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恐竜を絶滅させた小惑星が落ちた季節は”春”

 約6600万年前に恐竜を絶滅させた小惑星が地球に衝突したのは、北半球が春の時期に起きたとする研究結果を、オランダなどの欧州の研究チームが2月24日付の英科学誌ネイチャーに発表した。

 小惑星は直径約10キロで、メキシコのユカタン半島に衝突した。衝撃でチクシュルーブ・クレーターができた。白亜紀の最後に衝突したが、季節がいつかを絞り込むのは難しかった。

 研究チームは、米国ノースダコタ州の「タニス」と呼ばれる場所で、小惑星が落ちた白亜紀末と古第三紀を分ける「K/Pg境界」と呼ばれる地層から、衝突で広範囲に散らばった岩石によって生き埋めになったとみられるチョウザメの骨の化石などを調べた。
 チョウザメは季節によって骨の成長速度が違い、木材の年輪のような成長パターンが骨にできる。保存状態がよい魚6匹について、化石を薄く切って顕微鏡などで骨を調べたところ、魚が死んで骨の成長が停止した痕跡により、時期が春だったことがわかった。

 春は生物の成長や繁殖に重要な時期で、北半球の大型恐竜は多くの卵や子どもが小惑星の影響で失われ、絶滅につながった可能性がある。南半球にも恐竜はいたが、小惑星の衝突で大量のちりが空中を漂い、地球全体の気温が低下して冬のような状態が続き、絶滅したと考えられる。恐竜や翼竜、アンモナイトなど当時の生物の76%が絶滅したと考えられている。

 論文は科学誌のサイトに掲載(https://www.nature.com/articles/s41586-022-04446-1)された。

収蔵庫から新種の巻貝化石を発見 国立科学博物館

 千葉県銚子市に分布する銚子層群※1(中生代前期白亜紀の浅海成堆積物)から採集され、千葉県立中央博物館に寄贈された岩石を詳しく調査したところ、これまで銚子層群から報告されていなかった微小な巻貝を12種類発見し、そのうちの6種が新種として記載された。銚子層群の巻貝化石としては、42年ぶりに新種が加わったこととなる。

 今回の研究の特色として、博物館に寄贈され、収蔵庫に保管されていた岩石から新種が発見されたこと。寄贈を受けた資料は、公的機関において収蔵する価値が高いと判断されたものだが、その資料から新しい発見が得られることは、博物館等の研究施設における自然誌研究や保管機能の重要性を改めて示すもの。
 この研究成果は、2022年1月1日発行の日本古生物学会の国際学術誌「Paleontological Research」(パレオントロジカル・リサーチ)において発表された。

【発見の経緯】
 今回、新種として記載した6種の巻貝化石は、博物館資料として収蔵されていた、千葉県銚子市に分布する銚子層群君ヶ浜層(前期白亜紀“約1億2500万年前”)から採集された岩石より見出された。この岩石は、銚子市在住の山田勝彦さんによって、1998年に採集され、2000年に千葉県立中央博物館に寄贈されたもの。
 この岩石には貝類化石が多量に含まれており、これまでに発見されていない微小な種類が見つかる可能性があった。千葉県立中央博物館の伊左治鎭司は、2011年頃から、有孔虫などの微化石を探す手法(ボロン法)を用いて、この岩石から微小な化石を抽出する調査を開始し、多数の微小な巻貝化石を発見した。
 この巻貝化石に関する調査を進める過程で、軟体動物化石に詳しい芳賀拓真(国立科学博物館)に意見を求めるとともに、共産する微化石の同定に関しては中生代の微化石研究に実績のある柏木健司(富山大学)にも助言を求め、科学研究費等を用いた共同研究を開始し、その成果として新種の巻貝化石を記載する論文を発表した。

【用語解説】
※1 銚子層群 
 銚子半島の海岸周辺に分布する中生代前期白亜紀に堆積した地層の集まり。台風のような嵐の影響を受ける浅海で堆積した地層が特色。今回発見された新種は、銚子層群君ヶ浜層より産出し、その地質時代はバレミアン期にあたる。

※2 微化石を探す手法 
 有孔虫や放散虫などの微化石研究に用いられるボロン法を用いた。ボロン法は、泥質岩に含まれる雲母鉱物からカリウムイオンを分離し、ナトリウムイオンや水に補わせることによって粘土鉱物化させ、自然界で起こる風化現象を急速に人工的に引き起す。この処理により、岩石を軟泥化させ、水洗い処理だけで微小貝を取り出すことが可能となる画期的な方法である。

凸版印刷、高精度ARを活用した博物館ガイドシステムを開発

 凸版印刷株式会社(東京・文京区、麿 秀晴 代表取締役社長)は、スマートフォンをかざすだけで、実際の展示物に様々なコンテンツを高精度に重ね合わせることが可能な博物館ガイドシステムを開発した。

 2021年10月26日(火)より提供を開始する。このシステムは、「博物館をもっと楽しくする」をコンセプトに、スマートフォンのカメラ越しに現実の博物館や展示物を見た際、そこには実際に存在しないCG映像や解説情報などのコンテンツを重ねて表示し、現実の博物館における文化体験を拡張するシステム。なお、スマートフォンのカメラから取得する画像情報から利用者の位置情報を取得する、VPS(Visual Positioning Service)技術を活用することで、誤差数センチ以内で展示物と重ね合わせたコンテンツ表示が可能だ。

 提供開始に先立ち、2021年10月13日(水)より港区立みなと科学館(東京都港区虎ノ門)で開催されている企画展「未来とつながる5G展~社会の多様性を支える通信技術~」の「4G/5Gの速度比較コーナー」でこのシステムを体験することが可能だ。

■ 今後の目標
 このシステムを始め、凸版印刷の提供する遠隔体験技術「IoA仮想テレポーテーション」等のXR技術を活用したサービスをパッケージ化し、博物館/文化施設の価値をさらに高め、地域振興の一助になることを目指す。同時に、博物館運営を始めとしたコミュニケーションビジネス全体で、2025年度までに約30億円の売上げを目指す。

■ 「未来とつながる5G展~社会の多様性を支える通信技術~」概要
名称: 「未来とつながる5G展~社会の多様性を支える通信技術~」
会期: 2021年10月13日(水)~11月7日(日)
会場: 港区立みなと科学館多目的ロビー
主催: 港区立みなと科学館
港区立みなと科学館公式HP: https://www.minato-kagaku.tokyo/

NASA 火星地表の岩石 採取成功

 アメリカ航空宇宙局(NASA)は9月6日、無人火星探査車「パーシビアランス」が、初めて火星地表にある岩石のサンプル採取に成功したと発表した。採取した鉛筆大の岩が保存用の管に収まっている画像を公開した。採取されたサンプルは将来、火星へ送る予定の探査機で地球に持ち帰ることが計画だ。

 探査車「パーシビアランス」は今年2月、火星でかつて湖があったと推定されるクレーターに着陸した。火星の岩石などのサンプルを採取するためのドリルなどの機器が搭載されている。

 先月行われた1回目のサンプル採取では、岩石が細かく砕け、保管用のチューブの中に入らず失敗した。今月1日、2回目の採取に挑戦し、岩石に穴をあけたことが確認されていた。

 探査車からのデータを分析していたNASAは6日、岩石のサンプルがチューブに入ったことが確認されたと発表し、画像を公開した。採取された岩石は鉛筆より少し太い程度の大きさだ。火星地表の土壌を採取し持ち帰ることができれば火星探査の歴史で初めてとなる。

 今回のミッションは、土壌の詳細な調査を通じ、微生物など生命の痕跡の有無を探ることで、サンプル採取成功は大きな前進となる。

モデルナ製ワクチン 異物はステンレス製の製造部品の破片

 モデルナ製の新型コロナウイルスワクチンの日本での流通を担当する武田薬品工業は9月2日、ワクチンの一部から異物がみつかった問題で、製造工程で金属片が混入したとする調査結果を公表した。原因は部品の設置ミスと見られ、使用を見合わせているおよそ160万回分のワクチンは2日以降すべて回収される。武田薬品は「安全性に問題はない」と説明した。

 先月中旬以降、全国の複数の接種会場でモデルナの未開封のワクチンの容器の一部に粒子状の異物が混入しているのが見つかった。

 製造工程で、部品どうしが設置ミスによって接触し摩擦で削り取られて混入した。

 厚生労働省は、全国901の会場に配送された、異物混入が報告されたロットと、同時期に同じ生産ラインで作られた2つのロット、合わせて162万回分のワクチンの使用を見合わせた。

■対象ロット
▽3004667
▽3004734
▽3004956

 自治体や政府が設置した大規模接種会場が77か所。厚生労働省は、このうちすでに接種に使用していたことが確認された55か所をホームページで公表しています。

 職域接種の824会場については当初、公表していなかったが、接種で使用したことが確認され、かつ了承が得られた268会場を新たに公表した。

アストラゼネカ製ワクチン 公的接種 40歳以上で検討

 厚生労働省は7月30日、アストラゼネカ社製のワクチンを40歳以上を、予防接種法上の「臨時接種」の対象として位置付ける方向で専門家の分科会に提案した。

 アストラゼネカ社製のワクチンはことし5月に国内での製造販売が特例承認したものの、極めてまれに血栓が生じるリスクがあると指摘され、使用を見送る方針を示していた。

 関係者によると、必要な場合を除いて40歳未満の人には原則、接種しない方向で検討しているという。

 感染の第5波で、特に40~50代の重症者が増えている。臨時接種の対象として認められれば、こうした年齢層はアストラゼネカ製も無料で接種が受けられるようになる可能性がある。

 英国ではアストラゼネカ社製のワクチンが広く使われているが、40歳未満には別のワクチンが推奨されている。

アメリカ ワクチン接種後もマスク着用推奨

 米疾病対策センター(CDC)は7月27日、感染者の数などが一定の水準を超えた地域では、ワクチン接種の有無にかかわらず屋内でのマスクの着用を推奨するという新たな指針を発表した。インドで確認され、感染例の8割を占めると推定される変異ウイルス「デルタ株」への対応だ。

 屋内でマスクを着用する必要がある感染率が高い地域は、CDCの全米感染率マップで参照できる。首都ワシントンやニューヨーク、ロサンゼルスなどの大都市を含む39の州や地域が対象だ。

 CDCはことし5月、ワクチン接種を完了した人はほとんどの状況でマスクなどを着用する必要はないと表明していたが、デルタ株の急速な拡大で大きな方針転換を余儀なくされた。

 CDCはまた、教職員や学生はワクチン接種の有無にかかわらず、屋内でマスクを着用するよう勧告した。

国立科学博物館 常設展示の蘇言機(そごんき)が「音響遺産」に認定

 国立科学博物館(篠田 謙一 館長)が所蔵し重要文化財に指定されている「蘇言機」が日本音響学会の認定する「音響遺産」に選ばれた。
 日本で最初に音を記録再生した蓄音機であり、音響学を基礎として発展していく録音再生技術の開始点となった資料であることが評価された。「音響遺産」としては、2019年度認定の函館ハリストス正教会の鐘楼の鐘の音、栃木県日光市の本地堂(薬師堂)の鳴竜につづき3件目の認定となる。
「音響遺産」とは、音に関するあらゆる分野を扱う研究者、技術者、教育者などの集まりである日本音響学会が、音響学および音に関わる事象を広く一般に伝えることを目的とし、主として一般の方々の耳目に触れる機会があり、かつ音響的な特徴を持つ具体的事象および事物に対して認定を行っているもの。

蘇言機 所蔵:国立科学博物館
地球館2階 「科学と技術の歩み」コーナー

 蘇言機(そごんき)とは日本で最初に音を機械的に記録・再生した蓄音機のことです。T.エディソン(Thomas Alva Edison:1847-1931)が発明した蓄音機のPhonographは、1877年にScientific Americanなどに掲載され、世界的に知られるところとなった。それらの情報に接した英国のA.ユーイング(James Alfred Ewing:1855-1935)は、東京大学にお雇い外国人教師として招聘された際に、本装置をエジンバラのJ. Milne & Son Makersに製作させ、持参して来日した。1878(明治11)年秋のこと。それから間も無くの11月16日に、ユーイングは東京大学理学部の一ツ橋の実験室(現在の学士会館の所にあった)で、蘇言機を使って日本最初の録音・再生の実験を行った。当時の日本の人々は、はじめて見るその器械を蘇言機とか蘇音機(器)などと呼んだ。

■一般社団法人 日本音響学会・音響遺産ホームページ
https://acoustics.jp/awards/onkyo_isan/

ファイザー製コロナワクチン 接種可能年齢拡大 12歳からに

 厚生労働省は5月28日、アメリカの製薬大手のファイザーの新型コロナウイルスのワクチンについて、12歳以上への引き下げが認められるとの見通しを示した。早ければ今月末にも対象年齢を改訂する見込みだ。

 日本では自治体の公的接種で使われているワクチンの接種の対象年齢が、ファイザー製が16歳以上、モデルナとアストラゼネカ製が18歳以上となっている。一方、アメリカなどでは、12歳以上となっている。

 厚生労働省は、28日午後の専門部会で、ファイザー製ワクチンの対象年齢を引き下げ、12歳以上とする添付文書の改訂について議論するが、田村厚労相は、閣議後の記者会見で、早ければ、5月31日に改訂を行う方針を示した。

 専門部会では、現在、1日間とされている冷蔵での保存期間を1カ月に延ばすことも議論される。

東京、大阪の大規模接種センター 運営開始

 政府が設置した新型コロナウイルスワクチンの大規模接種センターで、5月24日から接種が始まった。対象は東京都と大阪府全域。大規模接種センターは東京・大手町と大阪市北区に設置され、いずれも午前8時すぎにワクチンの接種が始まった。先週、承認されたばかりのアメリカのモデルナのワクチンが使用された。

 大規模接種センターには医師や看護師の資格を持つ自衛隊員が東京会場におよそ180人、大阪会場におよそ100人派遣されているほか、民間の看護師、およそ200人の協力も得ている。

 24日は東京で5000人、大阪で2500人の接種の予約が入っていて、政府は、来週には1日に最大で、東京で1万人程度、大阪で5000人程度の合わせて1万5000人程度の接種が可能になる。

 防衛省は希望者殺到による混乱回避のため、予約時期や対象地域をずらして受け付ける。31日にはセンターが接種対象とする東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏1都3県と大阪、京都、兵庫の関西3府県全域から可能になる。予約には市区町村から配布された接種券が必要で、まだ1度も受けていないことが条件。地元自治体と重複して予約した場合は、どちらかを取り消すよう求めている。

 予約はホームページでのみで受付をしており、電話窓口や会場では受け付けていない。防衛省は電話の問い合わせ窓口を開設している。
東京会場(0570)056730
大阪会場(0570)080770