公文教育研究会、atama plusを完全子会社化——2000年以降初のM&A、グローバル展開を視野に

全国4500教室超に浸透するAI教材と世界61カ国のネットワークが合流

 公文教育研究会(大阪市)は7月5日、教育スタートアップのatama plus(アタマプラス、東京都文京区、稲田大輔代表)の全株式を取得し、完全子会社化した。駿河台学園(東京・千代田)など既存株主から全株式を取得したもので、公文にとって企業買収は2000年以降初めてとなる。

 atama plusは2017年創業。生徒の習熟度に応じて問題を出題し、知識の定着を図るAI教材「atama+」を開発・提供する。現在、全国4500教室以上の学習塾・予備校に導入されており、独自の学習塾事業も展開している。なお、既存株主として35.5%を出資していた駿河台学園とは資本関係は解消されるものの、今後も教材活用などのパートナーシップは継続する方針だ。

 公文は今回のM&Aを通じ、AIを活用した塾講師支援や新規教材の開発を視野に入れるほか、世界61の国と地域で約2万3000教室を展開する公文の海外ネットワークを活かして、atama plusの事業をグローバルへ拡張させることを狙う。

稲田代表「グローバルへの道、KUMONと開く」

 グループ入りの背景について、稲田代表は自身のコメントで詳細に経緯を語った。創業から10年目を迎えるタイミングで「世界で数億人規模に良い教育を届ける」というミッションへの立ち返りを迫られた。財務基盤が安定し、新規事業も複数スタートできる体力がついてきた今こそ、グローバルへの挑戦を本格化させる好機と判断したという。

 稲田代表は、約2年前からグローバル展開を意識してきたと言う。各国関係者との議論の中で「テクノロジーでは勝負できそう」との手応えを感じた一方で、国ごとに教育制度が異なるため、「ふつうに海外展開したら一国ずつ10年かかる」という壁を実感していた。前職の三井物産時代にも教育事業のグローバル展開を検討した経験があり、英語などの全世界共通コンテンツを除けば、同一プロダクトでの横展開が極めて難しいことを知っていた。

「そんな課題を乗り越え、同じ教材で世界展開に成功しているきわめて稀有な会社が日本にある。KUMONです」——稲田代表はそう記す。国内売上を上回る海外売上を持ち、60カ国以上に展開するKUMONとの協業ならグローバルへの道が開けると考え、1年以上にわたって協議を重ねてきた。その結論が今回の全株式譲渡だった。

 稲田代表はじめ取締役3名は引き続き経営に参画する。国内では塾向けのatama+提供事業を継続・強化しながら、新たにKUMONとグローバルチャレンジに向けた議論を開始していく方針だ。

業界へのインパクト

 今回の動きが持つ意味は大きい。公文がM&Aに踏み切ること自体、四半世紀ぶりの出来事である。長年、独自メソッドにこだわり自前主義を貫いてきた公文が、AIスタートアップを傘下に収めた事実は、教育業界におけるAI活用の潮流がいよいよ避けられないものになったことを象徴している。

 atama+を導入する全国4500教室以上の学習塾・予備校にとって気になるのは、公文グループ入りによってサービスの継続性が損なわれないかという点だろう。この点について稲田代表は、「国内の塾に提供しているサービスは、今後も変わることなく提供を続けていく」と明言している。今回のグループ化の主眼はあくまでグローバル展開の加速にあり、国内の塾向けサービスは従来通り継続される。atama+を導入済みの塾、あるいは導入を検討している塾は、これまで通りの関係でサービスを活用できると理解してよさそうだ。

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