Archive for: 6月 2014

月刊私塾界2014年7月号(通巻399号)

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巻頭言

株式会社ファーストリティリングが、国内のユニクロ店舗に勤務する全パート・アルバイト約3万人の内1万6千人を正社員化すると発表した。彼ら・彼女らは、特定の店舗や地域に勤務地が限定される「R(リージョナル=地域)社員」と位置づけられる。正社員には、他に国内転勤はできるが海外転勤は望まない、もしくはその実力がない「N(ナショナル=国)社員」。海外事業にチャレンジする意思と実力を備えた「G(グローバル=世界)社員」の三分類される人事制度に変更する。これを皮切りに、様々な企業が、正社員化を進め始めた。理由は企業により異なるが、正社員化自体は好ましい。
ところが、内容が明らかになるに従い、一概に喜べる改革ではないと分かってきた。「R社員」の年収は、非正規の現在より上昇するが、300万円から400万円だという。
地域限定正社員を既に導入している日本郵政グループの例をみる(呼称は「新一般職」)。4月までに4700人が、新一般職に転換した。ボーナス(4・3カ月)が加算されるが、年収は55歳時点で最高450万円、平均300万円程度にしかならないという。
方や最近何かと話題が多い、グローバル人材。外国語に堪能で、何か専門的領域で高い技能を持つ人だ。だが、インドで働く(英語ができる)、国際会計基準に明るい会計士の年収はどのくらいだろうか。何と200万円から300万円。
夢を抱くことが難しい世界が続く。

(如己 一)

目次

<<特集>>
    • 新たな英語教育の兆し
    • 株式公開企業塾2014年3月期決算を読む
<<TOP LEADER COMPANY>>

株式会社ナガセ

<<シリーズ・著名人に聞く>>

原田 曜平 氏「さとり世代」をモチベートさせるには、
集団評価の採用とワークライフバランス

<<石田 淳のケイゾクはチカラなり>>

ゲスト花房 孟胤 氏 NPO 法人 manavee(マナビー)代表理事

<<連載>>
  • 14 挑む大学 慶應義塾大学「未来創造塾」
  • 20 NEWS ARCHIVES
  • 48 HOT TOPICS
  •    公益社団法人 全国学習塾協会 九州・沖縄支部の研修大会
         一般的なサービス業とは異なる「教育サービス業」では、
         ラ・ポールを築くことが重要

  • 58 学習塾の空間づくり 31 シェーン英会話 銀座本校(東京都中央区)
  • 76 近況を聞く 新教育総合研究会 株式会社
               (個別指導キャンパス・京大個別指導学院)
             福盛 訓之 代表取締役
  • 82 教育サービス業界 企業研究 21 凸版印刷
  • 84 疾風の如く 60 学習塾 delight (三重県)
               塾長 若林 高太さん
  • 88 新米塾長のための部下とサシで行きたいごはん屋さん 12
  • 98 井上郁夫の因数分解 4
  • 107 論点2014 7 学力格差解消のために
  • 19 目次・巻頭言
  • 40 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 60 学習塾フランチャイズ研究所 55
  • 67 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿 246
  • 86 challenge~進化形jukuのカタチ 22 ジェイ教育セミナー
  • 89 芸術見聞録 12
  • 90 会社を建て直すためのリーダー養成塾 12
  • 92 新米塾長のための 学習塾経営基礎講座 13
  • 94 新・授業改革を目指して 79
  • 96 中学生からの子育てスクランブル 28
  • 100 林明夫の「21世紀の地球社会」 107
  • 102 高嶋哲夫の「塾への応援歌」 146
  • 104 未之知也(いまだこれ知らざるなり)15
  • 110 編集後記
  • 112 Book Review
  • 114 塾長のためのガジェット講座

「学習塾講師検定」が国家検定を目指す意義とその背景

公益社団法人 全国学習塾協会主催による特別セミナー「『学習塾講師検定』における国家検定を目指す意義について」が6月8日(日) 、東京・アルカディア市ヶ谷にておこなわれた。

全国学習塾協会が国家検定を目指す理由について話す、同協会の稲葉秀雄専務理事

全国学習塾協会が国家検定を目指す理由について話す、同協会の稲葉秀雄専務理事

セミナーに先立ち同協会会長の安藤大作氏が挨拶。続いて同専務理事を務める稲葉秀雄氏が「新人講師を育成する際、多くの塾ではベテラン講師の授業を見学させるに留まっており、4割の塾経営者はその育成方法を変えたい、と感じているとのアンケート結果が出た。今後は講師育成という、見えない技術をいかに見える化するかが課題」と既存の学習塾講師検定から国家検定を目指す理由について述べた。

次に同協会よりニーズ調査を委託されている三菱東京UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の田口壮輔氏が、今回の学習塾講師検定の国家検定化は厚労省が本年度よりスタートさせた「業界検定スタートアップ支援事業」によるものだと説明。

医師や弁護士などには国家資格、製造業には技能検定などが設けられているが、対人サービス業を中心とする職種には評価制度が整備されていないこと、さらに人口減少による人材不足を解消すべく各個人の能力を最大限活用するために開始されたという。公募には様々な団体が企画書を提出したが、学習塾業界のほか「健康産業」「流通業」「派遣・請負業」の4団体が採択されている。

三菱東京UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の田口壮輔氏

三菱東京UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の田口壮輔氏

ポイントは国主導で検定内容を策定するのではなく、時代の変化に柔軟に対応できるよう、その業界の自主性を重んじていること。国は補助金の提供と権威づけ、一定のチェックをおこなうのみだという。

今後2年間で国と各団体で協議を重ね、国家検定として認定するかどうかが決まるが、そのための具体的な指針は決まっていないとのこと。田口氏は「今後、様々な塾にヒアリング調査をおこなっていくため、忌憚のない意見をもらいたい」と呼びかけた。

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特別セミナーの会場の様子

教育再生実行会議 第5次提言案「小中一貫校 提言へ」

政府の教育再生実行会議は6月19日、「6・3・3・4」の学制改革に関する第5次提言案を議論し、現行では特例として認めている小中一貫校の制度化や幼児教育の段階的な無償化などを改革の柱として盛り込むことを、おおむね了承した。 この日の議論では、「小中一貫教育学校」(仮称)を創設し、義務教育9年間の区切りや学習カリキュラムを、教育委員会などが弾力的に運用できるようにすることを大筋で認めた。

「達成度テストー発展レベル」21年春入学から

大学入試センター試験に代わる「達成度テスト(仮称)」のあり方を審議する中央教育審議会(中教審)は6月19日、同テストのうち一般入試の合否判定に活用される「発展レベル」について、2021年春に入学予定の受験生から導入するとの答申素案をまとめた。現在の小学6年生からが対象となる。推薦・AO(アドミッション・オフィス)入試への活用を想定している基礎レベルについては、中教審の高等学校教育部会が、発展レベルよりも早い時期に導入する方向で検討している。

英検準1級レベルの英語教員、中学で3割未満 

高校の英語教員2万3368人のうち、英検準1級や、国際的な英語力テストTOEICなどの試験でこれに相当する成績を取っていたのは1万2315人(52.7%)、中学では3万813人のうち8607人(27.9%)であることが文部科学省の調査で分かった。同省では、同程度の実力を持つ教員を高校で75%、中学で50%にする政府目標に近づけたい考えだ。中高の英語教員に、昨年12月2日時点での英語の外部試験の受験状況などを聞いた。

東京基督教大 来年度から入学金廃止 授業料は値上げ

印西市の東京基督教大学(小林高徳学長)は、来年度から初年度の入学金(26万2000円)を廃止すると明らかにした。学生側の入学時の経済的負担を軽減する措置で「入学金廃止は全国の大学で2番目ではないか」としている。ただ、廃止の一方で、授業料や施設費などは値上げされるため「学校の収入はトータルでは変わらない」としている。

東北の医学部新設 卒業後の勤務地限定案

文部科学省は16日、有識者12人による構想審査会の会合を行い、3者の申請内容の審査を始めた。今後は、意見聴取などを行い、早ければ7月下旬から8月上旬の第4回会合で1校に絞り込む。委員からは、卒業後の医師の定着策や総合診療医に特化した育成を求める声が相次ぎ、これらが選定の争点になりそうだ。次回は7月4日で、3者から非公開で意見を聞く。

「障害のない社会を作るために」 交わされた熱い議論

学習塾の運営や障害者の就労支援などをおこなっている、株式会社LITALICO(旧ウィングル)の長谷川敦弥代表と、教員の採用、育成、紹介をおこなっているNPO法人Teach For JAPAN代表理事の松田悠介氏が、LITALICOの本社(東京都目黒区)で6月15日(日)、対談イベントがおこなわれた。

Teach For JAPANの松田 悠介代表理事(左)と株式会社LITALICOの長谷川 敦弥代表

Teach For JAPANの松田 悠介代表理事(左)と株式会社LITALICOの長谷川 敦弥代表

まずはじめに、各代表がそれぞれの事業を紹介。長谷川氏は「障害のない社会をつくる」というビジョンをもとに障害者の就労支援だけでなく、障害をもった子どもたちへ個性を伸ばす教育をおこなっていると説明。松田氏は「子どもたちに素晴らしい教育を」というコンセプトのもと、今後は教員の質を上げられるよう教育委員会と連携していく方針だと語った。

続く対談では様々な議論が交わされ、「私たちが障害を持つ人と接する際に意識すべきことは?」という松田氏の質問に対し長谷川氏は、「多様性を“仕方ないから”受け入れるのではなく、その人の個性をどう活かすか。お互いの違いをヒントとして、社会の力に変えていく必要がある」と答えた。

また、「障害のある子どもと接する際には彼らから教わることが多い」という長谷川氏のコメントを受け、松田氏はアメリカでは授業中に立ち上がってしまう生徒を無理矢理座らせるのではなく、立ち上がるごとに「ゴミを拾ってほしい」といった頼みごとをして、それができると褒めるという承認を繰り返すうちに子どもの立ち上がる回数が激減したことを紹介。長谷川氏もそれに大きく賛同し「その人の個性をみんながハッピーになるよう変えていきたい」と語った。
最後の質疑応答では参加者から多くの質問が飛び交い、活気に満ちたイベントとなった。

NPO学校支援協議会主催 「グローバルリーダーに育つ中学・高校の学びとは」

今年度から文科省がスーパーグローバルハイスクールとして、全国56校を指定してグローバルリーダーの養成に乗り出している。今回、NPO法人学校支援協議会が主催するシンポジウムでは、その施策に対し、中学・高校ではどうすればよいかを真っ向から考える場として法政大学市ヶ谷キャンパスにて6月1日に公開された。当日は中学生・高校生を始め、多くの教育関係者が一同に集まり、これからのグローバルリーダーをどう育てるかを考える場となった。「グローバルリーダーに育つ中学・高校の学びとは〜未来の難問に挑む子どもたちのために〜」と題した2部構成。

生徒を前に、白熱した反転授業を展開する開成高校の柳沢校長

第1部は開成中学・高等学校(東京都荒川区)の柳沢幸雄校長による反転授業の模擬授業。基礎的な内容を自宅で予習し、教室では発展的な内容を学ぶ「反転授業」。同氏は自宅で各自、「水俣病」について自習をしてきた中学生、高校生を相手に、公害病を想定した討論を通じて、率先して発言の重要性などをやさしく説いていく。今回は架空の公害病が起きた場合のケーススタディ。当事者ならどのように行動するかを生徒たちに判断し続けた。

柳澤校長から「指されたら3秒以内に発言する」「ほかの人と同じ意見は言わない」などのルールも設定され、生徒たちは迷いながらも舌戦を展開していった。柳沢校長は「常に発言を準備することで、生徒の脳が活性化され、知識の定着につながる。一方、教師には瞬間的な議論の流れに食い込んでいく技術が求められる」と話していた。グローバル社会に立ち向って行く中で、自ら発言していくことの重要性を反転授業を通じ、体感させていった。

丁々発止、意見が飛び交うパネルディスカッション

休憩を挟み、第2部では公開シンポジウム。NHK解説委員の早川信夫氏のコーディネートの下、各教育期間でグローバルリーダーの育成に取り組んでいる有識者によるパネルディスカッションが行われた。鷗友学園女子中学高等学校の吉野校長から、11年前から取り組んでいるオールイングリッシュで行っている英語授業の改革についての発表。横浜市サイエンスフロンティア高等学校の栗原峰夫校長からは、先端科学技術の知識を活用した「サイエンスリテラシー」を柱としたグローバル人材教育についての事例発表。武蔵学園(東京都)の有馬朗人学園長からは、英語で科学を学ぶ「ムサシ・テンプルREDプログラム」の事例紹介があった。

法政大学の学長の田中優子氏からはグローバル人材育成の施策の一環として取り組み始めた「国際ボランティアプログラム」、「国際インターンシッププログラム」の事例紹介が為された。「国際ボランティアプログラム」では夏休みの約2週間、法政大学の学生をアジアやその地域に派遣。そこで、環境問題、貧困問題を真正面から体験させ、国際社会に貢献しようという意識を植え付けさせる。田中氏は「知識を得るばかりではなく、現地で具体的な解決法を身に付けることが大学としての命題になる。学生たちが自主的になるグローバル体験の場を設けることが重要」と話す。

会の最後に開成高校の柳沢校長は、「グローバル人材とは地球上にいる70億人以上の人が相互に理解可能なコミュニケーションを取る事ができる人」と説き、「それには論理力が必要である」と語る。丁々発止、意見が飛び交い、最後まで飽きさせないシンポジウムとなった。

下村文科相 60校の学部新設などの審査を諮問

下村博文文部科学相は6月16日、2015年度に大学院や学部などの新設を予定している公私立の大学や短大延べ60校の計画について、大学設置・学校法人審議会に審査を諮問した。答申は10月末ごろの見通し。公立大では、新潟県立大(新潟市)が大学院国際地域学研究科を、福山市立大(広島県福山市)が大学院教育学研究科などを新設するとした。