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約700種1400点以上の3Dデジタル標本 オンラインで公開

 九州大学は1400点以上の3Dモデル生物標本をオンラインで公開したと発表した。鹿野(かの)雄一特任准教授が開発した「バイオフォトグラメトリ」により、生鮮時のカラフルな状態での生物標本を3Dモデル化している。公開された3DモデルのほとんどはCC BY 4.0ライセンスの下、誰でも自由にダウンロード・利用できる。

 水生生物を中心に1400点700種以上の生物標本の3Dモデルをオンライン公開している。
 生物標本の多くは、博物館や研究室で保管されている。しかし、管理は煩雑で、くわえて標本の劣化や退色が免れない。また、多くの重要標本は厳重に管理されており、それが故にアクセスが困難で、結局あまり利用されないといったジレンマも抱えていた。
 九州大学持続可能な社会のための決断科学センターの鹿野雄一特任准教授は世界に先駆けて、独自かつシンプルなフォトグラメトリの手法、「バイオフォトグラメトリ」を開発。糸でつるして500枚以上写し、標本が乾いて傷まないよう、撮影にかける時間は2分ほどだ。
 今回公開されたような生物3Dモデルは生物学のみならず、様々な分野に応用できると考えられ、例えば生物図鑑は現在2次元画像は、将来的に、3Dモデルによるデジタル図鑑へと変容していくと考えられる。また、生物多様性・環境教育などに関するメタバースやバーチャルリアリティにもこれら3Dモデルが利用できるとしている。

公開ページはこちら
https://sketchfab.com/ffishAsia-and-floraZia/models

NASA 「アポロ計画」から半世紀ぶり月面再着陸へ

 米航空宇宙局(NASA)は8月19日、宇宙飛行士の月面着陸を目指す国際月探査「アルテミス計画」の着陸候補地13カ所を発表した。氷が存在するとされる月の南極付近で、常に日陰になっているところと発電に有利な日向の両方に近い場所などが選ばれた。2025年の宇宙飛行士の月面着陸を目指しており、有人の月面着陸は1972年のアポロ計画以来だ。

中国大型ロケット「長征5B」 無制御で大気圏に再突入 残骸が地上に到達

 中国の大型ロケット「長征5B」のコアステージ(大型ブースター)が7月31日の未明(日本時間)、インド洋上空で大気圏に再突入した。長征5Bは7月24日に打ち上げられ、人工衛星のモジュール「問天」打上げの役目を終えた後、残骸がそのまま放棄されていた。中国が同ロケットを放置状態で落としたのは、この2年で3度目となる。懸念されていた地上への被害はなかった。

日本学術会議 軍事・民生両用の科学技術研究を容認

 日本学術会議(梶田隆章会長)は小林科学技術相にあてた7月25日付の書面で、軍事と民生双方で活用できる「デュアルユース(両用)」の先端科学技術研究について、軍事に無関係な研究と「単純に二分することはもはや困難」とし、事実上容認する見解を示した。日本学術会議は国内の科学者の代表機関であり、軍事目的の研究に一貫して反対する立場だが、安全保障に絡む研究の推進が重要視される中、踏み込んだ考え方を示した。
 見解では、「科学技術を(軍事への)潜在的な転用可能性をもって 峻別し、その扱いを一律に判断することは現実的ではない」と指摘。科学技術の急激な進歩により、軍事と民生の区別をつけるのが難しくなっている。
 日本学術会議はこれまで、科学者が戦争に関与した反省などから、1950年と67年にそれぞれ「軍事目的の科学研究を行わない」などと表明。2017年にも防衛装備庁の研究制度に懸念を示す声明を発表していた。

第7波で感染急拡大 ワクチン4回目接種の対象を医療従事者などに拡大

 厚生労働省は、感染の急拡大を受けて専門家でつくる分科会を開き、新型コロナウイルスワクチンの4回目の接種について、厚生労働省は、現在、60歳以上などに限定している対象者を、7月22日から医療従事者や介護4回目接種の対象者を医療従事者や高齢者施設や障害者施設などの職員まで拡大する方針を示した。
 現在は60歳以上の人と、18歳以上の基礎疾患のある人か医師が「重症化リスクが高い」と判断した人に限定されている。
 また、オミクロン株に対して高い効果が出るよう改良されたワクチンが、今秋にも実用化される可能性があるとして、厚生労働省は重症化リスクのある高齢者などで、従来のワクチンを2回以上接種した人は、接種できるよう準備を始める方針も示した。

宇宙飛行士の若田光一氏 宇宙飛行の前の最後の記者会見で意気込み

 今秋から5回目の宇宙飛行に臨む宇宙飛行士の若田光一さん(58)が7月21日、東京都内で記者会見し、「若い世代が月・火星探査へと夢をつなげてくれるようなミッションにしたい」と意気込みを語った。飛行前としては国内での最後となる記者会見となる。
 日本人宇宙飛行士の若田さんの今回の宇宙飛行は、日本人最多の5回目で、日本人最高齢となる。米スペースX社の民間宇宙船「クルードラゴン5号機」で国際宇宙ステーション(ISS)に向かい、約半年間滞在する予定。アメリカ航空宇宙局(NASA)は打ち上げ時期をことし9月と公表している。
 飛行する時には59歳となり、日本人最高齢での宇宙飛行になることについて「日々、運動しているので体力に問題はありませんが、最高齢の記録はほかの方にぜひ破ってもらいたい」と語った。
 ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続く中、クルードラゴンには若田さんのほか、米露の飛行士が搭乗することが決まっており、若田さんは「さまざまな国のクルーと仕事をするのはこれまでと同じ。国際協力の重要性を多くの人に感じてもらえる機会。ISSではチームワークを維持してきちんと成果を出していきたい」と強調した。

国立科学博物館 海棲哺乳類情報データベースにストランディングマップの機能を拡充

 独立行政法人国立科学博物館(篠田謙一 館長)は、国内で発生した鯨やイルカなど海棲哺乳類のストランディング(海岸に打ち上がってしまう現象)事例を検索して地図上に示し、視覚的に比較・考察できるコンテンツ「海棲哺乳類ストランディングマップ」を公開した。 この検索マップ(https://www.kahaku.go.jp/research/db/zoology/marmam/map/)では、海棲哺乳類の和名や発見年月、発見地名などを検索すると、該当するストランディングが起きた地点が地図上にポイント表示される。また、表示されたポイントをクリックすると、吹き出しでそれぞれストランディングが起きた状況、地名、日にち、緯度・経度などの情報が表示され、いつ、どこで、どの種にどのようなことが起こっているのか、傾向などを地図上で確認することができる。さらに、個々のストランディング事例の対象個体について、研究機関が調査をしているのか、標本などは残されているかなどの関連データも、連動する既存の海棲哺乳類ストランディング情報データベース(https://www.kahaku.go.jp/research/db/zoology/marmam/drift/)から確認することができる。
 幼稚園児から高校生の自由研究、大学や企業、自治体などでの生物多様性研究や保全活動へと、活用の可能性が広がる。

▼「海棲哺乳類ストランディングマップ」の入り口は、「海棲哺乳類ストランディング情報データベース(https://www.kahaku.go.jp/research/db/zoology/marmam/index.php )」の画面右側にあります。

NASAの23年度予算 バイデン政権が過去最大を要求 有人火星探査に本腰

 バイデン米政権は3月28日、議会に2023会計年度(22年10月~23年9月)の予算教書を提出した。航空宇宙局(NASA)によると、NASAの予算として過去最大の260億ドル(約3・2兆円)を要求した。

 NASAは、2025年に初の女性や非白人飛行士の月面着陸を目指すアルテミス計画や、2040年までに人類が火星を歩く、有人火星探査計画があり、これらに多くの予算が使われる。

 アルテミス計画をベースとする深宇宙探査に76億ドル、月へ向かう新型有人宇宙船「オリオン」や打ち上げロケットの開発に47億ドル、月面着陸船を開発する企業の募集に15億ドルが計上された。

 また、2030年に運用を終了する国際宇宙ステーション(ISS)の後継開発を、民間企業と連携して進めるための予算も盛り込まれている。

欧州宇宙機関 ロシアと決裂で火星探査機の2022年打ち上げは困難

 欧州宇宙機関(ESA)は、ロシアの国営宇宙開発企業となるRoscosmos(ロスコスモス)と共同で、火星探査計画「ExoMars」で探査機を2022年後半に打ち上げ、2023年に着陸させる目指していた。しかし、ウクライナ情勢の悪化により、加盟国によるロシアへの制裁が実施され、2022年の打ち上げは予定通りに進む可能性は「ほぼなくなった」と、現地時間2月28日に発表した。

 ESAによると、この計画はESAとロシアの宇宙機関Roscosmosが共同で進めており、当初のスケジュールでは、もともと2020年に予定されていたが、技術的なトラブルやパンデミックに関連する問題で、2022年9月に延期し、カザフスタンからロシア製ロケット「Proton-M」を使って探査機を打ち上げることになっていた。ロシアへの対応をめぐる加盟国との協議を受け、加盟国はロシアに対する制裁を完全に履行する予定だ。
 また、ロシアによる侵攻で、NASAとロシアの関係や国際宇宙ステーション(ISS)の運用にも緊張感が生じている。

光学活性化合物の新しい合成法を開発
高知高専5年生の論文が『Chemistry – A European Journal』誌のHot Paper及び表紙に選出

 高知工業高等専門学校(以下「高知高専」)ソーシャルデザイン工学科新素材・生命コース5年の野並玲奈(のなみ れいな)さんと白井智彦講師らの研究グループは、イリジウム触媒を用いて医・農薬の開発に有用な光学活性キラル分子の新しい合成方法を確立した。同研究成果は、2022年1月28日(金)公開のChemistry – A European Journal誌(欧州化学会誌)に掲載され、同誌のHot Paper(同誌の編集者が特にその重要性を認めた論文)及びFront Cover(表紙)に選出された。

 同研究により、アルデヒドと呼ばれる一般的な分子を新しい手法で医・農薬開発に役立つ分子へと変えることに成功。独自に設計・合成した触媒を使う事で、分子の構造を精密に制御することにも成功した。これにより、廃棄物が少ない新しい合成プロセスとして期待される。

 化合物の適用範囲が限定されるなどの課題はあるが、技術を発展させることで、医・農薬候補化合物の自在合成に繋がることが期待される。

 本研究は、高知工業高等専門学校 ソーシャルデザイン工学科 新素材・生命コース5年の野並玲奈(のなみ れいな)さんを中心として実施されたもの。野並さんは、低学年時から英語プレゼンコンテストへの参加やTGK(Techno Girls of Kochi Kosen;女子学生支援の基盤となる組織)の代表学生として様々なイベントを企画するなど学内外を問わず精力的に活動してきた。4年時に配属された研究室でも積極性と粘り強さを発揮して研究に取り組み、本科生で欧州の学術誌に筆頭著者として論文を発表し、注目すべき論文・表紙に採択される快挙を成し遂げた。卒業後は専攻科への進学が決定しており、更なる研究の発展が期待される。

【発表論文の情報】
論文名:Cationic Iridium-Catalyzed Asymmetric Decarbonylative Aryl Addition of Aromatic Aldehydes to Bicyclic Alkenes (カチオン性イリジウム触媒を用いるビシクロアルケンへの芳香族アルデヒドの脱カルボニル型不斉アリール付加反応)
著者名:Reina Nonami1, Yusei Morimoto1, Kazuya Kanemoto2, Yasunori Yamamoto3, Tomohiko Shirai1 (1高知工業高等専門学校ソーシャルデザイン工学科(新素材・生命コース)、2中央大学理工学部、3北海道大学大学院工学研究院)
雑誌名:Chemistry – A European Journal
公表日(オンライン公開日):2022年1月28日【論文】、2022年2月9日【表紙】、2022年2月10日【Cover Profile】
論文URL: https://doi.org/10.1002/chem.202104347
表紙URL: https://doi.org/10.1002/chem.202200316
Cover Profile URL:https://doi.org/10.1002/chem.202200317

白井研究室ホームページ URL: https://shirai-t.wixsite.com/website

■高知工業高等専門学校について
 高知高専はこれからの社会の変化と時代のニーズに対応できる人材を育成する1学科制の高等専門学校。1・2年次では、教養科目・専門基礎科目・実験実習で基本力を身につけ、3年次からは専門分野5コースのいずれかに進み、コアな専門分野と多面的な知識を融合、幅広い学識・技術が活かせるハイブリッド型の人材を育成している。

【学校概要】
会社名:独立行政法人国立高等専門学校機構 高知工業高等専門学校
所在地:高知県南国市物部乙200-1
代表者:井瀬 潔
設立:1963年
URL:https://www.kochi-ct.ac.jp/
事業内容:高等専門学校・高等教育機関