2012年開学の沖縄科学技術大学院大学(OIST、沖縄県恩納村)は科学技術分野での国際的な知の拠点を目指し、国家プロジェクトとして設立された。学生の半数超は外国人留学生。教授陣もグローバルな大学で成果を上げた研究者が集う。学生は現在、30以上の国と地域から集まる。5年一貫制の博士課程で公用語は英語。入学希望者は委員会で審査し、高い研究レベルが要求される。スケジュールは海外の多くの大学に合わせる。16年9月には35人が新たに入学し、開学から5年を迎える17年には本格的に卒業生が世に出る。
子供たちに世界で使える英語を身に着けてもらうためにはどうすればいいのか? 今、議論されている教育改革、学校、塾などの新たな動きを中心に、英語教育の現状を見てみたい。
英語教育が大きく変わろうとしている。現在、高校教育、大学教育、大学入試改革の3つは一体となった改革が議論されており、センター試験に変わる新たな試験も作られようとしている。その中で、特に大きな変化が起こるのが英語だ。新たな試験では、4技能(「聞く」「話す」「読む」「書く」)を総合的に評価する問題が出題(例えば記述式問題など)されることになっている。その試験についてのウェブサイトも開設された。
この背景について、文部科学省は「グローバル化の進展の中で、言語や文化が異なる人々と主体的に協働していくため、国際共通語である英語の能力の向上と、我が国の伝統文化に関する深い理解、異文化への理解や躊躇せず交流する態度などが必要である」と述べている。(※1)つまり、将来、子供達が社会に出たときに必要な能力を養成しようと、国は英語教育をはじめ、教育改革を進めているのだ。
そして、大学入試が変わるということは、その下にある高校、中学、そして、小学校教育が連動して変わっていく。例えば小学校では、これまで「外国語活動」は小5からだったが、2020年度の教育指導要領改訂によって小3で必修化し、小5・6では成績がつく教科に変わることになっている。つまり、現在年中(11年度生まれ)の子供が小3になるときに「必修化」、現在小1(09年度生まれ)の子供が小5になるときに「教科化」される。そのときになって慌てないためにも、これからの英語教育について少し考えてみよう。
実は、国よりも先に私立学校や学習塾などでは、多様に英語を学ぶ機会や制度を整え始めている。
例えば私立中学校の中には、「英語入試」を導入する学校が増えてきた。また英検などの英語外部検定試験のスコアを入試に加点する学校も多くなってきている。
その英検は、2016年度からスピーキングテストを導入するなど、こちらも4技能テストへと舵を切った。また、TOEFL、GTECなどの中には、中高生向けの4技能試験を提供するなど、英語外部検定試験も多様化している。
大学では、この外部検定試験を入試に活用する動きもあり、その動向を知ることは最新の英語教育を見る上で参考になるだろう。
中国地方を中心に鷗州塾が展開するAIC Kidsは、幼児・小学生を対象に、日本語を一切話さない環境で英語を指導している。その授業は、特に「読む」「聞く」力を重点的に伸ばし、英語の思考回路を作るように設計されている。最初にこの英語を英語で考える思考回路を作ることが、使える英語を習得する重要なポイントなのだそうだ。
AIC Kidsに通う子供たちは、数ヶ月すると英語で書かれた絵本をひとりで読むようになるとも。さらに、単語などは英検に出てくるものを扱うため自然に英検にも対応できるようになっている。
実はこのAIC Kidsは、鷗州塾が設立したニュージーランドのAuckland International Collegeが母体となっている。同校では、様々な国の学生たちが学んでいるが、特に日本人が外国で学ぶために身につける英語の学習メソッドは、他にはない特色を持っている。そのメソッドをもとに幼児・小学生が学びやすく設計されたものがAIC Kidsのカリキュラムに反映されているため、信頼度は高い。このように、国に先駆けて新たな英語教育は提供され始めているのだ。
これまでの塾には、文法や問題を解くためのテクニックなど、コミュニケーションをするためには全く役に立たないことを教える、こんなイメージがあったかもしれない。しかし、AIC Kidsなどのようにそのイメージを覆す塾が増えてきている。
今の子供たちの中には、学校に入学する時期によっては、新しく変わる教育制度で学習する子とそうではない子に分かれてしまうのも事実だ。また、特に小学校では、教える学校の先生の力量も懸念材料となっている。そういった意味でも、新たな塾の動きは注目するべきだろう。
英語が使えない人は、聞いたり読んだりした英語を頭の中で一度日本語に変換して、理解しようとしてしまう。そうならないようにするためには、英語を聞いて、読んで、英語で理解するための環境が必要だ。
その上で海外留学という選択肢もある。文部科学省は『トビタテ!留学JAPAN』という官民協働海外留学創出プロジェクトを立ち上げ、高校生や大学生の海外留学を促進している。しかし、折角の異文化理解、交流の機会なのに、英語を学びに行くだけではもったいない。日本の中できちんと英語を学んだ上で留学することによって、留学の意義も深まるだろう。そのためにも幼児期からの英語学習は大きな意味を持つ。英語を身につけるスピードは、圧倒的に小学生から始めた方が速いとも聞く。
英語教育は今、ターニングポイントを迎えている。子供たちにとっていい未来を歩んでもらうためにも、英語教育を今一度考えてみてはいかがだろうか?
※1「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(答申)」(中央教育審議会 2016年12月22日)より抜粋
定例200会記念大会
本物のアクティブラーニングとは何か
会場:中央大学駿河台記念会館 研修室
参加費:会員1,000円/後援団体2,000円/一般3,000円
定員:120名
■講師
京都大学 高等教育開発研究センター
溝上 慎一 教授
日本におけるアクティブ・ラーニングの第一人者と言われる溝上慎一教授を迎え、いま学校現場で行われているアクティブラーニング型授業の多くは危うい面があると警告しています。真のアクティブラーニングとは何か。理想の姿と現実はどこがどう違うのか。今回はアクティブ・ラーニングの初歩から学ぶ研究会を開催する。
アクティブラーニングに関する(超)基礎的なQ&A〈一問一答形式〉
ここがアクティブラーニング型授業のポイント〈桐蔭学園における実践例〉
総括講演「アクティブラーニングが教育を、そして社会を変える」(仮題)
お問い合わせ:TEL.090-6256-0378、Email ZWT01362@nifty.ne.jp(進路指導研究会 平林)
全国最初で唯一の
「私塾の歴史資料館」
開館記念式典・報告会・懇親会・資料館見学会
会場:調布市市民プラザ「あくろす」3F ホール
2016年3月16日に開設した「私塾の歴史資料館」は、資料・蔵書約1万点、アルバムや写真を約5万枚、私塾界をはじめとする学習塾業界誌を創刊号より全館収蔵している。また、昭和36年にできた初の業界団体「全国私塾連盟」の広報誌、記念誌、統一テスト等の資料、私塾ネット、埼玉県私塾協同組合(SSK)、公益社団法人全国学習塾協会などの各団体の記念誌や名簿が展示され閲覧できるようになっている。
お問い合わせ:TEL.042-482-1481(調布学園)
夏休みも終盤にさしかかった8月20日、東京・品川のNTTコムウェア次世代ネットワークラボで、小学生40人(1日2回開催で、1回あたり20人)を集めた「サイエンス×littleBitsで学ぶ宇宙 〜キッズ宇宙開発局〜 」が、株式会社全教研(福岡市中央区、中垣一明社長)の主催で開かれた。このイベントは、約2時間におよぶ体験型のカリキュラムで、宇宙をテーマに次世代型の学びが得られるというもの。参加した子供たちは、全教研の科学実験教室「サイエンスFiVE」の光の実験をベースに、モジュールキットを磁石でつなぐことによって電子回路について学習できる「littleBits(リトルビッツ)」を使用しながら、自分だけの火星探査機作りにチャレンジした。
火星探査機を作るためには、いくつもあるlittleBitsのモジュールキットを正しく組み合わせなければならないが、子供たちはモデル機などを参考にしながら真剣に組み立てていた。
モジュールが出来上がれば、今度はそれを乗せて走る車体が必要となる。はじめは遠巻きに眺めていた保護者も徐々に参加。それぞれの親子は用意された段ボールや空き箱を使いながら、4輪車、3輪車など、思い思いの探査機作りに取り組んでいた。
特に車輪をいかに取り付けるかが難しく、各親子は空き箱を切っては車輪を差し込み、切っては差し込みを繰り返し、試行錯誤しながら作っていた。そしてイベントが終了に近づくにつれ、続々と火星探査機が出来上がり、それぞれ楽しそうに動かしていた。
イベントは探査機を作って終わりではなくレポートも作成。そのため、夏休みの自由研究としても活用できる。子供たちは探査機作りで工夫したところなどを、真剣にレポート用紙に書いていた。最後は修了の証として賞状が渡され、子供全員で記念撮影。夢中になって探査機を作った親子は、探査機作りを通した新たな学習の機会に触れ、イベント終了後には、とても満足そうに笑みを浮かべながら親子で会話を楽しみながら会場をあとにしていた。
全教研は、今後も様々な企業とのコラボレーションにより科学実験講座「サイエンスFiVE」に「先端の学び」を取り入れた講座を子どもたちに提供し、科学教育の普及を図る。10月下旬には、株式会社NTTコムウェアとのコラボレーションによるプログラミング講座の開催も予定している。