Category: 月刊私塾界

TOP LEADER Interview|さなるグループ 最高責任者 佐藤 イサク 氏

教育者としての誇りを持って指導していきたい。佐藤 イサク 氏

自ら「根っからの教育バカ」という佐藤イサク氏。情熱を持って本気で生徒や親御さん、社員たちと向き合い、ひた走ってきた。静岡をはじめ愛知、岐阜、そして九州、首都圏へとネットワークを広げ勢いを見せる一方で、日本の教育への危機感をにおわせる。佐藤氏が考える「教育」とは。日本の教育事情や塾の在り方にも踏み込んでうかがった。

真のエリートを育てる。

──首都圏での校舎展開を予定されているようですが。

「来春から予定をしていましたが、先延ばしにするかもしれません。その理由は人材です。私は教師の質に徹底してこだわっています。まずは人材の育成。そのために来春は200人を超える新卒の採用を予定しています。少なくとも3、4年はそのくらいの採用を続けて、多くの人材を育ててから進出したいと思っています。とはいっても、今までのように直感的にエイヤーとやってしまうかもしれませんが(笑)」

──まずは人材を育てるというということですが、求める人材とは。s理事長1

「リーダータイプの、いわゆるエリートですね。エリートというと日本ではひがまれる対象でもありますが、それは、わが国のエリートたるべき人材が本来の職務を全うせず、己の利益ばかりを追求してきた例が多すぎたからだと思うんですね。
欧米で浸透している『Noblesse oblige(ノーブレス・オブリージュ)』という観念をご存知でしょうか。フランスに起源する、貴族に課せられた義務を意味する言葉なんですが。当時の貴族には、多くの特権も与えられましたが、戦争となれば率先して最前線に立って命懸けで戦う義務も課せられたんです。要するに、人の上に立ち権力を持つ者は、その代価として身を挺してでも果たすべき重責があるわけです。
教師も同じ。いい大学を卒業したからといって思い上がるのではなく、その学力を世のため人のために使うことを前提にしなければいけません。部下や他の部署で働く仲間への思いやり、生徒や親御さんに対してもそう。もし授業中に間違って答えた生徒がいれば、間違ったことへの痛みがわかる優しさがないと。それから気配りや常識、いわゆる人間力ですね。それがなければ真のエリートとは言えないのです。私は、生徒から厚く信頼される指導力のあるリーダーを望んでいます」

〝塾〟という言葉を世界の辞書に載せたい。

──中国にも進出していますが、海外での展開はお考えですか。新大連佐鳴

「中国では教材作成のみでの展開をしています。中国の場合、国が全国統一的な教育制度を定めていますので、外国人、それも日本人が塾を開くというのは、まだまだ難しいのが現状なんですね。ただ、日本の市場では塾同士の陣取り合戦になってしまっているところがありますから、いよいよ、世界的な展開をしなければいけない時期に来ているのかな、と思います。ありがたいことに、KUMONさんがアジアをはじめ北米南米、ヨーロッパ、アフリカなど各国を開拓してくださっています。それも海外に住む日本人ではなく、現地の人たちを。KUMONさんは読み書きと計算がメインの塾、うちとは違う。世界に受験のない国はありませんから、受験市場にはチャンスがあると思います。〝柔道〟や〝寿司〟という世界共通の日本語があるように、〝塾〟も世界の辞書に載せる!というのが私の夢。それが今、ようやく具現化しそうな感じです」

──日本よりも世界に目が向いているのですね。

「日本は、文明国が陥りやすい崩壊が始まっていると思うんです。江戸時代の川柳に『売り家と唐様で書く三代目』というのがあります。これは、初代が苦心して財産を残しても、三代目ともなると落ちぶれて家を売りに出すようになる。でも、その〝売り家〟という文字は唐様のようにしゃれているということで、遊芸にふけって、商いの道をないがしろにする人を皮肉ったもの。つまり、今の日本の子どもたちは、ファッションや音楽といった文化ばかりが先行しすぎて、コツコツと地道に頑張っていくことができないんですね。『ガンバリズム』というのが通らない。親にも過保護に育てられているから、子どもたちの指導もしにくくなっています。その点、世界の子どもたちは違う。私たちは根っからの教育バカ。教育者としての誇りを持って指導していきたい。日本はほんとうにこれでいいのか、ジレンマがありますね」

──日本の子どもたちは夢が持てなくなっているのでしょうか。

「こんな生徒の話があります。その子は母子家庭で育って、地元では2番手3番手の高校に入れるレベルがあった。でも突然、一番下のレベルの学校に行くというんですね。それで、親御さんから考え直すよう説得してほしいと頼まれまして、よくよくその子に話を聞いてみたら、その高校には必ず学年に一人、交換留学生としてブラジルへ行ける制度があることを調べていて、『僕は絶対に将来ブラジルへ行って一旗揚げるんだ』と言ったんです。15歳なのに、すごくしっかりしているでしょ。経済的な理由もあったのかもしれませんが、その生徒の熱意に押され、親から説得を頼まれていたのに、逆に親を説得することになりました。お母さんは泣いて聞いておられましたね。
彼のように中学時代、高校時代に『これだけは人にゆずらない』といった何か極めるものを一つ持つと強い。例えば、自転車で日本を縦断したとか、そんなことでもいいんです。やりきったという経験があると、将来、仕事もやりきろうとする。
なにも学歴だけが、その後の人生を幸せにするパスポートじゃないんです。ただ、社会に出たときに、いい高校、いい大学へ行っていれば、同じ仕事をしていてもチャンスを与えられることは多い。本当にやりたい会社に入れるチャンスが大きいことも確か。それは意識しておくべきですね」

映像学習や個別指導への取り組みも。

──さなるグループの現状はいかがでしょう。

「『名進研』は愛知・岐阜地区での展開で、佐鳴予備校と地域はかぶっていますが、『名進研』の主流は中学受験、一部高校受験があっても金額が違いますから、すみ分けはできています。
『啓明舎』は生徒数も増えて順調に回復しています。『九大進学ゼミ』は教場をスリム化していますが、1教場の平均人数は増えていますので、V字とは言えないまでもU字回復はしていると思います。どんなに頑張っても、一度ついたマイナスイメージを払拭するには最低でも5年はかかりますから、あと2年は忍耐力を持ってやるしかないですね」

──@willも1000教場ほどありますが、これは拡大していくのでしょうか。

「映像内容は、どことくらべてもまったく遜色がないところまできています。それは自信を持って言える。ただ、これはあくまでも『かけこみ寺』。ボランタリー契約で、縛りもありませんので、もしも困っている塾さんがいればぜひ声を掛けてほしいですね」

──市場の意識は個別指導へと変わってきていますが。

「個別指導というのは、自分の子どもの面倒を見てほしい親のニーズには一番あっていると思う。でも未だにピンとこない。まだ半信半疑なんですよ。まずバイトが教えるでしょ。それだけならテキストを渡してマニュアル化すればカバーできるかもしれませんが、問題なのは、1対1や1対2ですから人間関係が密着しすぎること。するとお互い甘えが出るわけです。ほんとうは弱点を強化しないといけないのに、バイトにいい格好をしたいから、わかったふりをしてしまう。けっきょく弱点を強化しないまま伸び悩み、今度は〝申し訳ない〟という気持ちが働く。教える方も教え過ぎちゃうこともある。集団指導の場合は、集団についていきたいと必死になれますよね。ただ今は、できる子も個別の傾向にある。そうしたニーズにも応えていく必要もあるんでしょうね」

著名人に聞く|TOSS代表・TOSSランド主宰 向山 洋一 氏

日本の教育が抱える3つの大きな問題点。それを改善するために努力したい。

長年、小学校教諭として教鞭を執ってきた向山洋一氏は、その間、学校教育だけに留まらずさまざまな活動をおこなってきた。それを可能にしてきたのは子どもが好きだというひたむきな想いと、日本の教育を改革したいという熱い情熱だ。向山氏が考える日本の教育の問題点とは、そしてそれを改善する方法とは、を探った。

日本の教育が抱える問題点とは

メイン現在の日本の教育が抱える問題点は、大きく3つあると思っています。まず1つ目が、戦後の統治によってそれまでの師範学校制度が廃止され、教師を養成する手段を失っているということです。教師に必要なのは一般教養であり、専門性は不要だとした戦後の統治時代。それによって教師の専門性は除外されてしまいました。しかし私は、教師を育成するには師範学校のように、教師の専門性を育む必要があると思っています。

それから、現在の教育学部では「教え方」や「授業の仕方」を教えることはほとんどありません。医学部では教授が実際の手術をおこなってみせるのに対し、教育学部では教授が授業を実際にしてみせるということはほとんどないのです。私が調査したところによると、ある大学では授業の練習をするカリキュラムは国語で5%、算数で3%しかありませんでした。あまりにも授業を練習する場が少ない。したがって、教師を目指す学生たちは、自己流で指導法を身につけなければならないのです。
確かに教師の指導力を支援したりするための免許更新制度が、2009年より導入されました。しかし現状では大学に任せっきりになっており、機能しているとは言いがたい部分があります。講習を受けた教師は、文部科学省のレポートに「講習は役に立った」と書くようですが、私は果たして本当にそうなのかと思い、別口でアンケートをおこなってみました。すると「現行の免許更新制度は有益だと思いますか」という問いに対し、「有益だった」が1人、「どちらかといえば有益」が14人、「どちらかといえば有益じゃない」が53 人、「有益じゃない」が105人という結果が出ました。「10年前に自分が大学で受けていた授業と変わらない」というのが主たる批判内容で、教師たちは講習をパスするために仕方なく「役に立った」と答えていたのです。

13年2月6日、安倍内閣のもとで就任した下村博文 文部科学大臣より、教育再生と学力向上についての改革案を提案してほしいとの要請を受け、私はこのアンケート結果などを持って「実際はこうなっています」と報告。免許更新制度の講座は大学だけに任せるのではなく、民間団体のものも取り入れ、自由に競争させていく必要があると具申しました。今後は塾などにも、免許更新制度の講座を依頼するような動きになるはずだと思います。

考昔の家庭教育をもう一度取り戻すために

2つ目に現在の教育の問題点として私が考えているのが、伝統的家庭教育が失われているということです。明治時代に訪れた100名以上の外国人は、日本の家庭でおこなわれていた子育てにショックを受けたといいます。子どもを鞭で叩いて叱っていた当時の西洋とは違い、日本では「怒鳴らない、叱らない」やさしい育て方をしていたのです。当時の日本の家庭の子育てを、外国人たちは「子どもの楽園」と表現したほど。しかしそれが、戦後になって失われてしまいました。

s そこで私が必要だと思っているのが、「伝統的価値観に基づいた子育て」を取り戻すことです。つまり、親が教育について学ぶ「親学」というものを推進していくことが必要だと思っています。私は超党派の議員によって構成されている「親学推進議員連盟」の事務局として、その立ち上げに関与してきました。この連盟は安倍晋三内閣総理大臣をはじめ、みんなの党代表の渡辺喜美氏、自民党の町村信孝氏など、さまざまな議員の方が参加しています。門戸は広く開放しており、塾の方も参加されるようになってきました。今後は家庭教育支援法の制定など、さまざまな取り組みをおこないながら、明治時代のようなやさしい家庭教育を取り戻していきたいと考えています。

日本の教育が抱える問題点の3つ目が、日本の本当の姿カタチを教えなくなったという点です。歴史的背景から政府として遠慮する部分もあったと思いますが、今後は尖閣諸島や北方領土など、本来の日本の姿をきちんと教える必要があるでしょう。古事記、日本書紀をはじめ、日本の歴史もきちんと教える必要があります。そうして、日本に誇りを持てる子どもを育てることが重要だと思います。

教育の法則化に傾けた熱い情熱

s2先ほど申し上げた3つの問題点を改善すべく、私は「教育技術の法則化運動」を呼びかけました。そうして1984年に誕生したのが、日本の教育界のすぐれた教育技術や方法を教師の共有財産にしようとする、Teacher’s Organization of Skill Sharing(以下TOSS)です。TOSSには数万名を超える教師が参加しました。指導法には効果があるものもないものもたくさんあります。日々教師はそれぞれ努力をしているわけですから、実例を出し合いながら、教育技術の法則化を図っていこう。私たちが求めたのは、誠実な実践と熱意ある研究に基づいた法則でした。たとえいままでよりも1%の効果しかない指導法でもよい、という強い意志で数多くの教師から法則化論文を収集。寄せられた実践や論文を元に多くの教師が追試し、ほかの教師がさらにそれに工夫を加える。そうやって確かな指導法・技術を作り上げました。作り上げた指導法は『法則化シリーズ』として出版。何千冊ものシリーズ本を発刊し、それを上回る雑誌を世に送り出すことができています。また、法則化運動で得られた副産物として大きかったのが、教師たちが応募論文を書くことによって、授業の腕を飛躍的に向上させることができたということです。

教育技術の法則化運動は2001年12月、当初の規約通りその役目を果たして解散しましたが、当時はインターネットがさらに普及していこうという時代。運動の解散は決定していたものの、TOSSの運営は引き続きおこなうことを決め、00年からは教師に有益な情報を無料で届ける「TOSSランド」というサイトを開設しました。TOSSランドで公開している1万2000以上ものコンテンツは、教育技術の法則化運動などで培った有益な情報ばかりで、現在では1ヶ月のページビューが1000万を超えているほか、世界70か国からのアクセスがあります。

また、TOSSでは教師の育成だけではなく、「どの子も大切にされなければならない。一人の例外もなく」というコンセプトのもと、教材や教具の開発もおこなっています。そうした理念のもとに開発したのが「五色百人一首」や「算数ノートスキル」「スーパーとびなわ」といった教材です。日本古来の優れた伝統文化を、教材というカタチに進化させた五色百人一首は、その全国大会を開催。これまでに300万人の子どもたちと8万人の教師たちが体験しています。こうした取り組みを通じ、教育界を大きく変革していきたいとTOSSでは考えています。

指導の基本とは「教えてほめる」ことである

子どもたちを指導する際の基本は、「教えてほめる」ことです。これは塾の先生方もよくご存じでしょう。しかし、まだまだ叱って育てる教師が多いと私は思っています。教えてほめるとは、具体的にはどうすればいいか。たとえば、こんな例があります。

s4 ある若い先生が、小学校4年生のクラスの担任になりました。そのクラスには掃除の時間になってもチャンバラばかりやっているグループがいる。普通の先生であれば「ちゃんとやりなさい」「掃除しなきゃだめでしょ」というのだと思いますが、その若い先生は違いました。「みんなおいで」とチャンバラに夢中な生徒を呼び集め、掃除の仕方を実際にやってみせたのです。「掃除というのはね、こうやってゴミを集めるんだよ。それをちりとりで取って、取ったゴミはゴミ箱に捨てる。それでゴミ箱にゴミがたまったら、今度はゴミ捨て場に捨てにいくんだ」。そうすると、チャンバラをしていた子どもたちは次の日からみんな静かに掃除をするようになったのです。さらにその先生は「よくできたね、掃除はそうやってやるんだよ」と、子どもたちをほめてやりました。この一連の指導が「教えてほめる」ということです。こうした状況の場合、「真面目にやりなさい」と言うことが教えることだと錯覚してしまっている教師がたくさんいます。でもそれは注意しているだけです。きちんとやり方を教えてあげて、少しでもよくなったら「よくできたね。それでいいんだよ」と何度でもほめてあげる。それが「教えてほめる」という、教師がおこなうべき仕事なのです。塾の先生も日々生徒を教えるなかで、迷うこともあるかもしれません。でもこの「教えてほめる」という基本だけは忘れないでいただきたいですね。

それから最後に、長く公教育に携わってきた者の立場から、公教育と塾との連携についてお話したいと思います。私は公教育と塾が連携することについては、大いに賛成です。ただ、その仕組みをどうやって作っていくかが問題だと思います。分かりやすい仕組み作りができれば、多くの人から賛同が得られるでしょう。これからはぜひ私塾のみなさんと手を取り、ともによい教育の機会を子どもたちに与えていきたいと思います。

月刊私塾界2014年1月号(通巻393号)

巻頭言

hyoushi新しい年が明けました。

昨年は、1月に「教育再生実行会議」が設置され様々な提言がなされた。それら提言を受けて、「中央教育審議会」や「道徳教育の充実に関する懇談会」等で討議され、「第2期教育振興基本計画」として答申があったり、道徳教育に関する提言が纏められた。第7期中教審委員が新たに任命され、教育委員会制度の見直しについて文部科学大臣から諮問があった。今年も政治を注視していきたい。

具体的な改革が、様々な新たな動きが、いよいよ始まりそうだ。公務員試験でのTOEFL導入、大学入試センター試験を廃止し、高校在学中に複数回受けられる「到達度テスト」の導入、中学校における英語での4技能評価テスト、小学校3年生から英語授業の開始と成績評価の導入。ICT関連では、佐賀県武雄市が小中児童生徒全員にタブレット型端末を配布すると発表した。公教育でも反転事業が始まった。また、日本オープンオンライン教育推進協議会が設立された。

大きな変化―改革―が始まろうとしている。

全国の学習塾は、変化はチャンスと捉え、新たな取り組みにチャレンジして欲しい。変化を恐れる必要はない。正確に情報を収集し、緻密な分析を実施する。更に、周到な対策を立て、適切な商品を開発すれば、大きなチャンスを物にできる。個々の改革を見ると、どれも学習塾経営にプラスになるように見える。

是非、果敢に挑戦して欲しい。

(如己 一)

目次

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<<TOP LEADER>>

練成会グループ 奥山 英明 氏

<<シリーズ・著名人に聞く>>

能楽師 安田 登 氏

<<石田 淳のケイゾクはチカラなり>>

ゲスト本間 正人 氏 京都造形芸術大学 教授

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  • ステキ★塾女発見!  友人の遺志を継いで
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  • 未之知也(いまだこれ知らざるなり)
  • 編集後記
  • Book Review
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TOP LEADER Interview|育英センター・片山学園 理事長 片山 浄見 氏

学習塾『育英センター』で培った成果のすべてを学校教育に生かす。

sIMG_6688片山学園は『育英センター』がつくった富山県初、唯一の私立中高一貫校。2005年4月に中学校、それから3年後の08年4月に高等学校が開校し、わずか10年足らずで東大・京大・医学部への輝かしい合格実績を誇る名門校に。学習塾から学校づくりと、富山に質の高い教育環境を築いてきた片山浄見理事長に、これからの夢、そして教育の在り方について語ってもらった。

国公立志向の強い北陸の地に新風を巻き起こす。

─育英センター、そして片山学園を設立したきっかけは。

「僕は大学卒業後、東京の広告会社に入社したのですが、一年後に富山に帰ることになり、地元の建設資材会社に勤めました。ある日、得意先の人から息子さんの家庭教師のアルバイトを頼まれたんです。その子は不登校で、最初は勉強に全く興味を示さなかった。けれども、何回か通ううちに少しずつ興味を示してくれるようになって、成績も当初の400番から30番くらいにまで上がり、3年後には富山県の、それも上位の公立高校に合格しました。
一生懸命頑張れば、必ず結果に結びつく。その経験をきっかけに〝僕の進む道は教育だ〟と、会社を辞めて学習塾をつくりました。それが昭和52年10月1日、僕が28才のときのこと。嬉しいことに、『育英センター』の生徒第一号として入塾してくれたのは、その教え子だったんですよ。
『育英センター』は、進学塾ではありません。成績のいい子も悪い子も、とにかく勉強で悩んでいる子、もっと勉強を頑張りたい子のための塾。そういう思いで塾経営をしてきました。けれども、生徒一人を育てるためにはある程度の時間と環境が必要です。学習塾では時間にも環境にも限界がある。だったら、学校をつくればいい。学校をつくれば24時間、365日生徒を見ることができるから。そうして富山では初の私立の中高一貫校を立ち上げる決意をしたんですね。

2016年4月に、富山市内の中心部に設立予定。地域に根差した私立小学校を目指す。

2016年4月に、富山市内の中心部に設立予定。地域に根差した私立小学校を目指す。

とはいえ前例がないだけに、失敗は何度も。1度目は土地の問題、2度目は認可の問題、3度目は資金の問題…いずれも辛い思いをしたけれど、失敗を重ねることによって、それが糧となって成功へと導くことができたと思う。失敗のない人生なんてない。挑戦すればするほど失敗はあるわけで、失敗を恐れて挑戦しなければ何もはじまらない。事が大きければ大きいほど失敗も多いし、リスクも大きいけれど、それに見合うだけの喜びもいっぱいあると思います」

日本の将来を担うリーダーを育てることが究極の目的。

─2013年度の合格実績が大変躍進され、難関大学の進学校というイメージが定着してきたのでは。

「卒業生も3期生となり、少しずつ結果は出てきていると思います。その一番の原動力は、中高一貫校であるということ。今年、東大理Ⅲに合格した生徒というのは、中学3年生のときに落ちこぼれたけれど、歯を食いしばって頑張った生徒なんです。中3で落ちこぼれたら、高校受験で富山県の進学校には入るのは難しい。中高一貫校だったからこそ、やりなおすことができたんですね。sIMG_6720
それから、寮生のライバルがいるということ。互いに切磋琢磨して、大勢の先生や家族にも助けられながら勉強に励んだことも合格につながった要因だと思います。
来年は東京大6人、京都大3人、国公立大医学部は15人と皮算用をしています。先輩が結果を出すと後輩もそれに続けと元気づけられますし、一つの伝統になってくれるものと期待しています」

─今後の学園の抱負をお聞かせください。

「この学校をつくった目的は、日本を担う人材、将来の日本を引っ張るリーダーを育てること。
つい先日、前国連事務次長の赤阪清隆氏がわが校で講演をしてくださって、こうおっしゃった。〝日本だけじゃなく、世界を担う人材になってほしい〟。そして、〝僕の夢は国連の大会議場で講演することだった。その夢を実現できたのだから、夢はきっと叶う〟と。まさしくこの学校の究極の目的はそれ。単に難関大学へ行くとか、いい会社に就職するということだけではない。世界のいろんなところで活躍できる人材、自分の夢に向かって邁進する人間になってほしいのです」

幼稚園から大学まで学べる学園を。

─2016年4月には小学校を設立されると発表されていますが。

「2015年の春に新幹線が開通します。すると東京─富山間は約2時間で行き来できるようになるので、富山の離れたイメージが解消されると思います。そうした背景もあって、富山市内の中心部に新たに小学校を開校することにしました。
この小学校では、しつけ教育をしっかりやりたいと思っています。片山学園の中学生を見ていても、しつけが行き届いていない生徒がまだまだいるんですね。〝3つ心、6つしつけ、9つ言葉、文(ふみ)12、ことわり15〟という言葉があります。これは3歳で心根を育て、6歳までにしつけをし、9歳で言葉遣いを教え、12才で読み書きそろばんをできるようにし、15歳までに物の道理をわかるようにするということ。小学校の6年間というのは、人を伸ばすとても大事な時期なんですね」

─地域の人の反応はいかがでしょう。

「地域住民の中には〝私立だから地域の学校としての役割を果たしてもらえないのでは〟と、危惧する人もいます。でも、そうではなくて、盆踊りや体育大会を一緒に行うなどグランドや建物も地域の人に使ってもらう。もしもの時には防災地区センターとしての施設にもなる。そんな地域に開かれた小学校づくりをしていきたいと思っています」

─片山学園は小中高一貫校になるということですか。

片山学園全景:富山平野を一望する好立地に、どっしりとたたずむ片山学園中学校・髙等学校。豊かな自然に抱かれてのびのびと学ぶことができる。

片山学園全景:富山平野を一望する好立地に、どっしりとたたずむ片山学園中学校・髙等学校。豊かな自然に抱かれてのびのびと学ぶことができる。

結局はそういうことになるでしょう。小学校の定員は一クラス30名で、二クラス60名を考えています。片山学園の定員は一学年120名。小学校を卒業した60名はそのまま片山学園へ、あとの60名はその他の学校から募集することになると思います。将来的には新たに幼稚園も設け、また大学も設立するという構想を練っています。ゆくゆくは幼稚園から大学までの一貫校をつくりたいですね」

─大学の設立はどのくらいのスパンで考えていますか。

「僕は75才までは現役でいたいと思っています。今64才ですから、あと10年くらいの間に設立できればいいですね。もし自分ができなくても、構想は次へ引き継ぎたいと思っています。
地方の大学は私立も公立も、経営力が問われています。富山県でも定員を充足していない学校が半分以上ありますが、必要な大学はつくるべき。淘汰の時代にどう生き残るのかではなく、どう発展させるのかを常に考えれば自ずと答は出てくると思います。
いかに生徒や保護者のみなさんに評価され、時代のニーズに合わせた魅力ある大学をつくることができるか。その源になるのは、経営者の経営判断能力です。経営者というのは時代を見る能力、人を見抜く能力、運を切り開く能力の3つが必要。運は、みんな平等にやってくるものだけれども、うまくつかむ人とそうでない人がいる。〝この時だ〟という時に勝負をかけられるかどうかなんです。これからも足下を見ながら、石橋を叩きながら、気を見ながら、勝負していきたいですね」

─下村博文文科大臣になって、文科行政はどのように変わると感じていますか。

「非常に大きな期待感を持っています。ただ一つ注文するならば、高校無償化に関してですね。教育は投資だと思うので、すべてを平等にすることはないと思う。国や行政ばかりに頼らないで、自分の力でやり抜く、自分で切り開くということも大事だと思います。
それから私学でこれ以上の補助金も必要ないと思う。今1人あたり30万円の補助金が出ていますが、これで学校経営ができなかったら、それは経営者の怠慢です。どういう学校をつくるのか、どう学校を運営するのか志が問われていくと思います」

月刊私塾界2013年12月号(通巻392号)

巻頭言

12_001_hyoushi東京・芝・増上寺境内で薪能が催された。夜の帳が下りた三解脱門の前で上演され、幽玄で、優美なひと時を堪能した。

今年は、観阿弥生誕680年、世阿弥生誕650年の節目の年だ。また、来年は観阿弥世阿弥親子が将軍足利義満に京都の今熊野で出会ってから640年に当たる。世阿弥が12歳、義満が17歳のときだ。世阿弥は、その才能を認められ、将軍を後見人に、能を舞台芸術として確立した。能舞台での歩き方、呼吸方法などは、中世日本人の身体技法が伝承されている。約700年間変わらぬ世界的にも稀有な芸能である。身近な慣用句にある「初心忘るべからず」や「秘すれば花」等は、世阿弥の言葉だ。

能は省略を美とする演劇だ。舞台の背景は大きな一本の松のみ。「面(おもて)」を着けるため、顔の表情で表現することもできない。省略に省略を重ねたからこそ、観る人の心に、人間の悲しみや苦悩、砂浜を吹き渡る風の質感、全山を覆う花の美しさが映し出される。「表現し尽くさず、何も描かれていない余白を作者と鑑賞者が想像力の限りを尽くして完成させる、それが日本の美の精神であり、能がマイナスの芸術といわれる由縁です。」(観世清和談「能から見た日本の原点」)このことは、日本画や茶道にも通奏低音の如く響く。(「能はこんなに面白い!」参照)

是非子どもたちに日本の伝統、伝統芸能に直接触れさせて欲しい。規則で国歌斉唱させるより、日本の文化、伝統に愛着を感じ、誇りを持つようになる。それが教育ではないだろうか。

(如己 一)

目次

<<NEWS FILE>>
  • 新しい幼児教育施設「clan tete」(クランテテ)、いよいよ開校
  • 浜学園、台湾に算数教室
  • ベネッセHDベネッセコリアを韓国ヤクルトに売却
  • 小3から英語授業文科省検討中
  • 交際費、大企業も損金に
  • …etc
<<特集>>
  • どうする?達成度テスト
  • 消費税8%に備える
<<TOP LEADER>>

さなるグループ 佐藤イサク氏

<<シリーズ・著名人に聞く>>

TOSS代表 TOSSランド主宰 向山 洋一氏

<<石田 淳のケイゾクはチカラなり>>

ゲスト髙井 伸夫 氏 髙井・岡芹法律事務所 会長 弁護士

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著名人に聞く|野球解説者・野球評論家 工藤 公康氏

考える力を養ってあげることで子どもたちの土台がしっかりする

sメイン選手としての実働29年間という、野球界歴代1位の記録を打ち立てた工藤公康氏。その密度も濃く、最優秀防御率4回、最高勝率3回など数々のタイトルを奪取してきた。そんな工藤氏が、長く現役を続けてこられたのはなぜだったのか。野球にまつわる「学び」や「教え」などと交え、たずねてみた。

成果を残すには「自らやる」という気持ちが大切

2011年に現役を退くまで、私は29年間、野球選手として戦ってきました。47歳という年齢まで現役を続けられた最大の要因は「学びたい」「上達したい」という気持ちが強かったからだと思います。たとえばピッチャーは「突っ込むな」とか「後ろに残せ」とか「肩を開くな」というように教わるのですが、かなり抽象的ですよね。どこまでが突っ込むことになって、どこまでが残していることになるのか。昔は安易に「答え」を教えるようなことはしなかったので、結局は自分で研究していくしかないんです。だから「学びたい」という欲求が強くなり、それが選手生活を長く続ける原動力になったのだと思います。
それでも球界へ入った当初は、正直言って2、3年で辞めるんだろうなぁなんて思っていました(笑)。球のスピード、足の速さ、肩の強さ、どれをとってもプロ野球のレベルは全然違っていたのです。しかし、大きな転機となったのが、入団3年目で経験したアメリカの野球留学(マイナーリーグ1A)。向こうの若手選手の環境は、日本に比べると劣悪だったのです。給料は1日15ドルしかもらえず、食べるのは毎日ハンバーガーやホットドッグばかり。グローブに塗るクリームも買えませんでしたし、同じ部屋に6人ぐらいが雑魚寝して生活していました。日本なら、ちゃんと個室があって、室内練習場もあって、給料も1年間は安心してプレーできるだけもらえる。入団当初はこんな厳しい環境でと思っていましたが、アメリカのメジャーの実情を見て気合いが入りましたね。
アメリカではもう一つ気づきがありました。それは、「やらされている」と思いながらする練習がとてもマズイということ。勉強でも仕事でもそうだと思いますが、「やらされている」と「自分からやる」では、成果に雲泥の差が生まれますよね。「せっかくだから、アメリカのパワーを身につけよう!」と気持ちを切り替えて練習するようにしたら、3年目のオフの間で球が10㎞も速くなりました。プロとはいえ、20歳そこそこの青年。少し甘い考えを持っていましたが、アメリカでの体験が大きく私を変えてくれました。この留学がなかったら、29年も選手生活は続いていなかったでしょうね。苦しみをチャンスに変えられるかどうか。ちょっとしたきっかけで、人は変われるのだと思います。

考えることで根が広がり、教えることで理解が深まる

自分でよりよい投げ方を会得するに当たっては、雑誌に載っている投球フォームの分解写真を見て研究したり、コーチの「突っ込みすぎだ」といったヒントを元に「なぜ、なぜ、なぜ」と自問自答を繰り返したりしました。教えてもらっているだけで大きな成長はないと思いますが、ヒントを元に考え抜くことで、根が広がっていくのだと思います。それから、バイオメカニクスと呼ばれる生体力学や動作解析など、科学的なアプローチもするようになっていきました。
若い時は簡単に上達したいと考えがちですが、物事というのはとても複雑です。1つのことでダメなら、自分が得てきた知識や技術を足したり引いたりしてみる。そうして研究を重ねていくと、コーチの言う「突っ込むな」といった意味が段々と分かるようになっていったんです。自分が理解できれば、今度は人に説明できるようになります。人に説明すると、今度はさらに自分自身の理解が深まるようになる。理解できたことはもったいぶらずに教えることで、自分のためにもあるんだなぁと気づきました。sサブ3
このように野球に対して貪欲になったのは、小学生の頃から。実は、私は野球というものがあまり好きではなく、どちらかというと嫌いなものを、親から無理矢理やらされていたのです(笑)。だったら早く上手になって、余った時間で遊びたいと考えるようになった。少し動機は不純かもしれませんが、もっと上達したいという気持ちはその頃から持っていましたね。また、身体が人よりも小さかったのも、奏功したのだと思います。というのも身体が小さいと、人と同じことをやっていては勝ち続けることはできません。だから、自分の力になりそうなことは、なんでもチャレンジしてきました。「体幹」を鍛えるトレーニングはいまでこそメジャーですが、私は20年以上も前から取り入れています。チャレンジしたトレーニングにはできなかったこと、分からなかったこともありましたが、それは一旦引き出しに入れて、捨ててしまわないことも重要ですね。あとで足したり引いたりするときにその引き出しを開けてみると、思わぬ発見があったりしますから。

優秀な指導者ほど教わる者の立場で教えてくれる

現役を引退してからはさまざまな活動をしていますが、その一つに野球教室があります。子どもに野球を教えているのですが、ちょっとしたコツを教えてあげると、本人も驚くほどいい球が投げられるようになる。子どもの顔つきが変わるのを見ると、教えるのって楽しいなぁとつくづく感じますね。きっと、塾の先生たちもそれがうれしくて仕方がないのだと思います。
コツを教え、いい投げ方を体験させると同時に大切にしているのが、ヒントを与えるということです。「こういう場合はどうするの?」と聞いてあげると、子どもは子どもなりに考えようとします。私が長年苦労して見つけてきたことをすぐに体験させてあげることは、「もっと知りたい」という子どものモチベーションを高めるのにとても役立ちます。しかしこれから長く野球をしていくなかで、私がずっと側にいて指導することはできません。そのため、子どもたちに考えさせるということも同じように重要なのです。自分で考えて工夫した結果うまく投げられたときには、その感覚をいつまでも忘れないでしょう。だから昔の人は安易に「答え」を教えるのではなく、考えさせようとしたのだと思います。私はその間を取って、早く「答え」を教えることで子どものモチベーションを上げつつ、じっくりと考えさせることで根を広げさせていく。それがいいのではないかと考えます。
また、私はいろいろなコーチや監督に教わってきましたが、すごいなと思う人ほど教わる者の立場になって教えてくれるんです。教えることは本当に難しいことだと思いますが、塾の先生たちも上から知識を与えるというスタンスではなく、教わる子どもの立場になって指導されるといいのではないでしょうか。

お世話になったプロ野球界に恩返しがしたい

私がもう一つ行おうと思っている活動が、筑波大学大学院で肘に関する勉強をすること。来年から通うのですが、一般的には「野球肘」といわれるものについて学ぶつもりです。その研究では子どもたちのフォームを改善しながら、同時にアンケートを採っていろいろなデータを集めることにしています。いままでフォームの改善時にデータを取る研究をした人はいませんでしたので、これは新たな試み。その研究結果を野球の指導に活かせば、子どもたちだけでなく、野球界にも大きな説得力を持つようになると思います。
私が大学院に通って肘について学びたいと思ったのは、子どもたちを守るためでもあるんです。子どものなかには投げ過ぎで肩や肘を壊し、野球を辞めていく子もいる。結果として、運よく故障しなかった子どものなかから、プロ野球選手が生まれている。でも、もし肩や肘を悪くしない子が増えれば、スター選手がもっともっと輩出するかもしれませんよね。イチローのような選手が毎年出てくれば、野球界はさらに盛り上がるでしょう。これだけ長く野球をやらせてもらってきましたので、自分なりに恩返しがしたいと思っています。sサブ2
そしてゆくゆくは、全国で「肩検診」や「肘検診」がおこなわれるようにしたいですね。伸び盛りの子どもたちをしっかり見守ることができれば、野球を辞めずにすむ子どもがきっと増えるでしょう。また、野球がそうした取り組みをし出したとなれば、テニスやバレーなど、ほかのスポーツにも波及するはずです。そうしてスポーツ界全体で子どもたちを守っていけたらいいですね。引退後はキャスターや解説者など、さまざまな活動をさせていただいていますが、こうした子どもたちのための活動も大切にしていきたいと思っています。分野は違いますが、子どもを教えるという点では塾の先生も同じ。お互いに、いい取り組みができればいいですね。

TOP LEADER Interview|株式会社 学究社 河端 真一 社長

都立中・高校合格者のシェアを最大にして、日本一の私塾へ。

株式会社 学究社 河端 真一 社長

株式会社 学究社 河端 真一 社長

公立中高一貫校が急増し、不景気もともなって塾業界が変革を迎えた4年ほど前。いち早く公立校対策をはじめ、経営者の手腕を発揮してきた河端真一社長。その柔軟かつ大胆な戦略と今後のビジョンについてうかがった。

 

 

私立から公立へ、勇気ある決断。

──いち早く公立中高一貫校対策をはじめられ、今やその市場においてはナンバーワンです。

「我が社は、『日本一の私塾』を目指しています。日本一ということは『東京一の私塾』、東京一ということは都立中と都立高の合格者のシェアを最大にまで高めることなんですね。

中高一貫校というと、一般的には私立と受け止められますが、私立中は都内に188校あって、受験者数は約2万5千人。一部の有名校以外は定員割れのところもあり、著しく地盤沈下しているのが現状です。一方、都立中は11校あって、1600人の定員に対して約1万人が受検します。7人に1人しか受からない難関なんですね。ということは、6人は不合格になる。この生徒たちもしっかり集めきって、3年後の高校受験でも抜群の合格率を収めたいと思っています」

──次は都立高校の合格実績ナンバーワンを目指していこうということですね。

株式会社 学究社 河端 真一 社長「そうです。中学受験で泣きを見た生徒は、高校受験、それも都立の一番手二番手の高校に合格する最も有望な生徒ですから、すでにenaには受験に合格する生徒が確実にいると自負しています。我々が中高一貫校対策を始めたのは4年前。都立中を志願する小学4・5年生を入口として、その子たちが都立高校を受験するのは5年後以降になりますから、そろそろ結果として表れるタイミングですね」

 

──学究社さんが公立に切り替えた理由はなんでしょう。

「我々も以前は、早稲アカさんや栄光さん、市進さんのように、麻布や開成や武蔵、早慶といった私立の上位校ばかりを狙っていました。授業料を月額6~7万円いただいて。でも、学費が年間約100万円かかる私立中は、一般的な子どもはなかなか行きにくいですよね。だから、公立校というボリュームゾーンに焦点を合わせて、授業料も2万円にしたんです。

さらに、校舎の立地もターミナル主義から、各駅停車主義に変えました。我々自身が遠くのスーパーより近くのコンビニで買い物をするわけですから、やっぱり塾の方から出向いていかないとダメなんです。利用者にとって通いやすい場所、通いやすい価格。そういう利用者の負担にも経営者は目を向けるべきですね」

sサブ2──当時の社内の反応はいかがでしたか。

「それはもう大反対でしたよ。それまではみんな算国理社を教えていたのに、適性検査がメインになって自分が培った技術がゼロになってしまうわけですから。授業料にしても、失敗したときのことを考えたら、そこまでのリスクは背負えないですよね。創業経営者だからこそ、思い切った決断ができたんだと思います」

グローバル教育には慎重さが必要。

──看護医療系、芸大・美大の受験部門を設けたのは。

「我々は、教育という子どもたちの未来についての仕事をしています。中学から高校へ行って、大学に進むというのは主流ではあるけれど、看護師の道や、芸術家の道もあるわけです。あらゆる可能性に応え、間口を広げていかなければなりません。同時に、それらは全部、我々にとっても未来に対する種まきでもあるんですね」

──他の〝種まき〟として留学など海外での校舎展開は。

美術に関する職種は多種多様。『芸大・美大受験総合予備校 新宿美術学院』では美術大学受験を前提に、それぞれの職種に応じたクラスを開講。

美術に関する職種は多種多様。『芸大・美大受験総合予備校 新宿美術学院』では美術大学受験を前提に、それぞれの職種に応じたクラスを開講。

「私は英語の教師としてずっとやってきましたが、英会話や留学を勧めるのは難しいと思います。日本人はなぜ英語ができないかというと、日本で生きていくのに英語は必要ないから。日本語しかしゃべれなくて苦労することはないからなんですね。つまり日本で生きる限り英語が必要ないから、学ぶことも必要ないのです。

もちろん、社会には英語ができる人はある程度必要です。でも、昔にくらべて今は帰国子女が圧倒的に多いから、必要な数は帰国子女で充足しています。将来、そのポジションに就こうと思ったら帰国子女を超えないといけない。それは難しいですよね」

──海外に住む日本人、現地の子どもたちに門戸を開くことは。

「欧米では日本人も、日本人学校も数が減っています。その代わりベトナムやタイといったアジアは増えています。だから、ほんとうはアジアへ出て行かなくてはならないのですが、その国で会社を立ち上げて、法的な要件を満たして営業許可を得るとなるとコスト的に合わないんですね。

現地の子どもたちを教えるというのもまだ難しいですね。アジアには塾はほとんどありませんから、現地の方に説明をして理解していただくまでには時間がかかります。それだけ時間を費やしても生徒が集まらない可能性もあります」

第1四半期決算では私塾界一の伸び、さらなる売上に期待。

──第1四半期(2013年4月1日~6月30日)の決算では売上は6・1%増、経常損失は209百万円でしたが。

「売上は、実は小中学生部門だけでみると15・1~2%増なんです。その他の部門が停滞したために総合的に6・1%増という結果になりました。

利益は、昨年に比べて1億円減っていますが、この原因ははっきりしていて、『パースペクティブ』という新しいオリジナル教材をつくったからなんです。都立中の適性検査対策に特化した、それはもう絶対的なテキスト。それもフルカラーでつくりましたので予想外のお金がかかった。中間決算からは予定通りの数字になっていくと思います」

──中長期的な売上目標などはありますか。

「はっきりしたものはありませんが、将来的にも楽観しています。毎年30教室くらい新校舎を出してきて、生徒数も増えています。それらが安定軌道に乗るには5年くらいかかるわけですから、今はまだ本来上がる売上まで上がっていない。このペースで行けば、全く心配することはないですね。

ただ、今期の新校舎は20教室くらいに減らす可能性はあります。生徒が集まりすぎていて、既存教室を増床、社員を増員しなければならなくなっていますので。嬉しい悲鳴ですね」

──売上に対する広告比率を教えてください。

株式会社 学究社 河端 真一 社長「広告費について私はよく知らないんです。世間では『塾業界は競争の時代』と言われていますが、我が社は毎年合格者も増え、売上も増えていますから、競争が厳しいなんて全然思っていません。むしろ、乱立・競合・競争という流れで考えると、乱立の状態なんですね。そういう段階にあるときは、経費削減とか、広告費が何%とか考えてちゃいけない。どんどん攻めていけばいいと思います」

──ウェブの広告効果はどうみていらっしゃいますか。

「ウェブは、生徒募集をするということでは、とても大事だと思います。例えば、家や車など高額なものを買うとき、ウェブでよく調べて買うでしょ。ところが、塾は高額商品にもかかわらず、パンフレットしかないから調べようがない。調べようというニーズに対して応えるためにも、ウェブを使って情報をセグメントしていかなければならないと思います。

人材募集については、フェイスブックでも柔軟に対応しています。塾は人が大事。とりわけ新卒というのは生徒と年令も近いので決定的に重要な要素です。まずは、どれだけたくさんの学生にリーチできるかがポイントですからね。今年、我が社では、社員の1割以上にあたる46人の新卒を採用しました。大変たくさんの応募があったのですが、彼らに聞くと転勤がない、あったとしてもほとんど都内ですから引っ越す必要がない、というのも我が社のメリットのようです」

 

『月刊私塾界』2013年10月号掲載

月刊私塾界2013年11月号(通巻391号)

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巻頭言

愕然とした。これ程減っているとは。9月に訪れた北海道野付半島のトドワラだ。「トドワラは、長い時間がかかって作り上げられた砂嘴の上に成立したトドマツ林が、海水面の上昇あるいは砂嘴の沈降により海水におかされ枯木群に変化したものと考えられています。」(現地案内板より)
30数年前初の来訪時、数多くのトドワラの間を縫うようにして湿地を散策した。90年代後半、二度目の訪問ではトドワラの減少に驚かされた。
今回、数十本と激減していた。木道が整備され、保護しようとはしていた。しかし、腐朽したトドマツの枯れ木が風化・消滅しつつあることを止めることはできず、いずれは何もない湿原と化す。この変化が「自然」だ。
学校教育が市場原理、競争原理にさらされようとしている。東京都や大阪市を震源とし、全国に波及している。ことの賛否は置くとして、大きな変化を迎えつつある。
学習塾業界、個々の学習塾はどのように対応しようとしているのか。変化に適切に対応しなければ、生き残ることができない。しかし、変化はチャンスでもある。自塾の体質を強化しながら、創意工夫し、新たな講座やカリキュラムなどを開発して欲しい。
野付半島では、トドワラがある場所と別の地域に、多数のナラワラ(ミズナラの枯木)を見ることができるようになった。偉大な自然の力がうかがえる。全てを受け入れ、変化している。トドワラは消滅しつつも、ナラワラは増加していく。

(如己 一)

目次

<<NEWS FILE>>
  • 学研HDベトナムの公立小学校に科学実験教室の講座を展開
  • 2年連続で地方教育費が減少
  • GDPを上方修正、3.8%増
  • NISA200万口座超す
  • 相次いで都心部に大学が移転
  • …etc
<<特集>>

塾のための広告宣伝

<<TOP LEADER>>

株式会社 富山育英センター&片山学園中学校・高等学校 片山浄見理事長

<<シリーズ・著名人に聞く>>

野球解説者・野球評論家 工藤 公康氏

<<石田 淳のケイゾクはチカラなり>>

ゲスト渥美 育子 氏 一般社団法人グローバル教育研究所 理事長

<<連載>>
  • NEWS ARCHIVES
  • HOT TOPICS
  • 近況を聞く 株式会社集学舎/QUARD 山口 崇志 社長
  • 学習塾の空間づくり  (23) StudyON(横浜市金沢区)
  • 新学習塾業界とM&A
  • 疾風の如く
  • ステキ★塾女発見!  私はなる! 教室のひまわりに、太陽に
  • 新米塾長のための部下とサシで行きたいごはん屋さん
  • 会社を建て直すためのリーダー養成塾
  • 【図解!】事業承継対策
  • 京都市立 堀川高等学校 学校改革の軌跡
  • 新米塾長のための 学習塾経営基礎講座
  • ホントにあった 個人塾経営再建物語
  • 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 教育サービス業界 企業研究
  • 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿
  • challenge~進化形jukuのカタチ
  • 芸術見聞録
  • 中学生からの子育てスクランブル
  • 学習塾フランチャイズ研究所
  • 井上郁夫の教室指南
  • 林明夫の「21世紀の地球社会」
  • 高嶋哲夫の「塾への応援歌」
  • 未之知也(いまだこれ知らざるなり)
  • 2013教育時評
  • 編集後記
  • Book Review
  • 塾長のためのガジェット講座

著名人に聞く|アパホテル株式会社代表取締役社長 元谷 芙美子氏

 

元谷 芙美子氏子どもたちには自分にしかできない大っきな夢を持ちビッグになってもらいたい

全国に100以上のホテルを展開し、今後も多数の出店を計画しているアパホテル。日本最大級のホテルグループだが、このグループを率いているのがご存じ元谷芙美子氏だ。開口一番「教育こそすべて!」と語ってくれた元谷氏は、教育に対する熱い想いを持っていた。

 

 

大きな目標を掲げれば達成手段は自ずと見つかる

金沢からスタートしたアパホテルですが、現在では全国規模で展開するようにまでなりました。なぜそこまで拡大できたのかというと、創業当初から「チェーン展開して日本一のこれまでにない『新都市型ホテル』をつくろう!」という目標を掲げていたからです。「新都市型ホテル」とは、アパの提唱する、都市ホテルの立地・外観・エントランスロビーを持ち、おもてなしは温泉旅館のようで、出張旅費で泊まれるビジネスホテル料金のホテルを指しますが、これを展開する大きな目標を掲げていたのです。元谷 芙美子氏 右カット

その戦略の一つとして行ったのが、立地を極めることでした。孫子の兵法には、「まず勝ちて然る後に戦いを求む」という教えがあります。ホテル経営に置き換えれば、「勝つ」とはすなわち好立地を確保すること。よい立地を手にしたのちに戦いを挑めば、負けることはないのです。先日、新聞に発表した新しいホテルの平均徒歩分数は、駅から約2分6秒。たとえどんなに素晴らしいホテルでも、駅から15分歩くようでは稼働率を上げることはできませんが、先月の東京都心のホテルのほとんどが稼働率100%を達成できているのも、いい立地を確保できているからだと思います。また、キャッシュバックなどの特典がつく会員制度を導入したのも戦略の一つ。現在会員数は620万人を数え、いまも月間約10万人のペースで増え続けています。さらには、インターネットの予約システムをいち早く導入したのも大きいでしょう。当ホテルのお客さまは、立地のよさから「時間を有効に使いたい」という優秀なビジネスマンの方が多く、そうした方々はほとんどインターネットからご予約いただいています。とにもかくにも初めに大きな目標を立てることですね。そうすれば、それを達成する手段はいくらでも見つかると思います。

さらに当社では「お客様に最高のもてなしを」という理念を掲げ、立地の選定や新しいシステムの導入だけでなく、客室の設備やレストランのサービスなど、さまざまな面で最高のクオリティを追求してきました。しかし、大切にしているのはお客様だけではありません。取引先や社員も同じように大事にしているのです。創業から29年経ちますが、これまでにリストラした社員はゼロ。「環境にやさしい企業」とよく言いますが、真に環境にいいとは、人事環境にやさしいことだと私は思っています。社員を大切にし、社員とともに成長してきたからこそいまがあるのです。これは、あらゆる経営に通じることだと思います。

心が柔らかいうちに、いかにいい指導をおこなうか

私は高校時代、福井でも一番の進学校として知られる学校に通っていました。卒業後はお茶ノ水女子大学に進み、先生になるのが夢。しかしちょうどその頃、働き者だった父が病気になってしまい、その夢を断念せざるを得なくなりました。特待生などの方法も考えましたが、東京で一人暮らしをするには少なからずお金がかかる。私の大学進学によって妹たちが犠牲になるかもと考えると、あきらめるしかありませんでした。

「私には、もっといい人生が待っている。それに、学ぶ機会はきっとまたある」そう思い、福井信用金庫へ就職。大学を受験しなかったのは進学クラスのなかで私一人だけでしたが、就職という道を選んだからこそ、いまの主人と出会え、こうして社長業を営むことができています。本当に、人生というのはなにが幸運をもたらすかわかりません。塾や予備校にも浪人生がいると思いますが、失敗を挫折だと思わず、前向きに頑張ってほしいですね。苦労が多ければ多いほど人はやさしくなれるし、強くなれます。元谷 芙美子氏02

ところで、なぜ私が教員を目指すほど教育に関心を持っているかというと、小学生のときに金森先生という素晴らしい先生に出会えたからです。小学校2年生のときの文化祭で、各クラスの代表が本を朗読するコンテストがあった。代表となった私は、金森先生から「あなたは記憶力もいいし、度胸もあるから全部暗記して朗読しなさい」と言われたんです。確か10ページぐらい、5000字はあったと思います。自分には無理だとあきらめそうにもなりましたが、何とか全部暗記して朗読し切った。そのときの達成感はいまでも覚えています。学校のスターになった気分で、その後の人生に大きな自信をもたらしてくれました。「頑張った人がトップを取れる」そのとき、そう考えられるようにもなりました。教育が人生を変えるということを、身を以て体験しましたので、多くの子どもの可能性を引き出せるような先生になりたかったのです。心が柔らかいうちに、いかにいい先生に出会えるかは、子どもにとってとても大切なことだと思います。ぜひ塾の先生方にも、子どもたちに勇気や自信を与えられるよう指導していただきたいですね。

教えるということは、自分自身を成長させること

高校のときに一旦は断念した大学進学ですが、私は53才から法政大学に通い、卒業。その後は早稲田大学の大学院に進んで博士課程を修了しています。一度はあきらめかけた夢を、こうして果たすことができたのです。そして現在では東京国際大学の客員教授を務め、教育者になるという目標まで達成することができました。元谷 芙美子氏03

社長と教授の両立は時間的にも厳しいとは思いましたが、なぜ私がお引き受けしたかというと、高校のときに教員になりたかったから、というだけではありません。経営者としていろいろな経験を重ねてきましたが、一番脂の乗った時期。そう考えているので、少しでも私の経験が若い人たちの役に立てばいいなと思ったからです。そして夢をつかむ熱い気持ちを奮い立たせてもらいたいですね。ですから、講義内容は人生論がほとんどです(笑)。学生はもちろん、その父兄まで聴講に来られるほか、学内の教授も講義を聴いてくださっています。

また、「教える」ということは自分のためにもなることです。教えることではじめて気づくこともありますし、自分自身をさらに成長させることができます。塾の先生にも教えることは自分のためでもある、ということを再認識していただき、日々の気づきや成長を授業に活かしていっていただきたいですね。

人生を大学と捉えれば学ぶことは尽きない

現在の教育システムは、大学へ行くことが至上の目標になっているような気がします。でも長い人生からすれば大学は一つの通過点に過ぎず、いってみれば一息つける「踊り場」のようなもの。そこからギアチェンジして、さらに上を目指して加速しなければいけないのに、勉強ができる人に限って踊り場で休む傾向にあります。私はさまざまな社会人を見てきましたが、社会では学校のときほど真剣に学ぼうとしている人が少ない気がします。学生には、自分の人生の目標を大学や大学院に置かず、人生自体を大学と捉えるような大きなビジョンを持ってもらいたいと思います。そうすれば興味はつきないですし、社会に出ても謙虚な気持ちでいろんなことから学べるでしょう。塾の先生方にも、ぜひ人生そのものが学びであるということを教えてもらいたいと想います。

それから、実業界に長く身を置く私が思うのは、いくら勉強ができたとしても必ずしも成功するとは限らないということ。大事なのは、毎日、命を燃やして生きる「熱さ」です。金太郎アメのように、どの瞬間を切っても同じ情熱があふれてくるような、高い意識と向上心が必要です。いい学校を出て、いい会社に入り、それなりの家を建てて幸せに暮らすのもいいかもしれません。しかし、この世に生を受けたからには、なにか自分にしかできないような大きな夢を持ち、ビッグになってもらいたいですね。

そのためのチャンスは、誰のもとにも訪れます。ただしチャンスは、「いつでもつかむぞ」という気概がある人にしかつかめません。いつチャンスが訪れてもつかめるよう、日々を意欲的に過ごしてもらいたいと思います。それからよくいわれるように、チャンスの女神には前髪しかないんです。過ぎ去るときに慌てて後ろ髪をつかもうと思っても、もう遅い。前髪をつかむためにもう一つ大切なことが、リスクを取るということ。リスクを取らずして決してチャンスはつかめませんし、幸せになることはできないと思います。可能性多き若者、そして彼ら彼女らを指導する先生。勉強だけではなく、人生を大局的に捉えた教育をおこない、高い志を持たせてあげてほしいですね。

TOP LEADER Interview|早稲田アカデミー 瀧本 司社長

生徒のやる気を引き出し学力を伸ばす。独自の指導システムで、合格実績全国ナンバー1へ。

塾の枠を超えるユニークな切り口で、さまざまなブランドを構築してきた早稲田アカデミー。30周年の節目を迎えた今、『本気でやる子を育てる』を教育理念に突き進んできた成果、そして今後の方針について、瀧本司社長にたずねた。

早稲田アカデミーの瀧本司社長

早稲田アカデミーの瀧本司社長

本気になれる環境やきっかけがあれば、難関校合格は夢じゃない。

──早稲田アカデミーに商号変更されてから30年という節目の年を迎え、あらためて今想うことは。

「2013年の中学入試では、御三家中や早慶中などの難関校にトップレベルの合格者を送り出し、高校入試では開成高・慶女高・早慶高へ全国ナンバー1の合格者を送り出しました。

中でも特筆すべきは、早稲田アカデミーに通い始めたころの偏差値は〝50〟前後といった学力の生徒が難関校に合格していること。スタートの学力に関わらず、環境やきっかけをつくってあげれば、生徒自らが望む憧れの難関校合格を実現することは可能だということです。あらためて、『本気でやる子を育てる』という教育理念を堅持し、実践していきたいと思います」

──『本気でやる子を育てる』ためのポイントはなんでしょう。

「大きく分けると、一つは〝競争する〟ということ。それから、〝生徒とのコミュニケーション〟です。受験は他人との競争です。だから早稲田アカデミーでは、どんなに小さなテストでも必ず順位表を貼り出します。それに反応する子もいますし、あるいは『夏期合宿』のような特訓の場において〝みんなといっしょにこれだけ頑張った〟ということに反応する子もいます。その反応は受験に挑む原動力になりますから、競争していることが明確で、結果としてわかる状態をつくってあげることが大切だと思います。

一方で、受験は自分自身との競争でもあります。受験に対して自分はどうとらえ、どんな目標を立てればよいのか。これは先生とのコミュニケーションが必要になるんですね。ある生徒には偏差値を〝70〟に上げることを目標にして、またある生徒には〝まずはこの単元だけはできるようにしよう〟という目標を与える。それぞれの子どもに応じた目標をきちんと与え、そのためにはどうしたらいいかというアドバイスをする。目標がクリアできたらより高い目標を設定し、チャレンジ。できなくても繰り返しコミュニケーションをして軌道修正していくことで、子どもたちのやる気は変わってきます」

──とにかく〝やる気〟を引き出すことが大切なんですね。

「そうです。受験というのはあくまでも子どもの人生をつくるきっかけにすぎません。それを目標にしてどう取り組んだかというところに本当の価値がある。一生懸命取り組んだことが財産となり、今後の人生においても大きな糧となるのです。

私たちは、お子さんやご家族のみなさんが〝やってよかった〟と振り返られるような受験であってほしいと願いますし、そのためにスタッフ一同、全力でサポートしていくことをお約束します」

手厚いサービスで、すべての塾生を全力でサポート。

──中学受験の合格実績が伸びている理由は何でしょう。早稲田アカデミーの瀧本司社長

「ひとつは、リーマンショックによる中学入試の冷え込みがあった時期から、低学年の募集に力を入れたこと。もうひとつは、四谷大塚の『予習シリーズ』に対応した、指導マニュアルが充実したこと。それらが、今年になって、ようやく実を結んだというわけです。

生徒の獲得に関しては、『全国統一小学生テスト』をはじめ、体験授業や低学年向けの『チャレンジテスト』などを用意して、何度もアプローチをかけていきました。すべて無料ですから、それなりに費用はかかりますが、広告宣伝費として低学年のうちに投資をして、より優秀な生徒さんを早めに獲得しておく方が、4年後、5年後、6年後と長いスパンでみると効果的であると考えたのです。

新『予習シリーズ』については、マスの生徒層にはハードルが高くなりました。ただし、優秀生にとっては何の問題もなくチャレンジできるものになっています。教える深さは変わらないのですが、内容をぎゅっと凝縮して短時間に詰め込んでいるものですから量が多くなっているのですね。だから優秀生はどんどん伸びていける。逆にマスの生徒層には、クラスごとにピックアップする問題や、生徒たちに到達させるべきレベルの見極めを緻密にコントロールして、ドロップアウトすることなく的確に伸ばしていけるマニュアルづくりをしています」

──ここ近年、『早稲田アカデミー個別進学館』や『早稲田アカデミーIBS』といった新しい取り組みを次々と始めていますが……

「集団でのライブ授業には、サービス的な面での限界があります。それを補う形で設けたのが『早稲田アカデミー個別進学館』です。集団授業を行う教室のすぐ近くに個別の教室を構え、併用できる状態にしました。今後は、各校舎あるいは自宅で、パソコンによる自学自習をフォローするシステムにも着手しようと思っています。

また、英語教育も変わりつつあります。これからは、言語としての英語という意識改革が必要です。目指すところは、〝グローバルな人材〟になるための英語教育。国際人としてビジネスの世界でも成立する英語力を身に付けること。社会人になってからしゃかりきに英語を勉強するのではなく、学生のうちから英語圏の方々と自然に会話ができる。そうした下地をつくってあげる教育が求められています。だから受験英語にとどまらず、それを超えるコンテンツとして、東大・医学部・ハーバードに一番近い小学生たちの英語塾『早稲田アカデミーIBS』が生まれました」

──その反響はいかがですか。

「『早稲田アカデミー個別進学館』は2年ほど前からはじめ、明光ネットワークジャパンと提携し、現在は首都圏に20校舎を構えています。生徒数は1200人ほど。1校舎平均60人くらいになります。基本的に1対2で自立をさせながら進めるスタイルで、汎用性が高いので、3年後くらいには100校舎まで展開を目指しています。

『早稲田アカデミーIBS』は、保護者の方にも一緒に授業を受けていただくなど制約のある教室ながらも、ほとんどのクラスが満席の状態で、キャンセル待ちをしていただいています。今は御茶ノ水の1カ所だけで首都圏の東側の方が対象になりますので、次は西・南側を対象に神奈川エリアにも教室を開こうと思っています。

さらに『早稲田アカデミーIBS』のノウハウを一般化して、今秋から特別なカリキュラムをスタートします。小5~6年の2年間で、3級程度の英語能力を身に付ける教室を首都圏で10カ所ほど開く予定です」

中・高校、大学入試のすべてにおいて合格実績日本一を目指す。

──広告的な戦略としてはどのようにされていますか。

9月の新学期開講チラシ

9月の新学期開講チラシ

 

「広告予算は、収益の状況を見ながら調整はしますが、およそ8%です。内訳についてですが、やはりウェブ、インターネットにかける広告費が増えてきています。テレビCMにかける予算はほとんど一定。チラシもそれほど減らしてはいません。ウェブの場合は、パソコンのスイッチを入れてブラウザを立ち上げてという顧客の能動的な行動がなければ届きませんが、チラシは顧客が受動的であっても情報だけは届けられるので、根強く残っていくと思います」


──ウェブに関して、ソーシャルメディアへの対応はいかがですか。

夏期合宿のパンフレット

夏期合宿のパンフレット

「仲間意識を高めたり、卒業生たちのネットワークづくりにはラインやフェイスブックは活用できるツールだと思いますし、そこから発生していけば口コミの材料としてコントロールはできると思います。ただし、そこに生徒が関与すると、想定されるリスクを回避しなくてはなりませんので、慎重にやっていかなくてはいけない。活用にはもう少し見極めが必要ですね」

──今後の経営的な目標と、瀧本社長が早稲田アカデミーで実現されたいことはなんですか。

「経営面では5年後には売上は280億、利益は22億くらい。10年後には売上は400億、利益は40億くらいが目標です。実現したいことは、10年後には学習塾として合格実績で日本一になることですね。まず、御三家中は確実にトップに。高校入試は誰からもナンバー1と評価されていますが、国立高校や都県立のトップ校など、まだいくつかの学校はナンバー1のタイトルをもらっていないものがありますので、それを全部取る。それが最終的には東大につながっていくと思いますので、ゆくゆくは大学入試でもナンバー1になれるのではないかと思います。10年経つと私は60歳になります。引き継いだ責任をそれで果たしたい。もちろん、できれば売上・利益でも日本一になりたいですね」