東京藝術大学、映像分野の産学官連携拠点「DoCK」始動 アニメ・映画の高度人材育成へ 7月にキックオフシンポジウム

 東京藝術大学は、大学院映像研究科に新たな実践研究拠点「映像リサーチセンターDoCK(ドック)」を設立し、活動を開始した。DoCKは「Development of Co-Creative Knowledge」の略で、産学官や学問領域の垣根を越えた協働を通じて、映像分野における新たな「共創知」の開発を目指す。

 同センターは2026年3月に設立された。アニメーションや映画を中心とする映像分野の専門性を土台に、国際的に活躍するクリエイターやプロデューサーの育成に取り組む。さらに、リサーチャーやエデュケーターの育成も視野に入れ、映像表現や文化の未来を教育界、産業界、行政へ広く共有していく。

 プログラムは10分野で構成する。国際アニメ共同制作ワークショップ、国際アニメ企画開発ワークショップ、アニメータースキルアップ講座、国際映画共同制作・演出ワークショップ、国際映画企画開発・脚本ワークショップ、国際映画撮影・ポストプロダクションワークショップなどを展開する。

 また、次世代プロデューサーを育てる講座や、企業と連携して新技術によるコンテンツ開発を学ぶ先端技術クリエイティブワークショップ、アニメーション・映画教育を支援する教材開発プロジェクト、指導者を育成するエデュケーター育成講座も設ける。

 東京藝術大学は、これまで培ってきた芸術教育と国際的ネットワークを生かし、映像制作の高度専門人材だけでなく、映像教育や研究を支える人材の育成にも力を入れる。AIをはじめとする先端技術の進展により、映像制作環境が大きく変化する中、創作、教育、産業を横断する人材育成拠点としての役割が期待される。

 DoCKの開設を記念し、7月12日には国立映画アーカイブでキックオフシンポジウムを開催する。テーマは「<共創>的な知の開発拠点に向けて」。南カリフォルニア大学教授のリピット水田堯氏による基調講演のほか、東京藝術大学教員による事業紹介、映像分野のクリエイターやプロデューサーによるクロストークを行う。

 シンポジウムでは、映画監督の石川慶氏、美術家・日本画家の四宮義俊氏、アニメーション作家の矢野ほなみ氏らが登壇し、アニメーションと映画の越境や共創について議論する。また、AI時代に変化する制作環境と求められる人材をテーマに、アニメプロデューサーや出版業界関係者による討議も予定されている。

 コンテンツ産業では、国際共同制作や先端技術の活用、教育・研究との連携がますます重要になっている。東京藝術大学の新拠点DoCKは、映像教育を大学内に閉じず、産業界や行政、国際的な制作現場と結び付ける取り組みとして注目されそうだ。

学研グループ、創業80周年でブランドキャラクター開発へ

従業員・家族から原案354件 ドワーフスタジオがキャラクター化

 学研ホールディングスは、学研グループの創業80周年を記念し、グループのブランドアイコンとなるコーポレートキャラクターの開発プロジェクトを始動した。従業員とその家族から募集した原案をもとに、社内外での投票を経て最終案を決定し、こま撮りアニメーションスタジオ「ドワーフスタジオ」がキャラクター化を手がける。

 学研グループは1946年の創業以来、教育・出版を中心に事業を展開してきた。近年は医療福祉分野や海外展開にも領域を広げており、2026年4月1日に創業80周年を迎えた。今回のプロジェクトは、多様化する事業を貫く理念や志を象徴し、グループの「顔」となる存在をつくることを目的としている。

 キャラクター原案は、学研グループの全従業員とその家族を対象に募集した。募集期間は4月15日から5月22日までで、計354件の応募が寄せられた。今後、集まった原案の中から候補を選定し、社内外のステークホルダーによる投票を実施する。

 最終案をもとにキャラクターデザインと立体化を担当するのは、数々のキャラクター開発を手がけてきたドワーフスタジオ。国内外で長く親しまれるキャラクターとして仕上げることで、学研グループのブランド発信に活用していく。

 学研グループは今回のキャラクターについて、これまでの歩みとこれからの未来をつなぐ存在と位置付ける。出版、教育、医療福祉など幅広い事業に共通する「お客様の人生に寄り添う」という想いを形にし、グループ全体の一体感やブランド価値の向上につなげたい考えだ。

 投票期間は7月6日から20日までを予定しており、投票方法などの詳細は今後発表される。教育事業を起点に多角化を進めてきた学研グループにとって、80周年を機に始まるブランドアイコン開発は、社内外との接点を広げる新たなコミュニケーション施策として注目されそうだ。

第一学院高、TGGで英語体験型「夢授業」開催へ 通信制高校の生徒が実践英会話と異文化理解を学ぶ

 株式会社ウィザスが運営する第一学院高等学校は、7月10日、体験型英語学習施設「TOKYO GLOBAL GATEWAY(TGG)」で、全国の第一学院グループの生徒を対象とした「夢授業TOKYO GLOBAL GATEWAY」を開催する。

 同プログラムは、海外旅行や留学を疑似体験できる環境の中で、他キャンパスの生徒とともに実践的な英会話を学ぶもの。英語でのコミュニケーションを通じて、自身の生活習慣と海外文化を比較しながら、異文化理解を深めることを目的としている。

 当日は「おもてなし文化を世界に紹介しよう」をテーマに、日本文化を英語で伝える体験型プログラムを実施する。ふろしきを使った「包む文化」を題材に、生徒が自分の言葉で日本文化を紹介する活動に取り組む。

 また、キャンパスゾーン、トラベルゾーン、ホテルゾーンなど、海外の日常生活を再現した空間で英語を使ったやりとりを体験する。イングリッシュ・スピーカーのサポートを受けながら、「わかった」「通じた」という成功体験を積み重ねることで、英語学習への意欲向上につなげる。

 第一学院高等学校は、全国に68キャンパスを展開する通信制・単位制高校で、8700人以上の生徒が在籍している。不登校や高校中退を経験した生徒のほか、スポーツや芸能活動などと学業の両立を目指す生徒も多い。

 同校では、「生徒第一」「1/1の教育」を掲げ、生徒一人ひとりの成長を支援する「成長実感型教育」を展開している。今回のプログラムも、国内外での体験型学習の一環として位置付けられ、生徒の視野を広げ、将来の進路選択や新たな挑戦につなげる狙いがある。

 通信制高校では、多様な背景を持つ生徒に対し、教室内の学習にとどまらない体験機会をどう提供するかが重要になっている。TGGを活用した今回の取り組みは、英語力の向上に加え、自己表現力や異文化理解を育む実践的な学びとして注目されそうだ。

愛知総合工科高附属中、AI教材「すらら」導入 全国初の中高一貫工科高校附属中で自律学習を支援

 すららネットは、同社が提供するAI搭載型アダプティブ教材「すらら」が、2026年4月に開校した愛知県立愛知総合工科高等学校附属中学校に導入されたと発表した。初年度に入学した35人の生徒が、5教科の基礎学習などで活用を始めている。

 同校は、中高一貫教育を展開する工科高校附属中学校として全国初の取り組みとなる。ものづくり産業が盛んな愛知県の地域特性を背景に、将来の産業を担う人材の育成を目指すとともに、「自律した学習者の育成」を教育の柱に掲げている。

 同校では、生徒が多様な体験を通じて興味関心を見つける「チャレンジ100」や、複数の教員で生徒を支えるチーム担任制、各教科における探究的な授業などを展開する。こうした学びを支える基盤として、国語、数学、英語、理科、社会の基礎学習に「すらら」を活用する。

 「すらら」は、アニメーションによるレクチャーとAIによる問題提示により、生徒一人ひとりの理解度に応じて学習内容や難易度を調整するICT教材。学習状況の可視化や復習課題の自動生成により、つまずきを解消しながら基礎学力の定着を支援する。

 同校では、一般的な定期テストに代わり、理解度を測る「単元テスト」と、生徒自身が学習状況を把握するための「実力テスト」を重視している。「すらら」は学習データをもとに理解度を可視化し、復習課題を提示することで、単元テストと連動した学習サイクルを支える。

 これにより、生徒は「わかる」「できる」という成功体験を積み重ねながら、自分のペースで学びを進めることができる。さらに、テスト作成や採点の効率化により、教員の業務負担軽減にもつながり、生徒との対話や探究活動の伴走に注力しやすい環境づくりを後押しする。

 副校長の恩田健司氏は、「生徒自らが学習や体験を振り返り、次の目標・課題を見つけていく積み重ねこそが、本校の目指す自律した学習者の姿」とコメントしている。そのうえで、「すらら」が基礎学力を自分のペースで固め、探究的な学びへ向かうための伴走者になることに期待を示した。

 工業・工科系教育では、専門的な知識や技術の習得に加え、基礎学力と探究力をどう結び付けるかが重要となる。AI教材を活用した今回の取り組みは、工科系中高一貫教育における個別最適な学びと自律学習を支える事例として注目されそうだ。

コエテコと船井総研、民間教育事業者向けAIレポートを発行 塾・スクール経営の生存戦略を提示 EXPO参加者などに無料提供

 GMOメディアが運営するプログラミング教育ポータルサイト「コエテコ byGMO」は、船井総合研究所と共同で、民間教育事業者向けレポート『AIが民間教育経営を変える〜塾・スクール・教室の生存戦略2026〜』を発行した。プログラミング教室、学習塾、探究学習スクールなどの経営者や運営責任者を対象に、AI時代に求められる教室経営の方向性を整理している。

 生成AIの急速な普及により、教育現場では知識を覚える力だけでなく、問いを立てる力、情報を整理・編集する力、自ら考え表現する力が重視されるようになっている。こうした変化は、民間教育事業者にとって、カリキュラムや指導方法だけでなく、集客、業務設計、情報発信を含む経営全体を見直す契機となっている。

 一方で、AI活用に積極的な事業者がいる一方、導入方法や活用範囲が分からず、対応に慎重な教室も少なくない。今回のレポートでは、業界関係者へのヒアリングや両社の保有データ、公開情報の分析をもとに、AIをどのように教室運営に取り入れ、価値向上につなげるかを考察した。

 レポートでは、AI時代に求められるスキルや教育の前提変化を整理するとともに、小学校から高校までの情報教育の広がり、大学入試における「情報」の導入、プログラミングスクール市場の動向などを分析している。

 また、AI時代に選ばれる教室づくりに向けて、「カリキュラム設計」「校務・教務」「経営戦略」の三つの基盤が重要だと指摘する。単にAI教材を導入するだけでなく、教室の提供価値や保護者への訴求、業務効率化、講師育成まで含めた経営改革が問われる内容となっている。

 レポートは、6月15日から開催される「コエテコEXPO byGMO 2026」の参加者に会期中優先提供されるほか、「コエテコ byGMO」公式サイトの専用フォームから申し込んだ人にも無料で提供される。会期終了後には一般公開も予定している。

 コエテコ byGMOは、2017年に開設されたプログラミング教育ポータルサイトで、2026年3月末時点の掲載教室数は約1万3000件。プログラミング・ロボット教室情報に加え、保護者向けの解説記事などを通じて、スクール選びを支援している。

 民間教育市場では、少子化や保護者ニーズの多様化に加え、生成AIの登場によって教室の役割そのものが問い直されている。今回の共同レポートは、AIを脅威ではなく経営変革の機会として捉え、次世代の民間教育事業のあり方を考える資料として注目されそうだ。

小中高教員の約9割が生成AIの効果を実感 デジタル・ナレッジ調査 活用成熟度が高い学校ほど有用性評価も高く

 デジタル・ナレッジが運営するeラーニング戦略研究所は、小中高の教員を対象に実施した「学校における生成AI活用の実態」に関する調査結果を公表した。調査では、教育現場で生成AIの活用が校務効率化や授業準備を中心に広がっており、教員の約9割がAI活用による効果を実感していることが明らかになった。

 調査は2026年4月20日から23日にかけてWebアンケートで実施。小学校、中学校、高校の校長、副校長・教頭、主幹教諭、主任教員、ICT担当教員、一般教員の計133人を対象とした。

 校務でのAI利用率は84.2%に上った。主な用途は、会議・報告資料の作成、行事・イベントの企画、連絡文書やお知らせの作成などで、日常的な事務作業の効率化に活用されている。授業準備での利用率も74.4%となり、教材作成での利用が最も多かった。

 一方で、学校内の利用ルールやガイドライン整備、教員研修の実施状況には学校間で差がみられた。「ルールやガイドラインが未整備」「指導方法が分からない」といった声も多く、活用が進む一方で、運用体制の整備が課題となっている。

 生徒による生成AI利用も広がりつつある。教員の回答では、「授業で利用させたことがある」が18.8%、「自主利用を把握している」が25.6%、「自主利用の可能性はあるが把握していない」が33.8%だった。利用用途は調べ学習、発表資料作成、探究学習などが中心となっている。

 教員側には、学習効果への期待がある一方で、思考力低下やAIへの依存、情報の正確性への不安もある。自由記述では、「AIを使ったかどうか判別が難しい」「生成される情報の精度に不安がある」といった声が目立ち、評価方法や指導方法の確立が今後の課題として浮かび上がった。

 今回の調査では、教員の利用状況、学校のルール整備、推奨・契約ツールの有無、教員研修の実施状況などをもとに、学校の「AI活用成熟度」を4段階に分類した。その結果、AI活用成熟度が高い学校ほど、AIの効果実感や有用性評価も高い傾向が確認された。

 また、AI活用が進むにつれて、教員の懸念内容にも変化がみられた。初期段階では「学力低下」への不安が目立つ一方、成熟度が高い学校では「運用・管理」や「校内ルール整備」への関心が高まる傾向があった。生成AIの活用が定着するにつれ、課題は導入そのものから、いかに安全かつ効果的に運用するかへ移っている。

 デジタル・ナレッジは、今後の学校現場におけるAI活用には、教員研修や活用事例の共有に加え、LMSなど学習基盤との連携、安全な利用環境の整備が重要になるとしている。

 生成AIは、校務負担の軽減だけでなく、授業づくりや探究学習の支援にも活用が広がっている。今回の調査は、学校単位でのルール整備と研修体制が、AI活用の定着と教育効果の実感を左右することを示す結果となった。

河合塾学園ドルトンスクール、公式サイトを全面刷新 NY本校との提携50周年を機に理念や学びの発信を強化

 河合塾グループの幼児・児童教育機関である河合塾学園ドルトンスクールは、公式Webサイトを全面リニューアルした。アメリカ・ニューヨークの「THE DALTON SCHOOL」との提携50周年を迎えることを機に、教育理念や日常の学び、東京校・名古屋校の情報をより分かりやすく発信する。

 ドルトンスクールは1976年、ニューヨークのTHE DALTON SCHOOLと提携して以来、「自由」と「協同」を軸とするドルトンプランに基づいた教育を実践してきた。今回のサイト刷新では、保護者や在校生、卒業生、地域関係者に向けて、同校の教育方針や子どもたちの成長過程をより伝わりやすく示すことを目的としている。

 新サイトでは、UI・UXやコンテンツ構造を見直し、年齢に応じたコース情報、各校舎の入学情報、イベント情報などを整理した。スマートフォンなどモバイル端末での表示にも対応し、利用者が必要な情報にアクセスしやすい設計とした。

 また、教育理念だけでなく、探究学習や学内外の活動、卒業生や地域とのつながりを感じられるコンテンツも拡充した。これまでアーカイブ化されていた情報を整理し、サイト全体の構造をスリム化することで、日常の学びの様子をよりタイムリーに発信できる体制を整えた。

 メインビジュアルには、「学びが未来へ広がっていくドーム」をモチーフにしたデザインを採用した。教室、実験、探究、自然、地域社会との交流など、ドルトンスクールの多様な学びが一つの世界としてつながっていく様子を表現している。子ども自身が学びを選び取る主体性や、多様な他者との対話・協同を通じた成長を視覚的に示した。

 今後は、保護者や卒業生、地域社会とのつながりを深める情報発信に加え、提携50周年の特設ページなども順次拡充する予定だ。各校舎で実施するイベント情報なども公式サイトで発信していく。

 幼児・児童教育の分野では、教育内容だけでなく、理念や日常の学びをどのように保護者へ伝えるかが重要性を増している。今回のリニューアルは、学校のブランド価値や教育方針を可視化し、保護者との接点を強化する取り組みとして注目される。

ワコム、天草市・専門学校HALと産官学連携 学生200人が地域課題に挑む デジタルアート施策などを制作

 株式会社ワコムは、熊本県天草市と専門学校HAL東京・大阪・名古屋と連携し、学生が地域の実課題をテーマに制作に取り組む産官学連携プロジェクトを開始する。HALの学生約200人が授業の一環として、天草市の地域施策やクリエイティブ課題に向き合い、企画・制作を行う。

 今回のプロジェクトでは、天草市の各部署から提示された課題をもとに、学生がチームごとに制作テーマを選ぶ。課題には、「デジタルアートの島創造事業」のWebページデザインやブランドムービー、若者向けのチラシデザイン、地域産品や観光資源のPRに関する販促物などが含まれる。

 制作期間中には、天草市とワコムによる中間確認の機会を設ける。8月に審査を行い、9月に結果を発表する予定。優秀作品については、天草市の各施策での活用も検討される。

 天草市は、ゲーム、アニメ、映像などのデジタルコンテンツ産業を創出し、人が集まる島を目指す「デジタルアートの島創造事業」を進めている。今回の連携では、こうした地域施策と連動し、学生がクリエイティブの視点から地域課題の解決に挑戦する。

 学生にとっては、教室内の課題制作にとどまらず、実際の自治体施策を題材に社会とつながる制作を経験する機会となる。地域の魅力発信や若者向け施策、観光・産業振興などをテーマに、企画立案から実制作までを一貫して学ぶ。

 ワコムはこれまで、HAL各校に導入された液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro 27」や、教材として採用されている「Wacom Intuos」などを通じて、学生のデジタルクリエイティブ環境を支援してきた。今回のプロジェクトでは、制作環境のサポートに加え、天草市在住クリエイターによるオンラインセミナーなども実施する。

 学生が取り組むテーマは、「デジタルアートの島創造事業」の関連デザインのほか、クリエイター誘致、就職マッチング、天草のおさかな魅力再発見事業、旬のかんきつ類のPR、雲仙天草国立公園70周年に合わせた販促物、ニュースポーツ普及の紙芝居制作、子育て支援を視覚化するプロジェクトなど多岐にわたる。

 専門学校HALは、企業と連携して実社会の課題に取り組む「産学直結ケーススタディ」を重視しており、今回の取り組みもその一環となる。天草市にとっては、若い世代の感性やデジタル表現を地域施策に取り入れる機会となる。

 デジタル人材の育成と地域課題解決を結び付ける産官学連携は、専門学校教育における実践型学習の重要なモデルになりつつある。ワコム、天草市、HALによる今回の取り組みは、次世代クリエイターの育成と地域のクリエイティブ活用を同時に進める事例として注目されそうだ。

学研グループ、インドネシア工業団地で人材育成実証 丸紅グループと協業 製造業向け「現場人材」育成へ

 学研ホールディングスのグループ会社であるGakken Turkey Inovatif Eğitim A.Ş.(学研トルコ)は、丸紅の子会社が運営するインドネシア・西ジャワ州のMM2100工業団地で、製造業人材育成プラットフォーム「Professional Gemba Learning Program」の実証事業を開始した。5月20日から取り組みを始めており、実証後の本格展開を検討する。

 MM2100工業団地は、丸紅グループのPT. Megalopolis Manunggal Industrial Developmentが運営するインドネシア最大規模の日系工業団地。多数の日系・外資系製造業企業が進出しており、現地スタッフのスキル向上や次世代リーダー育成へのニーズが高まっている。

 今回の実証事業では、同工業団地で働く約12万人の現地人材を視野に入れ、入居企業のスタッフを対象にアセスメントや研修プログラムを提供する。スキルの可視化、階層別・専門性別の学習、次世代リーダー育成ロードマップの策定支援などを通じて、製造現場の人材育成を体系化する。

 プログラムでは、日本が強みを持つカイゼンなどのものづくり哲学や現場改善の考え方に加え、データに基づく人材育成手法を現地向けに展開する。PT. MMIDは研修会場や入居企業ネットワークを提供し、学研グループは教育コンテンツやアセスメントの開発・提供を担う。

 学研グループは中期経営計画の重点戦略の一つとして、グローバルサウスへのサービス拡大を掲げている。学研トルコはその一環として、トルコを拠点に産業人材育成事業を展開してきた。インドネシアでの取り組みは、トルコに続く新たな展開となる。

 同社は、ものづくり系のリカレント教育に加え、日本語教育や日本文化に関するコンテンツも提供することで、現地で活躍する「知日産業人材」の育成を目指す。グローバルサウス地域では日系企業の進出拡大が見込まれており、安定的な人材供給につなげる狙いがある。

 少子化が進む日本国内では、教育企業にとって海外市場や社会人教育、産業人材育成は成長領域の一つとなっている。学研グループによる今回の実証事業は、教育コンテンツを学校教育の枠にとどめず、海外の製造現場や企業研修へ展開する事例として注目されそうだ。

大学横断型PBL「SCP」始動 香川大・専修大・山梨県で実証 金融教育を入口に社会課題へ挑戦

 一般社団法人日本金融教育支援機構と一般社団法人観光クロスオーバー協会は、2026年度から大学横断型PBLプログラム「SCP(Social Cross Project)」を始動する。香川大学、専修大学、山梨県の「山梨Miraiプロジェクト」参加大学などで実証を始め、単位認定制度と連携した新たな実践型学習モデルの構築を目指す。

 SCPは、金融教育を入口に、地域課題、観光、キャリア教育など多様なテーマに大学生が主体的に取り組む大学合同プロジェクト。中高生向け金融教育動画コンテスト「FESコンテスト®」を共通テーマとして活用し、大学や地域の枠を越えた学生コミュニティの形成を図る。

 参加学生は、各地域でワークショップの企画・広報・集客・運営・振り返りまでを実践する。あわせて、起業家、金融機関職員、自治体職員、教育関係者などをゲストスピーカーとして招き、多様なロールモデルと出会う機会を設ける。

 背景には、若者が社会と接点を持ち、多様な大人や仲間と出会う機会の地域差がある。日本金融教育支援機構は、金融教育を単なる知識習得ではなく、将来の選択肢を広げる学びと位置付けてきた。今回のSCPでは、大学生自身が中高生への学びを支援しながら、社会課題と向き合う仕組みをつくる。

 実施期間は2026年4月から2027年3月まで。4月から全国の学生募集やコミュニティ形成、事前研修を始め、6月以降に実践活動を展開する。主な活動には、FESコンテスト関連ワークショップの企画・運営、大学横断オンラインミーティング、ゲスト講演、地域課題に関する学習、学生実行委員会の運営、地区大会・全国大会の支援などが含まれる。

 2026年度は実証期間と位置付け、今後は参加大学や連携地域の拡大を進める。将来的には全国100大学との連携を目指し、大学生、中高生、社会人が地域や所属を越えて学び合う全国規模のコミュニティ形成にも取り組む。

 大学教育では近年、実社会の課題に向き合うPBL型授業や、地域・企業と連携した実践的な学びが重視されている。SCPは、金融教育、地域活性化、キャリア形成を横断的につなぐ取り組みとして、大学教育における新たな共創型PBLのモデルとなりそうだ。