゼミナール東京第3運営部の樫村征典部長

各教室で使った結果、改善の要望があれば制作部に直接申し出ることが可能。東京第3運営部 部長の樫村征典(ゆきのり)氏は「渡して終わりではなく、生徒一人ひとりに活用させてはじめて意味があるので、今後は人が介在しながらどうやってより有効に活用していくかを考える必要がある」と語る。興味喚起から入りつつも、今後はいかに習慣化を図れるかが課題だ。

「iPad mini学習」の導入は、子どものモチベーションアップにつながっているだけではなく、他塾との競争においてもアドバンテージになり、大きな成功だと思っている。栄光の指導のこだわりである人と人とのコミュニケーションを大切にする点は変わらないが、同じ勉強時間で今よりもさらに学習効率を上げることが目標」という長島氏。今後は継続率や成績の向上度を測りながら、この夏以降にも見直しをしたいとしている。

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