一般社団法人民間学童保育協会が設立記念シンポジウムを開催 民間学童保育の推進に期待

民間学童保育のための業界団体 「一般社団法人民間学童保育協会」が今年3月20日に設立された。子供の「安全・安心な放課後の居場所」と「放課後の多様な学び」を提供し、保護者の「多様な働き方」を支援する。そして、同協会は4月20日に設立記念シンポジウムを開催。ここでは、代表理事の遠藤奈央子氏(株式会社ビジョンゲート代表取締役)と、高久玲音氏(一橋大学准教授)の「共同調査·学童保育の質的評価発表『小1の壁 2023年問題』」の講演を中心に紹介する。

民間学童保育協会が設立された意義

 民間学童はニーズが高く、急速に広がりを見せている。学童全体の利用者に占める民間学童利用者の割合は12.76%という数字が出ており、首都圏でも民間学童利用者は全学童の約3割にのぼると言われている。しかし、学童保育の急速な広がりに伴い、いくつかの問題が浮上している。

 例えば、公設学童において、施設に入ることができない子供たちが、廊下に座って待っていること。民間学童利用者の送迎についても、学校の敷地内に民間学童の車を停めることができないため、近隣住民からクレームが寄せられることがある。この問題の場合は、本来なら大人たちがコミュニケーションを取り合うことによって解決可能である。しかし、学校運営には市や区などからの指示があり、職員の方々は県からの指示に従う必要があるため、問題解決には時間がかかる場合が多い。

「自治体や教育委員会などが、学童の運営環境を整備し、子供たちが安心して過ごせるように取り組むことが必要です」と、一般社団法人民間学童保育協会代表理事の遠藤奈央子氏は言う。

民間学童保育協会の遠藤奈央子代表理事

 現在、日本では少子化が進み、希望出産出生率も低下している。このような状況の中で、子供たちが豊かに育ち、日本の未来を明るくするためにも、民間学童保育に投資することが必要だ。こういった投資が、将来的に子供たちの成長にどう影響するか、エビデンスとして示すことも大切である。

 これらを背景に、民間学童保育協会が立ち上げられた。協会には様々な人が参加し、保育園や幼稚園を利用できない親や、子供たちにとって民間学童保育が必要な人々に対して、支援を行っていく。

小1に進級時に、母親の就労率が低下

『共同調査・学童保育の質的評価発表「小1の壁 2023年問題」』と題した講演を行なった一橋大学准教授の高久玲音氏は、「日本の保育政策においては、待機児童問題に注目が集まっていますが、実際には0歳から2歳の保育の方が高コストであり、学童になると相対的に費用対効果がよいことが分かっています。しかし、小学校1年生に進級するときには、母親の就労率が低下することが明らかになっています。この問題がどれほどの規模であるかを数字として確認することが、この問題の重要性を世の中に伝えるためには必要です」と語る。

一橋大学の高久玲音准教授

 母親の就労率が小学校入学時に急激に低下する現象については、1993年から20年以上にわたって追跡調査が行われた消費生活に関するパネル調査のデータを元に解析した結果、就労率は就学前に徐々に上昇していき、小学校入学前には8割の保育園利用者の母親が働いている。しかし、小学校に入学すると、母親の就労率は急激に低下し、約10.5ポイントも減少すると、高久氏は説明する。非正規社員の場合、この低下はより顕著に現れている。

 つまり、学童保育に関しては、質的にも量的にも拡充が追いついていないのだ。実際、保育園児が5歳で51万人いる一方、学童保育を利用できた1年生は44万人に過ぎず、その他の25%の人はどうしているのかはわからない。また、公設学童を特に中心として、質が極めて低いという指摘がある。そのため、学童を利用しない家庭も相当数いるとされている。

民間学童保育の優位性

 一方で、民間学童と公設学童を比較したところ、民間学童の方が質が高いことが示唆された。高久氏によるアンケート調査の結果からは、民間学童の営業時間が公設学童よりも長く、食事やおやつの提供率が高く、建物や面積の面でも恵まれていることも明らかになった。

シンポジウムでは、ほかにも明石要一氏(千葉大学名誉教授·千葉敬愛短期大学学長)がモデレーターを務めた。

 あるいは、民間学童は、アンケートに答えた23の事業所の全てが19時まで営業していた。一方、公設学童の場合、19時以降の営業は7.7%となっており、多くの事業所は19時までには完全に閉まっており、フルタイムで働いている場合、公設学童に預けながら働くことはかなり難しい。

 また、民間学童では食事を提供する事業所が7割程度あり、おやつの提供率も高い。公設学童では10%がおやつなしだと回答しており、差がある。民間の学童保育は、公設学童と比較しても、職員1人当たりの児童数も少ない。高久氏は、「非常に効率的に運営がされている可能性があると考えられます」と続け、「調査結果によると民間学童でやはり公設にはない取り組みが様々に行われていて、質が高いという側面も多々あるということです。今後の大規模な調査で確かめなくてはいけないポイントだと思います」と語った。

 少子化が進む中、子育ての環境整備が重要視されている。その中で、民間学童が担う役割は大きく、同協会が発足したことは意義深い。今後の活動に期待したい。

〝小1のママ〟を交えたパネルディスカッション 「小1の壁間題と民間学童に期待すること」なども開催。学童保育の充実、重要性が語られた。

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