9月30日の「世界翻訳の日」に合わせ、翻訳・通訳を手がける5社は、「翻訳は共生社会を支える重要な社会基盤である」とする共同声明を発表した。世界翻訳の日は、聖ヒエロニムスの命日にちなみ国際翻訳家連盟が制定し、2017年に国連が国際翻訳デーとして承認している。
声明では、翻訳の社会的役割に注目し、単なる言語変換にとどまらず、人々の安心や共生を支える基盤であることを強調している。日本国内では、外国籍住民の増加やインバウンド需要の拡大、外国人労働者の受け入れ拡大などにより、医療、災害対応、教育、公共交通など社会のさまざまな分野で多言語対応が不可欠になっている。多言語情報の整備は、外国人だけでなく、日本社会全体の安全や持続可能性を高める取り組みと位置付けられる。
具体的な事例として、各社は以下の取り組みを紹介している。
株式会社アスカコーポレーション:
希少疾患治療薬の承認申請でAI翻訳を活用。従来より迅速に翻訳し、日本国内での薬剤提供を支援。
株式会社コングレ・グローバルコミュニケーションズ:
国際経済制裁者リストの日本語化により金融機関のコンプライアンスを支援。
株式会社テリロジーサービスウェア:
日本空手協会の武道文化資料を多言語化し、国内外での理念や技術共有を促進。
株式会社ヒューマンサイエンス:
国立大学における教材・事務文書の多言語化で、留学生や外国籍研究者の受け入れ環境を整備。
八楽株式会社:
長野県箕輪町の防災情報や生活ガイドを多言語で発信し、外国籍住民の生活支援と地域活性化に貢献。
立教大学の山田優教授は「翻訳は災害や医療、教育など社会の安心に直結する基盤であり、人権擁護やインクルーシブな社会づくりに不可欠である」と述べ、学術的視点でも翻訳の社会的意義が認識され始めていることを指摘した。
今回の共同声明は、翻訳が人々の生活を支える不可欠な社会基盤であることを、広く社会に伝える試みと位置付けられる。




