受験期の生徒を守るため、事業承継に手を挙げた志学門の横山愛子代表。大阪の下町にある2校舎を拠点に、地域から絶大な信頼を集めている。生徒の成績向上はもちろん、「この場所で出会って人生が変わった」と思ってもらえる校舎を目指し、生徒・保護者・社員が共に成長できる学び舎づくりに取り組んでいる。
事業承継の覚悟と社名に込めた想い
──志学門の設立の経緯について教えてください。
私はもともと、志学門の前身にあたる会社の社員だったのですが、当時の社長が高齢ということもあり、
事業承継の話が持ち上がりました。ただ、当時は財政状況もあまり良くなく、事業を引き継いでくださる方もいない状態だったんです。そこで私が、もちろん勇気も必要でしたが、「やらせてほしい」と手を挙げ、志学門という会社を設立し、校舎の運営を引き継ぐことにしました。もし、私が名乗り出なければ、預かっている生徒たちを受験の最中に放り出すことになる。そうした状況は避けなければいけないという気持ちが大きかったです。現在、志学門は3 期目で2校舎を運営しています。

──志学門という社名には、どんな想いが込められているのですか?
「志学」は論語の「吾十有五にして学に志す」から引きました。15歳の高校生たちが、学びを始める場所でありたいという想いです。そして「門」は学びの始まりの場所という意味を込めています。
──素晴らしい名前ですね。以前の会社は、東進衛星予備校のみを運営されていたのですか?
元々は小中学生を対象にした塾から始まった会社だったのですが、20年以上前から東進衛星予備校に加盟していました。ただ、加盟校の中でも知名度が低く、加盟はしているけれど東進のコンテンツを十分に活かしきれていない状態が続いていました。私は、その会社に入社して、まずその状況を変えていきました。最後に入った最年少の社員の意見を、社長と当時の上司二人が聞いてくださり、ありがたいことにこの上司たちは、今も志学門で働いていただいています。
家族全体を支える〝人生が変わる場所〟
──志学門の強みはどこにあると思いますか?
満足度の高さ、生徒との距離の近さ、保護者との関係性ですね。私たちは、生徒だけでなく保護者を含めた家族全体で同じ方向を向いて戦っていくことを大事にしています。
──満足度を上げるために心がけていることはなんですか?
成績を上げることはもちろん大事ですが、それ以上に「この場所で私たちと出会ったから人生が変わった」と思ってもらえるようにすることです。特に保護者との関わりはうちのこだわりで、「みんなで戦っていくんだ」と言える関係性を築いています。
本人だけでなく、ご家族全体の満足度向上を意識しています。だからこそ、保護者からの厳しいお声も「ありがたい」と本気で思っています。不安があるからこそ言ってくださるので、それをケアするのも仕事の一部。ある意味、メンタルケアクリニックのような校舎です(笑)。
卒業後もご家庭とのつながりが続き、3年前に卒業した生徒が志学門を紹介して入学してくれたり、兄弟での入塾も多く、本当にありがたい限りです。少子化で業界全体は厳しい状況ですが、うちは逆に生徒数が増えています。最近は2校舎のうち1校舎で、高1・高2の生徒が増えてきました。

──高1・高2が増えている要因を教えてください。
低学年の生徒こそ大切にすべきだと考え、手厚いケアをしています。登校率は70〜80%と非常に高く、週4〜5回通う生徒もいます。1年生でも学年トップになるなど成績が上がり、それが楽しさやモチベーションにつながっています。さらに、高3の先輩が「1年生から頑張れるなんていいな」と声をかけてくれることで、後輩のやる気も引き出されています。
また、「高0生」という形で意欲の高い中学生も受け入れ、6年計画で大学受験を見据えています。
人を宝とする組織づくりと未来構想
──社員やチームを増やしていくことも考えていますか?
そうですね。担任助手からも採用を増やしていきたいと思っています。そのためには、私たちの仕事を見て「楽しそうだな」と思ってもらえることが大事です。教育はとても難しく、社員のメンタルが整っていないとできません。生徒や保護者は勉強や生活面で悩みを抱えて来てくださるのに、私たちが悩みを抱えていてはケアできません。志学門は社員や担任助手をとことん大切にし、愛を与えることを大事にしています。それができなければ、教育は成り立たないと思っています。

──愛を与えるために普段から取り組んでいることはどんな事ですか?
コミュニケーションの機会を多く設けています。担任助手とも食事に行ったり、今度はバーベキューも予定しています。その子の良いところを見つけ、輝ける場を考えて配置しています。本当に人が宝で、人のおかげで成り立っていると実感しています。
──今後の展開はどう考えていますか?
新たな校舎展開を目指し、私たちにしか建てられない場所に校舎を作りたいです。下町での運営経験を活かし、私たちにしか救えない層や地域があると感じています。一方で、少子化の影響で東進の中でも生徒が集まりにくい校舎が出てきています。だからこそ、元気のない校舎を立て直すことも今後はやっていきたいです。ボロボロだった校舎を引き継いだ経験があるので、この経験を活かせますし(笑)、私たちだからこそ、もっと生徒を増やせる校舎があると思っています。




