国立科学博物館 皇居と赤坂御用地でオオタカとフクロウが同時期に繁殖したことを確認

 独立行政法人国立科学博物館(篠田謙一 館長)が実施している皇居の生物相調査(第Ⅲ期)において、鳥類調査班(班長:西海功研究主幹、動物研究部)は、今春皇居と赤坂御用地で大型猛禽類であるオオタカとフクロウ両種が同時期に繁殖したことを初めて確認した。これは都心部の緑地における数十年におよぶ鳥類多様化の流れの一環と考えられ、都心部に生息するハシブトガラスの個体数減少が大きく関わっていると思われる。

【研究のポイント】
都心緑地では繁殖する陸鳥の種が数十年の間で徐々に増加してきた。
近年は大型猛禽類であるオオタカとフクロウの繁殖が見られる年が増えていた。
今春は皇居と赤坂御用地でオオタカとフクロウが同時期に繁殖したことが確認された。
都心部におけるハシブトガラスの個体数減少が関わっていると思われる。

研究の背景
 国立科学博物館では、1996年(平成8年)から皇居における動物相および植物相に関する総合調査を開始し、第Ⅰ期調査結果を2000年(平成12年)に、第Ⅱ期調査結果を2014年(平成26年)に取りまとめ、昨年度からは総合研究「過去150年の都市環境における生物相変遷に関する研究 -皇居を中心とした都心での収集標本の解析」【2021年度(令和3年度)~2025年度(令和7年度)】の一環として第Ⅲ期調査を実施している。

 皇居の鳥類調査は、国立科学博物館による調査以外にも山階鳥類研究所により1965年以降、ほぼ継続的に行われてきた。皇居と並んで都心に位置する大規模緑地である赤坂御用地でも皇居同様に長年の鳥類調査が行われてきた。その結果、皇居や赤坂では繁殖する陸鳥の種が次第に増加してきたことが分かっている。1970年代にはヤマガラとヒヨドリが繁殖するようになり、80年代にコゲラとメジロが、1990年代にカワセミが、2000年代にオオタカが、2010年代にエナガとウグイスがそれぞれ繁殖するようになった。

 皇居でオオタカの繁殖(営巣)が確認されたのは2001年、2013年、2015~17年、2019年、2021年で、フクロウの巣立ち雛(またはその声)が確認されたのは2016年と2019年だった。赤坂御用地ではオオタカの繁殖は2013年、2015~18年、2020年に確認され、フクロウの繁殖はこれまで確認されていなかった。また、オオタカの繁殖行動は国立科学博物館附属自然教育園(港区白金台)でも2017年以降継続して確認され、明治神宮でも2007年以降度々確認されるなど、都心部の緑地での大型猛禽類の繁殖が増えてきている。

研究の内容
 第Ⅲ期調査の鳥類調査班は特に繁殖鳥について詳しく調査するため、夜間も含めた調査を行った。5月から6月に行った日中の調査で、皇居と赤坂御用地でオオタカの巣と雛を確認し、両所で2羽ずつ巣内雛の成長を確認した。その後、巣立ち雛の声から4羽すべてが巣立ったと推定された。また6月から7月に行った21時までの夜間を含む調査で、フクロウの巣立ち雛の声や姿が両所で確認された。観察の結果、それぞれ巣立った雛は1羽のみと推定された。

【鳥類調査班】
西海功(班長)、樋口亜紀(以上、国立科学博物館)、黒田清子、小林さやか、齋藤武馬(以上、山階鳥類研究所)、協力:安藤達彦、安西幸栄

みんなが私塾界!