株式会社すららネット(東京・千代田区、湯野川孝彦 代表取締役)は、インドネシアの大手日本向け人材送り出し機関の大手であるPT. Fuji Bijak Prestasiに、アニメーション型日本語学習ICT教材「すらら にほんご」を導入し、2025年5月より本格運用を開始した。
インドネシアの主要な技能実習制度の送り出し機関での本格導入は初の事例であり、日本語教育の質と量の両立が求められる現地の課題に対し、持続可能なICT活用の実践モデルを目指す。
インドネシアは、日本の労働市場を支える技能実習生・特定技能人材の主要送り出し国のひとつだ。2023年度のインドネシア人技能実習生の数は74,879人に達しており、全体の約21.4%を占めるほどになっている。しかし現地では、急増する学習ニーズに対して、日本語教員の数が圧倒的に不足しており、教員の専門性や授業の質にもばらつきがある状況が続いている。とりわけ、送り出し機関(LPK:Lembaga Pelatihan Kerja)においては、出国前の訓練期間中に十分な語学習得の時間を確保することが難しい場合もあり、送り出し先の企業や教育機関からは「現場での日本語運用力にさらなる向上の余地がある」といった声も挙がっている。
また、従来の日本語教育では「聞いて覚える」「読むだけ」といった受動的な学習に偏りがちで、学習者の理解度に差が出やすく、モチベーションの維持が難しいという課題も教育現場の関係者より度々指摘されてきた。
一方で、日本政府は近年、外国人材の受け入れを制度的にも拡充しており、企業における日本語力の高い人材の需要は一層高まっている。こうした背景のもと、送り出し国における日本語教育の質のさらなる底上げが喫緊の課題とされており、今回のデジタル教材の導入は、その解決のための新たなアプローチとしてインドネシア国内で注目されている。
今回「すららにほんご」が導入されたフジ・ビジャックは、1999年の設立以来、ジャカルタを拠点に日本企業への人材派遣を20年以上にわたり手がけてきた実績ある人材会社。今回の導入により、インドネシア・ブカシ市にある訓練施設において、技能実習生として日本への渡航を目指す訓練生たちに「すらら にほんご」を用いたデジタル授業が開始された。
「すらら にほんご」は、アニメーションによる対話型レクチャー、AIによるドリル出題、習熟度に応じたテスト・復習機能を備えた教材で、JLPTN5~N4(日本語能力試験)に対応している。学習者は自分のペースで文字・語彙・会話を体系的に学ぶことができ、短期間で「使える日本語力」を実践的に習得することができる。
また、今回の導入にあたっては、6名の日本語教員に対して筆記・実技テストを含む3日間の研修を実施した。この研修により、すららネットが認定する公認ファシリテーターとして全員が合格し、授業開始へ向けて安定的な運用体制を整備した。さらに、現地パートナー企業による定期的なサポートも行われ、授業の質を維持・向上させる体制が整えられている。