収蔵庫から新種の巻貝化石を発見 国立科学博物館

 千葉県銚子市に分布する銚子層群※1(中生代前期白亜紀の浅海成堆積物)から採集され、千葉県立中央博物館に寄贈された岩石を詳しく調査したところ、これまで銚子層群から報告されていなかった微小な巻貝を12種類発見し、そのうちの6種が新種として記載された。銚子層群の巻貝化石としては、42年ぶりに新種が加わったこととなる。

 今回の研究の特色として、博物館に寄贈され、収蔵庫に保管されていた岩石から新種が発見されたこと。寄贈を受けた資料は、公的機関において収蔵する価値が高いと判断されたものだが、その資料から新しい発見が得られることは、博物館等の研究施設における自然誌研究や保管機能の重要性を改めて示すもの。
 この研究成果は、2022年1月1日発行の日本古生物学会の国際学術誌「Paleontological Research」(パレオントロジカル・リサーチ)において発表された。

【発見の経緯】
 今回、新種として記載した6種の巻貝化石は、博物館資料として収蔵されていた、千葉県銚子市に分布する銚子層群君ヶ浜層(前期白亜紀“約1億2500万年前”)から採集された岩石より見出された。この岩石は、銚子市在住の山田勝彦さんによって、1998年に採集され、2000年に千葉県立中央博物館に寄贈されたもの。
 この岩石には貝類化石が多量に含まれており、これまでに発見されていない微小な種類が見つかる可能性があった。千葉県立中央博物館の伊左治鎭司は、2011年頃から、有孔虫などの微化石を探す手法(ボロン法)を用いて、この岩石から微小な化石を抽出する調査を開始し、多数の微小な巻貝化石を発見した。
 この巻貝化石に関する調査を進める過程で、軟体動物化石に詳しい芳賀拓真(国立科学博物館)に意見を求めるとともに、共産する微化石の同定に関しては中生代の微化石研究に実績のある柏木健司(富山大学)にも助言を求め、科学研究費等を用いた共同研究を開始し、その成果として新種の巻貝化石を記載する論文を発表した。

【用語解説】
※1 銚子層群 
 銚子半島の海岸周辺に分布する中生代前期白亜紀に堆積した地層の集まり。台風のような嵐の影響を受ける浅海で堆積した地層が特色。今回発見された新種は、銚子層群君ヶ浜層より産出し、その地質時代はバレミアン期にあたる。

※2 微化石を探す手法 
 有孔虫や放散虫などの微化石研究に用いられるボロン法を用いた。ボロン法は、泥質岩に含まれる雲母鉱物からカリウムイオンを分離し、ナトリウムイオンや水に補わせることによって粘土鉱物化させ、自然界で起こる風化現象を急速に人工的に引き起す。この処理により、岩石を軟泥化させ、水洗い処理だけで微小貝を取り出すことが可能となる画期的な方法である。

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