民間教育推進のための自民党国会議員連盟の第8回総会が2月20日に、衆議院第2議員会館で開催された。
総会では、公益社団法人全国学習塾協会の安藤大作会長が、教育バウチャー制度促進に向けた提案をし、参加した議員らと意見交換が行われた。
提案の内容は、公教育と民間教育の両輪により、日本の教育は新しい時代に求められる「多彩で多様な人材」の育成を可能にするはずと説明し、現在の公教育現場が採用倍率の低下や道徳の教科化などで現場が切迫していることを説明した。また不登校児童生徒数が9年連続で増加傾向にあることにも触れ、民間教育現場があることで子どもの居場所ができWell-beingの向上にも期待ができる。不登校児童生徒や心のケアが必要な生徒をカバーできるのも民間教育であると説明した。
教育バウチャー制度を促進する理由として、まず挙げられたのが学校外教育機会の減少だ。昨年12月15日に発表された子どもの「体験格差」実態調査中間報告書(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンより引用)では学校外の体験がない子どもの割合が世帯年収300万円未満だと29・9%となり300万円〜599万円の世帯では20・2%。600万円以上では11・3%となった。ほかにも物価高騰が子どもの学校外の体験機会に与えた影響も説明し、「バウチャー制度が教育の多様性を担保する」と説明した。バウチャーを発行して大量のデータが国に入れば、将来の教育施策を練るために貴重な情報源になり得るといい、データを収集する意味でもバウチャーは重要だという。
教育以外の習い事などの業界についても説明しており、水泳教室では学校水泳を民間委託することにより「泳力格差の解消」「高度な水泳指導」「教員にかかる負担の軽減」「水泳授業の安全性の確保」、そして「学校プールの老朽化」といった課題が一挙に解決に結びつく。だからこそバウチャー制度の活用も選択肢の一つとして捉えられるという。また、英会話教室や音楽教室(ピアノ)にも触れ学校外教育の重要性を説いた。
最後に教育バウチャー制度の実例を挙げた。福岡市のこども習い事応援事業や大阪市の塾代助成事業を紹介し、大阪市のバウチャー制度は所得制限限度額が設定されているものの月額1万円を上限として1円単位で利用でき、利用先は大阪市塾代助成事業参画事業者として登録されている学習塾や家庭教師、文化・スポーツ教室などだ。アンケート結果も紹介し、「新たに通塾ができ、冬期講習等に参加した、受講科目を増やせた」生徒が1142人(42・0%)。交付前は学習塾に通っていなかった生徒は370人(20・2%)となり、バウチャー制度が教育の機会提供を行なっていると示した。
予算要望については小中高生全世帯にひと月あたり1万円助成した場合年間で約1兆5300億円。世帯収入900万円以下とした場合は約1兆2800億円となる。安藤会長は多様な教育を展開できる教育バウチャー制度の充実を図ることで少子化をとめ、各分野での優秀人材獲得ができ、学力全体の底上げなどが期待できると話した。
提案を受けて、下村博文衆議院議員は「バウチャーやクーポンが認められるには社会のコンセンサス作りが必要だと思います。まずは地方自治体で活用するところを増やす活動が皆さんにとっても大切だと思います。公教育においても、今年の4月から土日の中学の部活は地域移行が行われる。これは学校の先生がたの負担軽減を目的としたもので、土曜、日曜日に行われる部活動を民間に委託する。国の優先順度では公教育の立て直しが喫緊の課題となっており、不登校問題や教員不足なども挙げられる。こういった公教育の問題を解決することが重要。その連動で民間教育がどのように貢献するかが考えられる」と回答した。