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ヴァージン・ギャラクティック 商業宇宙飛行ミッション「Galactic 04」を実施

 ヴァージン・ギャラクティックは10月6日、商業宇宙飛行ミッション「Galactic 04」を実施し、宇宙船「VSS Unity」に6人のクルーが搭乗した。このミッションは、アメリカ・フロリダ州にあるケネディ宇宙センターから打ち上げられ、宇宙船は空中発射母機「VMS Eve」に吊り下げられ、スペースポート・アメリカから飛び立った。
「VSS Unity」は高度13kmで空中発射母機から切り離され、エンジンを点火して高度を伸ばし、最終的に高度87.5kmに到達。その後、スペースポート・アメリカへの着陸が行われました。
 このミッションには、3人の乗客が含まれている。ロン・ロサ(Ron Rosano)さん、トレバー・ビーティー(Trevor Beattie)さん、そしてパキスタン出身のナミラ・サリム(Namira Salim)さんが、この宇宙飛行に参加した。サリムさんはパキスタンの出身者として初めて宇宙空間へ到達した人物として注目されている。
 ミッションのパイロットは、ケリー・ラティマー(Kelly Latimer)氏が務め、アメリカ航空宇宙局(NASA)やボーイングでのテストパイロット経験が豊富だ。また、元宇宙飛行士のフレドリック・スターカウ(CJ Sturckow)氏とクルーのインストラクターであるベス・モーベス(Beth Moses)氏もパイロットチームに加わった。
 ヴァージン・ギャラクティックは、商業宇宙飛行を毎月実施する計画でおり、このミッションは4回目の商業宇宙飛行となります。同社は既に次回ミッション「Galactic 05」に向けた準備を進めているが、今後の詳細なスケジュールについては発表されていない。

日本科学未来館 新しい4常設展示の体験内容やタイトルが決定

 日本科学未来館(未来館、浅川 智恵子 館長)は、2023年11月22日(水)に公開する「ロボット」「地球環境」「老い」をテーマにした新常設展示について、展示タイトルを含む詳細情報を決定した。「ロボット」は2つの展示空間に分かれ、合わせて4つの常設展示が誕生します。3テーマそれぞれ、さまざまな社会の課題との向き合い方や解決に向けたヒントを、最新の科学や技術にもとづく展示体験を通して探る。

「ロボット」の新展示は、これからますますロボットが暮らしに溶け込む未来を見据え、その関わり方を考える。1つ目の展示は、「ハロー! ロボット」。コミュニケーションロボットなどとのふれあいや、最新のロボット研究の紹介を通して多様なロボット技術を知り、その可能性を体感できる。2つ目は、人とロボットがともに暮らす未来のまちで起こる物語に参加する展示「ナナイロクエスト -ロボットと生きる未来のものがたり」。専用タブレットを使ってまちで起こったトラブルを解決するなかで、人とロボットとのさまざまな関係性に向き合う。最後には来館者同士が多様な価値観を共有し、考えを深める。


「地球環境」の新展示は「プラネタリー・クライシス -これからもこの地球でくらすために」。音響や振動などの演出や現地で収録した臨場感あふれる映像を用いた、気候変動の影響を受ける太平洋の島国、フィジー共和国の人々の暮らしを体感する大型映像体験から始まる。急激に変化する地球環境の今を科学的なデータに基づいて捉えながら、暮らしが多様な環境問題を引き起こしている現状を理解し、今、何ができるのかを探る。


「老い」をテーマした新展示は「老いパーク」。6つの体験展示を通して、老化により生じる目、耳、運動器、脳の変化を疑似的に体験する。老化現象が起こるメカニズムや現在一般的に取りうる対処法、近い将来身近になるかもしれない研究開発中のサポート技術などを紹介しながら、一人ひとりにとっての豊かな老いとの付き合い方や生き方のヒントをともに考える。

 展示公開に先立ち、浅川智恵子館長は「私たちの社会にはさまざまな課題があります。これらの4つの展示を通して、新しい科学や技術に親しみながら、多様な人々の考え方に触れていただき、よりよい未来への糸口をいっしょに見つけていきましょう。STEAM教育や探求学習などの場として活用いただくことも期待しています」と述べている。

■公開情報
展示公開日:2023年11月22日(水)
展示エリア: 3階・5階常設展示ゾーン
休館日:火曜日、年末年始(12月28日~1月1日)
開館時間:10時~17時(最終入場は16時30分)
https://www.miraikan.jst.go.jp/news/general/202309133125.html

新潟県考古学会主催 ヒスイをテーマとした学術的なシンポジウムを開催

 新潟県考古学会が主催する2023年度秋季シンポジウムが10月21日(土)に、新潟市江南区文化会館で開催される。
 令和4年に新潟県の石に指定されたヒスイをテーマにしたシンポジウム。「ヒスイ原産地遺跡から見た縄文~古墳時代のヒスイ玉製作とその展開」と題して、縄文時代から古墳時代に糸魚川を原産地とするヒスイの玉がどのように作られ、全国に流通したかを検討する。県内外の研究者11人が全国的な視点で発表する内容だ。
 当時、唯一のヒスイ原産地があった新潟県ならではの歴史について理解を深められる。

 新潟県考古学会ホームページ(URL:https://www.niigatakenkouko.com)にて、詳細な案内及び応募受付がある。
 また、シンポジウム開催を記念して、江南区郷土資料館(江南区文化会館内)内で10月8日(日)から10月26日(木)にかけて新潟市出土のヒスイの展示を行う。

【開催内容】
新潟県考古学会2023年度秋季シンポジウム
題 目 ヒスイ原産地遺跡から見た縄文~古墳時代のヒスイ玉製作とその展開
趣 旨 国内で縄文~古墳時代に利用されたヒスイの大半は、糸魚川地域で産出したものである。縄文時代には糸魚川地域で製作されたヒスイ製の大珠や勾玉が全国で出土し、弥生~古墳時代には勾玉用の素材として粗割されたヒスイが北陸地方の各地に運ばれた。糸魚川市長者ケ原遺跡報告書総括編が刊行され、原産地遺跡におけるヒスイ玉の製作の実態が明らかになった。一方、ヒスイ素材の供給については研究途上にある。本シンポジウムでは、ヒスイ原産地遺跡からの視点を重視し、県内外の資料分析をとおして、ヒスイの素材供給や玉製作について検討するものである。
開催日 2023年10月21日(土)
会 場 新潟市江南区文化会館 音楽演劇ホール(新潟市江南区茅野山3丁目1番14号)
定 員 350名
主 催 新潟県考古学会 共 催 新潟市 後 援 糸魚川市教育委員会
日 程 
○受  付  9:30~10:00  
○開  会 10:00  
○開会挨拶 10:00~10:05 
○趣旨説明 10:05~10:10 ((公財)新潟県埋蔵文化財調査事業団 荒川隆史)
○報  告 10:10~10:30 糸魚川地域における縄文時代のヒスイ加工の様相(糸魚川市教育委員会 小池悠介)
      10:30~10:50 柏崎地域における縄文時代のヒスイ加工品の様相(柏崎市教育委員会 平吹 靖)
      10:50~11:10 富山県朝日町境A遺跡のヒスイ製敲石調査(朝日町まいぶんKAN 川端典子)
 休  憩 11:10~11:20
      11:20~11:40 青森県域におけるヒスイ玉の様相(青森県埋蔵文化財調査センター 長谷川大旗)
      11:40~12:00 縄文時代前期~中期におけるヒスイ玉の製作((公財)新潟県埋蔵文化財調査事業団 加藤 学)
 休憩昼食 12:00~13:00
      13:00~13:20 縄文時代後・晩期におけるヒスイ玉の製作(中部大学 長田友也)
      13:20~13:40 縄文~弥生時代移行期のヒスイ玉の様相((公財)新潟県埋蔵文化財調査事業団 荒川隆史)
      13:40~14:00 加熱処理からみた新潟県における弥生時代勾玉製作の再検討((株)吉田建設 笹澤正史)
      14:00~14:20 長岡市大武遺跡のヒスイ素材の様相((公財)新潟県埋蔵文化財調査事業団 葭原佳純)
 休  憩 14:20~14:30
      14:30~14:50 古墳時代におけるヒスイ玉の様相(新潟市歴史文化課 金田拓也)
      14:50~15:10 ヒスイの焼成実験とその変化について(フォッサマグナミュージアム 小河原孝彦)
 休  憩 15:10~15:20
○討  論 15:20~16:55
〇閉会挨拶 16:55~17:00
○閉  会 17:00
会 費 無料(別途必要な方は資料代1,000円)
申込み
 参加を希望の方は、新潟県考古学会ホームページ(URL:https://www.niigatakenkouko.com)内の「2023年度秋季シンポジウムのお知らせ」申込みフォームより、10月8日(日)までに申し込みが必要。

福島・伊達で40度観測、全国的に厳しい暑さ

 8月5日、日本列島は広範な地域で激しい暑さとなった。気象庁によると、福島県伊達市では午後2時に40.0度の気温を観測し、今年初めて国内で40度以上を記録した。また、福井県坂井市で39.5度、兵庫県豊岡市で39.4度、京都府舞鶴市で39.0度と、それぞれの地域で過去最高気温を更新した。午後8時時点で、35度以上の猛暑日が274地点、30度以上の真夏日が695地点に達した。

大阪公立大学研究推進機構協創研究センター 宇宙科学技術研究センターと連携協定を締結

 科学を通じた人間教育を行っている一般社団法人e-kagaku国際科学教育協会(京都市、北原 達正 代表理事)と、大阪公立大学研究推進機構協創研究センター宇宙科学技術研究センター(大阪府、小木 曽望 センター長)及び株式会社サイエンス・ラボは、2023年6月24日に超小型人工衛星の設計開発活動等を目的とした連携協定を締結した。
<連携協力協定の内容>
(1)小型宇宙機システム研究センターとの連携活動に関すること
(2)超小型人工衛星の設計開発活動に関すること
(3)各機関の構成員の相互交流・研修に関すること
(4)各機関の有する研究施設・設備の相互利用

 またこの協定に関する取り組みとして、7月14日にはe-kagakuが制作した超小型人工衛星”e-kagakuジュニア衛星” の低温環境試験を実施。試験には大阪公立大学小型宇宙機システム研究センターの学生も参加し、高真空極低温用試験装置の使い方をレクチャーするなど、交流を行った。

 <e-kagaku代表理事 北原のコメント>
 e-kagakuでは2024年6月に、世界初となる低軌道帯で高精度のレーザー測距機能を持つ超小型衛星e-kagakuジュニア衛星をアメリカから打ち上げる予定です。e-kagakuジュニア衛星は小型人工衛星CubeSat(キューブサット、10×10×10cmサイズ、重量1kg)サイズとなり、地球上から光学観測できるほぼ限界の大きさです。衛星に搭載されたmini-Mt.FUJI(JAXAが開発した衛星レーザー測距(SLR:Satellite Laser Ranging)用の超小型反射器)に向けて地上のSLR局からレーザーを照射し、反射して返ってきた光を再び検知するまでの往復時間を計測することで、SLR局と人工衛星との距離を高精度(mmオーダ)に測定することができます。そのデータはスペースデブリ(宇宙ゴミ)の軌道解析や民間人の宇宙旅行に必須な宇宙保険の料率計算など、急成長する宇宙ビジネスに大きく寄与するものと考えられます。今回、その打ち上げに必要となる低温環境試験を宇宙科学技術研究センターにて実施させていただく運びとなりました。本協定を通じて、急成長する宇宙ビジネスの発展に寄与できる人材の育成を進めてまいります。

■大阪公立大学研究推進機構協創研究センター宇宙科学技術研究センターについて
 2010年8月1日設立。宇宙関連の研究に携わる第一線の研究者が集結し、相互の知識・技術・情報の共有、部局間の垣根を越えた共同プロジェクトの推進、センターを基盤としたJAXA、NICTをはじめとする他機関との連携協力等を軸として、宇宙研究の戦略的な発展を図る。

■(一社)e-kagaku国際科学教育協会について
 2014年6月設立。Space Robot Contestのほか、小中学校等におけるロボット/サイエンス体験教室や合宿を全国各地で開催。子ども・大人向けのSTEAM教育、ICT教育を行い、科学を通じた人間育成と、そのための環境整備を行っている(https://e-kagaku.com/)。

桃谷順天館 がん分子標的治療薬の副作用 皮膚障害に着目 予防軽減を目指した製剤を開発

 桃谷順天館(大阪市中央区、桃谷誠一郎 代表取締役社長)は、がん分子標的治療薬の一種であるマルチキナーゼ阻害薬による皮膚障害の予防軽減を目指した製剤開発に関する産学研究成果を、第8回日本がんサポーティブケア学会学術集会にて発表した(会期2023年6月22日~24日、奈良県コンベンションセンター)。今後、今回開発した製剤を通じて、患者のQOL向上に貢献していきたいと考えている。

 がん治療を行う中で、がん分子標的治療薬を使用することがある。その副作用として皮膚障害が発症することが知られており、例えば、同薬の一種であるマルチキナーゼ阻害薬の場合、手のひらや足裏の発赤・過角化・痛みといった皮膚障害が生じ、患者のQOLが低下するとともに同薬の減量および中止となることがある。
 患者がより安心して効果の高い治療を継続して受けられるようにするため、経験則ではなく、皮膚障害の発症メカニズムに基づいた外用製剤が必要と考え、2015年に産学共同研究をスタートした。

【研究結果】
 これまでに表皮角化細胞にマルチキナーゼ阻害薬ソラフェニブを処置するとその細胞増殖が抑制されるが、アスコルビン酸マグネシウムの同時処置によりその増殖抑制が軽減されることを報告してきた。今回、製剤化に適したビタミンC誘導体を細胞生化学的試験を経て選定し、それを配合しつつ、保湿性能が高く、かつ、使用感が心地良い外用製剤(クリーム)を作製した。この製剤を保湿指導を行うことのある薬剤師・看護師等の医療者の方にアンケートの結果、滑らかでのびが良くしっとりを感じることができ、べたつきも少なく、臭いもほとんどなく総合的な印象が良いという結果を得た。

■株式会社桃谷順天館
 https://www.e-cosmetics.co.jp/

夏かぜの1つ、ヘルパンギーナとRSウイルス感染症 全国的な流行

 松野官房長官は6月23日、「ヘルパンギーナ」と「RSウイルス感染症」の全国的な流行について、状況を注視し、感染防止対策を呼びかけた。ヘルパンギーナは夏かぜの一種であり、発熱と口内の水疱性の発しんが主な症状。感染は飛まつ感染と経口・接触感染によって広がる。症状には高熱や口内の水疱が現れ、食事や水分摂取が困難になることがある。治療は対症療法であり、予防には手洗いと咳エチケットが効果的。この疾患は五類感染症に分類され、定点医療機関での報告が行われています。

筆記具の加速度センシングとディープラーニングによって集中力の予測が可能に

 三菱鉛筆株式会社(東京・品川区、数原 滋彦 社長)は、東京大学 大学院薬学系研究科の池谷裕二教授とストーリア株式会社(東京・中央区、田谷 圭司 代表取締役)との共同研究として、筆記具の役割である“書く・描く”ことに加えて、新たな提供価値を創出するための試みの一つとして、筆記具の動きと脳波を記録し、筆記具の動きから脳波を予測するという実証実験を実施した。
 今回の実証実験の結果、筆記具の加速度データから集中力を予測できることが判明した。さらに論文は、2023年度人工知能学会全国大会に採択された。

 三菱鉛筆は、新たな提供価値を検討する中で、日常的な筆記行為を通じて、自分の集中状態を把握することができれば自分自身に合った学習や作業を実現できるのではないかと考えるに至った。さらには、教育分野における授業の最適化や、作業分野における作業効率向上、ストレス軽減にもつなげることが期待される。
 現在、集中力を予測するためには、脳波計などのデバイスを頭部に装着する必要だが、頭部にデバイスを付ける行為自体が煩雑、かつ集中力を下げる要因となる可能性もあり、データ取得において多くの課題を抱えている。筆記具の動きから集中力の予測が実現できれば、新たなデータ取得の方法になり得るとも考えている。

【実験手法】
 筆記具に装着し加速度を測定できるアタッチメント型のIoT機器(ストーリア製 試作品「Penbe」)を装着し、筆記動作をセンシングできるようにした。この筆記動作センシングと同時に、脳波計を被験者に取り付け、集中力やタスクパフォーマンスとの関連が知られている脳の前頭葉のガンマ波成分を計測した。これらの筆記動作(加速度)とガンマ波の二つを、ディープラーニングの一つである「長短期記憶ニューラルネットワーク手法(以下LSTM手法)」を用いて、時系列的に分析した。

【実験タスクの概要】
 アラビア語学習経験のない被験者を対象に、60分間アラビア語の書き写しを行い、その後10分間ずつ絵画と数理クイズのタスクを課した。アラビア語の書き写しをする60分間においては、集中を阻害するために、外部から各種の妨害(動画視聴やフリートーク)を行った。

【本研究成果のポイント】
・外部から妨害を行った時間帯では、妨害の少ない時間帯に比べて、ガンマ波強度/デルタ波強度比率の平均が低いことがわかった。そのため、ガンマ波強度/デルタ波強度比率が、集中度合いの指標として用いることが妥当と確認できた。

・筆記動作からLSTMネットワーク手法を用いて予測したガンマ波強度/デルタ波強度比率と、実際のガンマ波強度/デルタ波強度比率の、時系列変化の推移がほぼ一致することを確認した。

・ガンマ波強度/デルタ波強度比率が0以上になる時間帯を集中、0以下になる時間帯を不集中と分けると、感度 (実測した脳波に対し、筆記動作から正しく予測できた割合)は、83.0%となった。

(注1)ガンマ波の発生量が課題に対する集中力と関連があることは過去の研究で示され、脳の休憩状態と関連するデルタ波で補正して集中力指標としての有効性が示唆されているが、「集中力」に対するより明確な定義や評価方法の確立は今後も検討が必要である。

(注2)被験者の数が限られており、さらに筆記具の加速度データと脳波データの関係は被験者によって異なる可能性があるため、汎用的な手法を提供するには、より多くの被験者を集めた実験が必要である。

【考察】
 この実験によって、LSTM手法を用いて筆記具の加速度データからデルタ波を予測できることが示された。これは、脳波を直接測定することなく、日常的に使用する筆記具から脳内の状態を予測することができることを意味しており、教育や作業といったさまざまな場面において応用することができると考えられる。

【論文情報】
張天依、佐藤由宇、田谷圭司、福田昂正、池谷裕二
筆記具の加速度センサーによる大脳皮質ガンマ波の予測
第37回人工知能学会全国大会(熊本)、2023年6月9日、4Xin1-31

佐賀県 吉野ヶ里遺跡で新発見、邪馬台国時代の石棺墓

 佐賀県の吉野ヶ里遺跡の「謎のエリア」で、邪馬台国時代の石棺墓とみられる発見があった。この石棺墓は、縦1.7メートル、横3.2メートルの大きさで、石の表面には「線刻」と呼ばれる多数の記号が刻まれている。これまで神社のため発掘が行われていなかった謎のエリアで見つかった。一般の石棺墓より規模が大きく、見晴らしの良い場所にあり、邪馬台国があったとされる時期と重なっていることから、王や有力者の墓の可能性もあるという。佐賀県は、6月5日に入り口を開けて副葬品などを調査する予定。

慶應義塾大 ゲノム編集技術とiPS細胞を組み合わせた脳挫傷に対する新規治療法開発

 慶應義塾大学医学部脳神経外科学教室の戸田正博教授らの研究グループは、ヒトiPS細胞由来の神経幹細胞(Neural stem cell:NSC)が、損傷脳組織に向かって集まることを証明し、NSCを脳機能改善のために治療応用する安全な再生医療の研究を進めている。
 この研究では、ゲノム編集技術を用いてiPS細胞に自殺遺伝子を組み込み、「治療用NSC」に誘導後、脳内に移植することにより、脳挫傷モデルマウスの運動機能を改善することができた。さらに、プロドラッグを投与することにより、脳内移植後、未分化な状態で残存したNSC細胞を死滅させることができた。これにより、iPS細胞を用いた再生医療において問題視される移植細胞の腫瘍化リスクを回避できる。
 治療用NSCは、脳内の損傷部位に遊走し、低下した脳機能を改善できる可能性が期待されている。脳挫傷に対する安全な再生医療の実現のため、早期の臨床試験開始を目指して、現在、臨床グレードの治療用NSCの作製準備を行っている。

 この研究成果は、2023年4月8日(日本時間)に英科学誌STEM CELLS(オンライン版)に掲載されている。