Category: 塾ニュース

森絵都著「みかづき」刊行

「小説すばる」(集英社)に2014年5月号から16年4月号まで20回に渡り連載された森絵都さんが著した「みかづき」が2016年9月5日、集英社より刊行された。
 昭和36年、赤坂千明から学習塾の立ち上げに誘われ、大島吾郎の教育者人生が始まる。「大島さん、私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです。太陽の光を十分に吸収できない子どもたちを、暗がりの中で静かに照らす月、今はまだ儚げな三日月に過ぎないけれど、かならず満ちていきますわ」。題名の「みかづき」はここに潜み、以後三世代に渡り、塾を舞台に教育の何たるかを綴る。
 吾郎が五十何冊目かに書いた初めての自叙伝のタイトルも「みかづき」とした。出版記念パーティーでの吾郎のスピーチでは、「教育の完成はありません。満月足りえない途上の月を悩ましく仰ぎ、奮闘を重ねた同志の皆さんに、この場をお借りして心から敬意を表します」とまとめた。
「圧倒された」とは、書評家の北上次郎氏。
 1960年代から2000年代までを駆け抜ける塾を舞台にした親子3代の物語。ぜひご一読を。
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■みかづき

森絵都(著/文)
発行:集英社。
四六判   472頁 
定価:1,850円+税
2016年9月5日発売

■森絵都(もり えと)

作家。1968年東京都生まれ。早稲田大学卒業。90年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。著書に『つきのふね』(野間児童文芸賞)『カラフル』(産経児童出版文化賞)『DIVE!!』( 小学館児童出版文化賞)『風に舞いあがるビニールシート』(直木賞)『永遠の出口』『クラスメイツ』等多数。

地震の後も熊本の私塾が貫いた、民間教育機関としての使命

4月14日に発生した震度7の前震をはじめとする一連の地震は、熊本一帯に大きな被害をもたらした。それでも現地で私塾に携わる人たちは過酷な状況のなか、子供たちに学ぶ機会を提供し続けている。地震発生から4ヶ月近く経った熊本で、4つの教育現場をレポートする。

お金や理屈より、授業の再開を優先

早稲田スクールの本部校舎は大きな被害は免れたが、地震発生後に解体や大規模修理が必要となった校舎もあった。

早稲田スクールの本部校舎は大きな被害は免れたが、地震発生後に解体や大規模修理が必要となった校舎もあった。

熊本県内屈指の教室数をほこる「早稲田スクール」(熊本市中央区)は、地震によりひとつの校舎が解体、3校で大規模修理が必要となった。解体される校舎は移転先が見つかったものの、3校は授業再開の目途が立たなかった。そこで3校の駐車場に、トレーラーで運んですぐに使用できるユニットハウスを複数設置。5月10日には授業を再開した。

ユニットハウスの外観。手前2棟がトイレ、奥2棟が教室として使用していた。

ユニットハウスの外観。手前2棟がトイレ、奥2棟が教室として使用していた。

実はプレハブを建てたほうが費用的には負担が少ないのだが、あえてユニットハウスを選択した理由を同社の向田敬二社長が語った。「安価なプレハブを建てることも考えましたが、建築の申請や工事に長い時間がかかるんです。そうなると生徒の学習はますます遅れます。保護者も心配されますし、受験生への影響は特に大きい。ですから費用がかさんでも学習環境を早く整えなければいけない。お金や理屈ではなく、そういう思いを社内で共有して授業再開に向けて取り組みました」

仮設教室の内部

仮設教室の内部

向田氏自身も被災し、自宅近くの高校に1週間避難していた。同様に被災していた社員も少なくない。それでも同社は生徒の学習環境を整えることを優先した。向田氏は授業再開後の生徒について「それはもう喜んでいました」と、顔をほころばせた。1学期の終わりには校舎の修理がほぼ完了し、生徒たちは通いなれた校舎で夏期講習に勤しんでいる。

 

学ぶ機会を教材で提供…阿蘇地区の中学校にテキストを寄贈

なるほどゼミナールの山中孝光社長

なるほどゼミナールの山中孝光社長

熊本市東区の「なるほどゼミナール(ナルゼミ)」では、教室の水道が復旧した4月25日から「震災特別講習」を無料で実施した。それから学校が始まるゴールデンウィーク明けまでの2週間、休日を返上して朝9時から夕方6時まで授業を継続。特に小学生が通常より50人も増えたため、卒塾生の大学生や高校生がボランティアとして講師を買って出た。同社社長で講師でもある山中孝光氏は、さらに多くの子供たちに勉強する場所を与えたいと協力を呼びかけ、同様の講習が他塾でも実施された。

阿蘇地区の中学校で寄贈するテキストを生徒に手渡す山中氏

阿蘇地区の中学校で寄贈するテキストを生徒に手渡す山中氏。

しかし、阿蘇地区の子供たちは熊本市内への道路やJRが寸断されており熊本市内の塾に来ることができない状況が続いている。山中氏はここでも「阿蘇地区にいる受験生たちにも力になりたい」と考えたという。そこでナルゼミで使用しているテキスト「高校入試対策 Spurt+(スパートプラス)」を440人分、2200冊を阿蘇地区の4つの中学校に寄贈した。

「勉強の仕方が誰でもわかるようになる」という工夫が凝らされているテキストは、阿蘇地区の中学校の先生からも好評を得た。現在は、多くの住宅が倒壊した益城町の中学校にも同様の支援を行うため、クラウドファンディングで資金を募っている。

無料の授業で笑顔を増やす

〝夏期講習も無料で教えます〟。益城町でも特に被害が大きい惣領地区で、ひときわ目立つ横断幕を掲げる「さくらゼミナールましき校」。小5から中3が対象の学習塾だ。こちらの平屋で鉄筋構造の校舎はほとんど被害を受けなかったが、周囲に住む多くの子どもたちは家を失い、避難所生活を強いられることになった。

さくらゼミナールましき校の石井仁晃校長

さくらゼミナールましき校の石井仁晃校長

そこでさくらゼミナールは、4月25日から5月8日の間、ましき校を13時から17時まで無料で開放した。「生活のための避難所は大人が中心の環境になってしまいます。まずは子どもだけの居場所が必要だと感じ、教室を開放しました。ただ、子供たちは来ても元気がないんです。ですから、まずは勉強というより一人一人の話を聞いてあげることから始めました」ましき校の校長、石井仁晃氏はそう語った。

校舎の前面に「無料」の横断幕を掲げる。

校舎の前面に「無料」の横断幕を掲げる。

さらに、ウェブサイトを通して寄付金を募り、ゴールデンウィーク後に再開した授業や夏季講習も無料で実施することにした。この期間で生徒は100人近く増えたが、資金面での負担が大きく、9月からは無料で続けるわけにはいかないため、今後は被災者を支援する他団体と協力し、新たな方法で生徒のサポートを続けていくという。

生徒たちも地震直後にくらべ「笑顔が戻ってきました。それを見た保護者の笑顔も増えていると感じます」と石井氏は言う。笑顔を増やしたい。それが支援を続ける原動力だ。

私塾と学校が連携、小学校内で塾を開く

熊本県内に528校ある小中学校うち、一時は351校が地震の影響で休校となった。益城町立広安西小学校は避難所となり、約800人の避難者を受け入れた。授業は5月9日に再開したものの、その週は2時間しか授業ができなかった。

そこでPTAが中心となり、放課後に希望者が勉強できる「ガッツ学習塾」を16日から開始。ここで子供たちの宿題や復習をサポートしたのが、熊本県内で明光義塾を運営する「サクセスリンク」(熊本県玉名市)と、家庭教師派遣の熊大アカデミーを展開する「九州教育研修センター」(熊本市中央区)の講師たちだった。

明光義塾 帯山教室の尾方範夫教室長

明光義塾 帯山教室の尾方範夫教室長

明光義塾の帯山教室教室長、尾方範夫氏は「PTA会長が私と知り合いということもあり、すぐに話がまとまりました。熊大アカデミーの講師は熊大の教育学部生が多く、授業ではレクリエーションなども取り入れました。大人が協力して子供の学習をサポートしました」と語った。

益城町立広安西小学校の井手文雄校長

益城町立広安西小学校の井手文雄校長

同校の井手文雄校長は、私塾の取り組みについて「学校と学習塾は、立場は違っても気持ちは変わりません。勉強はもちろん、子供たちを見守るという点でも、子供と保護者に安心感を持ってもらったと思います」と述べた。

熊本の私塾に携わる人たちは、震災直後から子供たちに勉強を教えるという務めを全うした。その役割をそれぞれの立ち位置から貫くことで被災者に安心感を与えた。熊本の私塾をはじめとした教育関係者に敬意を表したい。

ガッツ学習塾の授業の様子。5月16日から7月22日まで実施した。

ガッツ学習塾の授業の様子。5月16日から7月22日まで実施した。

学研教育みらい、ウエアラブルで紙芝居と音楽連動 Moffと提携

学研ホールディングスグループの学研教育みらい(東京・品川)は、ウエアラブル機器ベンチャーのMoff(モフ、東京・千代田)と提携した。同社のリストバンド型機器を活用し、音楽が流れる紙芝居を近く発売する。発売する「おとしばい」では、保育士や教諭がリストバンド型機器「モフバンド」を付けると、腕の動きを読み取り、連動するスマートフォン(スマホ)などから音楽や効果音が流れる。専用紙芝居にバンドの使いどころや腕の動かし方が書かれており、ストーリーに合わせて登場人物のしぐさを表現する。

セブン、欠品ゼロへ 10年ぶり新システム

セブン―イレブン・ジャパンは全国約1万9000店のコンビニエンスストアと本部を結ぶ情報システムを10年ぶりに刷新する。投資額は過去最高の520億円。店舗に配る新型の発注端末に売り切れ間近の商品を従業員に知らせる機能を持たせる。欠品による販売機会の逸失を防ぎ、店舗の稼ぐ力を底上げする。今秋までに店舗の発注端末やパソコンなど機器の更新を完了し、2017年度から順次、新システムの運用を始める。

英語学べる学童保育  携帯販売のピーアップ 業界参入

「テルル」などの店名で携帯電話の販売店を手がけるピーアップ(東京・足立)は「KidsUP(キッズアップ)」の名称で、英語を教える学童保育の展開を始めた。すでに東京都大田区では田園調布や蒲田などで開設している。江東区内ではまず9月10日に東京メトロ東陽町駅の近くで新設するほか、来春までに2教室を開く。今後5年間で目黒区や世田谷区、神奈川県内など1都3県を中心に70カ所まで拡大する方針だ。学童保育へのニーズに加えて、小学校での外国語の教科化を見すえ、事業の多角化を急ぐ。

ソニー系SIE、パソコンでもPS3ゲームOK

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は8月24日、「プレイステーション(PS)3」のゲームが遊べるネットサービス「PSナウ」をパソコンに対応させると発表した。PSナウは1カ月あたり税別2315円でゲームが遊び放題になるサービスで、4時間からのレンタル形式もある。まず欧州、米国から始め、その後に日本でも開始する。

自由研究、科学への誘い 催し続々

東京都内の博物館や大学などが夏休みの自由研究に役立ててもらおうと、子ども向けの体験イベントに工夫を凝らしている。たばこと塩の博物館(東京・墨田)は塩の特性を生かした実験を披露。工学院大学は今週末、大規模な科学教室を開く。独バイエルの日本法人、バイエルホールディング(同・千代田)は丸ビル(同)1階で科学イベントを開く。内閣府などは27日から2日間、東京大の本郷キャンパス(同・文京)で「第1回 防災推進国民大会」を開く。

東北大、自動運転車の実用化へ県などと連携

東北大学は仙台市、宮城県、東北経済連合会と共同で、自動運転車などの実用化を進める「東北次世代移動体システム技術実証コンソーシアム」を設立した。関連企業などと連携し、自動運転や自動飛行技術の研究開発や拠点整備に取り組み、普及につなげる。仙台市は昨年8月に国家戦略特区に指定されており、東北大キャンパスや市内の過疎地域などで自動運転技術の実証実験をする方針。新たな産業を生み出し、雇用創出なども目指す。

2次補正予算案、一般会計4.1兆円を閣議決定 国債2.7兆円発行

政府は8月24日、インフラ整備や一億総活躍社会の実現などに向けた2016年度第2次補正予算案を臨時閣議で決定した。一般会計の歳出規模は4兆1143億円とした。秋の臨時国会に提出する。財源には建設国債を2兆7500億円追加で発行するほか、日銀のマイナス金利政策の影響による国債利払い費の減少などを活用する。国による追加の財政支出は東日本大震災の復興関係費などをあわせて4兆5221億円となる。内訳では東日本大震災や熊本地震からの復興及び防災対策などに1兆9688億円を充てる。

教員ら494人に歳暮 大日本図書と教育芸術社、謝礼問題で再調査

検定中の教科書を教員らに見せ、謝礼を渡していた問題で、大日本図書と教育芸術社(いずれも東京)が2015年までの4年間、教員や自治体の教育長ら延べ494人に歳暮を贈っていたことが8月23日、分かった。両社が同日、社内の再調査結果を文部科学省に報告した。大日本図書は12~14年、教員延べ180人に菓子や茶など2000円程度の歳暮を贈った。教育芸術社は12~15年の4年間、リンゴやサケ、ジャム(2244~5600円)を同314人に贈っていた。同社分には教科書を採択する市町村教委の教育長同26人が含まれていた。