Category: 企業研究

教育サービス業界 企業研究Vol.115 株式会社 花形

大学受験の先を見据える総合型選抜専門塾の旗手 株式会社花形

 総合型選抜を取り入れている大学が増加している。例えば、私立大学の実施率は平成31年と令和2年を比較すると、84.0%→90.8%※になっている。市場という視点でも拡大している総合型選抜だが、この入試に早くから注目し『総合型選抜の専門塾AOI』を展開する株式会社花形は、これまでの画一的な観点では測れない力を問うこの入試に新たな可能性を見る。※文部科学省:令和3年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要

本当にやりたいことは何か?

 株式会社花形が展開する『総合型選抜専門塾AOI』。この塾の背景にあるのは、自身にとって、本当にやりたいことは何か? 将来何をやりたいか?という問いだ。
「これは総合型選抜の本質的な問いだと思います。今まで大学受験が教育のゴールと捉えられていたように思います。しかし、生徒の今後の人生を考えたときに、自分がやりたい領域で自分らしく輝いていける子供たちをもっと育てていかないといけない。それを可能にする塾としてAOIを作りました。また、AOIの思想は、大学入試制度改革、高大接続改革などの本質とマッチしていると思っています」と、株式会社花形代表取締役の小澤忠氏は語る。

株式会社花形 代表取締役 小澤 忠 氏

強みはコンテンツと人

 AOIの強みはコンテンツと人。コンテンツはカリキュラムの中心にある動画教材も含めて全てオリジナルだ。 カリキュラムは、探求プログラムと受験プログラムにわかれる。場合によると、集団授業の形で行い、例えば時事問題を題材にディスカッションをしたり、グループディスカッションをしたり、塾では珍しいフィールドワークも行う。
 自己分析も重要な要素だ。生徒が自身の価値観を明確にし、自分がやりたい領域、社会課題や学術、興味分野に対して方向性が見えてくると、志望理由書を作り上げていくフェーズに入る。これらは全て体系化され、独自のカリキュラムの中に組み込まれている。
 資格試験対策も用意。例えば英検やTOEICなどの対策講座も備える。
 また、生徒がやりたいことから将来何をしたいのかを逆算して、活動実績のアドバイスも行なっている。

 小論文のトレーニングは通年で行われる。大学別の対策や課題文型小論文の対策も用意しているのも強みの一つだ。
 そして、これらのカリキュラムを支えるのがメンターだ。
 AOIでは、一人の生徒につき一人のメンターを専属につけない。生徒一人一人興味・関心は違う。そのため、生徒の一つ一つの興味・関心がある分野ごとに専門知識のあるメンターがフォローする。その上で、「こうすることで、誰に話しても大丈夫という心理的安全性がある環境が作れます。自己分析をしたものは、正直色々な人には話したくはないと思いますが、色々なメンターと接することで一体感が生まれ、話しやすくなります」と小澤氏はその効果について語る。
 また、生徒だけでなく大学生のメンターを含め、繋がりは強い。毎年一つのコミュニティが作られる。卒塾後、何年も経っているのに、校舎に気軽に遊びに来る卒塾生も多く、大学生になって、就職活動など新しいフェーズに入る様なときなどにも連絡がくるそうだ。ある卒塾生は、今、同社で学生の身でありながら正社員として働いている。

総合型選抜専門塾AOI 京都校

教育のあり方を変える

 この2 月、花形はA O Iで培ったノウハウを形にした『AOI HUB』と『QuickCheck』の展開をスタートさせた。特に前者は塾向けのコンテンツで、これを導入することで、総合型選抜対策専用カリキュラムの設置が可能になる。「地域密着型で地域から信頼をされている塾は数多いです。一方で、地方では総合型選抜自体の認知が少なく、その対策の仕方がよく分からないところも多いと聞いています。その格差をなくすことを目的に、AOI HUBを作り、学習環境に左右されることなく対策講座の提供を可能にしました」と小澤氏は説明する。つまり、AOI HUBを利用することで、自塾の強みを生かしつつ、あらやる入試に対応でき、生徒の選択肢を増やすことができるのだ。
 しかし、総合型選抜はまだまだ誤解が多い。生徒や保護者はもちろん。高校の先生や塾の先生も同様だ。

「生徒たち自身、自分が総合型選抜に向いているのかわからない場合が多いです。ある生徒はテイクアウトして冷めてしまったフライドポテトを食べた時、揚げたてと塩味の感じ方に変化があることに気づいたそうです。そこで、調理法ごとの塩味の感じ方の変化を研究し、それを自主研究として大学に提出しました。それが実績の1つになり、栄養系の学部に合格したのです。あるいは面談に来て初めて自分が総合型選抜において評価される資格や経験を持っていることに気づかれる生徒さんや親御さんも多いです。」と小澤氏は語る。だからこそ、花形は総合型選抜の啓発も進めている。最後に小澤氏は語った。

「私はこのAOIが、日本の教育のあり方を変える存在になると思っています。特に偏差値という概念がないのが、総合型選抜の一番のポイントです。そもそも個性やポテンシャルは、偏差値的では測れないわけです。ハーバード大学には偏差値がなぜないのかという話と一緒なのですが、個性や生徒一人一人の得意なことに特化して、量産型ではないその子らしい人生にアプローチをしていきたい。その延長で、AOIが出てきたことで、日本の教育は変わったよねと言われるようになりたいと思います」

企業データ

株式会社花形
株式会社花形 代表取締役 小澤 忠 氏
事業内容
創 業:2017 年3月
資本金:375 万
本社所在地:〒600-8099 京都市下京区上柳町325
URL:https://hanagata.co/

教育サービス業界 企業研究Vol.114 株式会社 Mined

その道のプロがおこなう探究授業を、ライブ配信で届ける「スコラボ」

 探究学習の授業を、オンラインで届けるためのプラットフォーム「スコラボ」。オンデマンドではなくライブ配信にこだわっているのが大きな特徴のほか、講師は外部に委託し、様々なジャンルの学びを取り揃えているのもポイントだ。スコラボを提供する株式会社Mined(東京・千代田区)の代表取締役 前田智大氏に、このプラットフォームを立ち上げようと思ったきっかけや実際の学びなどについて聞いた。

ライブにこだわる探究型オンライン授業

 スコラボは探究学習に特化した、オンライン授業のプラットフォームだ。オンラインといってもオンデマンドではなくライブ配信にこだわっているのが大きなポイントの1つで、受講生は講師と直接やり取りしながら学びを深めることができる。
 小1から高3まで幅広く学べるスコラボのテーマは、例えば「起業家になろう ビジネスの仕組み編」「Amoung Usの勝ち方を見つけよう」「どうぶつ博士になろう!」「スマホでイラストレーターになろう!」「ロケットの作り方」など、実に多彩だ。
 現在、提供している授業は約120クラス。講師は約50名で、すべて外部の人材に委託している。それぞれが本業をおこないながら、スコラボにジョインしているカタチだ。前田氏としては、ある業界について少し詳しいという人ではなく、「その道を究めているエキスパート」を講師として迎えたい考えで、その数は紹介によって増えてきた。「オタクがオタクに教えるような授業をイメージしています」と前田氏。
 また講師には、アクティブに考える時間を設けるようお願いしていて、授業を受ける子供たちからは活発な意見が飛び交う。
 ほとんどの授業は1回完結型。4回シリーズなども試したが集客状況がよくなかったため、1回完結型に落ち着いた。60%ほどの生徒がリピートしてくれていて、「収益性はまずまずです」という。

心から学びたいと思えるかどうか

 スコラボという名は、「スコラ」(=ギリシャ語で学校の意)と「ラボ」=(実験)を組み合わせた造語で、ほかのサービスと重複しないよう、こだわって名付けた。運営会社であるMinedは、「可能性を発掘する」という意味だ。
 スコラをリリースしたのは2020年。灘中高からMIT電子工学部、MIT Media Labへと進んだ前田氏がアメリカで6年間を過ごすなか、パッションを持った個人が活躍する世界に圧倒され、日本の情熱の総量を上げたいという想いで立ち上げた。

株式会社Mined 代表取締役 前田智大氏

 MIT Media Labを卒業してからは、高校生にコーチングをおこなっていた前田氏。やり甲斐や面白みは感じたものの、再現性が少なく属人的であることや、高校生の意識が目の前の模試にしかないことなどに疑問を感じ、スコラボを立ち上げ。「せっかく教育に携わるなら、僕自身が納得してやりたかったんです」。
 そういった経験を活かし、スコラボが意識しているのは、「心から学びたいと思えるかどうか」だ。子供たちが学びを愛し、夢中になって物事に打ち込みながら、自分の可能性を広げてほしいと考えている。
 心から学びたいと思えるようになるには、学びに対する「目的意識」が重要だ。なぜこの数式を学ばなければならないのか。目的意識が明確ではっきりしていれば、心から学びたいと感じられるだろう。
 オンデマンドでなくライブ配信にこだわったのも、目的意識を高めたかったからだ。事業性を考えればオンデマンドのほうが断然よいが、録画を視聴して学ぶスタイルは、相当モチベーションが高い子でなければ続かない。ライブ配信で双方向にやり取りをして子供たちを丁寧にケアしながら、目的意識を高めている。

塾や公教育とのコラボも視野に

 公教育の現場では、探究学習に力を入れたいと考えている学校も少なくないが、今はまだコンテンツが不足している状態だ。たとえコンテンツがあったとしても教員は多忙であるため、子供たちの目的意識を高めるよう指導していくのは、なかなか難しいといえるだろう。こうした状況を踏まえ、前田氏はいずれ公教育に入っていきたいと考えている。

オンライン上で様々な探究学習をライブ配信で提供する「スコラボ」

「ゲーム制作や動画編集など、自分たちが将来やってみたいことを仕事にするには、数学の学びが不可欠であるといったことに、気づかせてあげたいですね。
 私たちはフットワークが軽く、しかも安く速くサービスを提供できますので、そのメリットを生かしながら、子供たちの目をより輝かせてあげられたらと思います」
 すでにスコラボは、学童とのコラボを実現。着々と領域を拡大しており、公教育に導入される日も近そうだ。
 また今後はスコラボのアップデートも想定していて、AIを導入する可能性があるという。AIによってカリキュラムのスピードを早くしたり、「この授業を受けた生徒は、このクラスも取った」というようにレコメンドや興味発見のための機能を付け、学習の機会損失を減らしたい考えだ。すでにクラスの受講割合などは、手作業でデータ集計し、PDCAに取り組んでいる。

 灘中を目指して受験勉強していた時は、塾通いをしていた前田氏。スコラボは塾との相性もよいと考えていて、「少しでも興味を持っていただけたのであれば、お気軽にご連絡ください」と話してくれた。
 教育業界にスコラボが浸透するにはまだ少し時間がかかりそうだとみているが、周囲からの反応や手応えは悪くなく、「これからが楽しみです」と笑顔をのぞかせる。

企業データ

  • 株式会社Mined
  • 代表者名:前田智大
  • 創業:2020年8月
  • 資本金:
  • 本社所在地:〒100-0005東京都千代田区丸の内2-3-2郵船ビル4F 412B
  • URL: https://mined.jp/
  • 事業内容:教育関連サービス開発・運営

教育サービス業界 企業研究Vol.112
株式会社 インフィニティライフ

〝学習塾専用〞M&Aを担う最高の架け橋 株式会社インフィニティライフ

 株式会社インフィニティライフが提供する『セカチャレ』は、学習塾専用M&A仲介サービスだ。同社は、もともと学習塾を運営していた。その規模を拡大するべく買い手として売り案件を探したときに、学習塾を売りたい人や企業が多いことに注目する。そこから生まれたのが『セカチャレ』だ。塾特有の売却の難しさなどを知り尽くした同社は、他のM&Aを仲介する企業とは一線を画す。

塾を購入する

 買い手にとってM&Aの一番のメリットは費用だ。例えばフランチャイズに加盟し、新しく教室を開校しようとすると莫大な資金が必要になる。しかし、同じ金額でM&Aをする場合、すでに生徒が2、30名いて、年の売上が1500万円から2000万円ぐらいの状態の塾を購入することも可能だ。

 では、塾のM&Aを考えたとき、買い手はどういう準備をすればいいのか?

 株式会社インフィニティライフが提供する学習塾専用M&A仲介サービス『セカチャレ』は、買い手の準備や手間を最小限に抑える。秘密保持契約を結び、希望の規模、地域などを伝えれば、同社から条件に合う案件の情報が送られてくるので、その中から選んでいくフローになっている。

株式会社インフィニティライフ 代表取締役の小嶋 勇輝氏

 また、『セカチャレ』の手数料は案件ごとに最初の段階で決まる。最終的に譲渡金額が変わったとしても追加費用はかからない。これも特徴の一つだろう。買い手に費用が発生するタイミングは、基本的に基本合意を結んだ時と譲渡契約を結んだときの2回のみ。非常に利用しやすいサービスになっている。 今、同社が力を入れているのは、購入後のコンサルティングサービスだ。『セカチャレ』の利用者の中には、生徒数10名だった塾をM&A後、1年間で130名にした人などがいる。そこで行われた業務改善のフローなどのノウハウを提供し、M&Aからその後の成長戦略までサポートすることで更なる価値を提供する。

塾を売却する

 塾の売却を考える人の理由はそれぞれだ。例えば経営不振。あるいは後継者がいない。別事業に注力するために売却を考える人もいる。しかし、いざ売却することを決めても、どうすればいいのかわからないことが多い。

 そこで『セカチャレ』は、買い手が気になるポイントをまとめて作った独自の「ヒアリングシート」を用意。これを用いて自塾のデータを作り、購入希望者の検討材料にする。その中には、売上や生徒と先生の人数、どんな授業を行っているかなど、収支の部分と運営の部分から買い主が塾の雰囲気をイメージできる内容が盛り込まれている。

 『セカチャレ』で売却を希望する塾は小規模なところが多い。その中で、

「売却を検討される方は、2つのパターンに分かれると考えています」と、学習塾M&A事業部担当役員の高木直人氏は言う。

 1つは経営者意識が強い人。そういう人に対して、

「温度感の高い方だけを最終的に面談に上げるので、お忙しい方にとって、それに至る手間を我々が一手に引き受けることはメリットになると考えています」と高木氏は続ける。買い手候補とのスケジュール調整を始め、細かなやりとりは基本的に同社が一手に引き受けてくれるので心強い。

 もう1つは、教育者意識が強い人。これまで培ってきた教室の色、育ててきた生徒を大事に引き継いでくれることを重視する人がこれに当てはまる。

 『セカチャレ』で塾の購入を考える人や企業は、経営する学習塾の店舗拡大や事業拡大を目指すだけではなく、全くの異業種からの参入も多い。教育という業界に魅力を感じ、ビジネスだけでなく社会貢献として子供の成長に寄与したいと考える人たちだ。

「『セカチャレ』は塾専門のサービスだからこそ、ビジネスだけではなくその想いを引き継いでくださる方とのコミュニティ形成を可能にしました。その中から厳選して買い手をご紹介できるので、教育者意識の高い方のご要望に応えられると考えています」と高木氏は語る。

譲渡した後も教室の様子を教えてくれる

 売り手は、基本的には完全無料で『セカチャレ』を利用できる(ただし、申し込みから譲渡までを2ヶ月以内に済ませる場合はスピード料金として譲渡金の10%の支払いが必要)。首都圏以外は交通費など諸費用がかかるが、それ以外の費用は一切発生しない。また、売却の相談をしても、考えが変わった場合は無料でキャンセルができる。

 売却したあと、今でも買い手と連絡を取り続けて、残った生徒がどういう進路に進んだかなどの報告を受けている人もいるそうだ。高木氏は言う。

「残す生徒のその後が気になり、売却を躊躇する方が多いのは事実です。『セカチャレ』は、きちんと連絡を取り合える環境を残しつつ、むしろよりよくしてもらえる方をご紹介するので、その点でも安心して取引ができます」

 教育事業はお金では語れない部分が多い。生徒が一人でもいる限り教室を閉めないと言う人もいる。一方で、年齢の問題など限界を感じている経営者もいる。その中で、お金だけでなく、自身が作った塾、見守ってきた生徒の将来も含めてサポートしてくれるインフィニティライフは、買い手と売り手の最高の架け橋となってくれるだろう。

企業データ

  • 会社名:株式会社インフィニティライフ
  • 創業:2016年4月
  • 資本金:805万円
  • 本社所在地:東京都新宿区四谷4-3エクシーナ四谷1001
  • URL:https://infinitylife.co.jp
  • TEL:03-6380-5894
  • 事業内容:学習塾専門M&A仲介サービス、事業用店舗仲介事業