月刊私塾界2018年9月号(通巻449号)

巻頭言

妙な事件が起きた。
 今年6月に新たに導入された日本版「司法取引」の第一号事案である。タイの発電所建設をめぐる贈賄事件で、東京地検特捜部が大手発電機メーカーの元役員ら3人を、外国公務員に賄賂を贈った不正競争防止法違反で在宅起訴した。
 この事件は、内部告発をきっかけに社内調査を進めた結果、会社側が不正を把握。会社自らが東京地検特捜部に申し出て、捜査協力の見返りに、不正競争防止法による会社への刑事訴追を免除された。
 司法取引の本来の趣旨は、企業や組織の犯罪捜査において、社員などを免責する代わりに「巨悪」をあぶり出すことにある。しかし、この事案では反対のことが起きた。企業が自らを守るために、社員を「売った」のである。
 冒頭に妙な事件と記したが、実は衝撃的な案件である。日本型雇用慣行の下では、終身雇用を前提に、会社が社員を守ってきた。総会屋事件、談合事件等々みなそうだ。最後まで面倒をみてくれることを前提に、社員は会社のために法を犯した。しかし、この事件は会社が社員を守らなかったのだ。
 新卒一括採用、終身雇用、年功序列賃金をはじめとする、崩れつつある日本型雇用慣行の終焉を迎える引き金となるかも知れない。
 自塾には関係ない。そんな声が聞こえてきそうだ。しかし、それは違う。日本型雇用慣行の終焉は、女性や障がい者の雇用、同一労働同一賃金など様々な労働法制の導入や雇用環境の変化へと続く。それらはどの学習塾にも多大な影響を及ぼす。

(如己 一)

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