教育サービス業界 企業研究Vol.114 株式会社 Mined

その道のプロがおこなう探究授業を、ライブ配信で届ける「スコラボ」

 探究学習の授業を、オンラインで届けるためのプラットフォーム「スコラボ」。オンデマンドではなくライブ配信にこだわっているのが大きな特徴のほか、講師は外部に委託し、様々なジャンルの学びを取り揃えているのもポイントだ。スコラボを提供する株式会社Mined(東京・千代田区)の代表取締役 前田智大氏に、このプラットフォームを立ち上げようと思ったきっかけや実際の学びなどについて聞いた。

ライブにこだわる探究型オンライン授業

 スコラボは探究学習に特化した、オンライン授業のプラットフォームだ。オンラインといってもオンデマンドではなくライブ配信にこだわっているのが大きなポイントの1つで、受講生は講師と直接やり取りしながら学びを深めることができる。
 小1から高3まで幅広く学べるスコラボのテーマは、例えば「起業家になろう ビジネスの仕組み編」「Amoung Usの勝ち方を見つけよう」「どうぶつ博士になろう!」「スマホでイラストレーターになろう!」「ロケットの作り方」など、実に多彩だ。
 現在、提供している授業は約120クラス。講師は約50名で、すべて外部の人材に委託している。それぞれが本業をおこないながら、スコラボにジョインしているカタチだ。前田氏としては、ある業界について少し詳しいという人ではなく、「その道を究めているエキスパート」を講師として迎えたい考えで、その数は紹介によって増えてきた。「オタクがオタクに教えるような授業をイメージしています」と前田氏。
 また講師には、アクティブに考える時間を設けるようお願いしていて、授業を受ける子供たちからは活発な意見が飛び交う。
 ほとんどの授業は1回完結型。4回シリーズなども試したが集客状況がよくなかったため、1回完結型に落ち着いた。60%ほどの生徒がリピートしてくれていて、「収益性はまずまずです」という。

心から学びたいと思えるかどうか

 スコラボという名は、「スコラ」(=ギリシャ語で学校の意)と「ラボ」=(実験)を組み合わせた造語で、ほかのサービスと重複しないよう、こだわって名付けた。運営会社であるMinedは、「可能性を発掘する」という意味だ。
 スコラをリリースしたのは2020年。灘中高からMIT電子工学部、MIT Media Labへと進んだ前田氏がアメリカで6年間を過ごすなか、パッションを持った個人が活躍する世界に圧倒され、日本の情熱の総量を上げたいという想いで立ち上げた。

株式会社Mined 代表取締役 前田智大氏

 MIT Media Labを卒業してからは、高校生にコーチングをおこなっていた前田氏。やり甲斐や面白みは感じたものの、再現性が少なく属人的であることや、高校生の意識が目の前の模試にしかないことなどに疑問を感じ、スコラボを立ち上げ。「せっかく教育に携わるなら、僕自身が納得してやりたかったんです」。
 そういった経験を活かし、スコラボが意識しているのは、「心から学びたいと思えるかどうか」だ。子供たちが学びを愛し、夢中になって物事に打ち込みながら、自分の可能性を広げてほしいと考えている。
 心から学びたいと思えるようになるには、学びに対する「目的意識」が重要だ。なぜこの数式を学ばなければならないのか。目的意識が明確ではっきりしていれば、心から学びたいと感じられるだろう。
 オンデマンドでなくライブ配信にこだわったのも、目的意識を高めたかったからだ。事業性を考えればオンデマンドのほうが断然よいが、録画を視聴して学ぶスタイルは、相当モチベーションが高い子でなければ続かない。ライブ配信で双方向にやり取りをして子供たちを丁寧にケアしながら、目的意識を高めている。

塾や公教育とのコラボも視野に

 公教育の現場では、探究学習に力を入れたいと考えている学校も少なくないが、今はまだコンテンツが不足している状態だ。たとえコンテンツがあったとしても教員は多忙であるため、子供たちの目的意識を高めるよう指導していくのは、なかなか難しいといえるだろう。こうした状況を踏まえ、前田氏はいずれ公教育に入っていきたいと考えている。

オンライン上で様々な探究学習をライブ配信で提供する「スコラボ」

「ゲーム制作や動画編集など、自分たちが将来やってみたいことを仕事にするには、数学の学びが不可欠であるといったことに、気づかせてあげたいですね。
 私たちはフットワークが軽く、しかも安く速くサービスを提供できますので、そのメリットを生かしながら、子供たちの目をより輝かせてあげられたらと思います」
 すでにスコラボは、学童とのコラボを実現。着々と領域を拡大しており、公教育に導入される日も近そうだ。
 また今後はスコラボのアップデートも想定していて、AIを導入する可能性があるという。AIによってカリキュラムのスピードを早くしたり、「この授業を受けた生徒は、このクラスも取った」というようにレコメンドや興味発見のための機能を付け、学習の機会損失を減らしたい考えだ。すでにクラスの受講割合などは、手作業でデータ集計し、PDCAに取り組んでいる。

 灘中を目指して受験勉強していた時は、塾通いをしていた前田氏。スコラボは塾との相性もよいと考えていて、「少しでも興味を持っていただけたのであれば、お気軽にご連絡ください」と話してくれた。
 教育業界にスコラボが浸透するにはまだ少し時間がかかりそうだとみているが、周囲からの反応や手応えは悪くなく、「これからが楽しみです」と笑顔をのぞかせる。

企業データ

  • 株式会社Mined
  • 代表者名:前田智大
  • 創業:2020年8月
  • 資本金:
  • 本社所在地:〒100-0005東京都千代田区丸の内2-3-2郵船ビル4F 412B
  • URL: https://mined.jp/
  • 事業内容:教育関連サービス開発・運営

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