茨城県特産の赤ネギ品種「ひたち紅っこ」から新しいアントシアニンを発見 従来の白ネギの8倍以上の抗酸化活性作用、総ポリフェノール含量も2倍以上

 国立科学博物館は、茨城大学、茨城県農業総合センター、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、岩手大学との共同研究により、茨城県特産の赤ネギ品種「ひたち紅っこ」から新しいアントシアニンを同定したと10月1日に明らかにした。さらに、このアントシアニンを含む赤色の部分(葉鞘)の抗酸化活性を測定したところ、従来の白ネギの8倍以上であり、また同時に総ポリフェノール含量も2倍以上であることも判明し、学術誌(園芸学研究電子版)で公表された。
 茨城県特産の野菜に食品の機能性の面からさらなる価値を与える成果であり、今後の赤ネギの生産・流通拡大に繋がることが期待される。

 赤ネギは葉鞘部が鮮やかな赤色を呈する長ネギ。茨城県で明治時代より県北部城里町(旧桂村)圷地区で独自に栽培されてきた。茨城県農業総合センター園芸研究所では、この在来系統をもとに、より安定的に発色し、在来系統よりも栽培しやすい品種、「ひたち紅っこ」を育成し、2007年に品種登録した。近年では、圷地区以外でも茨城県石岡市を中心に栽培されており、茨城県独自のネギ品種として生産増大が期待されている。

 アントシアニン色素はこれまで植物から700種類以上が報告されている。例えば、ブルーベリーや赤ワインなど。タマネギなどの野菜でもフラボノイドが機能性物質として多く含まれる。本研究では、茨城県特産の赤ネギ品種「ひたち紅っこ」から4種類のアントシアニンと5種類のフラボノイド成分を分離し同定した。それらの成分のうち、もっとも多く含まれているアントシアニンはこれまで自然界で報告されたことのない新しい色素であることが判明した。
 また、高い抗酸化活性が知られているフラボノイドの一種であるクェルセチンの配糖体が高濃度に含まれてた。さらに、「ひたち紅っこ」の赤色の葉鞘部と、従来の白ネギの葉鞘部の抗酸化活性をH-ORAC法で比較したところ、「ひたち紅っこ」の活性は8倍以上であることが示され、抗酸化食品としての有用性が明らかになった。

≪発表論文≫
表題:茨城県特産赤ネギ品種‘ひたち紅っこ’に含まれるフラボノイドの同定と抗酸化活性評価
著者:水野貴行・中根理沙・貝塚隆史・石川(高野)祐子・立澤文見・井上栄一・岩科司
掲載紙:園芸学研究
(一般社団法人園芸学会が出版する和文雑誌、電子版は2020年9月30日付)
URL:https://doi.org/10.2503/hrj.19.237

≪参考文献≫
貝塚隆史・鈴木雅人.2006.赤ネギ「ひたち紅っこ」の育成経過と特性.茨城県農業総合センター園芸研究所研究報告.14: 1–7.

■国立科学博物館
公式ウェブサイト:https://www.kahaku.go.jp
筑波実験植物園:http://www.tbg.kahaku.go.jp
筑波研究施設:https://www.kahaku.go.jp/institution/tsukuba/index.html
茨城県農業総合センター:https://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/nosose/cont/index.html

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