ispaceの月面着陸、再挑戦も失敗 通信途絶と減速不足が影響か

 東京の宇宙ベンチャー企業「ispace」は6月6日未明、日本の民間企業として初の月面着陸に挑戦したが、月着陸船との通信が回復せず、着陸に失敗したと発表した。同社は原因究明に取り組むとし、再挑戦への意欲もにじませている。

 月着陸船は同日午前3時すぎに月面への降下を開始し、午前4時17分に月の北半球の平坦な地点への着陸を予定していた。しかし予定時刻を過ぎた午前4時半すぎ、通信が確立できていないことが明らかになり、午前9時から開かれた記者会見で袴田武史CEOは「通信の回復は見込めない」と述べ、着陸の失敗を認めた。

 会見で明らかにされたデータによれば、着陸船は高度約1キロまでしか正確な高度を把握できず、着陸に必要な減速も不十分だった。これにより「月面に衝突した可能性が高い」との見方を示した。
 ispaceは2022年にも月面着陸に挑戦し、通信途絶により失敗。今回は制御システムや着陸地点を見直しての再挑戦だった。袴田CEOは「2度目の失敗を重く受け止めたい。原因解明を通じて前回の課題を克服できていたかも含め検証する」と述べた。
 この日は東京都内で企業関係者ら約500人が集まり、応援イベントが開かれた。着陸船のデータがリアルタイムで表示される中、通信途絶の報に場内は緊張感に包まれ、集まった人々の表情は険しかった。
 一方で、専門家からは技術力を評価する声も上がった。東京大学大学院の宮本英昭教授は「着陸直前まで迫った完成度の高さは評価できる。周回軌道から降下に成功した点は前回に続く成果だ」とコメント。さらに「世界が注目する中、民間企業の技術力を印象づけた。失敗を糧にして再び立ち上がってほしい」と期待を寄せた。
 宇宙開発における民間企業の役割についても、「参入によって開発スピードが上がり、リスクも取れるようになる。日本が月輸送手段を持つことは国際協力でも優位に働く」と述べ、民間主導の意義を強調した。
 ispaceの挑戦は、月面輸送を担う日本企業の技術的自立と将来の宇宙産業発展に向けた大きな一歩でもある。苦い結果に終わったが、その歩みは確実に次につながっている。

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