神奈川大学、文科省「AI for Science」で3件採択 採択率8.1% 光と物質の相互作用を起点にAI活用研究を推進

 神奈川大学は、文部科学省が実施する令和8年度「AI for Scienceによる科学研究革新プログラム AI for Science萌芽的挑戦研究創出事業(SPReAD)」第1回公募において、同大学から3件の研究プロジェクトが採択されたと発表した。

 同公募は、AIの活用により科学研究の高度化・加速化を図り、AI for Scienceの波及と振興を促進することを目的とした事業。第1回公募では、応募総数1万5868件に対し採択は456件で、採択率は2.9%だった。

 神奈川大学は、研究推進部を中心に事務職員とURAによる応募支援体制を整え、37件の研究提案を行った。そのうち3件が採択され、採択率は8.1%となった。全体平均を大きく上回る結果で、同大学は、応募件数30件以上の首都圏の国公私立大学の中でも高い水準だったとしている。

 今回採択された3課題はいずれも、「光と物質の相互作用」を起点とするAI for Science研究である。5フェムト秒光で誘起される量子コヒーレント反応の解明、量子相関光と分子の相互作用の原理探索、光学力と発熱を制御する誘電体ナノ構造の設計など、異なる分野でAIを活用しながら、複雑な自然現象の理解と制御に挑む。

 採択課題の一つは、化学生命学部の岩倉いずみ教授による「量子コヒーレント反応座標の解明:5fs光実験とAI解析で拓く量子非平衡化学」。量子コヒーレント反応とAIを組み合わせ、未知の反応座標を数式化する「逆問題の探索」に取り組む。

 2件目は、化学生命学部の橋本征奈特別助教による「少数高信頼データとAIによる量子相関光―分子相互作用の支配原理探索」。少数データから支配原理を導く「Human-in-the-loop」の考え方を取り入れ、量子相関光と分子の相互作用の解明を目指す。

 3件目は、理学部の東海林竜也教授による「AIサロゲートを用いた強光学力と低発熱を両立する誘電体ナノ構造の逆設計」。物理現象を模倣するAIを活用し、ナノ構造の超高速逆設計に挑戦する。

 同大学は、今回の採択について、研究者個々の独創的な構想に加え、AI for Scienceに関する研究提案を組織的に後押ししてきた成果だと位置付ける。公募情報の共有、応募内容の相談、研究計画調書の確認などを通じて、研究者の挑戦を支援してきた。

 神奈川大学は、2028年に創立100周年を迎える。今回の採択を契機に、研究提案力の強化、外部資金獲得支援、分野横断的な研究連携をさらに進める方針だ。AI for Scienceの実践を通じて、科学研究の発展と社会課題の解決に貢献し、大学全体の研究力向上を図る。

 佐藤裕美副学長は、採択率3%弱という狭き門の中で3人の研究者が採択されたことを評価し、日頃の研究の積み重ねが実った結果だとコメントした。今後も、より多くの研究者の研究が進むよう支援を続けるとしている。

 AIを活用した科学研究は、複雑な現象の解析や新材料設計、実験データの高度活用など、幅広い分野で重要性を増している。神奈川大学の採択は、AI for Scienceを大学の研究力強化に結び付ける取り組みとして注目されそうだ。

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