Archive for: 12月 2019

月刊私塾界2019年12月号(通巻464号)

巻頭言

 PIAACをご存じだろうか。国際成人力調査(Programme for the International Assessment of Adult Competencies)の略称だ。PISAの成人版である。

 OECD加盟国等24カ国・地域(日、米、英、仏、独、韓、豪、加、フィンランド等 )が参加し、16歳~65歳までの男女個人約15万7000人を対象として、「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力」の3分野の調査だ。2011年から12年にかけて実施された結果等が文部科学省のウェブサイトに掲載されている。

 日本人の現役世代の27・7%は「日本語の読解力の習熟度がレベル2以下」の状況にあり、例えば「図書館の図書目録を指示通りに検索し、指定された書名の著者を検索できない」可能性が高い。数的思考力でも36・3%がやはり「習熟度レベル2以下」で、例えば「立体図を見ながら、その立体を分解すればどんな平面図になるか想像できない」恐れが強い。

 国立情報学研究所教授新井紀子著「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」でも同様の内容が指摘されている。「(この簡単な問題を)中学生の3人に1人以上が、高校生の10人に3人近くが正解できなかったと理解すべきだ」と主張する。参考までに、「この問題に解答した745人の高校生が通っているのは進学率ほぼ100%の進学校」だという。 この745人は恐らくほぼ全員が学習塾に通ったはずだ。学校教育に問題があることは間違いないが、学習塾業界にも大きな責任がある。真摯に受け止めよう。

(如己 一)

目次

8 CatchUp01 株式会社CRERIA

  故郷 南相馬の教育水準を引き上げる

10 CatchUp02 学校法人磯島学園

  ICTを活用しながら地元の学力向上に貢献する

16 挑む私学 金蘭千里中学校・高等学校

  変えることと、変えないこと。

  確かな洞察力で、進化し続ける

19 目次・巻頭言

20 NEWS ARCHIVES

46 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~

48 【特集①】[緊急特集]塾とAI

54 【特集②】株式公開企業塾2020年2・3月期

        第2四半期決算を読む

64 HOT TOPICS①  若手経営者が描く令和の塾

66 HOT TOPICS② ミネルバ大学の学生と世界の教育を比較する 電通Bチームがトークイベントを開催

76 教育サービス業界 企業研究(84) 株式会社ハック

79 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿(311)

80 疾風の如く(125)

  すたらぼ(京都府)

  代表 上坊 信貴 さん

82 好機到来(56)

  進学塾フォルテ

  文系担当 上村 清人さん、理系担当 佐々木 高雅さん

84 新米塾長のための「学習塾経営基礎講座」(79)

86 白書界隈徘徊話(57) 西村克之

88 自ら動き出すチームにする方法(63) 中谷彰宏

90 塾の家計簿(31)

92 新米塾長のための「部下とサシで行きたいごはん屋さん」(76)

93 芸術見聞録(77)

94 ぼくの幼児教育考(18)

95 塾長の机

96 為田裕行の「教育ICT行」(57)

97 1981(9)

98 Communication Risk Management(最終回)

99 Opinion from School(6)

100 林明夫の「歩きながら考える」(172)

102 塾ソムリエの講師研修指南 西村則康(名門指導会代表 塾ソムリエ)(27)

104 私塾界インサイト(21)

108 咲かせよ桜(58) 小林哲夫

112 未之知也(いまだこれ知らざるなり)(79)

114 論点2019(12) 「JAPAN e-Portfolio」とは

118 編集後記

120 Book Review

122 塾長のためのガジェット講座

スーパー算数が復活する 12月8日に選抜試験を実施

 11月16日、花まる学習会お茶の水教室で、「スーパー算数」の開講説明会が開かれた。

 花まる学習会は、受験のその先を目指す学びを提供している。そのひとつがこの「スーパー算数」だ。

 以前にも、花まる学習会グループのスクールFCに「スーパー算数」は存在した。場合の数や図形などの思考力系に特化した授業を行っていたが、中学受験生の受講が多かったために、それを意識した指導の必要性から、受験コースの講座に統合された。

 しかし、今回の「スーパー算数」では、思考の時間を生徒にたっぷり与える。問題も、ひとつをクリアしても、また高い壁が出てくるような問題を扱う。自分と向き合い、それを突破したときにこそ、算数の醍醐味、喜び、達成感を知ってもらうためだ。

 これは、これからの答えがない社会を生き抜くために必要なものでもある。受験の知識の有無、受験するしないに関わらず、考えることを楽しんでもらう授業になっている。

 講座を担当するのは、高濱正伸氏(花まるグループ代表)、川島慶氏(花まるラボ代表)、井本陽久氏(いもいも主宰/栄光学園講師)、松島伸浩氏(スクールFC代表)の4人。

 高濱氏の授業では、「筋の良い難問」に取り組む。筋の良い問題は、解答に必要な良い必要条件を備える。試行錯誤して必要条件を見つけることと、その検証を何度も繰り返して学ぶ問題を扱う。

 川島氏は、主に整数を扱う。算数オリンピックに問題を提供する川島氏は、さらに学びたい意欲を大切にする。問題を解いて知識を得ることで、また新たな発見があるオリジナル問題を用意する。

説明会で配布された問題の一つ。川島氏が作成したこの問題は、2019年の算数オリンピック最終問題でもある

 井本氏は、幾何を中心に授業を行う。学びの楽しさは、問題に取り組むプロセスの中で、自分の考え方でわかったと思うこと。「たくさん失敗すること」と「自分の考え方で考えること」を大切にする。

 松島氏は、代数を扱う。生徒には色々な方法で試行錯誤してもらい、数のおもしろさ、特性を含めて自分で発見していく授業を行う予定だ。結果的に、その先にある高校や大学受験にも繋がる算数や数学のおもしろさを伝えていく。

「私たちも非常に楽しみにしています。正解・不正解のその先にある『考えることってめちゃくちゃ楽しい!』、という経験を存分にしてほしいと思っています」と、説明会で松島氏は語った。

 12月8日に選抜試験を実施。申し込みはホームページからできる。

 初回授業は2月7日。隔週の金曜日に授業は行われる予定だ。