慶應義塾大 ゲノム編集技術とiPS細胞を組み合わせた脳挫傷に対する新規治療法開発

 慶應義塾大学医学部脳神経外科学教室の戸田正博教授らの研究グループは、ヒトiPS細胞由来の神経幹細胞(Neural stem cell:NSC)が、損傷脳組織に向かって集まることを証明し、NSCを脳機能改善のために治療応用する安全な再生医療の研究を進めている。
 この研究では、ゲノム編集技術を用いてiPS細胞に自殺遺伝子を組み込み、「治療用NSC」に誘導後、脳内に移植することにより、脳挫傷モデルマウスの運動機能を改善することができた。さらに、プロドラッグを投与することにより、脳内移植後、未分化な状態で残存したNSC細胞を死滅させることができた。これにより、iPS細胞を用いた再生医療において問題視される移植細胞の腫瘍化リスクを回避できる。
 治療用NSCは、脳内の損傷部位に遊走し、低下した脳機能を改善できる可能性が期待されている。脳挫傷に対する安全な再生医療の実現のため、早期の臨床試験開始を目指して、現在、臨床グレードの治療用NSCの作製準備を行っている。

 この研究成果は、2023年4月8日(日本時間)に英科学誌STEM CELLS(オンライン版)に掲載されている。

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