Category: 塾ニュース|地域教育

謝礼「採択に影響なし」 高校教科書 協会、ルール厳格化

文部科学省は9月9日、高校教科書の発行会社が教員らに問題集などを無償提供していた問題で、都道府県教育委員会による調査結果をまとめた。6社が2011~16年、40都道府県の271校に問題集や教員用指導資料など金品を提供していたことを確認。件数は541件で計2千万円相当だった。同省は「採択に不公正な影響を与えたケースはない」とした。同日、教科書会社でつくる教科書協会(東京)は、営業活動などに関するより厳しいルールを定めた「教科書発行者行動規範」を公表した。

大阪府立高再編18年度に 分校復活

大阪府の教育委員会議が9月5日開かれ、入学志願者の減少で定員割れが続く府立高校の再編整備方針が固まった。2018年度から西淀川高は北淀高と統合して新校を開設、能勢高は豊中高の分校とする。府内で分校が復活するのは19年ぶりとなる。大阪市大正区にあり近接する大正、泉尾の両校も統合し、総合学科高校として開校する。府議会の議決などを経て、11月に正式決定する。

 府立学校条例では、3年連続で定員割れすると統廃合など再編の対象になる。西淀川高は今春で募集を停止した。北淀高と統合する新校は、北淀高の校舎を使用。小中学校の学習内容の学び直しに取り組み、生徒の学習意欲を引き出す「エンパワメントスクール」にする。西淀川高の跡地利用の方法は今後検討するという。

神奈川の公立高14校に英語ドリル無償提供 大修館書店

神奈川県教育委員会は8月24日、大修館書店が同社の英語教科書を採用した高校に無償で英語ドリルを提供していた問題で、公立高校14校が計約6200冊を受け取っていたと発表した。文部科学省からの依頼を受け、県教委が確認した。2013~16年度にかけて大修館書店の営業担当者から「ただであげられる教材だ」と持ち掛けられたり、突然学校に送付されたりした。14校のうち12校は生徒に配布。2校は使用しなかった。県内の私立高2校でも同様の教材提供があった。いずれも採択に影響はなかったとしている。

地震の後も熊本の私塾が貫いた、民間教育機関としての使命

4月14日に発生した震度7の前震をはじめとする一連の地震は、熊本一帯に大きな被害をもたらした。それでも現地で私塾に携わる人たちは過酷な状況のなか、子供たちに学ぶ機会を提供し続けている。地震発生から4ヶ月近く経った熊本で、4つの教育現場をレポートする。

お金や理屈より、授業の再開を優先

早稲田スクールの本部校舎は大きな被害は免れたが、地震発生後に解体や大規模修理が必要となった校舎もあった。

早稲田スクールの本部校舎は大きな被害は免れたが、地震発生後に解体や大規模修理が必要となった校舎もあった。

熊本県内屈指の教室数をほこる「早稲田スクール」(熊本市中央区)は、地震によりひとつの校舎が解体、3校で大規模修理が必要となった。解体される校舎は移転先が見つかったものの、3校は授業再開の目途が立たなかった。そこで3校の駐車場に、トレーラーで運んですぐに使用できるユニットハウスを複数設置。5月10日には授業を再開した。

ユニットハウスの外観。手前2棟がトイレ、奥2棟が教室として使用していた。

ユニットハウスの外観。手前2棟がトイレ、奥2棟が教室として使用していた。

実はプレハブを建てたほうが費用的には負担が少ないのだが、あえてユニットハウスを選択した理由を同社の向田敬二社長が語った。「安価なプレハブを建てることも考えましたが、建築の申請や工事に長い時間がかかるんです。そうなると生徒の学習はますます遅れます。保護者も心配されますし、受験生への影響は特に大きい。ですから費用がかさんでも学習環境を早く整えなければいけない。お金や理屈ではなく、そういう思いを社内で共有して授業再開に向けて取り組みました」

仮設教室の内部

仮設教室の内部

向田氏自身も被災し、自宅近くの高校に1週間避難していた。同様に被災していた社員も少なくない。それでも同社は生徒の学習環境を整えることを優先した。向田氏は授業再開後の生徒について「それはもう喜んでいました」と、顔をほころばせた。1学期の終わりには校舎の修理がほぼ完了し、生徒たちは通いなれた校舎で夏期講習に勤しんでいる。

 

学ぶ機会を教材で提供…阿蘇地区の中学校にテキストを寄贈

なるほどゼミナールの山中孝光社長

なるほどゼミナールの山中孝光社長

熊本市東区の「なるほどゼミナール(ナルゼミ)」では、教室の水道が復旧した4月25日から「震災特別講習」を無料で実施した。それから学校が始まるゴールデンウィーク明けまでの2週間、休日を返上して朝9時から夕方6時まで授業を継続。特に小学生が通常より50人も増えたため、卒塾生の大学生や高校生がボランティアとして講師を買って出た。同社社長で講師でもある山中孝光氏は、さらに多くの子供たちに勉強する場所を与えたいと協力を呼びかけ、同様の講習が他塾でも実施された。

阿蘇地区の中学校で寄贈するテキストを生徒に手渡す山中氏

阿蘇地区の中学校で寄贈するテキストを生徒に手渡す山中氏。

しかし、阿蘇地区の子供たちは熊本市内への道路やJRが寸断されており熊本市内の塾に来ることができない状況が続いている。山中氏はここでも「阿蘇地区にいる受験生たちにも力になりたい」と考えたという。そこでナルゼミで使用しているテキスト「高校入試対策 Spurt+(スパートプラス)」を440人分、2200冊を阿蘇地区の4つの中学校に寄贈した。

「勉強の仕方が誰でもわかるようになる」という工夫が凝らされているテキストは、阿蘇地区の中学校の先生からも好評を得た。現在は、多くの住宅が倒壊した益城町の中学校にも同様の支援を行うため、クラウドファンディングで資金を募っている。

無料の授業で笑顔を増やす

〝夏期講習も無料で教えます〟。益城町でも特に被害が大きい惣領地区で、ひときわ目立つ横断幕を掲げる「さくらゼミナールましき校」。小5から中3が対象の学習塾だ。こちらの平屋で鉄筋構造の校舎はほとんど被害を受けなかったが、周囲に住む多くの子どもたちは家を失い、避難所生活を強いられることになった。

さくらゼミナールましき校の石井仁晃校長

さくらゼミナールましき校の石井仁晃校長

そこでさくらゼミナールは、4月25日から5月8日の間、ましき校を13時から17時まで無料で開放した。「生活のための避難所は大人が中心の環境になってしまいます。まずは子どもだけの居場所が必要だと感じ、教室を開放しました。ただ、子供たちは来ても元気がないんです。ですから、まずは勉強というより一人一人の話を聞いてあげることから始めました」ましき校の校長、石井仁晃氏はそう語った。

校舎の前面に「無料」の横断幕を掲げる。

校舎の前面に「無料」の横断幕を掲げる。

さらに、ウェブサイトを通して寄付金を募り、ゴールデンウィーク後に再開した授業や夏季講習も無料で実施することにした。この期間で生徒は100人近く増えたが、資金面での負担が大きく、9月からは無料で続けるわけにはいかないため、今後は被災者を支援する他団体と協力し、新たな方法で生徒のサポートを続けていくという。

生徒たちも地震直後にくらべ「笑顔が戻ってきました。それを見た保護者の笑顔も増えていると感じます」と石井氏は言う。笑顔を増やしたい。それが支援を続ける原動力だ。

私塾と学校が連携、小学校内で塾を開く

熊本県内に528校ある小中学校うち、一時は351校が地震の影響で休校となった。益城町立広安西小学校は避難所となり、約800人の避難者を受け入れた。授業は5月9日に再開したものの、その週は2時間しか授業ができなかった。

そこでPTAが中心となり、放課後に希望者が勉強できる「ガッツ学習塾」を16日から開始。ここで子供たちの宿題や復習をサポートしたのが、熊本県内で明光義塾を運営する「サクセスリンク」(熊本県玉名市)と、家庭教師派遣の熊大アカデミーを展開する「九州教育研修センター」(熊本市中央区)の講師たちだった。

明光義塾 帯山教室の尾方範夫教室長

明光義塾 帯山教室の尾方範夫教室長

明光義塾の帯山教室教室長、尾方範夫氏は「PTA会長が私と知り合いということもあり、すぐに話がまとまりました。熊大アカデミーの講師は熊大の教育学部生が多く、授業ではレクリエーションなども取り入れました。大人が協力して子供の学習をサポートしました」と語った。

益城町立広安西小学校の井手文雄校長

益城町立広安西小学校の井手文雄校長

同校の井手文雄校長は、私塾の取り組みについて「学校と学習塾は、立場は違っても気持ちは変わりません。勉強はもちろん、子供たちを見守るという点でも、子供と保護者に安心感を持ってもらったと思います」と述べた。

熊本の私塾に携わる人たちは、震災直後から子供たちに勉強を教えるという務めを全うした。その役割をそれぞれの立ち位置から貫くことで被災者に安心感を与えた。熊本の私塾をはじめとした教育関係者に敬意を表したい。

ガッツ学習塾の授業の様子。5月16日から7月22日まで実施した。

ガッツ学習塾の授業の様子。5月16日から7月22日まで実施した。

自由研究、科学への誘い 催し続々

東京都内の博物館や大学などが夏休みの自由研究に役立ててもらおうと、子ども向けの体験イベントに工夫を凝らしている。たばこと塩の博物館(東京・墨田)は塩の特性を生かした実験を披露。工学院大学は今週末、大規模な科学教室を開く。独バイエルの日本法人、バイエルホールディング(同・千代田)は丸ビル(同)1階で科学イベントを開く。内閣府などは27日から2日間、東京大の本郷キャンパス(同・文京)で「第1回 防災推進国民大会」を開く。

教員ら494人に歳暮 大日本図書と教育芸術社、謝礼問題で再調査

検定中の教科書を教員らに見せ、謝礼を渡していた問題で、大日本図書と教育芸術社(いずれも東京)が2015年までの4年間、教員や自治体の教育長ら延べ494人に歳暮を贈っていたことが8月23日、分かった。両社が同日、社内の再調査結果を文部科学省に報告した。大日本図書は12~14年、教員延べ180人に菓子や茶など2000円程度の歳暮を贈った。教育芸術社は12~15年の4年間、リンゴやサケ、ジャム(2244~5600円)を同314人に贈っていた。同社分には教科書を採択する市町村教委の教育長同26人が含まれていた。

島根県教育委員会 県外現職教員の採用に注力

島根県教育委員会が、他都道府県で教員として働いている「現職」のリクルートに力を入れている。退職者が多い小中学校を中心に、教員確保を目指して採用試験の年齢制限をなくしたり特例を設けたり。来年度採用予定者向けの選考試験への出願は昨年より10人以上多い65人に上った。UIターンを希望する県外現職教員の採用について、県教委は教員確保が難しい隠岐や石見に限っていた対象地域を昨年度の試験から全県に広げた。この試験を通って今年度採用した230人の16%に当たる36人が県外現職組だ。

新人教員「過労死ライン」超え 部活指導が負担 愛教労調査

愛知県教職員労働組合協議会(愛教労)は8月22日、今年4月に新たに着任した名古屋市立中学校の新任教諭の「残業時間」が、月平均で100時間に迫る、と調査結果を発表した。国が定める「過労死ライン」(月平均80時間)を超えていた。主な要因には、部活動の対応などがあるという。市立中の教諭はパソコンで出退勤時間を記録しており、市教委が行った初任者研修会の対象者65人全員分のデータを愛教労が分析した。勤務時間(午前8時15分~午後4時45分)以外の在校時間を「残業」と見なした。

福井県 職員採用試験に今年度からU・Iターン枠を採用

今年度の福井県職員採用Ⅰ種試験で、県外の民間企業などで働いた経験のある人を対象に採用する行政職「移住・定住促進枠」が新たに設けられる。U・Iターンを促し、県外で培った発想力やノウハウを県の政策の企画立案などに生かしてもらう狙いがある。1957年4月2日以降に生まれ、7月31日時点で県外に在住している人が対象。さらに2006年4月1日~16年7月31日に、県外に本社を置く企業などでの通算7年以上の職務経験を受験資格としている。採用予定人数は5人。

自治体が奨学金を肩代わり 条件は住んで働くこと

地域での就労を条件に奨学金の返済を肩代わりする自治体が10県程度で導入している。地方では東京などへの若者の流出に歯止めがかからず、労働力不足が深刻化している。奨学金返済の負担を軽減することで地域への転入を促し、労働力の確保につなげる。2014年度に奨学金を利用している大学生・短大生は103万8000人で、全学生数に占める割合は38.7%。授業料や入学料が高止まりしており、奨学金の利用者が増えているとされる。返済に苦しむ人も多く、3カ月以上延滞している人は約17万人にのぼる。