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第4回アクティブ・ラーニングフォーラム開催 ゲストとして下村博文元文科相が登壇

一般社団法人アクティブ・ラーニング協会と立正大学が共催する「第4回アクティブ・ラーニングフォーラム(全国教職員研修会)」が8月26日、東京都品川区の立正大学 品川キャンパス内で開かれた。全国の小・中・高校、専門学校・短大・大学の教員約300人が出席した。次期学習指導要領改訂に向け教育現場の関心の高さがうかがえる。

下村博文元文科相

下村博文元文科相

下村博文元文科相がゲストとして登壇し、アクティブ・ラーニング(AL)の重要性や海外に比べ日本のALはまだ成長できる。子どもが意欲を持って授業に取り込める工夫や努力して、日本の教育全体に大きく発信していけるよう応援したいとあいさつした。

子供達に近い教育現場からは、茨城県立並木中等教育学校の中島博司校長と、静岡県立韮山高校の鈴木映司教諭が発表した。

中島校長は自ら考案した「AL指数」や「R80」などの理論を解説し、「ALか講義かという二項対立ではなく、ハイブリッド型の授業がいい。私が理想と考えるのはAL指数20、つまりAL化は授業の学習活動のうち2割」と説明し、授業終わりに80文字以内で学んだ事を書く事。前半40文字、後半40文字でまとめ、前半と後半の間に接続詞を入れる「R80」の説明も行った。
鈴木教諭は、授業支援アプリを活用した、地理の授業を紹介した。

有識者として、上越教育大学教職大学院の西川純教授、東京学芸大学の森本康彦准教授が登壇。

西川教授は「ALだから成績が上がる」、「子どもが分からないと言っているときは、わからない単語が出てきた時に起こる。小学生が容積、代金、など難しい用語を日常的に使わないが問題文には使っている。そこでつまづく」と原因を説明。「子どもがみんなで勉強を分かろうとする文化を作るべき」と、アクティブラーニングの重要性を強調した。
森本准教授は「eポートフォリオ/学習記録データを活用したALと学習評価」について語った。

広域通信制高13校が不適切指導か 文科省

文部科学省は9月2日、全国の広域通信制高校の実態調査の結果を公表した。調査した101校のうち13校で昨年度、教員ではない職員が面接や試験を行うなど不適切な指導をした疑いがあった。三重県伊賀市のウィッツ青山学園高校の就学支援金不正受給事件などを受け、7~8月に調査した。今後、各校に適切な運営を促す。

地震の後も熊本の私塾が貫いた、民間教育機関としての使命

4月14日に発生した震度7の前震をはじめとする一連の地震は、熊本一帯に大きな被害をもたらした。それでも現地で私塾に携わる人たちは過酷な状況のなか、子供たちに学ぶ機会を提供し続けている。地震発生から4ヶ月近く経った熊本で、4つの教育現場をレポートする。

お金や理屈より、授業の再開を優先

早稲田スクールの本部校舎は大きな被害は免れたが、地震発生後に解体や大規模修理が必要となった校舎もあった。

早稲田スクールの本部校舎は大きな被害は免れたが、地震発生後に解体や大規模修理が必要となった校舎もあった。

熊本県内屈指の教室数をほこる「早稲田スクール」(熊本市中央区)は、地震によりひとつの校舎が解体、3校で大規模修理が必要となった。解体される校舎は移転先が見つかったものの、3校は授業再開の目途が立たなかった。そこで3校の駐車場に、トレーラーで運んですぐに使用できるユニットハウスを複数設置。5月10日には授業を再開した。

ユニットハウスの外観。手前2棟がトイレ、奥2棟が教室として使用していた。

ユニットハウスの外観。手前2棟がトイレ、奥2棟が教室として使用していた。

実はプレハブを建てたほうが費用的には負担が少ないのだが、あえてユニットハウスを選択した理由を同社の向田敬二社長が語った。「安価なプレハブを建てることも考えましたが、建築の申請や工事に長い時間がかかるんです。そうなると生徒の学習はますます遅れます。保護者も心配されますし、受験生への影響は特に大きい。ですから費用がかさんでも学習環境を早く整えなければいけない。お金や理屈ではなく、そういう思いを社内で共有して授業再開に向けて取り組みました」

仮設教室の内部

仮設教室の内部

向田氏自身も被災し、自宅近くの高校に1週間避難していた。同様に被災していた社員も少なくない。それでも同社は生徒の学習環境を整えることを優先した。向田氏は授業再開後の生徒について「それはもう喜んでいました」と、顔をほころばせた。1学期の終わりには校舎の修理がほぼ完了し、生徒たちは通いなれた校舎で夏期講習に勤しんでいる。

 

学ぶ機会を教材で提供…阿蘇地区の中学校にテキストを寄贈

なるほどゼミナールの山中孝光社長

なるほどゼミナールの山中孝光社長

熊本市東区の「なるほどゼミナール(ナルゼミ)」では、教室の水道が復旧した4月25日から「震災特別講習」を無料で実施した。それから学校が始まるゴールデンウィーク明けまでの2週間、休日を返上して朝9時から夕方6時まで授業を継続。特に小学生が通常より50人も増えたため、卒塾生の大学生や高校生がボランティアとして講師を買って出た。同社社長で講師でもある山中孝光氏は、さらに多くの子供たちに勉強する場所を与えたいと協力を呼びかけ、同様の講習が他塾でも実施された。

阿蘇地区の中学校で寄贈するテキストを生徒に手渡す山中氏

阿蘇地区の中学校で寄贈するテキストを生徒に手渡す山中氏。

しかし、阿蘇地区の子供たちは熊本市内への道路やJRが寸断されており熊本市内の塾に来ることができない状況が続いている。山中氏はここでも「阿蘇地区にいる受験生たちにも力になりたい」と考えたという。そこでナルゼミで使用しているテキスト「高校入試対策 Spurt+(スパートプラス)」を440人分、2200冊を阿蘇地区の4つの中学校に寄贈した。

「勉強の仕方が誰でもわかるようになる」という工夫が凝らされているテキストは、阿蘇地区の中学校の先生からも好評を得た。現在は、多くの住宅が倒壊した益城町の中学校にも同様の支援を行うため、クラウドファンディングで資金を募っている。

無料の授業で笑顔を増やす

〝夏期講習も無料で教えます〟。益城町でも特に被害が大きい惣領地区で、ひときわ目立つ横断幕を掲げる「さくらゼミナールましき校」。小5から中3が対象の学習塾だ。こちらの平屋で鉄筋構造の校舎はほとんど被害を受けなかったが、周囲に住む多くの子どもたちは家を失い、避難所生活を強いられることになった。

さくらゼミナールましき校の石井仁晃校長

さくらゼミナールましき校の石井仁晃校長

そこでさくらゼミナールは、4月25日から5月8日の間、ましき校を13時から17時まで無料で開放した。「生活のための避難所は大人が中心の環境になってしまいます。まずは子どもだけの居場所が必要だと感じ、教室を開放しました。ただ、子供たちは来ても元気がないんです。ですから、まずは勉強というより一人一人の話を聞いてあげることから始めました」ましき校の校長、石井仁晃氏はそう語った。

校舎の前面に「無料」の横断幕を掲げる。

校舎の前面に「無料」の横断幕を掲げる。

さらに、ウェブサイトを通して寄付金を募り、ゴールデンウィーク後に再開した授業や夏季講習も無料で実施することにした。この期間で生徒は100人近く増えたが、資金面での負担が大きく、9月からは無料で続けるわけにはいかないため、今後は被災者を支援する他団体と協力し、新たな方法で生徒のサポートを続けていくという。

生徒たちも地震直後にくらべ「笑顔が戻ってきました。それを見た保護者の笑顔も増えていると感じます」と石井氏は言う。笑顔を増やしたい。それが支援を続ける原動力だ。

私塾と学校が連携、小学校内で塾を開く

熊本県内に528校ある小中学校うち、一時は351校が地震の影響で休校となった。益城町立広安西小学校は避難所となり、約800人の避難者を受け入れた。授業は5月9日に再開したものの、その週は2時間しか授業ができなかった。

そこでPTAが中心となり、放課後に希望者が勉強できる「ガッツ学習塾」を16日から開始。ここで子供たちの宿題や復習をサポートしたのが、熊本県内で明光義塾を運営する「サクセスリンク」(熊本県玉名市)と、家庭教師派遣の熊大アカデミーを展開する「九州教育研修センター」(熊本市中央区)の講師たちだった。

明光義塾 帯山教室の尾方範夫教室長

明光義塾 帯山教室の尾方範夫教室長

明光義塾の帯山教室教室長、尾方範夫氏は「PTA会長が私と知り合いということもあり、すぐに話がまとまりました。熊大アカデミーの講師は熊大の教育学部生が多く、授業ではレクリエーションなども取り入れました。大人が協力して子供の学習をサポートしました」と語った。

益城町立広安西小学校の井手文雄校長

益城町立広安西小学校の井手文雄校長

同校の井手文雄校長は、私塾の取り組みについて「学校と学習塾は、立場は違っても気持ちは変わりません。勉強はもちろん、子供たちを見守るという点でも、子供と保護者に安心感を持ってもらったと思います」と述べた。

熊本の私塾に携わる人たちは、震災直後から子供たちに勉強を教えるという務めを全うした。その役割をそれぞれの立ち位置から貫くことで被災者に安心感を与えた。熊本の私塾をはじめとした教育関係者に敬意を表したい。

ガッツ学習塾の授業の様子。5月16日から7月22日まで実施した。

ガッツ学習塾の授業の様子。5月16日から7月22日まで実施した。

学研教育みらい、ウエアラブルで紙芝居と音楽連動 Moffと提携

学研ホールディングスグループの学研教育みらい(東京・品川)は、ウエアラブル機器ベンチャーのMoff(モフ、東京・千代田)と提携した。同社のリストバンド型機器を活用し、音楽が流れる紙芝居を近く発売する。発売する「おとしばい」では、保育士や教諭がリストバンド型機器「モフバンド」を付けると、腕の動きを読み取り、連動するスマートフォン(スマホ)などから音楽や効果音が流れる。専用紙芝居にバンドの使いどころや腕の動かし方が書かれており、ストーリーに合わせて登場人物のしぐさを表現する。

英語学べる学童保育  携帯販売のピーアップ 業界参入

「テルル」などの店名で携帯電話の販売店を手がけるピーアップ(東京・足立)は「KidsUP(キッズアップ)」の名称で、英語を教える学童保育の展開を始めた。すでに東京都大田区では田園調布や蒲田などで開設している。江東区内ではまず9月10日に東京メトロ東陽町駅の近くで新設するほか、来春までに2教室を開く。今後5年間で目黒区や世田谷区、神奈川県内など1都3県を中心に70カ所まで拡大する方針だ。学童保育へのニーズに加えて、小学校での外国語の教科化を見すえ、事業の多角化を急ぐ。

舞台演出メソッドによる先進的研修が「アクティブ・ラーニング」を担う教員の資質向上に貢献

サマデイグループの株式会社ヒューマンデザインと一般社団法人日本アクティブラーニング協会は、8月8日、同19日の2回にわたって、独立行政法人教員研修センターの「平成28年度教員の資質向上のための研修プログラム開発事業」として、「アクティブ・ラーニング研修〔教員のためのシアターラーニング〕」を実施した。

舞台演出メソッドを活用したアクティブ・ラーニング研修の様子

舞台演出メソッドを活用したアクティブ・ラーニング研修の様子

本事業の趣旨は、アクティブ・ラーニングやICTの利活用等、新たな教育課題に対応した研修プログラムの開発と全国的な普及を目的として、民間教育団体の知見を活用し、先進的かつ斬新な研修プログラムを開発し実行する取り組みに対して支援を行うというものだ。事業に採択された本研修は、小・中・高・大の教職員を中心に、各日程100名を定員として、計200名を対象に行われた。

この研修を主催した株式会社ヒューマンデザインは、舞台芸術作品を公演する「音楽座ミュージカル」の舞台演出メソッドを活用した研修を、様々な業種の企業や教育機関に提供している。

予測もつかない発言や突発的な状況への対応するためのプログラムが用意されていた

予測もつかない発言や突発的な状況への対応するためのプログラムが用意されていた

アクティブ・ラーニングの現場において、教員は、しばしば予測もつかない発言や突発的な状況への対応、その場で感じて判断し、行動する力を要するが、これは、舞台俳優がステージに立つ際に求められる力と重なるとして、俳優の作品創造、稽古のプロセスを積極的に取り入れることで、不測の事態に対応する資質を高めるプログラムとした。

研修プログラムでは、アクティブ・ラーニング実施の現状、社会の変化、大学入試の変化を振り返った上で、身体を使ったアイスブレイクのアクティビティを行い、参加者が6人1組程度のチームとなって、「アクティブ・ラーニングの普及」をテーマにミュージカルCMを創作した。

書籍『超一流はアクティブラーニングをやっている』

書籍『超一流はアクティブラーニングをやっている』

研修内では、日本アクティブラーニング協会が作成したルーブリックが活用された。ルーブリックは、アクティブ・ラーニングを実践するにあたって求められる能力・資質を評価し、向上させるためのもので、「パフォーマンス(表現する力)」と、「リーダーシップ(組織を動かす力)」の2種があり、同協会のファシリテータ認定基準ともなっている。また、同協会の書籍には、この研修の基本的な考え方や用語がまとまっており、参加者にテキストとして配布された。

研修後のアンケート調査によると、97.3%の参加者が「自己の指導の見直しに役立った」と回答し、自由記述回答では「アクティブ・ラーニングの実践にむけては、教員である自分自身を変える必要がある」との感想が目立った。

株式会社ヒューマンデザインが運営する「アクティブ・ラーニング研修」は、日本アクティブラーニング協会の認定トレーニングに指定されており、同社のウェブサイトから法人単位で申し込むことができる。また、修了認定者には同協会からファシリテータライセンスが発行される。

英語教育はターニングポイントを迎えている

子供たちに世界で使える英語を身に着けてもらうためにはどうすればいいのか? 今、議論されている教育改革、学校、塾などの新たな動きを中心に、英語教育の現状を見てみたい。

AIC Kids

大きく変化する英語教育

英語教育が大きく変わろうとしている。現在、高校教育、大学教育、大学入試改革の3つは一体となった改革が議論されており、センター試験に変わる新たな試験も作られようとしている。その中で、特に大きな変化が起こるのが英語だ。新たな試験では、4技能(「聞く」「話す」「読む」「書く」)を総合的に評価する問題が出題(例えば記述式問題など)されることになっている。その試験についてのウェブサイトも開設された。

この背景について、文部科学省は「グローバル化の進展の中で、言語や文化が異なる人々と主体的に協働していくため、国際共通語である英語の能力の向上と、我が国の伝統文化に関する深い理解、異文化への理解や躊躇せず交流する態度などが必要である」と述べている。(※1)つまり、将来、子供達が社会に出たときに必要な能力を養成しようと、国は英語教育をはじめ、教育改革を進めているのだ。

AIC Kidsそして、大学入試が変わるということは、その下にある高校、中学、そして、小学校教育が連動して変わっていく。例えば小学校では、これまで「外国語活動」は小5からだったが、2020年度の教育指導要領改訂によって小3で必修化し、小5・6では成績がつく教科に変わることになっている。つまり、現在年中(11年度生まれ)の子供が小3になるときに「必修化」、現在小1(09年度生まれ)の子供が小5になるときに「教科化」される。そのときになって慌てないためにも、これからの英語教育について少し考えてみよう。

新たな英語教育はすでに始まっている

実は、国よりも先に私立学校や学習塾などでは、多様に英語を学ぶ機会や制度を整え始めている。

例えば私立中学校の中には、「英語入試」を導入する学校が増えてきた。また英検などの英語外部検定試験のスコアを入試に加点する学校も多くなってきている。

その英検は、2016年度からスピーキングテストを導入するなど、こちらも4技能テストへと舵を切った。また、TOEFL、GTECなどの中には、中高生向けの4技能試験を提供するなど、英語外部検定試験も多様化している。

大学では、この外部検定試験を入試に活用する動きもあり、その動向を知ることは最新の英語教育を見る上で参考になるだろう。

そして、学習塾も変化している。

中国地方を中心に鷗州塾が展開するAIC Kidsは、幼児・小学生を対象に、日本語を一切話さない環境で英語を指導している。その授業は、特に「読む」「聞く」力を重点的に伸ばし、英語の思考回路を作るように設計されている。最初にこの英語を英語で考える思考回路を作ることが、使える英語を習得する重要なポイントなのだそうだ。

AIC Kidsに通う子供たちは、数ヶ月すると英語で書かれた絵本をひとりで読むようになるとも。さらに、単語などは英検に出てくるものを扱うため自然に英検にも対応できるようになっている。

実はこのAIC Kidsは、鷗州塾が設立したニュージーランドのAuckland International Collegeが母体となっている。同校では、様々な国の学生たちが学んでいるが、特に日本人が外国で学ぶために身につける英語の学習メソッドは、他にはない特色を持っている。そのメソッドをもとに幼児・小学生が学びやすく設計されたものがAIC Kidsのカリキュラムに反映されているため、信頼度は高い。このように、国に先駆けて新たな英語教育は提供され始めているのだ。

英語教育は今、ターニングポイントを迎えている

これまでの塾には、文法や問題を解くためのテクニックなど、コミュニケーションをするためには全く役に立たないことを教える、こんなイメージがあったかもしれない。しかし、AIC Kidsなどのようにそのイメージを覆す塾が増えてきている。

今の子供たちの中には、学校に入学する時期によっては、新しく変わる教育制度で学習する子とそうではない子に分かれてしまうのも事実だ。また、特に小学校では、教える学校の先生の力量も懸念材料となっている。そういった意味でも、新たな塾の動きは注目するべきだろう。

英語が使えない人は、聞いたり読んだりした英語を頭の中で一度日本語に変換して、理解しようとしてしまう。そうならないようにするためには、英語を聞いて、読んで、英語で理解するための環境が必要だ。

その上で海外留学という選択肢もある。文部科学省は『トビタテ!留学JAPAN』という官民協働海外留学創出プロジェクトを立ち上げ、高校生や大学生の海外留学を促進している。しかし、折角の異文化理解、交流の機会なのに、英語を学びに行くだけではもったいない。日本の中できちんと英語を学んだ上で留学することによって、留学の意義も深まるだろう。そのためにも幼児期からの英語学習は大きな意味を持つ。英語を身につけるスピードは、圧倒的に小学生から始めた方が速いとも聞く。

英語教育は今、ターニングポイントを迎えている。子供たちにとっていい未来を歩んでもらうためにも、英語教育を今一度考えてみてはいかがだろうか?

 

※1「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(答申)」(中央教育審議会 2016年12月22日)より抜粋

「夏休みの自由研究に」 全教研が次世代型サイエンスカリキュラム「littleBits」の体験学習会

夏休みも終盤にさしかかった8月20日、東京・品川のNTTコムウェア次世代ネットワークラボで、小学生40人(1日2回開催で、1回あたり20人)を集めた「サイエンス×littleBitsで学ぶ宇宙 〜キッズ宇宙開発局〜 」が、株式会社全教研(福岡市中央区、中垣一明社長)の主催で開かれた。このイベントは、約2時間におよぶ体験型のカリキュラムで、宇宙をテーマに次世代型の学びが得られるというもの。参加した子供たちは、全教研の科学実験教室「サイエンスFiVE」の光の実験をベースに、モジュールキットを磁石でつなぐことによって電子回路について学習できる「littleBits(リトルビッツ)」を使用しながら、自分だけの火星探査機作りにチャレンジした。

思い思いの火星探査機を作る子供たち

思い思いの火星探査機を作る子供たち

火星探査機を作るためには、いくつもあるlittleBitsのモジュールキットを正しく組み合わせなければならないが、子供たちはモデル機などを参考にしながら真剣に組み立てていた。

モジュールが出来上がれば、今度はそれを乗せて走る車体が必要となる。はじめは遠巻きに眺めていた保護者も徐々に参加。それぞれの親子は用意された段ボールや空き箱を使いながら、4輪車、3輪車など、思い思いの探査機作りに取り組んでいた。

特に車輪をいかに取り付けるかが難しく、各親子は空き箱を切っては車輪を差し込み、切っては差し込みを繰り返し、試行錯誤しながら作っていた。そしてイベントが終了に近づくにつれ、続々と火星探査機が出来上がり、それぞれ楽しそうに動かしていた。

出来上がった探査機は実際に動かすことも

出来上がった探査機は実際に動かすことも

イベントは探査機を作って終わりではなくレポートも作成。そのため、夏休みの自由研究としても活用できる。子供たちは探査機作りで工夫したところなどを、真剣にレポート用紙に書いていた。最後は修了の証として賞状が渡され、子供全員で記念撮影。夢中になって探査機を作った親子は、探査機作りを通した新たな学習の機会に触れ、イベント終了後には、とても満足そうに笑みを浮かべながら親子で会話を楽しみながら会場をあとにしていた。

モジュールで動く火星探査機

モジュールで動く火星探査機

全教研は、今後も様々な企業とのコラボレーションにより科学実験講座「サイエンスFiVE」に「先端の学び」を取り入れた講座を子どもたちに提供し、科学教育の普及を図る。10月下旬には、株式会社NTTコムウェアとのコラボレーションによるプログラミング講座の開催も予定している。

ありそうでなかった教材のイノベーション 「高校入試対策Spurt+(スパートプラス)」

なるほどゼミナールの山中孝光塾長

全ての問題に10段階の難易度を表記した新しい教材「高校入試対策Spurt+(スパートプラス)」を株式会社育伸社(東京・台東区)が刊行した。これまでの問題集「Spurt(スパート)」との違いは難易度表記があるかないか。この工夫が大きな効果を上げている。

熊本市東区の学習塾、なるほどゼミナール(ナルゼミ)は、いち早くこのスパートプラスを導入した。ナルゼミの山中孝光塾長は、「教務の力量に委ねられていた『学力差を見極めて適切な難易度の問題を教える』ということが、簡単かつ正確に実施できるようになりました」と話す。

スパートプラスは高校入試対策用の5教科を刊行

少人数一斉指導の授業形式をとるナルゼミでは受験生にスパートプラスを自学用教材として活用している。今までは講師と直接関わっていない自学自習のとき、果たしてどれくらいの生徒が問題を適格に選択できているか正直疑問だったという。それがこの教材によって仕組み化され指導の効率が向上したのだ。

また、育伸社の学力テストを導入することで、問題の難易度と連動した生徒の学力レベル(段階)が明確になる。ナルゼミでは「個々の成績該当段階とその1段階上のレベルの問題を重点的に指導」したり、「生徒のレベルに満たない易しい問題はヒントを出すに留め、生徒自身に考えさせる」といった方法で運用している。

生徒の学力に合った問題を重点的に学ばせることで、高い学習効果が得られるという。スパートプラスの効果を実感したナルゼミは、昨年度の受験生が半年間で偏差値を6.6ポイント以上アップさせた実績を上回る、「全員7ポイント以上のアップ」を今年度の目標としている。

一方で、個別指導塾におけるスパートプラスの活用については、「一斉指導の塾よりも大きな効果が期待できる」と山中氏は言う。個別指導塾の運営にも4年以上携わっていた山中氏は、

各問題に難易度を表示することで、指導経験が浅い大学生のアルバイト講師でも学習効率が高められる

「多くの講師が必要となる個別指導の塾では、学生講師にも頼らなければなりません。彼らは学力が高くても経験は浅く、生徒の成績と問題の難易度を上手く結びつけることができません。成績との相関を難易度表示した問題集があれば、『今はまだ取り組ませるべきでない問題・解き方をシッカリ教えるべき問題・生徒自身の力で解かせるべき問題』が誰にでも区別できます。その分、授業の効率は飛躍的に向上し、生徒の成績も上がるでしょう」と、スパートプラスの持つ可能性を示唆する。

山中氏はこの教材の使い勝手について、「喩えて言うならば、マニュアルミッション車からオートマチック車に乗り換えたようなものです。もう以前の教材には戻れません」と笑みを浮かべる。一般の乗用車でも運転が簡単なオートマ車が主流になったように、問題の難易度を表記することで、講師と生徒の負担軽減が期待できるスパートプラス。これからの教材のスタンダードとなるかもしれない。

熊本県益城町、広安西小で「ロボットプログラミング体験会」 明光義塾が寄付授業

熊本県益城町の広安西小学校で8月11日、「ロボットプログラミング体験会」が開催された。対象者は小学4年生から6年生。熊本地震の発生から4ヶ月近く経った時点でも益城町には倒壊した家屋が目立ち、同校内の避難所で生活する被災者もいる中、保護者を含め26名の参加者が参加した。

楽しみながらプログラミング

楽しみながらプログラミングを学ぶ子供たちの活気がみなぎる

実施したのは熊本県内で明光義塾を運営するサクセスリンク株式会社(熊本県玉名市)と九州・山口・沖縄で明光義塾を展開する株式会社明光ネットワーク九州(福岡県福岡市)、全国でロボットプログラミング教室「アーテックエジソンアカデミー」を展開する株式会社アーテック(大阪府八尾市)。熊本地震発生後、サクセスリンクは広安西小の生徒たちの勉強をサポートするため、1学期の終わりまで放課後に無償で学習支援教室を開いていた。その支援の一環として実施された今回の体験会。カリキュラムはこの日のためにアーテックが特別に用意したものだ。

まずは車型のロボットを作る。参加者たちはブロックや基盤、モーターなどの部品からロボットを組み立てていく。ブロック遊びの要領で、率先して手を動かす子供たちの表情は真剣そのものだ。

ロボットの動作をプログラミングするソフトは、MITメディアラボが開発した「Scratch(スクラッチ)」がベースのオリジナルソフト。複雑なコードを覚える必要がなく、パソコンの画面上で命令のブロックをドラッグ・アンド・ドロップするだけで簡単に扱える。講師も保護者もアドバイスするだけで、子供たちはすぐに操作に慣れ、画面上でブロックを組み立てるようにプログラムを組んでいく。最初の課題はロボットを真っすぐ走らせる簡単なものだったが、後半は自動で三角形や四角形の軌道を描いて走らせるなど初めてとは思えない複雑なプログラムを完成させていた。

広安西小の井手文雄校長

広安西小の井手文雄校長

参加した小学6年生の飯干瑠音さんは「パソコンを使って命令を出して、本当にロボットが動くところが楽しかった」と話す。また、4年生の坂口将義さんの父親、浩一郎さんは「子供は試行錯誤しながら考え、結果を確かめていた。勉強や仕事でも必要な考え方を学べた」と喜んだ。
同校の井手文雄校長は「参加した子は少なからずプログラミングに興味があるはずです。熊本が大変な状況だからこそ、夢や進路に繋げてほしい」と語った。2020年から小学校で必修化される見込みのプログラミング教育。それに先駆け被災地で実施された体験会が、子供たちの新たな可能性を開花させるきっかけになったと期待したい。